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サウナの肺炎予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
サウナの肺炎予防効果.jpg
今年のRespiratory Medicine誌に掲載された、
サウナの習慣が肺炎のリスクに与える影響についての論文です。

昨日は2015年に発表された、
サウナが心血管疾患と生命予後に与える影響についての論文を紹介しましたが、
その姉妹編的性質のものです。

これは昨日のものと同じフィンランドの疫学データを活用して、
登録時の年齢が42から61歳の一般男性住民2210名を、
中間値で25.6年という非常な長期間観察し、
サウナの習慣と肺炎の発症との関連性を検証しています。

その結果、
関連する因子を補正した結果として、
サウナの習慣が週に1回以下の場合と比較して、
週に2から3回では31 %(95%CI; 0.55から0.86)、
週に4回以上では44%(95%Ci; 0.35から0.88)、
それぞれ有意に肺炎のリスクが低下していました。

論文の考察においては、
肺炎の発症にも関わる酸化ストレスが、
サウナの習慣により減少することと、
肺機能の改善効果も期待されることが、
この肺炎リスクの低下の主な要因ではないかと分析しています。

このように肺炎のリスク低下においても、
良い結果の出ているサウナですが、
これは昨日のものと同じ、
サウナの盛んなフィンランドの同一データの解析なので、
その点は割り引いて考える必要はあると思います。

いずれにしても、
サウナに心肺機能の増強作用や、
リラクゼーションの効果のあることは事実で、
その利用の健康面から見た適切な基準のようなものが、
日本においても作成されることが必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本



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サウナの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
サウナの心血管疾患予防効果.jpg
2015年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
サウナの健康への影響を検証した論文です。

サウナが健康に良いのか悪いのかという話は、
クリニックの外来でもしばしば聞かれることです。

無理をし過ぎないサウナの習慣は、
大量の汗を掻いて代謝を活発にするので、
自律神経を刺激して心臓の働きにも、
良い影響を与える効果が期待されます。
リラクゼーションの効果もあることは間違いがありません。

ただ、その一方で急激な脱水に、
一時的にはなりますから、
血圧が低下したり、
心臓に負担を掛けるという側面も想定されます。

比較的最近の研究報告では、
概ね適度なサウナの習慣は、
健康への良い影響があるとするものが多くなっています。

今回ご紹介する論文はその代表的なものの1つで、
サウナが心血管疾患と総死亡に与える影響を検証したものです。

こうした研究の大規模なものは、
主にフィンランドで行われています。
フィンランドはサウナの発祥地で、
サウナという言葉自体フィンランド語由来だそうです。

今回の研究もフィンランドでの、
心血管疾患に関する大規模な疫学データを活用したもので、
年齢が登録時に42から60歳の一般住民2315名(男性のみ)を、
観察期間の中間値で20.7年という長期の経過観察を行って、
サウナの習慣はその頻度と、
心血管疾患のリスクや生命予後との関連を検証しています。

これは一般住民を無作為に抽出したデータで、
心血管疾患で治療をされているような人も混ざっています。
具体的には21.3%が降圧剤による治療を受けていて、
5.1%は糖尿病を持ち、
虚血性心疾患の既往も23.9%が持っています。

観察期間中に心臓の突然死で死亡したのは190名、
虚血性心疾患で死亡したのが281名、
心血管疾患全体での死亡が407名、
全ての原因による死亡の総計が929名でした。

喫煙や年齢、病気などの関連する因子を補正した結果として、
週1回のサウナ習慣を基準として時に、
総死亡のリスクは週2から3回のサウナ習慣で24%(95%CI; 0.66 から0.88)、
週4から7回のサウナ習慣で40%(95%CI; 0.46から0.80)、
それぞれ有意に低下していました。

心血管疾患による死亡も同様に、
週2から3回のサウナ習慣で27%(95%CI; 0.59から0.89)、
週4から7回のサウナ習慣で50%(95%CI; 0.33 から0.77)、
それぞれ有意に低下していました。

1回のサウナ時間とリスクとの関連を見てみると、
11分未満の場合と比較して、19分以上であった場合には、
心臓突然死のリスクが52%(95%CI; 0.31から0.75)有意に低下していました。
ただ、総死亡のリスクには差はありませんでした。

そして、特に病気の患者さんにおいて、
サウナによる生命予後のリスクが、
増加するということもありませんでした。

このように上記研究での結果としては、
虚血性心疾患などの病気の患者さんを含む対象において、
サウナの回数が多く時間も長い方が、
その後の長期の生命予後や心血管疾患の予後に、
良い影響を与える可能性が示唆されました。

その理由として上記文献の考察では、
サウナの温熱効果が血管内皮機能を高めるという知見と、
自律神経への影響や心臓の耐容能の増加作用などが記載されています。

ただ、そうは言っても心臓には負担を掛けることもあり、
一時的には脱水にもなるサウナが、
全く無害であるとも言い切れません。

特に起立性低血圧(俗に言う立ちくらみ)のあるような人では、
サウナから出た直後に起こる血圧の低下が、
転倒や意識消失などのリスクになるという指摘があり、
特に飲酒との関連がそのリスクを高めると分析されています。

フィンランドのサウナは、
平均温度が79度のドライサウナで、
それがそれ以外の方式や、
より高温のサウナにおいても同じであるという保証はありません。

こうしたデータは常にそうした側面がありますが、
フィンランドではサウナ文化が浸透していて、
体調の良い人や健康的な人ほどサウナを多く使用することが想定され、
関連する要素を補正したとは言っても、
そのバイアスは大きいというようにも思えます。

従って、サウナを習慣とする方が長生き出来るとか、
病気の人でも心配はないと、
上記のようなデータから言い切ることは危険だと思いますが、
心血管系や自律神経への適度な刺激が、
その後の心血管系の健康に良い影響を与える可能性は高く、
今後どのような人によりサウナのメリットがあり、
どのような人ではリスクが高いのか、
そうしたより詳細な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。

よろしくお願いします。

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「セブン・シスターズ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はもう1本映画の話題です。

それがこちら。
セブンシスターズ.jpg
イギリスなどの合作で、
ちょっとユニークなSFサスペンス映画、
「セブン・シスターズ」を観て来ました。

これはオリジナルのストーリーが、
なかなか斬新で面白いのです。

遺伝子操作によって作られた作物の副作用で、
多胎児が増えるという異常が発生し、
人口が爆発的に増加したヨーロッパで、
人口を減らすために夫婦で1人の子供しか認めない、
という政策が実行され、
2人目以降の子供が生まれると、
保護されて冷凍睡眠にすると説明されます。

そこである資産家の娘が七つ子を産んでしまうので、
資産家は7人の娘を隠して教育を行い、
月曜日から日曜日という曜日の名前を1人1人に付けて、
その曜日のみ同じ人間として外出し、
他の曜日は家から出ない、
という奇想天外な仕掛けで、
7人1役で1人の女性を、
実際には曜日毎に別の姉妹が演じる、
という人生のプランを編み出します。

姉妹は30歳になり、
それぞれに個性はありながら、
曜日毎に1つの人格を演じ続けるのですが、
ある日最も祖父に従順で完璧な人格を演じていた、
「月曜日」が姿を消します。
翌日「火曜日」がその捜索のために外出しますが、
彼女もまた姿を消し、
その裏には7人の姉妹を抹殺しようとする、
大きな陰謀があるらしいことが分かって来ます。

ね、なかなか面白そうでしょ。

舞台はヨーロッパのようですが、
一人っ子政策というのがちょっと古めかしい感じで、
僕達も昔は人口増加の恐怖におののいたのですが、
実際には人口が減少に向かうと、
高齢化の方が余程恐怖なのが分かって来て、
人間というのは賢く見えて、
そんなことも分からない愚か者であったのかと、
自分も含めて嫌になります。

ただ、それ以外の部分については、
とても面白く物語は出来ていて、
国家の陰謀のように思われた物語が、
ラストになって家族の愛憎劇に落とし込まれる辺りも、
定番ではあっても良い感じで、
クライマックスもなかなか盛り上がりますし、
ちょっとデパルマの初期作のような情感があって、
惹き付けられました。
ただ、個人的にはデパルマのように、
ロマンチックな音楽をガンガン掛けて、
スローモーションも駆使した大仰な見せ場にして欲しかったのですが、
演出は実際にはもっと抑制的でした。
でも、良かったです。

こうした発想の映画は以前にもあったと思いますが、
同じ顔をした7人の姉妹が同じ画面で活躍するというのは、
最近の映像技術があってこそのビジュアルで、
ナオミ・ラパスの1人7役がなかなか素敵で、
特撮もとても良く出来ていますし、
適度に残酷描写も交えたアクションも、
なかなかの迫力です。
脇も政府の大物にグレン・クローズ、
姉妹の偏執狂的祖父にウィレム・デフォーと役者は揃っています。

トータルにはややB級映画ですが、
とても楽しめますし、
アイデアが抜群の娯楽作に仕上がっていたと思います。

これはなかなかのお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ブレードランナー2049」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日は映画の記事が2本です。
まず最初がこちら。
ブレードランナー.jpg
1982年に公開されたカルトSF映画「ブレードランナー」の、
35年ぶりの続編が今ロードショー公開されています。

オリジナルの「ブレードランナー」は、
今はもうない渋谷パンテオンで公開時に観ています。

映画館は当時はガラガラでした。
ビジュアルは非常に印象的で凄いなと思いましたが、
イメージ映像のようで正直それほど乗れませんでした。

ただ、その後ビデオ化されるとジワジワと人気が上がり、
ディレクターズカット版が再公開されるなど、
むしろ時間が経つにつれてその評価は高いものとなったのです。

オリジナルの舞台となっているのは、
人類の大半が汚染された地球を逃れて宇宙に移住し、
レプリカントという人間の労働力の代用となる人造人間が、
人間に対して反乱を起こすという設定の未来で、
2019年という設定になっています。

もう来年の話ですね。

今回の続編は前作から30年後の2049年が舞台で、
従順なレプリカントが新たに製造されている世界で、
主人公はライアン・ゴズリングが演じる、
レプリカントを追跡する自身もレプリカントの捜査官です。

オリジナルのリドリー・スコットは制作総指揮に廻り、
監督はカナダの俊英ドゥニ・ビルヌーブです。

これはどんなものかと思って初日に観たのですが、
個人的にはなかなか良かったです。
アイマックスの3Dで観た映像は、
リアルさを追求した美しいもので、
一部はオリジナルとほぼ同じ風景を再現しながら、
より広い視点で、
様々な荒廃した地球の風景を見せています。

オリジナルの「ブレードランナー」も、
SF仕立てのフィルム・ノワールだったのですが、
今回の続編も前作の空気感そのままのノワールになっていて、
その点には好感が持てました。

主人公も従順なタイプのレプリカントで、
3D映像しか持たないAIの恋人と恋に落ち、
それが人間とレプリカントとの愛と対比されます。
肉体を持たないAIの女性が、
肉体を持つ娼婦と一体化することで、
主人公とセックスをする場面などは、
切なく美しく倒錯的な場面に仕上がっていました。

主人公と対決する美貌で凶悪なレプリカントを演じた、
シルビア・ホークスがとても素敵で、
悪役美女フェチの僕としては、
これだけで大分点数が上がりました。

監督のビルヌーブは、
今年公開されたSF映画の「メッセージ」も、
繊細な描写を積み上げて静かな感動に至る、
という段取りが素晴らしくて、
地味ですがとても魅力的な映画でした。

この作品でもその資質は生かされていて、
普通このような大作であれば、
もっと目を惹くようなドンパチをしたくなるところなのですが、
そうした部分は最小限に抑え、
滅び行く地球の感覚的描写と、
人間、レプリカント、そして今回はAIと、
それぞれの愛にターゲットを絞って、
繊細なドラマを紡いでいます。

評論家の批評は概ね悪いのですが、
個人的には「分かってないな」と感じました。
ただ、3時間近くの上演時間を、
悠然たるテンポで流して行きますから、
退屈に思われる方も多いとは思います。

そんな訳で万人向けの映画ではありませんが、
オリジナルのノワールの部分がお好きな方は、
満足をされるのではないかと思いますし、
「ダンケルク」と同様、
アイマックスで観る質感のある映像は、
一見の価値のあるものだと思います。

それでは次に続きます。
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「愛を綴る女」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
愛を綴る女.jpg
マリオン・コティヤールが主演のフランス映画、
「愛を綴る女」を観て来ました。

これはイタリア人作家による「祖母の手帖」という作品が原作ですが、
映画を観た後で興味を持って読んでみたところ、
舞台をフランスに置き換えたばかりではなく、
ほぼ別の作品と言って良いほど改変されていたので、
ちょっと驚きました。

原作は祖母、両親、自分という3代のエピソードを、
人間の心と愛の不思議を縦軸にして、
散文詩的に描いたもので、
そのうちの父方の祖母のエピソードのみを抽出して、
その祖母を主人公に構成されているのが映画ですが、
そのエピソード自体も大きく変更が加えられていて、
ディテールはイタリア映画みたいなのですが、
全体の印象はハリウッドの文芸映画のようで、
どんでん返しということでもないのですが、
クライマックスにちょっとした仕掛けのある、
トータルにはかなり不可思議な映画になっていました。

人気者のマリアン・コティエールが演じる、
原作の「祖母」は、
幻想と現実との区別が不可分で、
多くの男性と平然とふしだらな行為に及ぶ一方で、
純粋な愛と言う架空の幻想を追い求めるような性格です。
男性とのトラブルを繰り返して悪評も立ってしまうので、
心配した母親が、
真面目一徹の男やもめの中年男を夫にしますが、
主人公は夫を愛していないと公言してはばかりません、
夫は性欲のはけ口として性風俗に通いますが、
途中から主人公は風俗嬢と同じ行為を、
夫にするようになります。

この奇妙で倒錯的な関係が続く中、
主人公は尿路結石の痛みに苦しみ、
温泉療養に山の中の療養所に入ります。
と、そこで傷病兵の男性と運命的な出会いをし、
恋に堕ちた後で、
主人公は子供を身ごもるのです。

2人は別れ、主人公は愛していない夫の元に戻りますが、
息子は生まれピアニストに成長します。
コンクールのために訪れた町は、
かつて愛した傷病兵の住んでいたところであることを知った主人公は、
彼との再会のために町を彷徨います。

映画はその場面から始まり、
回想に入り、
そして後半で再び同じ場面に戻ると、
その後に意外な真相が待っています。

僕は仕掛けのある話が好きなので、
この設定自体は嫌いではないのですが、
やや唐突で作品の流れに合わない感じがしたのと、
写真の件などがかなり強引で不自然なので、
本当に原作でも同じような話なのだろうかと思って、
原作を読んでみると、
前述のように話は大きく違っていました。

原作にも同様の一種のオチはあるのですが、
もっと繊細で文学的なもので、
壁の中から祖母の手帖と1通の手紙が見つかって、
それで真相が明らかになる、
というロマンチックな趣向になっています。
写真の話などは勿論ありません。

小説が映画になって大きくその趣きを変えることは、
勿論しばしばあることですが、
今回はどう考えても改悪と言って良いもので、
原作通りに3代のクロニクルとして映画化しても、
悪くない作品になったように思うので、
この大味な改変は非常に残念に感じました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アカルボースの糖尿病発症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アカルボース.jpg
今年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
食後血糖を低下させる飲み薬の、
虚血性心疾患の患者さんへの使用効果を検証した論文です。

アカルボース(商品名グルコバイなど)は、
αグルコシダーゼ阻害剤というタイプに属する、
2型糖尿病治療薬の飲み薬で、
糖を分解する酵素を阻害することにより、
糖の吸収を抑えて、
食後血糖の上昇を緩やかにする、
というメカニズムの薬です。

食事制限と似た効果があるという点がユニークで、
日本では糖尿病治療薬の柱の1つとして、
以前は広く使用されていました。
ただ、単独での血糖降下作用は弱く、
消化不良のためお腹が張ったり、吐き気や痛みが出る、
という副作用もしばしば認められます。
効果が弱いため欧米ではその評価は低く、
アメリカのガイドラインでは殆どその名前はありません。
日本においても、
メトホルミンやインクレチン関連薬、
SGLT2阻害剤などの評価が高まるにつれ、
その使用頻度は減少していると思います。

そんな訳でアカルボースが、
2型糖尿病の治療薬として使用されることは、
世界的にはそれほど多くはないのですが、
この薬の可能性が期待されているのは、
むしろ糖尿病にはまだなっていない耐糖能障害の患者さんに対する、
糖尿病の予防薬としての効果です。

2002年のLancet誌にその結果が発表された、
STOP-NIDDMという大規模臨床試験があり、
世界の50以上の国と地域において、
アカルボースを境界型糖尿病の患者さんに使用することにより、
その後の2型糖尿病の発症リスクが、
25%有意に低下したというデータになっています。

更にその二次解析において、
患者さんの心血管疾患のリスクの低下も認められています。
ただ、実際には対象者のうち、
47名しか心血管疾患を発症していないので、
この結果のみでアカルボースが心血管疾患を予防した、
というように言い切れるデータではありません。

そこで今回の研究では中国において、
年齢が50歳以上で心筋梗塞や不安定狭心症の既往があるか、
安定狭心症の治療を受けている患者さんで、
境界型糖尿病を糖負荷試験で診断されている、
トータル6522名をくじ引きで2つの群に分け、
患者さんにも主治医にも分からないように、
一方はアカルボースを1回50ミリグラムで1日3回使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
その後の心血管疾患の予後と、
糖尿病への移行の有無を比較検証しています。

中央値で5年間の経過観察期間中に、
心血管疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、
非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院、
そして心不全による入院を併せた発症頻度は、
アカルボース群では年間100人当たり3.33件認められたのに対して、
偽薬群では年間100人当たり3.41件認められていて、
両群に有意な差は認められませんでした。

総死亡のリスクや腎機能低下のリスクを加えて、
二次解析を行っても、
両群に有意な予後の差は認められませんでした。

一方で糖尿病の発症リスクについて見ると、
偽薬群では年間100人当たり3.84件の糖尿病が発症していたのに対して、
アカルボース群では3.17件の発症に留まっていて、
アカルボースの使用により、
糖尿病への進行が18%(95%CI; 0.71から0.94)有意に抑制された、
という結果が得られました。

これは多くの患者さんがスタチンや抗血小板剤など、
評価の定まった心血管疾患の再発予防薬を使用しているので、
かなりハードルは高いのですが、
虚血性心疾患のある境界型糖尿病のある患者さんに対して、
アカルボースを上乗せで使用しても、
心血管疾患の予後や生命予後には、
あまり明確な影響を与えるということはなさそうだ、
という結果です。

一方で境界型糖尿病の患者さんにアカルボースを使用すると、
その後の糖尿病への進行は、
2割程度は抑制される可能性があり、
STOP-NIDDMの結果とも併せて考えると、
この点では一定の有効性がほぼ確認されたと言えそうです。

日本では健康保険での予防給付は、
原則としては認められていませんが、
境界型の耐糖能異常のある方に対して、
アカルボースを使用するという介入は、
心血管疾患のない対象での有効性はどうなのか、
そのコストが結果に見合うかを含めて、
今後検討される必要はあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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2型糖尿病の管理に関する日本の大規模臨床試験結果について(J-DOIT3) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
日本の大規模臨床試験.jpg
今年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
J-DOIT3と名付けられた、
2型糖尿病の管理ついての日本発の大規模臨床データをまとめた論文です。

これは日本発のかなり画期的な臨床データとして、
その論文化が待たれていたものです。

ただ、事前の発表などでは、
物凄く効果があったようなニュアンスであったのですが、
実際に論文化されているものを読んでみると、
ちょっとその印象は違っていました。

2型糖尿病というのは、
単純に血糖が高いという病気ではなく、
全身の血管の老化を進行させるような代謝病で、
その予後に最も大きな影響を与えるのは、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患です。

ただ、血糖コントロールのみをターゲットにして、
糖尿病の治療を行なっても、
動脈硬化の進行によって起こる心血管疾患の予後の改善には、
充分ではないことがこれまでの臨床試験などの結果から、
判明しています。

その原因のうち大きいと考えられているのが、
血糖を強力に下げるような治療による、
副作用としての重症の低血糖の増加です。

低血糖は急性心筋梗塞や重症不整脈の、
誘因となることが指摘されています。

そのために現行のガイドラインにおいては、
2型糖尿病の治療の目標は、
数か月の血糖の指標であるHbA1cが、
7.0%程度に設定されていて、
これは確かに低血糖の予防のためには仕方のない基準ですが、
一方でこのレベルでは、
心血管疾患の予後の改善には、
不充分であることもほぼ明らかです。

それでは、どうすれば良いのでしょうか?

1つの考え方は、
血糖以外の心血管疾患のリスクである、
血圧と脂質(主にコレステロール)を、
より厳格にコントロールすることにより、
その合わせ技として、
2型糖尿病の患者さんにおける心血管疾患の予後を、
改善しようという治療方針です。

そこで今回の研究においては、
日本の81の専門施設において、
年齢が45から69歳の2型糖尿病で、
高血圧と脂質異常症の両者もしくはいずれかを合併し、
HbA1cが6.9%以上である2542名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の治療を継続し、
もう一方はより厳格なコントロール目標を、
血糖、血圧、脂質の3つにおいて設定した治療を行なって、
中央値で8.5年の経過観察を行っています。

この場合、
血糖コントロールの目標値は、
標準治療群ではHbA1cが6.9%未満で、
強化治療群では6.2%未満となり、
血圧コントロールの目標値は、
標準治療群で130/80mmHg未満、
強化治療群では120/75未満、
LDLコレステロールの目標値は、
標準コントロール群で120mg/dL未満、
強化治療群では80mg/dL未満、
というようになっています。

その結果…

観察期間中の心筋梗塞、脳卒中、
心臓カテーテル治療、心臓バイパス手術、
総死亡を併せたリスクは、
強化治療群で19%低下する傾向を示したものの、
有意ではありませんでした。
(95%CI; 0.63から1.04)

個別のリスクについては、
総死亡と虚血性心疾患については有意差はなく、
脳卒中については、
強化治療群で58%のリスクの低下を有意に認めました。
(95%CI: 0.24から0.74)

有害事象については、
低血糖の発症は強化治療群で有意に高く、
浮腫も強化治療群で高くなっていました。

このようにトータルに見ると、
現状のガイドラインよりも強力な介入を行なって、
血糖、血圧、脂質を改善しても、
心血管疾患や生命予後には明確な改善が認められませんでした。

ただ、脳卒中に限って見ると、
一定の予防効果が認められました。

これは日本において脳卒中の発症率が高いことと、
無関係ではないと思われ、
逆に言えば心疾患のリスクとの関連を見るには、
今回の対象者数では不充分であった可能性もあるように思います。

個人的には、
介入により低血糖のリスクが増加すれば、
それにより予後の悪化が起こって、
有効性をマスクしてしまう可能性があるので、
血糖コントロールの改善を項目に入れるのではなく、
脂質と血圧のコントロールのみで、
同様の検討を行なった方が良かったのでは、
というようにも思いますが、
日本においてこれだけ大規模で長期間の臨床データはあまりなく、
より詳細な解析の結果にも今後期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

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石原がお送りしました。

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心房細動の患者さんのカテーテル治療後の抗凝固療法について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
3.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
心房細動の患者さんに、
ステントを使用するようなカテーテル治療を施行した場合の、
その後の抗凝固療法のあり方についての論文です。

心臓を栄養する冠状動脈という血管が高度に狭窄すると、
運動をしたりストレスが身体に加わったりした時に、
心臓の筋肉に酸素が不足して、
胸が苦しくなるなどの症状が起こり、
狭くなった血管に血の塊などが詰まると、
血流は途絶えて、
そのままにしておくと心臓の筋肉が死んでしまいます。
これが急性冠症候群です。
以前には血管が詰まり掛かった状態を不安定狭心症と呼び、
完全に血管が詰まった状態を心筋梗塞と呼んでいましたが、
現在ではそれを併せて急性冠症候群と呼ぶのが一般的です。

急性冠症候群が強く疑われる際には、
心臓カテーテル検査を行ない、
狭い血管が診断された場合には、
その部位にワイヤーを挿入して、
風船のような器具で圧力を掛けて拡張し、
ステントと呼ばれる金属の網目状の管を挿入します。

これがPCIと呼ばれる心臓カテーテル治療の、
代表的な手技です。

ステントは非常に有用な治療器具ですが、
広げた部分が再度狭くなったり、
血栓がステントの中に出来たリするような、
合併症が発症することがあります。

その合併症の予防のため、
2種類の抗血小板剤と呼ばれる、
血栓ができにくくする薬を、
一定期間併用することが推奨をされています。

ただ、問題は心房細動という不整脈をお持ちの患者さんの場合です。

心房細動という不整脈を持っていると、
心臓の中に血栓が出来やすく、
それが血液中を流れて脳の血管に詰まることにより、
脳卒中の原因となります。

このため、不整脈自体を治すことが難しい時には、
ワルファリンやダビガトランなどの、
抗凝固剤という薬が使用されます。

心房細動をお持ちの患者さんが急性冠症候群となり、
ステントを使用した治療を受けた場合、
抗凝固剤を継続した上に、
更に1から2種類の抗血小板剤を、
少なくともステント内に血栓の生じやすい数か月間は、
併用することが一般的です。

ただ、この3剤併用療法は、
通常の抗血小板剤2剤併用療法や、
抗凝固剤の単独治療と比較をして、
出血系の合併症がより多くなることが想定されます。

それでは脳梗塞やステント部位の血栓症の予防効果を維持したまま、
出血系の合併症をより低くするにはどうすれば良いのでしょうか?

現状試されている方法は、
まずワルファリンをより新しい抗凝固剤である、
非ビタミンK拮抗経口抗凝固剤に変更するというもので、
更にはビタミンK非依存性抗凝固剤と、
P2Y12拮抗薬という比較的新しいタイプの抗血小板剤を、
2剤で併用するという方法です。

これまでの検証では、
リバーロキサバンという非ビタミンK拮抗経口抗凝固剤と、
P2Y12拮抗薬との併用による治療が、
ワルファリンと2種類の抗血小板剤による3剤併用療法と比較して、
出血系合併症を減らし、
心血管疾患の発症も減らす効果が確認されています。

今回の研究では、
直接トロンビン阻害剤であるダビガトラン(商品名プラザキサ)と、
P2Y12阻害剤のクロピドグレルもしくはチカグレロルの併用の効果を、
ワルファリンとP2Y12阻害剤とアスピリンの3者併用療法と比較検証しています。

対象となっているのは世界41カ国の414の専門施設において、
18歳以上でステントを利用した心臓カテーテル治療を受けた、
トータル2725名を、くじ引きで3つの群に分けると、
2つの群ではダビガトランとクロピドグレルもしくはチカログレルの2剤併用を行い、
もう一方はワルファリンとクロピドグレルもしくはチカログレルの2剤に加えて、
1から3ヶ月間アスピリンを併用した3剤併用療法を施行して、
平均で14ヶ月間の経過観察を行っています。

ダビガトラン使用群では、
1回110mgを1日2回の低用量と、
1回150mgを1日2回の高用量の2群に、
基本的にはくじ引きで2つに分けていますが、
各地域のガイドラインにおいて、
低用量を使用するべき高齢者では、
1回110mgが使用されています。

その結果…

観察期間中の出血系の合併症は、
3剤併用療法で26.9%であったのに対して、
ダビガトラン低用量の2剤併用群では15.4%で、
出血系合併症は3群と比較して有意に低くなっていました。

また、ダビガトラン高用量群での出血系合併症の発症率は、
20.2%であったのに対して、
アメリカ以外の高齢者を除いた3者併用療法群では25.7%で、
この比較においても、
ダビガトラン高用量群は3者併用群と比較して、
出血系合併症は有意に低くなっていました。
(これは単純なくじ引きではないので、
比較毎に対象を分けているのです)

観察期間中の心筋梗塞、脳卒中もしくは全身の血栓症の発症率は、
ワルファリンなどの3剤併用群が13.4%であったのに対して、
高用量と低用量を併せた、
ダビガトランと抗血小板剤併用群では13.7%で、
両群に有意差はありませんでした。
つまり、どちらの方法でも、
血栓症の予防という有効性の観点からは、
違いはないという結果です。

このように、
リバーロキサバンでの検証と同様に、
ワルファリンと2種類の抗血小板剤という3剤の併用療法と比較して、
ダビガトランと1種類の抗血小板剤の併用療法は、
その血栓症予防としての有効性は差がなく、
出血の合併症は明らかに少なくなることが確認されました。

今後こうした知見を元にして、
心臓カテーテル治療後の心房細動の患者さんにおける抗凝固療法は、
非ビタミンK拮抗経口抗凝固剤と抗血小板剤(P2Y12拮抗薬)との併用が、
徐々に第一選択となる流れになるように思いますが、
ワルファリンでコントロール良好の患者さんへの対応や、
治療後の抗血小板剤の継続期間など、
課題も多く残っていて、
今後そうした細部が整理され、
スタンダードな方法が確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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アスピリンの中断と心血管疾患リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アスピリンの中止と心血管疾患リスク.jpg
今年のCirculation誌に掲載された、
アスピリンの中断とその後の心血管疾患リスクについての論文です。

1日75から160ミリグラムくらいの低用量のアスピリンが、
心筋梗塞などの心血管疾患の再発予防に有用であることは、
多くの精度の高いデータによって確認された事実で、
事例を選べば発症前の一次予防にも有効性があることも、
ほぼ実証された事実です。

その使用は原則として、
メリットがデメリットを上回る限り、
長期間継続するべきものですが、
実際には新規に心筋梗塞を発症した患者さんのうち、
1から3年以内に10から20%はアスピリンの内服を中断している、
という調査が発表されています。
中断率は30%に及ぶという報告もあり、
より広く患者さんの半数では、
処方は適切に継続されていない、
という報告もあります。

そこで今回の研究では、
国民総背番号制が敷かれているスウェーデンにおいて、
年齢が40歳を超えていて、
心血管疾患の一次予防もしくは二次予防目的で、
1日75から160ミリグラムのアスピリンを、
1年以上治療継続し80%以上内服を遵守している、
トータル601527名の患者さんを、
中間値で3年間観察し、
その間のアスピリン内服の中断と、
その後の心血管疾患のリスクを検証しています。

その結果、
アスピリンを途中で中断した患者さんは、
中断しない場合と比較して、
心血管疾患のリスクが1.37倍(95%CI; 1.34から1.41)、
有意に増加していました。
アスピリンを中断した患者さん74名のうち、
1年に1名がそのために心血管疾患を新たに発症する、
というくらいのリスクと計算されています。
このリスクの増加は、
中断後短期間で認められ、
その後長期間持続していました。
リスクの増加は二次予防の事例でより大きく、
1.46倍(95%CI; 1.41から1.51)となっていました。

このようにアスピリンの中断により、
明確にその後の心血管疾患のリスクが増加していて、
適切な適応で開始された低用量アスピリンについては、
極力継続することが、
その効果を持続させるためには重要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

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モンテルカストの精神神経系有害事象について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

台風は風は強かったですが、
他はそれほどのことはなく通り過ぎたようです。

今日はソネットのメンテナンス(?)のため、
更新が昨日から出来なくて遅くなりました。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
シングレアのリスク.jpg
今年のPharmacology Rearch & Perspectives誌に掲載された、
喘息の治療にお子さんと大人に関わらず、
幅広く使用されている内服薬の、
有害事象のデータを解析した論文です。

記載されている数値だけを見ると、
かなり衝撃的なのですが、
有害事象の報告事例を後から解析しただけのものなので、
今後のより詳細な検証の、
足掛かりくらいに考えておいた方が良いと思います。

モンテルカスト(商品名シングレア、キプレスなど)は、
選択的ロイコトリエン拮抗薬というタイプの飲み薬です。

ロイコトリエンは白血球から分泌される、
炎症を誘発する物質の1つで、
特にアレルギー反応や喘息の発症に、
関連があることが分かっています。

そのためこのロイコトリエンの作用を抑える、
ロイコトリエン受容体拮抗薬が、
喘息の発作予防やコントロール、
アレルギー性鼻炎の鼻づまり症状の緩和などに、
主に他の薬と併用する形で使用されています。

代表的なロイコトリエン拮抗薬には、
プランルカスト(商品名オノンなど)と、
モンテルカストがあります。

ロイコトリエン拮抗薬は基本的には有害事象や副作用の少ない薬と、
考えられています。

ただ、以前よりアレルギー性肉芽腫性血管炎という、
自己免疫の関わるアレルギー性の血管炎が、
ロイコトリエン拮抗薬の使用と関連がある、
という報告が、
頻度的には稀なものですが報告されています。

それに加えて最近報告が多いのが、
睡眠障害や抑うつ状態、攻撃的言動などの精神神経系の有害事象です。

今回の研究はオランダの有害事象のデータベースと、
WHOの世界規模のデータベースを活用して、
モンテルカストの使用と有害事象の頻度との関連を検証しています。

WHOのデータを子供と大人合わせたトータルで見ると、
ロイコトリエン拮抗薬以外の薬での報告の頻度との比較において、
モンテルカストによるうつ病のリスクは、
6.93倍(95%CI; 6.54から7.36)有意に増加していました。
これを子供のみ(19歳未満)に絞って解析すると、
20.52倍(95%CI; 18.65から22.58)とより高くなっていました。
ただ、このうつ病リスクの増加は、
オランダのデータのみの解析では有意ではありませんでした。

攻撃的言動の有害事象については、
WHOのデータのトータルでは、
24.99倍(95%CI; 23.49から26.59)と有意に高く、
子供のみ(19歳未満)のWHOデータでの解析でも、
29.77倍(95%CI; 27.54から32.18)と有意に高くなっていました。
オランダのデータベースの解析では、
この項目はありませんでした。

頭痛の有害事象は、
WHOのデータのトータルでは、
1.85倍(95%CI; 1.75から1.97)と有意に高く、
子供のみのWHOデータの解析でも、
1.91倍(95%CI; 1.72から2.12)と有意に高くなっていて、
オランダのデータベースの解析でも、
2.26倍(95%CI; 1.61から3.19)と高くなっていました。

悪夢の有害事象については、
WHOのデータのトータルでは、
22.48倍(95%CI; 20.87から24.21)と有意に高く、
子供のみのWHOデータの解析でも、
78.04倍(95%CI; 69.75から87.07)、
オランダのデータベースの解析でも、
トータルで19.29倍(95%CI; 12.75 から29.17)、
子供だけの解析で56.72倍(95%CI; 56.09 から57.35)と、
それぞれ有意に増加していました。

アレルギー性肉芽腫性血管炎については、
WHOのデータベースで563件、
オランダのデータベースで8件の報告が蓄積されていました。

このようにそれが薬剤によるものであるという、
因果関係は確定しているものではありませんが、
モンテルカストを使用している患者さんにおいて、
うつ病や不眠、悪夢、攻撃的言動などの症状が、
多く認められている、と言うこと自体は事実であるようです。

モンテルカストは血液脳関門を通過して、
脳にも影響を与える可能性はあり、
セロトニンやノルアドレナリンの産生を抑制する、
という報告も存在しています。
ただ、一方で人間の脳にはロイコトリエンの受容体はない、
という知見があり、
仮にモンテルカストに脳神経機能への影響があるとしても、
現時点でそのメカニズムは不明です。

また、思春期の喘息の患者さんで、
病状が不安定であれば、
それがうつや不眠、精神的不安定などの原因となることも、
容易に想定されることなので、
薬物の影響ではなく、
そうした病状の不安定さを見ているに過ぎない、
という可能性も否定は出来ません。

いずれにしても、
モンテルカストの使用により、
こうした精神神経症状が発症する可能性がある、
という意識を持つことは重要で、
特にその使用は必須とまでは言えないような患者さんにおいては、
その継続は開始には、
より慎重な姿勢が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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