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アカルボースの糖尿病発症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アカルボース.jpg
今年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
食後血糖を低下させる飲み薬の、
虚血性心疾患の患者さんへの使用効果を検証した論文です。

アカルボース(商品名グルコバイなど)は、
αグルコシダーゼ阻害剤というタイプに属する、
2型糖尿病治療薬の飲み薬で、
糖を分解する酵素を阻害することにより、
糖の吸収を抑えて、
食後血糖の上昇を緩やかにする、
というメカニズムの薬です。

食事制限と似た効果があるという点がユニークで、
日本では糖尿病治療薬の柱の1つとして、
以前は広く使用されていました。
ただ、単独での血糖降下作用は弱く、
消化不良のためお腹が張ったり、吐き気や痛みが出る、
という副作用もしばしば認められます。
効果が弱いため欧米ではその評価は低く、
アメリカのガイドラインでは殆どその名前はありません。
日本においても、
メトホルミンやインクレチン関連薬、
SGLT2阻害剤などの評価が高まるにつれ、
その使用頻度は減少していると思います。

そんな訳でアカルボースが、
2型糖尿病の治療薬として使用されることは、
世界的にはそれほど多くはないのですが、
この薬の可能性が期待されているのは、
むしろ糖尿病にはまだなっていない耐糖能障害の患者さんに対する、
糖尿病の予防薬としての効果です。

2002年のLancet誌にその結果が発表された、
STOP-NIDDMという大規模臨床試験があり、
世界の50以上の国と地域において、
アカルボースを境界型糖尿病の患者さんに使用することにより、
その後の2型糖尿病の発症リスクが、
25%有意に低下したというデータになっています。

更にその二次解析において、
患者さんの心血管疾患のリスクの低下も認められています。
ただ、実際には対象者のうち、
47名しか心血管疾患を発症していないので、
この結果のみでアカルボースが心血管疾患を予防した、
というように言い切れるデータではありません。

そこで今回の研究では中国において、
年齢が50歳以上で心筋梗塞や不安定狭心症の既往があるか、
安定狭心症の治療を受けている患者さんで、
境界型糖尿病を糖負荷試験で診断されている、
トータル6522名をくじ引きで2つの群に分け、
患者さんにも主治医にも分からないように、
一方はアカルボースを1回50ミリグラムで1日3回使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
その後の心血管疾患の予後と、
糖尿病への移行の有無を比較検証しています。

中央値で5年間の経過観察期間中に、
心血管疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、
非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院、
そして心不全による入院を併せた発症頻度は、
アカルボース群では年間100人当たり3.33件認められたのに対して、
偽薬群では年間100人当たり3.41件認められていて、
両群に有意な差は認められませんでした。

総死亡のリスクや腎機能低下のリスクを加えて、
二次解析を行っても、
両群に有意な予後の差は認められませんでした。

一方で糖尿病の発症リスクについて見ると、
偽薬群では年間100人当たり3.84件の糖尿病が発症していたのに対して、
アカルボース群では3.17件の発症に留まっていて、
アカルボースの使用により、
糖尿病への進行が18%(95%CI; 0.71から0.94)有意に抑制された、
という結果が得られました。

これは多くの患者さんがスタチンや抗血小板剤など、
評価の定まった心血管疾患の再発予防薬を使用しているので、
かなりハードルは高いのですが、
虚血性心疾患のある境界型糖尿病のある患者さんに対して、
アカルボースを上乗せで使用しても、
心血管疾患の予後や生命予後には、
あまり明確な影響を与えるということはなさそうだ、
という結果です。

一方で境界型糖尿病の患者さんにアカルボースを使用すると、
その後の糖尿病への進行は、
2割程度は抑制される可能性があり、
STOP-NIDDMの結果とも併せて考えると、
この点では一定の有効性がほぼ確認されたと言えそうです。

日本では健康保険での予防給付は、
原則としては認められていませんが、
境界型の耐糖能異常のある方に対して、
アカルボースを使用するという介入は、
心血管疾患のない対象での有効性はどうなのか、
そのコストが結果に見合うかを含めて、
今後検討される必要はあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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