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整形外科手術後のリバーロキサバンからアスピリンへの変更の有効性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リバロキサバンからアスピリンへの変更の効果.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
整形外科手術後の抗凝固剤と抗血小板剤の、
使用法とその差についての論文です。

人工股関節置換術や人工膝関節置換術といった、
人工関節にいたんだ関節を置き換えるような手術の後には、
静脈血栓塞栓症が合併症として起こることが知られています。

この合併症の予防のために、
術後早期には抗凝固剤と言って、
血栓症を予防するような薬が使用されます。

それでは、術後どのくらいで、
抗凝固剤は中止するべきでしょうか?

実はこの点については、
現状あまり明確な方針が示されていません。

これまでの知見によれば、
最低でも14日間の使用が必要であるとされていて、
35日間はリスクがあるので使用するべき、
というような見解もあります。

抗凝固剤を長く使用することは、
当然出血などの合併症のリスクも高めます。
従って、不必要な使用の継続は避けるべきだと考えられます。
最近低用量アスピリンの静脈血栓塞栓症予防としての有効性が確認され、
術直後を除外すれば、
抗凝固剤ではなく、
より出血系合併症は少ないアスピリンでも、
術後の血栓症の予防目的には充分ではないか、
という見解がありますが、
その根拠となるような比較の試験は、
これまでにあまり行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
人工股関節全置換術と人工膝関節置換術を使用予定の、
3424名を登録して、
患者さんにも主治医にも分からないように2つの群に分け、
一方は術後5日目まで抗凝固剤のリバーロキサバンを、
1日10ミリグラムで継続した後、
人工膝関節置換術後では9日間、
人工股関節全置換術では30日間、
アスピリン81ミリグラムを使用継続し、
もう一方はそのままリバーロキサバンを継続使用して、
その後90日間の経過を観察しています。

その結果リバーロキサバンを使用しても、
途中でアスピリンに切り替えても、
その後の静脈血栓塞栓症の頻度には差はなく、
出血系の合併症の頻度にも有意な差は認められませんでした。
静脈血栓塞栓症の発症率は、
アスピリン群で0.64%、
リバーロキサバン継続群で0.70%でした。

このようにアスピリンに早期に切り替えを行なっても、
低用量のリバーロキサバンを継続しても、
術後90日の静脈血栓塞栓症の発症率には差はなく、
どちらも有効な予防法と考えて良さそうです。
その場合、出血のリスクが明らかにリバーロキサバンで上昇していれば、
アスピリンへの早期の切り替えが望ましい、
ということになるかと思いますが、
実際には出血系の合併症にも差が出ていないので、
コスト的にはアスピリンが勝りますが、
その判断は難しいところだと思います。

こうした検証が個人的に興味深いのは、
心房細動の高齢者で抗凝固剤をいつ中止するべきか、
というような議論にも1つの知見を与えてくれるという点にあって、
基礎疾患が異なり、
心房細動の脳卒中予防には、
より強力な抗凝固療法が必要と考えられるので、
単純な比較は出来ないのですが、
低用量の抗凝固剤を一定期間使用した上で、
アスピリンに切り替えて経過を見るという方針は、
応用可能な方策ではないかと、
密かには考えているところです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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