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フィンランドで認知症が多いのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
フィンランドの認知症死亡リスク.jpg
今年のBrain Research誌に掲載された、
フィンランドにおいて認知症の死亡が多いのは何故かを、
環境要因から検証した解説記事です。

認知症には地域差があって、
それが何に起因するものであるのかは、
未だ不明です。

2016年のWHOの統計によると、
認知症による死亡率が世界で最も高い国はフィンランドで、
かつ過去50年間に8倍に増加しています。

この場合の死亡率というのは、
年間人口10万人当たりで換算して、
どれだけの人数が認知症を根本原因(underling cause)として死亡したか、
ということを数値化したもので、
たとえば認知症で寝たきりとなって、
嚥下の機能が低下したために最終的に肺炎で亡くなったような場合には、
その原因は認知症として、
カウントされる性質のものだと思います。
一方で脳梗塞を明確に起こしていて、
嚥下障害があって肺炎を起こして死亡したとすれば、
亡くなった時点で認知症を合併していても、
原因は脳梗塞とされるのが通常だと思います。

この10万人当たりの死亡率が、
フィンランドは53.77となっていて、
2位がアメリカで45.58、
3位がカナダで35.50です。
以下アイスランド、スウェーデン、スイス、ノルウェー、
デンマーク、オランダ、ベルギーとランキングは続きます。

ちなみに日本は58位で4.23、
中国が53位で4.71と近く、
アジアで最も高いのは27位の韓国で12.32です。

こうして並べてみると、
それなりに地域性のようなものが感じられます。
寒い国が多いというのはすぐに気がつくことです。

これは偶然でしょうか?

フィンランドは気温が低く、
冬期は湿気が高く80%を超えることが多い、
とされています。
冬期は高齢者は出歩かずに家にいることが多く、
湿気の多い環境はカビの増加を伴います。
ここで真菌由来の毒素が神経細胞への毒性を持ち、
真菌の持続感染により、
神経細胞の細胞死が起こるのでは、
という仮説があります。

より直接的に真菌の感染に伴い、
身体の免疫反応の1つとして、
アミロイドβなどのタンパクが過剰に産生され、
それが認知症の発症に繋がるという仮説も提唱されています。

フィンランド周辺の海や湖には、
BMAAと呼ばれる神経毒を産生する藻を形成する細菌が繁殖していて、
かつBMAAの神経毒性を増強するメチル水銀が、
フィンランドの住民が多く摂っている魚介に、
多く含まれていることが想定されています。
これも認知症の環境要因として想定されています。

微量元素のセレンは、
神経毒の毒性を除去する働きを持っていますが、
フィンランドの土壌にはセレンが少なく、
これも他の要因と相乗的に、
認知症のリスクの増加に繋がる可能性が指摘をされています。

このように、
やや単独の要因としては弱い感じもありますが、
現状このような環境要因が想定をされていて、
認知症の原因や新興の促進因子には、
まだ不明の点も多いので、
地味には見えてもこうした疫学データの解析が、
新たなブレイクスルーに繋がる可能性も、
充分あるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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