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抗菌薬(トリメトプリム)の腎障害リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
バクタの腎障害リスク.jpg
ST合剤と呼ばれる抗菌剤があります。

先発品の商品名はバクタで、
ジェネリックも発売されています。
ST合剤はスルファメトキサゾールとトリメトプリムという、
2種類の薬剤の合剤で、
いずれも細菌の葉酸代謝を阻害する作用があり、
その併用で相乗効果があるため、
このような剤型のみが使用されています。

他の抗菌剤で無効の感染症に有効性があり、
HIV感染症など免疫不全の状態においては、
ニューモシスチス・カリニ肺炎の、
治療や発症予防としても使用されます。

欧米では尿路感染症の第1選択薬の1つとして、
広く使用されていますが、
日本においては、
「他剤が無効又は使用出来ない場合にのみ投与を考慮すること」
という文言が添付文書にはある上に、
白血球減少や血小板減少などの、
重篤な副作用が起こり易いとのイメージがあり、
長くその使用は限られた事例にしか、
行なわれていませんでした。

それが最近、
ニューキノロン系の抗生物質や、
第3世代のセフェム系抗生物質の乱用による、
耐性菌の増加などの悪影響が喧伝されるようになると、
海外のガイドラインでは第1選択薬の1つとなっている、
単純性の尿路感染症に対するST合剤の使用にスポットが当たり、
日本でもその使用が、
増える傾向が顕著となっているのが現状です。

日本の添付文書では頻度不明となっていますが、
高カリウム血症は、
ST合剤の海外では良く知られた副作用の1つです。

これは配合剤のトリメトプリムが、
構造的にカリウム保持利尿剤のアミロライド(日本未発売)に、
似通っており、
そのため同様の尿細管ナトリウムチャネル阻害作用を持つので、
高カリウム血症と低ナトリウム血症を生じ易い事に起因しています。

上記文献にある記載では、
ST合剤を使用した患者さんの8割で、
0.36mEq/L以上の血中カリウムの上昇が起こり、
6%では5.4mEq/Lを越えるという報告があるようです。

仮にこれが事実とすると、
同じようにカリウム濃度の上昇に繋がり易い、
ACE阻害剤やARBを使用している高齢者において、
ST合剤が併用されると、
急激な血液中のカリウム濃度の上昇により、
心臓由来の突然死などのリスクが高まる、
という可能性が否定出来ません。

実際に、
2014年10月のBritish Medical Journal誌に掲載された論文によると、
カナダのオンタリオでの研究では、
ACE阻害剤もしくはARBを使用している66歳以上の高齢者で、
ペニシリンであるアモキシシリンとの比較において、
ST合剤の使用はその後7日以内の死亡リスクを1.38倍、
14日以内の死亡リスクを1.54倍、
それぞれ有意に増加させていました。

このように、ACE阻害剤やARBを使用している高齢者では、
ST合剤の使用は充分に慎重に行うべきなのですが、
そもそもこの合剤のどちらの成分が、
このリスク増加の原因となっているのかは、
この研究では明らかではありませんでした。

理屈では上記のようにトリメトプリムが悪そうですが、
それが実証されているという訳ではありません。

今回の研究は以前トリメトプリムの単剤が、
使用されていたことのあるイギリスにおいて、
プライマリケアのデータベースを活用して、
65歳以上の高齢者における、
尿路感染症の診断に対するトリメトプリルの使用が、
他の抗菌薬と比較して急性腎障害や高カリウム血症、
また死亡リスクに与える影響を検証しています。

65歳以上の1191905名を対象とし、
そのうちの178238名が少なくとも1回、
抗菌薬による尿路感染症の治療を行なっており、
トータルでのべ422514回の事例が確認されました。

ペニシリンのアモキシシリンと比較した時、
トリメトプリムの使用は、
その後2週間以内の急性腎障害のリスクを1.72倍
(95%CI: 1.31 から2.24)有意に増加させていました。
セフェム系のシプロフロキサシンそのリスクを、
1.48倍有意に増加させていました。
(95%CI: 1.03 から2.13)

同様の14日以内の高カリウム血症のリスクも、
トリメトプリムの使用でアモキシシリンと比較して、
2.27倍(95%CI: 1.49 から3.45)有意に増加していました。

一方で14日以内の死亡リスクについては、
トリメトプリムの使用はアモキシシリンと比較して、
有意なリスクの増加を示しませんでした。

今回の結果から、
1000人の65歳以上の成人に抗菌薬による尿路感染症治療を行うと、
アモキシシリンと比較したトリメトプリムを使用した場合、
1から2人がそのために高カリウム血症になり、
2人がそのために急性の腎障害のため入院し、
もしその患者さんがACE阻害剤やARBやアルドステロン拮抗薬を使用していると、
そのために18人の高カリウム血症と、
11人の急性腎障害による入院が生じる、
ということが推測されます。

2014年のカナダの結果とは異なり、
今回はトリメトプリムによる死亡リスクの増加は、
確認されませんでしたが、
高カリウム血症と急性の腎障害が、
特にACE阻害剤やARBとの併用時に多いことは間違いがなく、
そうした併用は高齢者では、
充分な注意の上に限定して行うべきだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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高齢者におけるコレステロールと生命予後との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コレステロールと死亡リスク.jpg
2017年のBMC Geriatrics誌に掲載された、
血液の総コレステロール値と生命予後との関連についての論文です。

これも非常に議論の多い問題です。

若年層から中年層において血液の総コレステロール値が高いと、
その後の心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが増加することは、
これは間違いのない事実です。
そのために、そうした病気のリスクが高い人では、
スタチンというコレステロール降下剤の治療を継続することにより、
そのリスクが軽減することもまた、
ほぼ実証された事項です。

ただ、高齢者においてもそれが成り立つかどうかは、
それほど明確ではありません。

ロッテルダム研究という大規模疫学データによると、
65歳以上の年齢における、
心血管疾患以外の原因による死亡リスクは、
コレステロールが高いほど低くなっていました。

スタチンによる治療の効果は、
60歳以上の年齢層でも認められるとされていますが、
80歳を超えるような年齢層においては、
総死亡のリスクはスタチンの使用者でむしろ増加する、
という疫学データもまた存在しています。

同じコレステロールの数値であっても、
スタチンを使用している場合とそうでない場合では、
おのずとその病態には違いがある筈ですが、
これまでそうした点が、
1つの大規模疫学データにおいて検証されたことは、
あまりありませんでした。

そこで今回の研究では、
スウェーデンの大規模疫学データを活用して、
60歳以上の3090名を登録し、
中間値で7.5年の経過観察を施行。
原因毎の死亡リスクと血液の総コレステロール値との関連、
及びコレステロール降下療法の有無との関連を検証しています。

その結果、
観察期間中に1059名が死亡しており、
総コレステロール値が5.15mmol/L(200mg/dL)以下と比較して、
5.18から6.21mmol/L(201から239mg/dL)では、
総死亡のリスクが29%(95%CI:0.61から0.83)、
6.22mol/L以上(240mg/dL)では、
32%(95%CI: 0.57から0.80)、
それぞれ有意に低下していました。

このリスクは大部分が心血管疾患以外の死亡によるもので、
スタチンなどのコレステロール降下療法使用者のみでは、
そうしたコレステロール値と総死亡との関連は認められませんでした。

要するにコレステロール値が高いほど、
心血管疾患のリスクが高まることは、
高齢者でも違いはないのですが、
心血管疾患以外の死亡のリスクについては、
高齢者ではむしろコレステロールが高いほどそのリスクは低く、
それが総死亡のリスクにも反映される結果、
高齢者での生命予後は、
コレステロールが高いほど良い、
という結果に繋がっているようです。
コレステロール降下療法を施行している患者さんは、
元々心血管疾患のリスクが高いことが想定されるので、
治療が予後の悪化に結び付く、
ということはないようです。

この結論は理屈にも合っていて妥当なもので、
これまでのデータとも矛盾はしないので、
現時点ではほぼ事実と考えても良いように思います。

つまり、
特に高齢者においては、
コレステロールが高いことのみで、
治療を検討するのではなく、
その後の心血管疾患のリスクが高い場合にのみ、
コレステロール降下療法の開始を検討するべきで、
コレステロールが80歳以上で高いことは、
むしろ生命予後には良い影響を与えると、
そう考えた方が良いようです。

ただ、80歳より以前からコレステロール降下療法を、
継続している患者さんにおいては、
その時点でコレステロールが低いことが、
その後のリスクになるのではなく、
闇雲に治療を中止する、
という判断もまだ妥当なものではない思います。

要はコレステロール降下療法は心血管疾患のリスクについてのみ、
明確な効果のある治療法で、
それ以外のリスクとのバランスにおいて、
その可否を決めるべき性質のものだ、
という点が一番のポイントなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「羊の木」(吉田大八監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
羊の木.jpg
山上たつひこ原作、いがらしみきお作画のカルト的漫画を、
鬼才吉田大八さんが監督した注目の新作映画が、
今ロードショー公開されています。

原作の漫画は悪意に満ちた、
トラウマ化必死のかなり凄まじいもので、
とてもこのまま映像化することは出来ないと思える一方、
吉田さんも一筋縄ではいかない監督なので、
一体どう料理するつもりなのだろうと、
期待半分不安半分で映画館に出掛けました。

結果的には原作が使われているのは、
殆ど基本的な設定の部分だけで、
未知の物に対する不安から来る差別感情というやっかいなものを、
俎上に上げているという点は原作と同じですが、
その扱いはかなり異なり、
後半の展開はほぼ映画のオリジナルと言って良いものでした。

原作では悪意の塊のような謎の人物が登場し、
移住した受刑者のみならず、
町の住民自体がその内なる狂気を露にして、
地獄の釜の蓋が開いたような阿鼻叫喚の地獄絵図が描かれるのですが、
映画版ではそうした謎はなく、
住民は全て至って健全で、
結果としてある複雑なサイコパスと、
主人公が戦うという話が後半の軸になっていました。
ただ、正直そのオリジナルの展開に説得力がなく、
たとえばヒロインがある男を好きになるという心理が、
全く説得力を持っていないので、
唐突でモヤモヤしたまま終わってしまいました。

強引にアイドルを主役にして設定を変更する、
という限界が企画にあったことも推測されますが、
原作の設定があまり活かされず、
後半のノワール的な展開も、
中途半端に終わってしまったことはとても残念でした。

ただ、さすが吉田監督という部分もあり、
語り口は巧みで明快な点は良いと思いますし、
ワンカットでひき逃げを目撃させた、
殺人場面の演出も鮮やかでした。

そんな訳であまり上出来とは言えない作品でしたが、
映画の登場人物以上に先の読めない吉田監督のことですから、
また次回作は期待して待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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唐組×東京乾電池コラボ公演「嗤うカナブン」 [演劇]

こんにちは。

北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
カナブン.jpg
唐組と東京乾電池の初めてのコラボ公演が、
今下北沢のスズナリで上演されています。

唐組からは久保井研さん、稲荷卓央さん、辻孝彦さんが、
乾電池からは谷川昭一郎さん、戸辺俊介さん、伊東潤さんが参加して、
男6人だけの芝居です。
川村毅さんが新作を書き下ろし、
柄本明さんが演出に当たるという、
小劇場のエッセンスが濃厚に詰め込まれた、
非常に凄みのある企画です。

こうしたイベントは、
意外に企画倒れに終わることも多いのですが、
今回は川村さんの劇作がなかなか素晴らしく、
とても完成度の高い、
川村さんとしては意外なほど分かりやすい作品に仕上がっていて、
柄本さんの手作り感のある、
いい加減なようで極めて緻密で懐の深い、
ほっこりとした演出がまた冴えていて、
キャストも味のある小劇場芝居の達人が揃っているので、
本当に素晴らしい舞台に仕上がっていました。

上演時間が80分弱という短さで、
それでいて充分な見応えがありますし、
集中力を切らさずに観終えるという感じがまた良いのです。

今年これまでに観た芝居の中では、
間違いなくベストの1本で、
年末の今年のベスト5に入れることも、
ほぼ決定した感じの傑作でした。

これはもう小劇場好きの方には、
絶対のお薦め品ですが、
1点だけ心配なのは普段お芝居をあまり観ない人の感想で、
おそらく乗り切れない方もいるのだろうな、
というようには思います。

客席は関係者が多いという感じで、
普通のお客さんは少ないという印象を受けましたが、
この芝居を関係者に独占させておくのは、
とても詰まらないと思います。

公演は2月14日までありますので、
迷われている方は是非劇場に足をお運び下さい。

これだけの小劇場演劇の傑作は、
そうざらにはありません。

以下ネタバレを含む感想です。
鑑賞予定の方は必ず鑑賞後にお読み下さい。

これは昔のピーター・ローレやハンフリー・ボガードが活躍した、
かつてのハードボイルド映画のパロディなのですが、
場所はパリで下北沢でもあるという、
国籍不明の雰囲気となっています。
80分という上演時間も、
昔のその手の映画の尺と同じになっているのです。
これだけでも粋ですね。

かつてジャズ・カルテットをしていた4人の男が、
ひょんなきっかけで銀行強盗に転職し、
盗んだ金を山分けして別れ、
15年の歳月が流れます。

落ちぶれながらも生活を続けていた4人ですが、
「カナブン」を名乗る謎の人物から、
過去をあばくような脅迫のメールが届いたことから、
4人の疑心暗鬼が始まります。

カナブンは誰なのか。
得体の知れない八百屋の男でしょうか?
自分を殺して欲しいと便利屋に依頼した、
新人の悪党候補なのでしょうか?
それとも4人の中にカナブンが紛れているのでしょうか?
新人を引き入れた5人は、
もう一度強盗を画策しますが、
それは罠で、残酷で滑稽な、
ハードボイルド活劇の幕が開くのです。

物語は二転三転して、
ラストはややシュールな世界に着地するのですが、
以前の荒くれで勢い重視の世界とは異なり、
今回川村毅さんが紡ぐ物語は、
きちんとハードボイルドの定石を押さえていて、
完成度の高いプロの仕事となっています。
人生の先輩に失礼ですが、
「こういうのもちゃんと出来るんじゃん!」
という感じです。
竹内銃一郎さんの「Z」や、
その元ネタである鈴木清順映画に近い感覚で、
タランティーノの「レザボア・ドックス」辺りも入っています。

それを飄々としたいつものタッチで、
鮮やかに肉付けした柄本さんの演出が素晴らしく、
映画看板のようなヘタウマの書き割りが、
地図にもなっていて、
ちんまりしたライトで、
その時の場所が照らされる、
という趣向も楽しいですし、
オープニングには「マルタの鷹」を彷彿とさせるような、
モノクロ映画風のタイトルバックがあるのも洒落ています。
それに続いて4人のジャズマンが、
後ろ姿でエアバンドで演奏するというシルエットにも、
とても素敵でニンマリしてしまうのです。
ちんまりし過ぎて失敗することも多いのですが、
今回の柄本演出は完璧でした。

そしてその柄本さんの掌に載った感じで、
円熟した6人の小劇場役者が熱演を繰り広げます。
稲荷さんの久しぶりの舞台姿も素敵ですし、
久保井さんも本領発揮の感じがあり、
対する乾電池勢も極めて堅実でかつ味があります。

今回だけでは惜しい舞台で、
是非また再演を希望したいと思います。
柄本さんやベンガルが登場しても、
違和感がない台本なので、
そうした重鎮版も、
また観てみたいという気がします。

こういうものに出逢うと、
芝居を見続けていて良かったと、
つくづく思う気分になるのです。
でもそんな機会は滅多になく、
「詰まらなかった、時間の無駄だった」
と肩を落として帰ることが殆どと言って良いのです。

皆さんも是非…

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「花筐」(檀一雄原作・大林宜彦監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
花筐.jpg
大林宜彦監督が以前から温めていた企画を映画化した新作が、
今ロードショー公開されています。

原作は檀一雄の短編小説ですが、
ほぼ設定を借りているだけで、
大林ワールドが濃厚かつ長大に展開されています。

僕は大林監督は大好きで、
1977年の「HOUSE ハウス」はロードショーで観ています。
予告編が驚くほど奇怪でポップで壮絶だったので、
一体どんな映画なのかとワクワクしながら劇場に足を運んだのですが、
本編自体も予告編のようなダイジェスト感で、
「あれあれ、何だこれは…」と思っているうちに、
1時間余りで終わってしまい、
呆然としたことを覚えています。
ただ、ラスト血の海になった邸宅の中を、
大場久美子が戸板の筏で突き進み、
化け猫の池上季実子と抱き合う場面の、
表現の出来ない切ない抒情のような物には、
当時からたまらない魅力を感じました。

その後、
「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道三部作に、
大学時代に出逢い、魅了されて本当の意味で虜になりました。

ただ、その一方で大林監督は、
「ねらわれた学園」や「漂流教室」のような、
スクリーンに物を投げつけたくなるような、
三池崇監督に匹敵するような「Z級映画」も沢山撮っていますし、
「異人たちとの夏」のように、
鶴太郎の場面は素晴らしいのに、
最後の女幽霊は最悪で苦笑するだけ、
というようなアンバランスな変な映画や、
「はるか、ノスタルジィ」のような、
観ると恥ずかしくて具合の悪くなるような、
最悪の変態自意識過剰映画も撮っています。

真の藝術家でありながら、
商業主義の権化のようでもある、
一筋縄ではいかない奇怪な巨人だと思います。

さて、今回の「花筐」ですが、
一応反戦物のような体裁ですが、
殆ど筋らしい筋はなく、
おもちゃ箱をひっくり返して、
お菓子を食べておもちゃをベタベタにしたような、
大林映画のガジェットが氾濫する世界が、
3時間弱特に起伏なく展開されるというマニア向けの作品です。

そもそも40くらいの役者さんが、
10代の若者を演じたリしているので、
それ自体でもう真面目に見ていいのか、
ただ笑うべきなのか訳が分からないのですが、
戦時中の筈なのに豪華な食事に豪華なお祭りなど、
これもファンタジーとして楽しむべきなのか、
ツッコミをするべきなのかも良く分かりません。

「血とバラ」のオマージュで、
昔から大林映画で定番の、
血が白いドレスに盛大にf流れたリ、
薔薇の花びらが血に変化したり、
粉々になった鏡に顔がバラバラに映ったり、
部屋から水に飛び込むような幻想シーンなど、
大林映画を昔から観ている人には、
懐かしいイメージが山のように出て来ますが、
映像がビットレートの低いDVDのようで美しくないのと、
同じ構図の場面が多すぎるので、
次第に疲れて退屈してしまいます。

他の大林映画の多くでも言えることですが、
もう少し上映時間の短い、
密度の濃い映画にして欲しかったと思います。

そんな訳で、
病に倒れながらこの作品を完成させた大林監督の執念には、
最大の敬意を表したいとは思いながら、
マニア以外にはあまりお薦め出来ず、
劇場で観ても映像の精度はあまり高いものではないので、
大変失礼ですがテレビの画面で観れば充分かな、
という印象を個人的には持ちました。

一般の方にはあまりお薦めは出来ません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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長時間の飛行機移動での静脈血栓症の予防法 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
エコノミークラス症候群の予防法.png
2012年のJAMA誌に掲載された、
一般向けの解説記事ですが、
海外旅行などでの飛行機移動での、
静脈血栓症の簡単な予防法を解説したものです。

長時間椅子に座った姿勢で動かないでいると、
足の静脈の血液が滞り易くなります。
静脈には弁という部分があって、
血液の逆流を防ぐ働きをしているのですが、
その弁の部分が袋のようになっているので、
そこに溜まった血液が、
停滞し易くなり、血栓という血の塊が出来易くなります。

その血栓で足の静脈が詰まると、
足の筋肉が強く痛むような症状が起こります。
これが下肢静脈血栓症です。

そして、この足の静脈に出来た血栓が、
そこから血液を流れて心臓に戻り、
肺の動脈に詰まる病気が、
肺血栓塞栓症症です。
肺塞栓症が起こると、急に呼吸が苦しくなったり、
息切れや胸の痛みが起こり、
適切な治療を行なわないと命に関わることもあります。

この下肢静脈血栓症は、
たとえば老人ホームの高齢者が、
長時間座っている姿勢で動かない時にも起こりますが、
特に病気のない健康と思われる方でも、
飛行機での長期のフライトなどでは、
極めて長時間同じ姿勢を取り、
身体を動かすことも難しく、
トイレに行くこともストレスなので、
水分を取らずに脱水にもなり易いなど、
悪条件が重なるので起こる可能性が高くなります。

そのため、長期のフライトでの静脈血栓症のことを、
旅行者血栓症とかエコノミークラス症候群と通称することがあります。

長期のフライトでは静脈血栓症は、
誰でも起こる可能性があるのですが、
最近手術をしていたり、妊娠中や高齢者、
女性ホルモンを使用している場合、
癌や心臓の病気を持っている場合などは、
よりリスクは高いと考えた方が良いのです。
勿論以前肺塞栓症や下肢静脈血栓症を起こしたことのある方は、
そのリスクは最も高くなります。

それでは、静脈血栓症を予防するにはどうすれば良いのでしょうか?

こちらをご覧ください。
エコノミークラス症候群の予防法の図1.jpg
いつでも出来る飛行機内での、
血栓症の予防法を示したものです。

座ったままでつま先を上げ、次に踵を上げる、
という体操を繰り返します。
なるべく頻繁にやった方が効果的です。

何故これが良いのかを示したのがこちらです。
エコノミークラス症候群の予防法の図2.jpg
左の図が体操をせずにじっとしている場合です。
弁の部分に血液が停滞して、
そこで血栓を起こし易くなります。
体操をすると右の図のように、
筋肉によって血管が刺激を受け、
溜まっていた血液が心臓の方に戻り易くなるのです。

勿論これで100%予防出来る、
という訳ではなく、
リスクの高いことが分かっている場合には、
血液の凝固を抑えるヘパリンの注射を、
飛行機に乗る直前に自分で行う、
というような予防法も上記の記事には紹介されています。

これは現状は日本では難しいと思いますが、
リスクの高いことが想定される時の薬の使用については、
かかりつけの先生に一度ご相談してみるのが良いかも知れません。
病状によっては一時的に薬を使用することも、
1つの選択肢ではあると思います。

今日は飛行機の長期のフライトにおける、
静脈血栓症の予防についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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意識消失の原因として肺塞栓症はどのくらいあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
肺塞栓症の意識消失での頻度.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
意識消失を起こした原因としての、
肺塞栓症の頻度を調査した論文です。

一時的に意識がなくなる意識消失の症状は、
一生のうちには4人に1人は経験する、
というほど多い症状です。

一時的で後遺症なく回復する意識消失を、
通常、失神(Syncope)と呼んでいます。

この失神の原因は様々ですが、
てんかんや不整脈による一時的な血圧の低下、
脳卒中や脳震盪などの外傷、
また自律神経のバランスの乱れによる、
所謂迷走神経反射などが鑑別となります。

その中で、最近実際にはその頻度は結構多いのではないか、
という指摘があるのが、
肺塞栓症に伴う失神です。

肺塞栓症というのは、
下肢の静脈が腫れて炎症を起こしたような場所から、
血の塊が飛んで、
肺の血管に詰まるという病気です。
ここで心臓から肺に行く根本の方の太い血管が詰まると、
心臓からの血液の拍出量が低下して、
失神の要因となることがあります。

ただ、初回の失神ですぐに意識が戻り、
特に後遺症も認めらない場合には、
あまり肺塞栓症の可能性は疑わないのが実際です。

2016年の10月のNew England…誌に、
イタリア発のビックリするような論文が掲載されました。
これは同時期にブログでも記事にしています。

初回の失神発作の原因には、
これまでの推測より肺塞栓症が多いのではないか、
という推測の元に、
イタリアの11の病院で、
初回の失神で救急受診をし、
急性の脳卒中や痙攣発作、外傷は否定的な事例、
トータル560名を登録し、
まずウエルズ・スコアという、
肺塞栓症の簡易診断の検査を行い、
それと血液のDダイマーという血栓症で上昇する検査値を測定して、
両者の結果で肺塞栓症の存在がほぼ否定された事例以外の全例で、
造影CTもしくは換気血流シンチという検査を施行して、
肺塞栓症の診断を行なったところ、
初回の失神を起こした患者さんのうち、
実に17.3%は肺塞栓症であったという結果が得られました。

ただ、その後カナダなどで行われた同様の臨床研究では、
その頻度はもっと低いものに留まっていました。

要するにイタリアの研究結果は再現されなかったのです。

今回の研究は同様の意識消失の原因としての肺塞栓症の頻度を、
カナダ、デンマーク、イタリア、アメリカという、
4か国の疫学データをまとめて解析するという手法で、
再度検証しています。

18歳以上で一時的な意識消失のため救急外来を受診し、
外来もしくは入院で治療を受けた、
トータル1671944名のデータを解析しています。
これまでで最も大規模な疫学データです。

その結果トータルで意識消失の原因が肺塞栓症であったのは、
0.06から0.55%で、
入院した患者さんにおいては、
0.15から2.10%でした。
意識消失後90日間で肺塞栓症を発症したのは、
患者さん全体で0.14から0.83%で、
入院した患者さんでも0.35から2.63%でした。
更に意識消失後90日以内に静脈血栓症と診断されたのは、
患者さん全体で0.30から1.37%、
入院した患者さんでは0.75から3.86%でした。

このようにイタリアの研究での17%という数字は、
矢張りちょっと実態からは外れているように思われます。

ただ、意識消失の裏側に、
無視出来ない頻度で静脈血栓症や肺塞栓症のあることは事実で、
その可能性については、
常に心にとめておく必要はあるのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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第29回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの告知です。
それがこちら。
29回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
2月17日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。

今回のテーマは「身近な冷えの基礎知識」です。

「冷え」というのは非常に身近な症状で、
クリニックの外来でも相談されることが多いのですが、
実際には「冷え」は西洋医学的に定義された症状ではありません。

「冷え」とは一体何でしょうか?

Cold Sensitivityという用語はあり、
同じ低温であっても、
それに対する身体の反応には差がある、
という研究データは存在しています。
この考え方では「冷え」というのは、
低温に対する過剰反応という言い方が出来ます。

ただ、「冷え」というのはそれだけを指すのではなく、
実際には感覚は鈍くなっていて、
寒さを感じるのではなく、
作り出しているという、
感覚障害の側面もあります。

漢方などの東洋医学においては、
昔から「冷え」というのは重要な兆候の1つであり、
こちらは明確に定義されていますが、
その内容な西洋医学的な理解とは、
相容れない部分もあります。

このように「冷え」は一筋縄ではゆきません。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。
ご参加は無料です。

参加希望の方は、
2月15日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ライノウイルス感染と温度と湿度との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ライノウイルスと湿度と温度.jpg
2016年のViruses誌に掲載された、
風邪の代表的な原因ウイルスの感染と、
温度と湿度との関連を検証した論文です。

温度が低く湿度が低いと、
風邪が流行しやすいというのは、
昔から経験的には広く知られている事実です。

ただ、
その理由はあまりはっきりとは分かっていません。

低温で乾燥した環境では、
ウイルスの増殖が促進される、
というようなデータは疫学データとしても、
実験的なデータとしても報告はされています。

その一方で低温で乾燥した空気が気道に入ると、
ウイルスに対する身体の防御力が低下することを、
示唆するようなデータも存在しています。

今回の研究はフィンランドの徴集兵892名を対象として、
訓練中の温度と湿度が、
その後の風邪ウイルスの代表であるライノウイルスの感染に与える影響を、
比較検証しています。

その結果、
低温や湿度そのものよりも、
温度や湿度が低下することが、
その後のライノウイルス感染のリスクを増加させていました。
超低温で湿度が高い環境では感染のリスクは低下し、
平均した比較的高温では感染リスクはむしろ増加していました。

このように、
低温も湿度も、
ウイルス感染のリスクと無関係ではないのですが、
その関係は単純な高低で決定されるような、
簡単なものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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カテーテルアブレーションの長期予後(心不全合併心房細動での検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カテーテルアブレーションと予後.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
心不全を合併した心房細動の患者さんに、
カテーテルアブレーションという治療を行った場合の、
患者さんの長期予後を検証した論文です。

カテーテルアブレーションというのは、
血管から挿入したカテーテルによって、
心臓の一部を焼却するという治療です。

何故心臓の一部を焼いてしまうのかと言うと、
不整脈を起こす原因となる、
異常な興奮をするような場所を焼却することによって、
不整脈が起こらないようにしようというのです。

その効果は、
発作性上室性頻拍というタイプの不整脈では、
90から98%と非常に高い奏効率を示していますが、
一方で心房細動という高齢者に非常に多く、
脳卒中の大きな原因となっている不整脈では、
その経過によって60から95%とかなりのばらつきがあります。
(数字は日本不整脈心電学会のサイトより引用)

また、一旦アブレーションにより洞リズム(通常の脈)に戻っても、
再発してしまうことが稀ではなく、
アブレーションに伴って脳梗塞を発症することも、
0.3から0.5%には見られると報告されています。
(数値は前述のサイトより)

心房細動はまた高率に心不全を合併します。

上記文献の解説記事(editorial)の記載によれば、
新たにうっ血性心不全を発症する患者さんの5割以上は、
心房細動を合併していると報告されています。
逆に新規に心房細動を発症する患者さんのうち、
3分の1近くがうっ血性心不全を合併しているという報告もあります。
心房細動が長く続けば、
心臓の働きが低下して心不全になっておかしくない一方、
心不全があって心臓に負担が掛かれば、
それが原因となって心房細動が生じることも充分考えられます。

つまり、
どちらが原因でどちらが結果かという疑問の答えは、
そう簡単なものではありません。

それでは心不全を合併した心房細動では、
カテーテルアブレーションをすることが、
患者さんの予後の改善に結び付くのでしょうか?

実はこの答えも、
あまり明確にはなっていません。

1999年と2008年に発表された介入試験の結果では、
抗不整脈剤による治療との比較において、
心不全をした合併心房細動患者に対するカテーテルアブレーションは、
洞リズムの期間を延長はしたものの、
心機能の改善や生命予後には、
明らかな効果を認めませんでした。

今回の臨床試験は、
心不全を合併した心房細動の患者さんをを、
カテーテルアブレーションをした場合と、
それ以外の保存的治療のみを継続した場合とにくじ引きで分け、
60ヶ月(中央値37.8ヶ月)という長期の経過観察を行っています。

心不全はNYHA分類でⅡ度以上、
心機能の指標である駆出率が35%以下が条件となっています。
例数はカテーテルアブレーション群が179名で、
保存的治療群が184名です。
万一のリスクのために全例で除細動器が埋め込まれていて、
24時間の脈拍の記録も取られている、
というちょっと特殊な研究です。

その結果、
観察期間が37.8ヶ月の段階で、
総死亡と心不全の悪化による入院を併せたリスクは、
保存的治療群と比較してカテーテルアブレーション施行群では、
38%(95%CI; 0.43から0.87)有意に低下していました。
個別には総死亡のリスクが47%(95%CI; 0.32から0.86)、
心不全による入院のリスクが44%(95%CI; 0.37から0.83)、
心血管疾患による死亡のリスクが51%(95%CI; 0.29から0.84)、
それぞれ有意に低下していました。

また、60ヶ月経過した段階で、
保存的治療群と比較してアブレーション施行群では、
心機能の指標である駆出率が、
8%有意に改善していました。

保存的治療群の22%が洞リズムであったのに対して
アブレーション治療群では63%が洞リズムとなっていました。

これはかなり画期的な結果で、
カテーテルアブレーションをすることによって、
明確に生命予後が改善し、
心機能も長期的に改善しています。
ただ、全例でアブレーションにより洞リズムに改善している、
という訳ではないので、
この改善が何によってもたらされたのかは、
まだ検証の余地を残していると思います。
また、今回の研究は例数はそれほど多くなく、
アブレーションは専門施設で経験のある術者によってのみ施行されているので、
現状より広くアブレーションが行われることが、
一般の患者さんの予後を、
同じように改善するという保証はまだありません。

従って、この問題はまだ解決したとは言えませんが、
今後心房細動に対するアブレーションの適応は、
より広くなるきっかけとはなるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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