原発性アルドステロン症の治療による予後(イタリア臨床データの解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2018年のHypertension誌に掲載された、
原発性アルドステロン症の治療と、
その予後の差についての論文です。
原発性アルドステロン症というのは、
副腎の腺腫もしくは過形成によって、
水や塩分を身体に保持する役割のある、
アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されて、
それにより血圧が上昇し、
血液のカリウム濃度が低下するという病気です。
以前は稀な病気と考えられていましたが、
最近では高血圧の患者さんに、
簡単なスクリーニングの血液検査が、
各種のガイドラインで推奨されるようになり、
実際には多くの患者さんがいることが分かって来ました。
原発性アルドステロン症の病態が明らかになるにつれ、
通常の本態性高血圧症と比較して、
その生命予後や心血管疾患のリスクなどが、
より悪いのではないか、
というデータが複数報告されるようになりました。
ただ、データの多くはカルテを後からまとめたようなもので、
患者さんを登録して長期間経過をみたようなものは、
殆どありません。
原発性アルドステロン症の治療は、
片側の腺腫であれば手術による治療が、
両側の過形成であればアルドステロン拮抗薬などの薬物療法が、
通常は行われています。
しかし、この治療により、
患者さんの予後が改善するかどうかについても、
そのデータは限られたものしかありません。
今回の臨床データはイタリアで行われた、
高血圧症における原発性アルドステロン症の頻度と、
その予後を検証した、
PAPY研究という臨床データを解析したもので、
通常の本態性高血圧と原発性アルドステロン症の、
長期間の治療による予後の差を比較しています。
対象となっているのは1125名の高血圧の患者さんで、
中間値で11.8年という長期の経過観察が行われ、
最終的に解析が可能であったのはそのうちの1001名でした。
その内訳は本態性高血圧として投薬治療の行われた894名と、
原発性アルドステロン症で手術が行われた41名、
そして過形成との判断で薬物治療が行われた66名です。
ほぼ11%が原発性アルドステロン症の患者さんだった、
ということになります。
治療を行なった本態性高血圧の患者さんと比較して、
血圧の数値は補正した上で、
原発性アルドステロン症の患者さんでは、
生命予後は悪い傾向を認めましたが、
有意な差はついていません。
心血管疾患の中で明確な差が付いたのは心臓細動のリスクで、
投薬治療を継続した原発性アルドステロン症の患者さんは、
本態性高血圧と副腎の手術後の患者さんより、
1.82倍(95%Ci: 1.08から3.08)
有意に心房細動の発症リスクが増加していました。
手術治療をした原発性アルドステロン症の患者さんでは、
そうしたリスクの増加は認められませんでした。
今回のデータは元々原発性アルドステロン症の、
高血圧の患者さんの中での有病率を見たものなので、
実際のこの病気の患者さんの数自体はそう多くはなく、
事例にバイアスがあるという可能性も否定は出来ません。
心房細動のリスク以外にはあまり差がなかったようなので、
本当にそれが治療の差によるものなのか、
判断はまだ難しいところだと思います。
ただ、中間値で10年を超える経過観察が行われたデータは、
この分野ではあまり例がなく、
原発性アルドステロン症を治療してアルドステロン値を正常化することにより、
将来的な不整脈のリスクを低下させる可能性を示したものとして、
意義の大きな結果であると思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2018年のHypertension誌に掲載された、
原発性アルドステロン症の治療と、
その予後の差についての論文です。
原発性アルドステロン症というのは、
副腎の腺腫もしくは過形成によって、
水や塩分を身体に保持する役割のある、
アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されて、
それにより血圧が上昇し、
血液のカリウム濃度が低下するという病気です。
以前は稀な病気と考えられていましたが、
最近では高血圧の患者さんに、
簡単なスクリーニングの血液検査が、
各種のガイドラインで推奨されるようになり、
実際には多くの患者さんがいることが分かって来ました。
原発性アルドステロン症の病態が明らかになるにつれ、
通常の本態性高血圧症と比較して、
その生命予後や心血管疾患のリスクなどが、
より悪いのではないか、
というデータが複数報告されるようになりました。
ただ、データの多くはカルテを後からまとめたようなもので、
患者さんを登録して長期間経過をみたようなものは、
殆どありません。
原発性アルドステロン症の治療は、
片側の腺腫であれば手術による治療が、
両側の過形成であればアルドステロン拮抗薬などの薬物療法が、
通常は行われています。
しかし、この治療により、
患者さんの予後が改善するかどうかについても、
そのデータは限られたものしかありません。
今回の臨床データはイタリアで行われた、
高血圧症における原発性アルドステロン症の頻度と、
その予後を検証した、
PAPY研究という臨床データを解析したもので、
通常の本態性高血圧と原発性アルドステロン症の、
長期間の治療による予後の差を比較しています。
対象となっているのは1125名の高血圧の患者さんで、
中間値で11.8年という長期の経過観察が行われ、
最終的に解析が可能であったのはそのうちの1001名でした。
その内訳は本態性高血圧として投薬治療の行われた894名と、
原発性アルドステロン症で手術が行われた41名、
そして過形成との判断で薬物治療が行われた66名です。
ほぼ11%が原発性アルドステロン症の患者さんだった、
ということになります。
治療を行なった本態性高血圧の患者さんと比較して、
血圧の数値は補正した上で、
原発性アルドステロン症の患者さんでは、
生命予後は悪い傾向を認めましたが、
有意な差はついていません。
心血管疾患の中で明確な差が付いたのは心臓細動のリスクで、
投薬治療を継続した原発性アルドステロン症の患者さんは、
本態性高血圧と副腎の手術後の患者さんより、
1.82倍(95%Ci: 1.08から3.08)
有意に心房細動の発症リスクが増加していました。
手術治療をした原発性アルドステロン症の患者さんでは、
そうしたリスクの増加は認められませんでした。
今回のデータは元々原発性アルドステロン症の、
高血圧の患者さんの中での有病率を見たものなので、
実際のこの病気の患者さんの数自体はそう多くはなく、
事例にバイアスがあるという可能性も否定は出来ません。
心房細動のリスク以外にはあまり差がなかったようなので、
本当にそれが治療の差によるものなのか、
判断はまだ難しいところだと思います。
ただ、中間値で10年を超える経過観察が行われたデータは、
この分野ではあまり例がなく、
原発性アルドステロン症を治療してアルドステロン値を正常化することにより、
将来的な不整脈のリスクを低下させる可能性を示したものとして、
意義の大きな結果であると思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。