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内臓脂肪と老化との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンと免疫変化.jpg
今年のPLOS ONE誌に掲載された、
肥満による免疫細胞の老化の影響が、
減量後も持続しているという興味深い動物実験のデータです。

最近老化の研究でテレビなどにも沢山出演されている、
慶應大学の佐野政明先生などの研究グループによる知見です。

老化の本態はまだ解明されているとは言えませんが、
最近話題となっていることの1つは、
リンの蓄積を誘導するクロトー遺伝子で、
もう1つが最近佐野先生が広められている、
オステオポンチンです。

オステオポンチンはその名の通り、
骨の組織に豊富に含まれる物質として発見された、
酸化リン酸化タンパク質で、
細胞に結合してその増殖などを調整する、
一種のホルモンやサイトカインのような働きを持っています。

当初は骨吸収を促進する物質として、
主に骨の状態のマーカーとして測定されていました。

それがその後の研究により、
骨以外の場所でも産生され多彩な働きをしていることが、
次第に明らかとなり、
現時点では身体に炎症を引き起こす、
炎症性サイトカインとしての働きが主に注目されています。

長寿の高齢者では相対的にオステオポンチンの血液濃度が、
低値であることが報告されています。
つまり老化とオステオポンチンとは何らかの関連がありそうです。

その関連とはどのようなものなのでしょうか?

身体の細胞の老化に伴い、
身体をウイルスや細菌などの病原体から守る働きをしている免疫細胞も、
老化をするということが知られています。

これを免疫老化と呼んでいます。

加齢に伴い、T細胞と呼ばれる免疫細胞の機能が、
低下することが分かっていて、
それにより免疫力が低下するとともに、
過剰な慢性の炎症が身体に起こります。

2009年に京都大学の湊長博先生のグループが、
この免疫老化というのは、
T細胞全体の老化ということではなく、
若い人には存在しない特殊な性質のT細胞が増殖して、
それが大部分を占めることで生じている、
という新たな知見を報告しました。

佐野先生達のグループは、
内臓脂肪の増加とこの免疫老化との関係に着目し、
研究を重ねています。

内蔵脂肪が増えたいわゆるメタボの状態では、
インスリン抵抗性が高まって動脈硬化が進行し、
全身の臓器の障害に結びついて寿命も短縮することより、
メタボでは老化が進行する、
という言い方が可能です。

ネズミに脂肪の多い食事を摂らせて、
内臓脂肪が増加したメタボのネズミを作ると、
そのネズミの脂肪細胞は慢性の炎症を起こし、
そのときに血液のオステオポンチンは増加します。
そして、オステオポンチンを過剰に産生している細胞は、
若い痩せたネズミにはほとんど存在しない、
CD153とPD-1というマーカーが表面に見られるT細胞でした。

この特殊なT細胞は高齢のネズミにおいて増加していて、
オステオポンチンを産生して細胞に炎症を起こし、
その一方で正常な免疫反応は起こさないので、
そのネズミでは慢性に炎症が持続して動脈硬化は進行し、
インスリン抵抗性により糖尿病を発症、
免疫力は低下して感染には弱くなります。
当然そうしたネズミの寿命は短くなりますから、
かなりの蓋然性を持って、
このT細胞こそ免疫老化の本態であろうと推測されるのです。

つまり、高齢になると、
免疫の働きはなく、炎症を起こすという、
有害な免疫細胞が何故か増加して、
そのために全身の老化が進行してしまいます。
このときに炎症の主体になるのが、
異常な免疫細胞から分泌されるオステオポンチンで、
このオステオポンチンが欠損しているネズミでは、
炎症やインスリン抵抗性は生じないことも分かっています。

オステオポンチンが老化物質の1つであることは、
動物実験のレベルでは間違いはなさそうです。

興味深いことはこの免疫老化は、
加齢ではなく脂肪過多によるメタボでも、
同じように誘導されることで、
その意味でメタボというのは、
老化とかなり近い現象である、
という言い方が可能です。

さて、最初にご紹介した文献においては、
高脂肪食で内臓脂肪を増やしたネズミにおいて、
免疫老化が起こっていることを確認してから、
今度は低脂肪食により内臓脂肪を元の量に落とします。
つまり、ダイエットをする訳です。
ところが体重が減少した後も長期間、
有害なT細胞が増殖する状態は続き、
オステオポンチンも前値には戻りませんでした。

つまり、肥満により一旦免疫老化が起こってしまうと、
その後ダイエットで体重を元に戻しても、
免疫老化自体はすぐには元には戻らない、
ということが明らかになったのです。

これは人間において、
メタボの人が食事をコントロールして体重を落としても、
必ずしも全てのデータが元に戻る訳ではなく、
動脈硬化の進行は抑制出来ない、
という疫学データにも一致する知見で、
今後より免疫老化の実態が分かって来れば、
オステオポンチンの抑制など、
根本的に老化を抑制するような治療が、
実現する日が来るかも知れません。

それほど楽観はすることなく、
今後の研究の結果を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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