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「ユリゴコロ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ユリゴコロ.jpg
沼田まほかるさんのミステリーの原作に、
吉高由里子さんと松坂桃李さん、
松山ケンイチさんという魅力的なキャストが顔を揃えた、
映画「ユリゴコロ」を見て来ました。

結構どぎついところもあるスリラーですが、
主役格3人の演技にはなかなか見応えはあります。
ただ、後半はかなりオヤオヤという感じになるので、
トータルにはあまり見て良かったという気持ちは残りませんでした。
B級映画と言って良いのですが、
その割にはキャストが豪華なので、
松山ケンイチさんの真面目な苦悩演技など、
結局どう見て良いのか当惑する感じになるのです。

これは先に原作は読みました。
湊かなえさんに似たスタイルで、
サイコスリラー的な雰囲気なのですが、
ミステリ―としての構成はあまり上手くはなく、
ディテールのグロテスクさや嫌やらしさが、
リーダビリティの中心となっています。
ニーリイのような、
登場人物の年齢を読者に誤認させるような技巧を、
一応使っているのですが、
全く成功はしていません。
殺人者の手記と現実の事件とが交錯していて、
面白いのは主に手記の部分ですが、
桐野夏生さんの「グロテスク」や、
湊かなえさんの諸作の焼き直し的な感じもします。
ただ、ラストはちょっと突き抜けたような感じがあって、
主人公2人の道行には余韻が残ります。

映画はほぼ原作通りの展開で、
特にほぼ忠実な手記の部分が面白いと思いました。
リストカットを繰り返すみつ子(佐津川愛美さん怪演)と、
吉高由里子さんとの血みどろ交流は、
原作でも一番生理的につらい部分ですが、
映画でも薄目で見るのがギリギリくらいの過激さを見せてくれます。
原作の病院を自宅に変えた趣向も、
成功をしていたと思いました。

松山ケンイチさんと吉高さんとの場面は、
昔の日活や東映のやさぐれ映画のような雰囲気を、
構図も色彩も上手く模倣していて、
古風で面白い感じを出していました。
日活と東映が制作している映画ですから、
これは明らかな狙いなのだと思います。

ただ、松坂桃李さんがメインの現実パートは、
原作自体かなり未整理でゴタゴタしているのですが、
それを整理したのが却って失敗していて、
特に原作の借金を抱えた駄目夫を、
映画では組織的なヤクザにしてしまっているので、
派手にしたかったという意図は分かりますが、
展開が現実離れしてしまって、
完全な失敗になっていました。

そこが全くの絵空事なので、
ラストに感動的な場面らしきものを持って来ても、
間抜けにしか思えない結果となっていたのです。

湊かなえさんに続いて、
沼田まほかるさんも映画化が続いていますが、
適度にどぎつくグロテスクで、
構成もゆるく出来ているところが、
もっとカッチリしたミステリーよりも、
映像化には向いているのかも知れません。

最後にこの作品の吉高さんの役作りはちょっと疑問で、
ラーメン屋さんを殺す時の顔などには、
明らかに「この野郎」みたいな感情が見えているのですが、
それではサイコパスではないので、
彼女の雰囲気でこの映画は成功している部分が大きいのですが、
本人はそのキャラクターを、
とても理解をしているようには思えませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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ワーグナー「神々の黄昏」(2017年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
神々の黄昏.jpg
新国立劇場の2017/2018シーズンのオープニングとして、
ワーグナーの「神々の黄昏」が幕を開けました。

この作品は楽劇「ニーベルングの指輪」の完結編で、
「ニュールンベルグのマイスタージンガー」、
「トリスタンとイゾルデ」と並んで、
ワーグナーのオペラの中でも最も長大な作品です。

新制作ですが、
フィンランド国立歌劇場の以前の演出の借り物です。
この演出で「ニーベルングの指輪」が1作ずつ上演され、
今回めでたく完結となりました。

演出自体は何処か色々な有名演出の寄せ集め、
と言う感じの強いものでしたが、
「ラインの黄金」と「ワルキューレ」に関しては、
原作の描写を極力活かしたきめ細やかさが、
サポートスタッフの力もあるのだと思いますが、
非常に好印象でした。

ただ、「ジークフリート」は、
大蛇と対決したりと、
真面目に演出するのが難しい面もあり、
かなりそれまでの2作品と比較すると、
オヤオヤという感じの雑な出来栄えでした。

そして、残念ながら今回も、
超大作の締め括りとしては、
あまり緻密な出来栄えとは言い難いものでした。

「神々の黄昏」は僕にとっては、
何と言っても英雄ジークフリートの死の場面が、
音楽と共に忘れがたく、
忘れ薬の威力が消え、
ブリュンヒルデと出逢った瞬間を、
思い出した刹那の戦慄が、
これはもう全てのオペラの中でも、
屈指の名場面であり、
藝術そのものの代名詞のようにすら感じているのですが、
今回はややその感動は弱めで、
ジークフリートを刺したハーゲンの恰好良さの方が、
印象の残るような舞台でした。

ラストの部分は今回のような処理をすると、
自分で感情に任せてジークフリートの弱点を喋っておきながら、
最後には偉そうに神様にまでお説教を垂れるブリュンヒルデが、
何かイラつきますし、
叫んでいるおばさんに手も足も出ずに、
指輪を盗られてしまうハーゲンも、
とても間抜けで納得がいきません。

今回の舞台はベーゼンドルファーの好演もあって、
ハーゲンがとても印象的で魅力的な悪役に描かれているので、
最後に間抜けになるのがどうもおかしいのです。
群衆の動かし方なども、
音楽の切れ目で全員が様式的に移動したりするので、
却ってわずらわしくセンスのなさを感じました。

ワーグナーはいつも、
アクションを伴うような場面が下手糞なので、
この作品の最後も、
あまり細かく動きを付けようとしたり、
段取りを観客に分からせようとしない方が、
却って音楽に集中出来るので、
良いように感じました。
今回のものは説明のし過ぎで、
しかも音楽との連携にセンスのないものなので、
アラばかりが目立って、
音楽の力を削いでいたように感じました。

そんな訳でとても演出は駄目だったのですが、
オケは読売交響楽団で良かったですし、
キャストもジークフリートのステファン・グールドと、
ハーゲンのベーゼンドルファーが良く、
衰えたとは言え、
マイヤーがヴァルトラウテに出演という豪華なおまけもあって、
なかなか聴き応えはある上演でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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急性心筋梗塞における酸素投与の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
心筋梗塞における酸素投与の効果.jpg
今年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
心筋梗塞の急性期に酸素を使用することの有効性についての論文です。

昨日は脳卒中に対する急性期の酸素投与の話題でしたが、
同様の検証を心筋梗塞に対して行ってみた、
という意味合いの論文です。

狭心症や心筋梗塞に対する酸素療法の歴史は古く、
1900年には既に酸素療法によって重症の狭心症が改善した、
という論文が発表されています。

狭心症や心筋梗塞では、
心臓の筋肉の酸素不足が起こりますから、
血液の酸素が低下した状態であれば、
酸素吸入がその予後にも良い影響を与えることは、
理に適った治療と言って良いと思います。

ただ、血液の酸素濃度が低下していない場合に、
酸素吸入が心筋梗塞の予後改善に有用であるかどうかは、
現時点で明確な結論が得られていません。

心臓の筋肉は酸素欠乏の状態になっているのですから、
通常より高濃度の酸素を供給することにより、
心臓の酸素不足の改善に繋がるという可能性は否定出来ませんが、
一方で高濃度の酸素は細胞に対しての毒性も持っていますから、
それが却って予後に悪影響を与えるという可能性も、
同様に否定は出来ません。

実際にはその有効性は確認されていないのにも関わらず、
心筋梗塞の急性期に低酸素血症がなくても酸素吸入を行なうことは、
この数十年間世界的に一般的な治療として行われて来ました。

しかし、その根拠はあまり明確なものではなかったのです。

2015年のCirculation誌に掲載されたAVOID試験という大規模臨床試験では、
STが上昇するタイプの心筋梗塞に、
予防的な酸素投与を行なったところ、
その予後は使用しない場合と比較して、
むしろ悪化していました。

今回の研究はスウェーデンにおいて、
急性心筋梗塞が疑われ、
血液の酸素飽和度が90%以上である患者さん、
トータル6629名をクジ引きで2つの群に分け、
一方はマスクにより6L/minの酸素を6から12時間使用し、
もう一方は使用をしないで、
1年後の患者さんの予後を比較しています。

その結果、1年以内の心筋梗塞の再発も、
1年後の時点でも生命予後にも、
両群で差は認められませんでした。

昨日の脳卒中の研究と一緒で、
今回の心筋梗塞の酸素投与の影響も、
決して使用した方が予後が悪い、
という結果は得られていないのですが、
酸素濃度が明確に低下していない場合の、
予防的な酸素投与が、
患者さんの予後にメリットがないと言う点については、
ほぼ結論が得られたと言って、
間違いはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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急性期脳卒中の酸素吸入の効果について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
脳卒中の酸素吸入の効果.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
脳卒中の急性期に酸素吸入を行うことの、
効果と安全性についての論文です。

脳梗塞や脳内出血によって脳を栄養する血管が障害されると、
血流が完全になくなった部位では、
数分で脳の神経細胞は死んでしまいます。
ただ、その周辺に血流量は低下していても、
細胞自体はまだ死んでいない部分があり、
これをペナンブラ(penumbra)と呼んでいます。

脳卒中の予後がそうなるかは、
このペナンブラの部分が生き延びるかどうかに掛かっていて、
発症後数日の間に起こる、
脳浮腫や血管収縮、炎症などの合併症が、
ペナンブラの部分の細胞の生死を分けると考えられています。

脳細胞が低酸素状態に陥ることは、
ペナンブラの部位の細胞を死滅される、
大きなリスクであることは間違いがなく、
実際に急性期の低酸素状態が、
脳卒中の予後を悪化させることは実証されています。

勿論急性期の入院中では、
動脈血の酸素飽和度は常にモニターされていて、
低下するようであれば酸素投与が開始されるようにはなっています。

しかし、
そうは言っても24時間完全に監視していることは、
そう簡単なことではありませんから、
1つの考えとして、
酸素飽和度にはそれほどの低下はない状態でも、
脳卒中の急性期の数日は、
酸素の吸入を持続していた方が、
その予後にも良い影響があるのではないか、
という考え方が成立します。

ただ、酸素は過剰に与えられれば、
組織障害の原因ともなりますし、
鼻からのチューブやマスクによる酸素投与は、
患者さんのストレスにもなり、
またチューブを介しての感染などのリスクも軽視は出来ません。

これまでの臨床研究において、
12時間以内という比較的短期間の、
10から45L/minという高濃度の酸素投与は、
脳卒中の患者さんの予後を改善しませんでした。
24時間3L/minという低用量の酸素を使用した試験でも、
明確な改善効果は認められませんでした。
その一方で、低用量の酸素を72時間使用した試験においては、
一定の予後改善効果が認められました。

つまり、評価は割れていて一定の結論に至っていません。
現行のガイドラインにおいても、
この点は明確な指針を提示していません。

そこで今回の研究においては、
酸素飽和度を測定してそれに合わせた用量の酸素を使用すると共に、
3日間連続の使用と、
酸素の低下し易く監視が不十分になり易い夜間のみ、
酸素を使用した群とに分け、
この問題の再検証を行なっています。

イギリスの複数の専門施設において、
年齢は18歳以上で脳卒中のために入院となり、
入院後24時間以内の患者さん、
トータル8003名をクジ引きで3つの群に分け、
第1群は原則として72時間の酸素吸入を継続し、
第2群は同様の酸素吸入を夜間のみ行い、
第3群は酸素が病的に低下した時のみ酸素吸入を行なって、
開始後1週間及び90日間後の予後を比較検証しています。
治療者には3群の差についてあらかじめ開示されています。

判定は主にランキン・スケール(mRS)という指標で評価されます。
これは0から6の数字で予後の程度を表現していて、
0は全く後遺症のない治癒で、6が死亡。
0から2であれば日常生活には支障のない状態を示しています。

酸素投与は経鼻のチューブにより行われ、
酸素使用群では動脈血酸素飽和度が93%以下であれば、
3L/minで酸素が流され、
93%を超えていれば2L/minで流されます。
酸素を使用しない群でも、
原則として93%以下であれば酸素の使用が開始されます。

その結果…

90日後の時点でのランキン・スケールには、
3群間で有意な差はなく、
その間の有害事象にも差はありませんでした。

今回のこれまでで最も大規模で、
最も厳密な検証において、
急性脳卒中後の継続的な酸素の使用は、
夜間のみの使用を含めて、
従来の酸素飽和度をモニターしての酸素使用と比較して、
患者さんの予後の改善効果は得られませんでした。

有害事象にも違いはなく、
酸素飽和度は計測上は若干上昇する程度なので、
管理が不十分な施設においては、
使用継続も1つの選択肢ではあるようにも思いますが、
基本的にはその有用性は確認はされておらず、
上記文献の結論としても、
酸素の低下時のみの酸素吸入で必要にして充分である、
という理解が正しいようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。

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第25回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で外来は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

今日はいつもの告知です。
こちらをご覧下さい。
25回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
10月14日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。

いつもは第3土曜日の開催ですが、
今回のみ都合により第2土曜日の開催となりますので、
その点ご注意下さい。

今回のテーマは「お酒との賢い付き合い方」です。

お酒は嗜好品の代表で、
タバコはほぼ間違いなく健康に悪い、
というデータしかないのに対して、
少量の飲酒はむしろ健康に良い、
というデータも存在している、
という点が大きな違いです。

ただ、少量のアルコールもそのリスクを上げる、
という病気も少なからず存在していて、
1日日本酒で2合未満くらいの少量飲酒の評価は、
まだ明確ではないというのが実際です。

アルコールの身体への影響には、
遺伝的な素因が大きいという知見もあり、
病気を起こすメカニズムについても、
徐々に明らかになりつつあります。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。
ご参加は無料です。

参加希望の方は、
10月12日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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PFAPA症候群の話 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
PFAPA症候群のまとめ.jpg
1999年のJournal of Pediatrics詩に掲載された、
PFAPA症候群という聞き慣れない病気の総説的なものです。

これは比較的最近経験しましたので、
それで調べてみたものです。

古い論文ですが,
これが一番まとまっていて、
その後も文献はあるのですが、
それほど新しい知見と言えるものは、
あまりないようです。

まず事例をお話します。

症例は5歳の男児で、
前日からの40度の高熱で受診をされました。

咳や鼻水などの症状はなく、
夕方までは元気でいて突然の高熱という経過です。
診察をすると扁桃腺炎の所見で、
唇の後ろには口内炎も出来ていました。

それで溶連菌の迅速試験をすると、
結果は陰性であったので、
抗生物質は使用せずに経過を見たのですが、
発熱は4日間持続してようやく下がりました。

通常のウイルス性の扁桃炎の経過と思われました。

ところが…

その1か月半くらい後で、
再びそのお子さんは高熱のため受診をされました。
矢張り40度を超える高熱で、
扁桃炎があり、
今回は口内炎はありませんでした。
頸部のリンパ腺は腫れていて痛みがあります。
溶連菌抗原を検査したところ今回は陽性であったので、
溶連菌感染症と考え抗生物質を使用しました。
発熱は3日ほどで改善しました。

その後しばらくその患者さんは受診をされなかったのですが、
半年後くらいにまた高熱で受診をされました。

矢張り同じように扁桃炎で、
他の症状はあまりありません。

お話をお聞きすると、
その間にも何度か同様の症状があり、
別のクリニックを受診されて、
抗生物質をその度に使用していた、
ということでした。

お薬手帳を見てその間隔を確認すると、
矢張りほぼ1か月半くらいの間隔になっています。

この周期的な発熱と扁桃炎の原因は何なのでしょうか?

これがPFAPA症候群です。

PFAPAというのは、
periodic fever(周期的発熱)、aphthous stomatitis(アフタ性口内炎)、
pharyngitis(咽頭炎)、cervical adenitis(頸部リンパ節炎)、
の略です。

扁桃炎や咽頭炎を繰り返すことは、
お子さんでは比較的よくあることなので、
何となく見過ごしがちですが、
その中で特徴的な症状を持つ一群を、
これは何か違う現象を見ているのではないか、
と考えてこうした概念が提唱されたのです。

最初の報告は1987年で、
3から6日持続する39度を超える発熱が、
3から8週間毎に繰り返し、
アフタ性口内炎と咽頭炎、
そして頸部リンパ節炎を伴った、
12人のお子さんの報告でした。
それが1989年に再度報告され、
そこで初めてPFAPA症候群という名称が使用されました。

上記論文においては、
1989年の論文を増補する形で、
94名のお子さんの症状を解析、
そのうちの83名は電話インタビューの形で長期の経過を観察し、
この症候群の自然経過をほぼ明らかにしています。
平均の観察期間は3.3年で、
1か月から9.4年の観察が行われています。

それによると、
特徴的な周期的発熱は、
平均年齢で2.8歳(95%CI; 2.4から3.3)から始まっています。
個々の発熱の持続期間は4.8日(95%CI; 4.5から5.1)、
発熱のピークはほぼ全例で40度を超えています。
38.3度を超える発熱の持続期間は3.8日(95%CI;3.5から4.1)、
一旦熱が治まってから次の発熱までの期間は、
28.2日(95%CI; 26.0から30.4)となっています。

経過観察を行なった83名中34名では1年以上発熱発作がなく、
寛解したものと思われました。
観察開始時の平均年齢は8.9歳で、
寛解した患者さんは平均で4.5年で発作がなくなっています。

このデータの範囲では、
全ての事例がいずれ良くなるとは言い切れないのですが、
最近書かれた資料には、
この症候群は5歳未満で発症し、
10歳までに症状は消失する、
というような記載になっています。

この症候群はおそらく免疫の何等かの異常をベースとして、
発症するものと思われますが、
サイトカインの増加などの報告はあるものの、
ある意味高熱が出ているのだから当たり前とも言えますし、
特徴的な免疫異常の詳細は明らかにはなっていません。
殆どの事例には遺伝性はないとされていますが、
一方で特定の遺伝子がある程度関与しているのでは、
というような報告も散見はされます。

治療は高熱時の対処療法としてはステロイドが著効し、
上記文献ではプレドニゾロンを体重1キロ当たり1から2ミリグラム、
日本語の解説では概ね0.5から1ミリグラム、
単回から数回使用します。
それ以外の対処療法として、
胃薬であるシメチジンを
上記文献の記載では1日300ミリグラムで半年間、
日本の文献では体重1キロ当たり20から40ミリグラム、
使用継続することで熱発作がなくなるケースがある、
という報告があります。

ステロイドは一時的に症状を抑えるだけで、
著効するものの、
再発を予防するような効果はなく、
むしろ再発の間隔は短くなることが多い、
と考えられていますが、
シメチジンが著効した事例では、
それをきっかけとして症状は消失しています。

ただ、おそらくヒスタミンの抑制による、
免疫の調整作用によるものと推測はされていますが、
その正確なメカニズムは不明です。
それにしてもシメチジンというのは、
花粉症や癌、肩関節の石灰化など、
多様な病態への効果が報告されている、
本当に不思議な薬です。

薬でコントロールが困難な場合に、
検討されるのが扁桃切除の手術です。
扁桃腺が腫大していて頻回に発熱があれば、
この病気を疑わなくても扁桃腺の手術が考慮されますから、
その区別は難しいところがあるように思いますが、
術後には症状は消失するケースが多いと報告されています。

それでは今日のまとめです。

5歳未満で発症し、
40度を超えるような発熱が、
数日の経過で周期的に繰り返される、
PFAPA症候群という病気があります。
咽頭炎やアフタ性口内炎、頸部リンパ節炎を伴うことが多く、
抗生物質は無効で、
ステロイドが著効するという特徴があります。
一種の免疫異常の可能性が高く、
そもままでも概ね10歳までには症状は消失します。
周期的な扁桃炎で原因不明のような場合には、
この病気のことを頭に浮かべる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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今年のインフルエンザワクチンは何故不足するのか? [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はインフルエンザワクチンについての現況です。

季節性インフルエンザワクチンの接種が、
10月1日から開始となりました。

ただ、実際にはまだワクチン接種を始めていない医療機関も多く、
昨年よりワクチンの接種料金を値上げしている医療機関も多いようです。

それは何故でしょうか?

実は今年のワクチンの製造開始が遅れていて、
実際の製造量も、
昨年の90%程度になる見込みなのです。

実際に昨年の使用ワクチンは、
製造量の95%程度でしたから、
実質的に不足する量は、
需要を昨年並みと想定すると差し引きの5%くらい、
ということになります。
それでも実数として140万本くらいになります。

こちらをご覧下さい。
インフルエンザワクチンの使用見込み.jpg
本年7月末の時点でも厚労省の資料にある図です。
現行の予定製造量が2527.5万本で、
需要を昨年並みとしても、
140万本、1本大人2人の接種が可能ですから、
280万回分のワクチンが、
今年は不足する可能性のあることを示しています。

こちらをご覧下さい。
インフルエンザワクチンの供給見込み.png
これは例年のことでもあるのですが、
ワクチンというのは10月1日から接種可能と決まってはいても、
10月1日に全てのワクチンの製造が完了している訳ではありません。

週毎に出荷をしていって、
まあ年内にはほぼ出荷が完了する、
というような恰好になるのです。

それが今年は更に遅れる見込みで、
10月初めの今の時点では、
実際には500万本くらいのワクチンしか、
接種出来る状態にはなっていません。
出荷が完了するのは、
予定通りに進んでも年末ギリギリくらいになりそうです。

それでは何故今年はワクチンの量が少なく、
その製造自体も遅れているのでしょうか?

それはワクチンで使用する抗原の種類を決定する、
ワクチン株の決定が今年は遅れてしまったからです。

ワクチン株の決定は、
その年の春にWHOが流行状況から見た推奨株を発表し、
それを専門機関や厚労省が検討して、
日本におけるウイルス株を独自に選定、
その上で各ワクチン製造会社に指示をして、
製造が開始されるという段取りになっています。

その決定の詳細は、
概ね11月くらいに発表されています。

これまでのウイルス株決定の時期を見てみると、
2014年が6月24日、2015年が5月8日、
2016年が6月7日となっていて、
今年の発表は7月12日です。

2014年も例年からすると遅かったのですが、
今回の7月12日というのはあまりこれまで例のない遅さです。

これが今年の製造の遅れと本数が少ないことの理由と思われます。

それでは、何故WHOの発表は例年通りなのに、
日本でのウイルス株の決定は遅れたのでしょうか?

その点については正式な詳細の発表はなく、
ここで書くのは僕がワクチンメーカーの担当の方から、
お聞きした話なので、
ほぼ間違いのない線だとは思いますが、
現時点では裏取りはしてないことはあらかじめお断りしておきます。

され、伝聞の情報によると、
当初の選定株は、
1種類が今決定されたものとは別物だったのですが、
その培養が上手くいかず、
必要な量の抗原の確保が困難であることが、
途中で判明したので、
慌てて選定株を昨年と同じものに変更した、
という経緯があったようです。

具体的にはここ数年、
その抗原が変異したことにより、
ワクチンがあまり効かなくなっていた、
A香港型と通称されるH3N2のタイプの抗原が、
当初と変更されたことが原因だったのです。

当初の予定された抗原は、
A/埼玉/103/2014(CEXP002)というウイルス株由来のものでした。

これはワクチン種株作成様に品質管理された培養細胞で分離され、
その後卵で培養を繰り返された日本独自のウイルス株で、
昨年の資料を見ると、
野生株としてウイルス株の検証がされ、
抗原性は流行株とマッチしていたものの、
増殖が弱くて使用不可となっていました。

その高増殖株が開発されて今回の検討となったものと思われますが、
実際には卵での増殖が弱く、
抗原量が確保出来ないという判断になり、
昨年と同じウイルス株に急遽差し替えられた、
という経緯のようです。

独自株を使用することに拘り過ぎたのでは…
というような推測は可能ですが、
まだ詳細は不明なので憶測は避けようと思います。

結果として決定が遅れてワクチンは不足する上に、
昨年とA香港型の株が同じであるとすると、
昨年と同様に同じタイプのウイルスに対する有効性は、
あまり望めないということになる訳ですが、
現行の卵で培養するという手法によるワクチンは、
大量生産や迅速な変異への対応と言う面では、
限界があることを露呈した結果であるようにも思います。

それでは、今年の医療機関の対応はどうでしょうか?

7月末の時点で厚労省の通達が出ていて、
ワクチンの安定供給のために、
昨年より多くのワクチンの注文をしないことや、
針を刺して24時間以内であれば、
2人以上に余らせることなく接種を行うこと、
海外では9歳以上は1回接種でも可となっているので、
その点も勘案しろ、というような、
かなりこれまでの見解と異なる、
身もふたもないような文言が並んでいます。

予約をして需要を確認してから注文をしろ、
というようなことも書かれていますから、
今年医療機関が予約を五月蠅く言うこと自体は、
厚労省の通達に従っている、
という側面があるのです。

ワクチンの接種料を値上げする医療機関が多いのですが、
これは主には返品が難しいことが、
その要因と思われます。
前年の実績によりワクチンを出荷しろ、
というような指示もあるので、
新規の医療機関や昨年の実績が少ない医療機関では、
ワクチンの確保は困難となり、
その価格も高くなることも想定されます。

ワクチンの返品は円滑な流通のために、
むしろ促進される流れであったのですが、
今年については、
返品自体は禁止されていないものの、
厚労省は返品の多い医療機関は個別に指導する、
というような怖いことも言っているので、
実際には出来ないという状況になり、
そのリスクも考えると、
価格を上げざるを得ないのが、
医療機関の実際だと思います。

クリニックでもワクチンの予約を開始していますが、
今年はそうした事情を勘案の上、
接種を希望される方はなるべく早い対応をお願いしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


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山本澄人「を待ちながら」(演出飴屋法水) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
を待ちながら.jpg
今年芥川賞を取った山下澄人さんが、
ベケットをモチーフにした新作戯曲を書き、
飴屋法水さんが演出した舞台が、
本日までアゴラ劇場で上演されています。

例によって娘のくるみさんも出演して、
いつものように飴屋さんの1人がなり、
みたいな場面もありますから、
山下さんと飴屋さんの共同創作、
というようなニュアンスが強いように思います。

結果として昨年の本谷有希子さんと、
芥川賞作家の受賞第一作の戯曲を、
飴屋さんが演出するという企画が、
続いているということになっています。

なかなか凄みのある芝居で、
別に「ゴドーを待ちながら」が、
そのまま使われている訳ではないのに、
これまでの多くの「ゴド待ち」より、
遥かにベケットの本質が表現されているように、
個人的には感じました。

その即物的な残酷さとシュールさ、
絶望を突き抜けたところから来る笑いと、
生と死が無常に向き合うような気分、
日本の情緒とは、
明らかに異質な何かが立ち上がって来る感じがして、
とても刺激的な体験でした。

後半はちょっと退屈さも感じましたし、
ラストが詩の朗読で終わるのは、
何か如何にもありきたりで落胆しましたが、
前半はともかく圧倒的でした。

唐先生や別役実の初期戯曲に、
非常に似通った即物的で出鱈目なシュールさを感じましたが、
それは要するに唐先生も別役実も、
ベケットに影響されていた、
と言うことかも知れません。

以下少しネタバレがあります。
これから鑑賞予定の方は、
必ず鑑賞後にお読みください。

アゴラ劇場のいつもの出入り口は一切使用せず、
いつもは役者が使用する通路のみが、
今回の舞台では観客の導線になっています。

観客はいつもは外付けの階段から2階の劇場に入るのですが、
今回は1階の楽屋を通り、
そこから出演者用の階段を上って、
2階の劇場に入ります。

劇場はほぼ素舞台となっていて、
窓やドアは上演前には全て開放されています。
そして、中央にはベッドがあって、
実際に半身麻痺で透析をしている役者さんが、
そこに横になっています。

その寝たきりの男の娘がくるみさんで、
2人が生活している小さな世界に、
不意に異形の乱入者が、
次々と入って来ます。

山本澄人さん自身が、
身体から楽器を沢山ぶら下げた、
実際には小人ではない小人を演じ、
そのパートナーとして、
言葉を自発的には殆ど話さない、
黒づくめの男を飴屋さんが演じます。

飴屋さんの登場は、
フェンシングのマスクを被り、
そのマスクの中で大量の爆竹を発火させる、
という仰天するような荒業で、
観客の度肝を抜きます。

3人目として登場するのは佐久間麻由さんで、
何と全身血まみれで口からも血を吐きながら、
一輪車に乗った赤いランドセルの少女として登場します。
彼女はおばあさんの運転する乗用車に轢かれたのですが、
死んだことを認められずに現れ、
その身体から長い臓物がくるみさんによって引き出されます。

山下さんと飴屋さんのコンビは、
「ゴドーを待ちながら」のゴドーを待つ2人のようですし、
動かない寝たきりの男は、
「しあわせな日々」の地中に埋もれた女を彷彿とさせます。

また、寝たきりの主人公の存在は、
固定された椅子に座って、
舞台を観るしかない観客という存在を、
意味しているようにも思われます。
「観客」という視点から見た奇妙で残酷な世界を、
この作品は表現し、
そして観客である主人公は、
最後に立ち上がりその世界を出て行きます。

後半はやや内省的な感じになり、
最後は詩を朗読して終わるという構成は、
予定調和的で物足りなさも感じましたが、
今見られるとは思えなかったようなアングラ芝居で、
さすが飴屋法水、さすが山下澄人というところを、
見せつけた素敵な舞台でした。
佐久間麻由さんの一輪車を駆使した怪演も、
今年の演技賞(個人的な)は決定的な凄まじさだったと思います。

凄い芝居でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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