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今年のインフルエンザワクチンは何故不足するのか? [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はインフルエンザワクチンについての現況です。

季節性インフルエンザワクチンの接種が、
10月1日から開始となりました。

ただ、実際にはまだワクチン接種を始めていない医療機関も多く、
昨年よりワクチンの接種料金を値上げしている医療機関も多いようです。

それは何故でしょうか?

実は今年のワクチンの製造開始が遅れていて、
実際の製造量も、
昨年の90%程度になる見込みなのです。

実際に昨年の使用ワクチンは、
製造量の95%程度でしたから、
実質的に不足する量は、
需要を昨年並みと想定すると差し引きの5%くらい、
ということになります。
それでも実数として140万本くらいになります。

こちらをご覧下さい。
インフルエンザワクチンの使用見込み.jpg
本年7月末の時点でも厚労省の資料にある図です。
現行の予定製造量が2527.5万本で、
需要を昨年並みとしても、
140万本、1本大人2人の接種が可能ですから、
280万回分のワクチンが、
今年は不足する可能性のあることを示しています。

こちらをご覧下さい。
インフルエンザワクチンの供給見込み.png
これは例年のことでもあるのですが、
ワクチンというのは10月1日から接種可能と決まってはいても、
10月1日に全てのワクチンの製造が完了している訳ではありません。

週毎に出荷をしていって、
まあ年内にはほぼ出荷が完了する、
というような恰好になるのです。

それが今年は更に遅れる見込みで、
10月初めの今の時点では、
実際には500万本くらいのワクチンしか、
接種出来る状態にはなっていません。
出荷が完了するのは、
予定通りに進んでも年末ギリギリくらいになりそうです。

それでは何故今年はワクチンの量が少なく、
その製造自体も遅れているのでしょうか?

それはワクチンで使用する抗原の種類を決定する、
ワクチン株の決定が今年は遅れてしまったからです。

ワクチン株の決定は、
その年の春にWHOが流行状況から見た推奨株を発表し、
それを専門機関や厚労省が検討して、
日本におけるウイルス株を独自に選定、
その上で各ワクチン製造会社に指示をして、
製造が開始されるという段取りになっています。

その決定の詳細は、
概ね11月くらいに発表されています。

これまでのウイルス株決定の時期を見てみると、
2014年が6月24日、2015年が5月8日、
2016年が6月7日となっていて、
今年の発表は7月12日です。

2014年も例年からすると遅かったのですが、
今回の7月12日というのはあまりこれまで例のない遅さです。

これが今年の製造の遅れと本数が少ないことの理由と思われます。

それでは、何故WHOの発表は例年通りなのに、
日本でのウイルス株の決定は遅れたのでしょうか?

その点については正式な詳細の発表はなく、
ここで書くのは僕がワクチンメーカーの担当の方から、
お聞きした話なので、
ほぼ間違いのない線だとは思いますが、
現時点では裏取りはしてないことはあらかじめお断りしておきます。

され、伝聞の情報によると、
当初の選定株は、
1種類が今決定されたものとは別物だったのですが、
その培養が上手くいかず、
必要な量の抗原の確保が困難であることが、
途中で判明したので、
慌てて選定株を昨年と同じものに変更した、
という経緯があったようです。

具体的にはここ数年、
その抗原が変異したことにより、
ワクチンがあまり効かなくなっていた、
A香港型と通称されるH3N2のタイプの抗原が、
当初と変更されたことが原因だったのです。

当初の予定された抗原は、
A/埼玉/103/2014(CEXP002)というウイルス株由来のものでした。

これはワクチン種株作成様に品質管理された培養細胞で分離され、
その後卵で培養を繰り返された日本独自のウイルス株で、
昨年の資料を見ると、
野生株としてウイルス株の検証がされ、
抗原性は流行株とマッチしていたものの、
増殖が弱くて使用不可となっていました。

その高増殖株が開発されて今回の検討となったものと思われますが、
実際には卵での増殖が弱く、
抗原量が確保出来ないという判断になり、
昨年と同じウイルス株に急遽差し替えられた、
という経緯のようです。

独自株を使用することに拘り過ぎたのでは…
というような推測は可能ですが、
まだ詳細は不明なので憶測は避けようと思います。

結果として決定が遅れてワクチンは不足する上に、
昨年とA香港型の株が同じであるとすると、
昨年と同様に同じタイプのウイルスに対する有効性は、
あまり望めないということになる訳ですが、
現行の卵で培養するという手法によるワクチンは、
大量生産や迅速な変異への対応と言う面では、
限界があることを露呈した結果であるようにも思います。

それでは、今年の医療機関の対応はどうでしょうか?

7月末の時点で厚労省の通達が出ていて、
ワクチンの安定供給のために、
昨年より多くのワクチンの注文をしないことや、
針を刺して24時間以内であれば、
2人以上に余らせることなく接種を行うこと、
海外では9歳以上は1回接種でも可となっているので、
その点も勘案しろ、というような、
かなりこれまでの見解と異なる、
身もふたもないような文言が並んでいます。

予約をして需要を確認してから注文をしろ、
というようなことも書かれていますから、
今年医療機関が予約を五月蠅く言うこと自体は、
厚労省の通達に従っている、
という側面があるのです。

ワクチンの接種料を値上げする医療機関が多いのですが、
これは主には返品が難しいことが、
その要因と思われます。
前年の実績によりワクチンを出荷しろ、
というような指示もあるので、
新規の医療機関や昨年の実績が少ない医療機関では、
ワクチンの確保は困難となり、
その価格も高くなることも想定されます。

ワクチンの返品は円滑な流通のために、
むしろ促進される流れであったのですが、
今年については、
返品自体は禁止されていないものの、
厚労省は返品の多い医療機関は個別に指導する、
というような怖いことも言っているので、
実際には出来ないという状況になり、
そのリスクも考えると、
価格を上げざるを得ないのが、
医療機関の実際だと思います。

クリニックでもワクチンの予約を開始していますが、
今年はそうした事情を勘案の上、
接種を希望される方はなるべく早い対応をお願いしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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