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アルツハイマー病と環境要因(遺伝子解析による検討) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アルツハイマー病とコーヒー.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アルツハイマー病のリスクとなる環境要因を、
関連する遺伝子変異により解析した論文です。

アルツハイマー病は認知症の代表で、
多くの病因や治療についての研究が重ねられていますが、
未だに不明の点は多く、
根本的な治療薬と言えるようなものも、
実用に至ってはいません。

従って、現状アルツハイマー病については、
その発症のリスクをなるべく下げる、
ということが重要になります。

慢性の病気というのはどのようなものでも、
遺伝的な要因と環境的な要因の、
両者が複合して発症します。

アルツハイマー病の遺伝要因としては、
APOE蛋白の遺伝子変異など幾つかのものが指摘をされています。

それでは、アルツハイマー病の環境要因は、
どのようなものなのでしょうか?

これまでの疫学データにおいて、
高学歴の人はアルツハイマー病を発症しにくい、
というものや、
肥満や喫煙、高血圧、糖尿病、血液のビタミンDの低値などが、
病気の発症のリスクを高めるという報告がありますが、
ある住民などの集団で単純に比較をした、
というようなものが殆どで、
因果関係を云々出来るようなデータは乏しいのが実際です。

今回の研究では、
これまでに指摘されたことのある、
アルツハイマー病の環境要因の発症リスクについて、
それと関連のある遺伝子変異の有無を比較することで、
その因果関係の有無を解析しています。

これは何度かこれまでにも紹介したことのある、
メンデル無作為化解析という手法です。

遺伝子の変異の型というのは、
無作為に生じるものなので、
それにより異なった現象が生じているとすれば、
因果関係に踏み込んだ解析が出来る、
という考え方です。

ただ、この場合は環境要因である高学歴などと、
関連のある遺伝子の変異を比較しているので、
遺伝で環境を評価していることになり、
ちょっと不思議な感じがすることもまた事実です。

17008例のアルツハイマー病の事例と、
37154例のコントロールの遺伝子を解析した結果として、
高学歴はアルツハイマー病の発症リスクを有意に下げ、
ビタミンDの高値と喫煙も、
アルツハイマー病の発症リスクを有意に低下させていました。
ただ、喫煙によるリスクの低下は、
関連する遺伝子変異の選択により消失していました。
コーヒーの摂取はアルツハイマー病のリスクを有意に増加させていました。
これまでに報告のあるもののうち、
アルコールの摂取量や血液のホモシステインや葉酸、ビタミンB12 濃度、
炎症反応のCRPや糖尿病については、
明確な関連は認められませんでした。

今回の遺伝子解析による検証では、
高学歴はかなりアルツハイマー病の発症リスクの低下と関連がありましたが、
それ以外の要因については、
それほどの関連は認められませんでした。

この結果をどう考えるかは微妙なところで、
単純に生活改善が認知症の予防になるとは言えないと、
そう考えておくことが良いように、
個人的には思います。

アルツハイマー病に代表される認知症の予防は、
まだ実証されたものはないと、
そう思っておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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