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身体機能が低下した高齢男性への蛋白摂取追加の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
高齢者の蛋白摂取の効果.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
身体機能が低下した高齢者への、
蛋白摂取の有効性を検証した論文です。

高齢化社会になるにつれ、
高齢者の身体機能が低下して、
特に病気がなくても徐々に歩行などの活動が困難となり、
寝たきりになってしまうことが、
大きな社会問題となっています。

ここで問題となるのは高齢者の筋肉量の低下です。

筋肉の主な原料は蛋白質ですが、
高齢者では同じ量の蛋白質を摂取していても、
筋肉量を維持することが難しくなることが知られています。

それでは、
むしろ若年者より多くの蛋白質を摂取することが、
高齢者の筋肉量の維持に繋がるのでしょうか?

この仮説を推奨するような意見もあり、
「年を取ったら沢山肉を食べるのがいい」
というような意見に繋がっています。

ただ、窒素平衡という考え方があり、
総カロリーに占める蛋白質の比率を多くしても、
身体はそれを効率的には活用出来ない、
と生理的には考えられています。

上記論文にある米国医学研究所の、
蛋白摂取量の基準値は体重1キロ当り0.8グラムで、
それを大きく超えても、
有効に筋肉の材料になるとは期待は出来ません。

しかし、これは身体の代謝が正常であることを前提としているので、
代謝機能が低下し、
また性ホルモンの低下など種々の原因により、
蛋白質の分解が促進されているような高齢者でも、
同じであるという保証はありません。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
標準レベル(体重1キロ当り0.83グラム以下)の蛋白を含む食事を摂っている、
身体機能が低下した65歳以上の92名の男性を登録し、
その蛋白摂取量を変えた食事を半年間摂取してもらい、
その前後で筋肉量(除脂肪体重)の比較を行っています。

登録者はくじ引きで4つの群に分けられています。
第1群は標準とされる体重1キロ当り0.8グラムの蛋白質を摂取し、
第2群は体重1キロ当り1.3グラムという高用量の蛋白質を摂取します。
第3群は0.8グラムの蛋白量で男性ホルモンの注射を行い、
第4群は1.3グラムの蛋白量で男性ホルモンの注射を行います。

この意味は蛋白量を多くした効果と、
それが活用されない可能性を考えて、
男性ホルモンの補充を加えた場合の効果を、
併せて見ているのです。

登録者にはどの群になったから分からないように、
偽の注射が行われていますし、
蛋白の摂取量の調整は、
標準量を含む食事を食べてもらい、
それに加えてサプリメントが使用されています。
勿論偽のサプリメントも使用されているのです。
例数は少ないのですが、
かなり手の掛かった試験であることが、
お分かり頂けるかと思います。

身体機能の低下は、
SSPB( Short Physical Performance Battery)
という指標を用いて、
それが3から10点を対象としています。
これは、バランスや歩行、椅子の立ち上がりなどを、
段階的にチェックする国際指標で、
満点は12点です。
従って歩行自体が困難なレベルの人から、
椅子の立ち上がりなどに、
かなり時間が掛かるレベルの人までが含まれています。

その結果、
蛋白量を増やすことにより、
脂肪の量は低下しましたが、
筋肉量やその強度、
また歩行などの身体機能には、
4群間で有意な差は認められませんでした。

つまり、
蛋白量を増やしても、
そこに更に男性ホルモンの補充を行っても、
比較的身体機能の低下した高齢者で半年程度の期間においては、
あまり有効な身体機能の回復や筋肉量の増加には、
結び付くことはないようです。

ただ、これはあくまで短期間の結果であり、
またかなり身体機能が低下した方のデータなので、
もう少しタイミングを変えれば、
また違う結果となる可能性は残っています。

超高齢化社会を見据えると、
こうした食事やホルモンによる寝たきり予防というのは、
意外に大きなインパクトを持つ医療であるように、
個人的には思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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