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慢性腎臓病に伴ううつ病に対するセルトラリンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
セルトラリンの慢性腎臓病に対する効果.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
慢性腎臓病の患者さんの抑うつに対する、
セルトラリンというポピュラーな抗うつ剤の効果についての論文です。

慢性腎臓病(CKD)と呼ばれる腎機能の低下は、
透析に至ることがなくても、
動脈硬化を進行させるなど、
全身の血管や神経、筋肉や骨にも影響を与え、
生命予後を悪化させる代表的な内臓の病気です。

その原因の1つはリンを排泄することが困難となって、
身体にリンが蓄積することで、
最近の考えではリンの蓄積が、
老化の主な原因の1つと考えられています。

さて、このように多くの病気を合併する慢性腎臓病ですが、
上記文献に引用されているアメリカの統計によると、
慢性腎臓病の患者さんの25%がうつ病を合併していて、
その有病率は一般人口の4倍になると推計されています。

そして、うつ病を合併した慢性腎臓病の患者さんは、
当然そうでない患者さんより病気も進行しやすく、
生命予後にも悪影響を与えているのです。

抗うつ剤、特に最近主流となっているSSRIという薬剤による治療は、
一般のうつ病に対しては一定の有効性が確認されています。
しかし、そうした薬の臨床試験においては、
腎機能が一定以上低下している患者さんは除外されているので、
慢性腎臓病の患者さんにおいても、
こうした薬が有効であるという根拠は、
あまり明確なものはありません。

慢性腎臓病でうつ病を合併した患者さんに対しても、
SSRIによる治療は有効なのでしょうか?

それを確認する目的で今回の研究では、
アメリカの複数の専門施設において、
ステージ3から5で維持透析は導入されていない慢性腎臓病の患者さん、
トータル201名をくじ引きで2つの群に分け、
一方はSSRIであるセルトラリン(商品名ジェイゾロフトなど)を、
1日50mgから開始して段階的に200mgを目標に増量し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
12週間の経過観察を行っています。

対象となった患者さんの腎機能は、
推計糸球体濾過量で60ml/min/1.73㎡未満が条件になっています。

セルトラリンは肝臓で代謝され、
活性のない代謝物として尿中に排泄されるため、
透析の患者さんを含めて、
腎機能低下に関わらず通常の用量で使用可能な薬で、
そのために今回抗うつ剤として使用されています。

その結果…

セルトラリンの使用は偽薬と比較して、
12週間の使用においては有意なうつの指標の改善を認めませんでした。
実際には偽薬もうつの指標を改善させていて、
その改善の程度には実薬と差がなかったのです。
一方で吐き気などの消化器症状はセルトラリン群で有意に高く、
急性の薬剤性肝障害の事例も1例認められました。

要するに腎機能低下の患者さんにおけるうつ症状に対しては、
セルトラリンは有効とは言えない結果です。

抗うつ剤の有効性は患者さんの身体状況によっても、
異なる可能性があり、
今後もっとそうした病態毎の有効性の検証が、
必要なのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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