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ホットフラッシュの新薬の有効性(2017年Lancet論文のサブ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ホットフラッシュの新薬のデータ.jpg
2018年のMenopause誌に掲載された、
更年期の不快な症状であるホットフラッシュの、
新薬の臨床試験データを解析した論文です。

これは2017年のLancet誌に載った論文の、
サブ解析のデータをまとめたものです。
これはその時にブログ記事にしていますが、
その効果があまり明確ではなかったため、
今回はその効果が詳しく分析されています。

ホットフラッシュと呼ばれる顔などのほてり感や、
寝汗などの大量の発汗は、
女性の更年期症状としてポピュラーな症状で、
閉経した女性の70%以上に見られる、
という統計もあります。

これは必要以上に体温を脳が高く認識して、
それが体温を下げようとする自律神経の反応をもたらし、
末梢の血管が広がってほてりになり、
かつ発汗量が増えるのではないかと考えられています。
ネズミでは同様の反応の時に尻尾を小刻みに動かしていることから、
落ち着きがなく体をゆするような動作も、
同様のメカニズムで起こっている可能性があります。

それでは、何故更年期の脳は、
体を実際より暑く感じるのでしょうか?

脳の視床下部に体温調節中枢があり、
そこは女性ホルモンの分泌の調節をする部位でもあります。
閉経になるとGnRHという視床下部のホルモンの調節を行う、
キスペプチン・ニューロキニンB・ダイノルフィンという、
神経ペプチドを産生する神経が肥大して、
過剰に神経ペプチドを産生します。

このキスぺプチンやニューロキニンBは、
GnRHのパルス状と言われる分泌を作る作用があると共に、
体温の調節や性的な欲求のコントロールにも、
大きな働きを持っていると想定されています。

これまでの基礎的な研究により、
ホットフラッシュの症状のない閉経前の女性に、
ニューロキニンBを注射すると、
ホットフラッシュの症状が誘発されることや、
ニューロキニンBの遺伝子に変異があると、
ホットフラッシュが起こり難いことなどが分かっていて、
ホットフラッシュの発生には、
ニューロキニンBの存在が不可欠であると推定されています。

そこで今回の臨床試験では、
ニューロキニンBの受容体の拮抗薬を、
ホットフラッシュのある閉経女性に使用して、
症状が抑制されるかどうかを検証しています。

対象となっているのは、
40から62歳で閉経から1年以上経過していて、
24時間に7回以上、
持続的に不快と感じるホットフラッシュが生じている女性で、
くじ引きで本人にも施行者にも分からないように、
2つの群に分けると、
一方はニューロキニンBの受容体拮抗薬の飲み薬を、
1回40mgで1日2回、4週間継続的に使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
ホットフラッシュの頻度などを、
スコア化して比較しています。

68名の女性が最初に登録され、
そのうちの37名が最終的な解析の対象となっています。
ニューロキニンB受容体拮抗薬は、
1週間のホットフラッシュのトータルなスコアを、
登録時と比較して3日目までに、
ポイントで72%有意に低下させていました。
偽薬との比較でも51%有意に低下していました。
この効果は治療期間4週間を通して認められました。

このように、薬の効果はかなり迅速で、
その有効性も短期的にはかなり高いということが分かります。

更年期のホットフラッシュの治療には、
通常は女性ホルモン剤が補充療法として使用されます。

ただ、女性ホルモンの使用には、
若干ながら乳癌や子宮癌のリスク増加や、
静脈血栓症、脳卒中などのリスク増加などの有害事象があります。

特に乳癌でホルモンを抑制するような治療をしている患者さんでは、
ホットフラッシュに対してホルモン剤は使用できないので、
現状は有効な対処法がない、
という問題点がありました。
代用として使用されるSSRIは、
抗うつ剤でそれ自体の副作用や有害事象もあります。

今回の薬剤は使用されるようになれば、
かなり高額の薬品となると考えられ、
コスト的には問題があるのですが、
ホルモン補充療法が困難な患者さんにとっては、
福音となる可能性を秘めていると思います。

今回の臨床試験は例数も少ないので、
まだまだ多数例での検証が必要であると思いますが、
メカニズム的には非常に興味深く、
様々な別個の病気の治療にも、
有用な可能性もあるので、
今後の知見の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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