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「ビジランテ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ビジランテ.jpg
入江悠監督の新作で、
桐谷健太さんの入魂の演技も気になる社会派のサスペンス、
謎めいた題名の「ビジランテ」を観て来ました。

入江悠監督は昨年の「22年目の告白 私が殺人犯です」が、
ひねりの効いたプロットと、
それを巧みに活かした演出で印象的だったので、
今回もどんな素材をどのように料理してくれるのだろうと、
興味津々で出かけました。

ただ、観終わった印象としては、
確かに監督やキャストの熱のようなものは、
伝わっては来るのですが、
ともかく救いようがなく陰々滅々とした暗い話で、
それが最後まで何の希望もなく、
何のひねりも意外性の欠片もなく、
叙情的な水分など何もないカラカラに乾いたままで、
終わってしまうので、
確信犯なのであればこれで良いのかも知れませんが、
個人的には何ともやりきれない思いで、
劇場を後にしました。

本当にこれが入江監督のやりたかったことだったのでしょうか?

兄弟3人の話の筈なのですが、
3人が少なくとも心情的にリンクすることは一度もなく、
微妙なすれ違いと決別とがあるだけです。
父親が残した遺言の謎とか、
兄弟がこだわる土地の問題とか、
父親を刺したのが誰だから結局どうなのか、とか、
大森南朋演じる長兄の心理が、
何1つ分からないままなのは、
彼をただのターミネーターや座頭市のように、
考えれば良いのか、
それとも単なる説明不足なのか、
ともかく未整理で説明のまるでないディテールが多く、
それが意図的なものともどうしても思えないので、
モヤモヤしてしまうのです。

通常の構成から考えれば、
土地の奪い合いという外因に思われたいさかいが、
後半になって兄弟の意外な心理のもつれや愛憎に、
落とし込まれるというのが常道だと思いますが、
そうした兄弟の心理の綾が、
何1つないままに物語が終わるというのは、
「現代の狂気のぎりぎりの境界線」を描く、
というテーマ性があるとしても、
何処かいびつで本筋を外れてしまったように、
個人的には思います。

それでいて物語がリアルかと言うと、
決してそんなことはなくて、
後半など2つのやくざ組織が1つの家で殺し合いをして、
結局主人公だけは生き残るなど、
ギャグのようにしか思えません。
錆び付いた小さなナイフをやくざの首に刺したら、
見事に急所に命中して即死、
というような場面など、
医学的にも抗議をしたいレベルのひどさです。

映像も暗く沈んだ場面ばかりが連続していて、
映画館で周りが暗いとかろうじて分かりますが、
これを家でテレビで観ても、
ただ暗い画面を眺めているだけになるのは、
火を見るより明らかです。

これで本当に良かったのでしょうか?

色々な意味で大いに疑問です。

肌触りとしては、
北野武監督の「3×4X10月」に近い感じかな、
というようには思うのです。
あの映画は身近にある暴力と、
その恐怖とそれによる人間のヒエラルキー、
そして最後にそれと対峙するやや危険な幻想を描いた、
とても画期的な名作だと思いますが、
「ビジランテ」にある暴力は、
そこまで肌触りがリアルではなく、
やくざの暴力など様式的な感じですし、
その受け止め方にも、
観客の胸に落ちるようなところが希薄だと思うのです。

この映画のテーマの1つは、
「暴力による支配」ということだと思いますが、
主人公の父親による暴力にしても、
やくざの営業上の暴力にしても、
弱い者を陵辱する大森南朋の暴力にしても、
そこに中途半端なモラルが見え隠れする上に、
リアリティが欠如していて、
「悪の美学」といったものも皆無なので、
そこに切実さも魅力も怖さも何も感じられないのです。

これでは矢張りまずいのではないでしょうか?

そんな訳で意欲作とは思うのですが、
個人的にはあまり面白いと思える部分はなく、
切実さを感じる部分もなくて、
モヤモヤと薄ら寒い感じのみが残る感想となってしまいました。

ただ、この作品を気に入った方も勿論いらっしゃると思いますので、
それはもう個人の感想ということで、
ご容赦を頂ければと思います。

僕は…駄目でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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