So-net無料ブログ作成

低LDLコレステロール血症におけるスタチンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
LDLが低い場合のスタチンの効果.jpg
今年のAmerican Journal of Cardiology誌に掲載された、
LDLコレステロールが基準値以下である場合の、
スタチン治療の効果についての論文です。
アメリカの臨床データを日本の研究チームが解析したものです。

スタチンというのはコレステロール合成酵素の降下剤で、
強力に悪玉コレステロールと通称される、
LDLコレステロールを低下させる作用があります。
それに加えてスタチンには、
コレステロール降下作用以外にも、
抗炎症作用などの付加的な作用があり、
トータルで動脈硬化に伴う心血管疾患の予防効果を持っています。

この効果は、
特に心筋梗塞などの再発予防については確立されていて、
一次予防(発症する前の予防)についても、
リスクの高い事例を選べば、
ほぼ確実と考えられています。

当初スタチンの効果は、
コレステロールの低下作用にあると考えられていたので、
コレステロールの低下目標値を設定して、
その目標に合わせて薬の量を調節する、
という治療が行われて来ました。

しかし、その後多くの臨床データの解析により、
コレステロールの低下の程度と、
その心血管疾患の予防効果は、
必ずしも一致していない、
ということが明らかになりました。

そこでコレステロール降下作用以外のスタチンの付加的作用が、
より注目されるようになり、
スタチンはコレステロール降下剤ではなく、
抗動脈硬化剤だ、
というような考え方が生まれました。

実際に現在のアメリカのガイドラインにおいては、
心筋梗塞などの予防に関して、
コレステロールの治療目標値は設定されずに、
リスクの高い人には、
コレステロール値に関わらずスタチンを使用する、
という考え方が提唱されています。

ただ、実際にコレステロールが低値であっても、
スタチンを使用した方が動脈硬化性疾患の予防や、
生命予後の向上に繋がるかどうかは、
まだ確定的なものとは言えません。
コレステロールを下げ過ぎれば、
生命予後に悪影響を与えるのではないか、
という意見も一方ではあるからです。

そこで今回の研究では、
アメリカの大規模な疫学データを活用して、
心血管疾患のリスクが高く、
血液のLDLコレステロールが120mg/dL未満である、
1500名を対象に解析を行い、
スタチンの使用の有無と、
生命予後のとの関連を検証しています。

この場合の心血管疾患の高リスクというのは、
脳卒中や心筋梗塞などの心疾患の既往があるか、
推計の糸球体濾過量が30ml/min/1.73㎡未満の慢性腎臓病があるか、
尿中アルブミンで300mg/gCr以上のタンパク尿を伴う糖尿病があるか、
もしくは登録時点での喫煙、
高血圧、脂質異常症のうちの1つ以上を持っている場合と定義されています。
脂質異常症はLDLが高い人は対象外ですから、
中性脂肪が200mg/dL以上かHDLコレステロール40mg/dL未満が、
1つの指標となっています。

その結果…

スタチン使用群808名と非使用群692名の比較において、
スタチンの使用は総死亡のリスクを、
38%有意に低下させていました。
(95%CI; 0.45から0.85)
これをLDLコレステロールが100mg/dL未満に限定しても、
同様の傾向は認められ、
スタチン使用群において、
LDLコレステロールが70から120mg/dLと、
70mg/dL未満を比較しても、
有意な生命予後の差は認められませんでした。

つまり、LDLコレステロールが120mg/dL未満であっても、
心血管疾患のリスクの高い方では、
スタチンの使用により生命予後の改善が見込まれ、
目標値を100未満に設定してコントロールを行なっても、
明らかな意味は認められなかった、
という結果です。

これは現行のアメリカのガイドラインの考え方を裏付けるもので、
スタチンの使用は、
コレステロールの数値のみで行うのではなく、
勿論高値であればそれだけ効果が得られやすいことは事実としても、
患者さんのリスクが高ければ、
その予防効果は認められると考えて使用することが、
適切であるようです。

ただ、実際には今回対象とされた集団で、
全ての人にスタチンのメリットがあった、
ということは勿論ありませんから、
今後スタチン使用の効果を最大化するためには、
何を指標とするべきなのか、
そうした検証が必要であるように思います。
スタチンは決して無害は薬ではないからです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


nice!(9)  コメント(0) 
メッセージを送る