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「パターソン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
パターソン.jpg
ジム・ジャームッシュ監督の新作「パターソン」が、
今ロードショー公開されています。

バスの運転手の平凡な日常を、
淡々と1週間描くだけの映画、
というような説明がされていたので、
どんなものかなあ、と、
観るかどうかかなり迷ったのですが、
観て本当に良かったと思いました。

確かに前半はその通りの内容なので、
中段の水曜日と木曜日の辺りは、
ちょっときつい感じもあるのですが、
月曜日から始まった物語が、
金曜日から週末に掛けて、
他人から見ればとても些細な、
しかし、主人公にとっては人生を揺るがすような展開を見せ、
そして最後には号泣するような感じとはまるで違う、
とてもジンワリとした、
心に沁み通るような感動が待っています。

その最後の勘所に、
永瀬正敏さんが絡んでいる、
というところもとても嬉しいのです。

今年これまでに観た映画の中で、
観終わった瞬間にもう一度観たくなったのは、
この作品が初めてでした。

これはとてもとてもお勧めします。

以下少し作品の内容に踏み込みますので、
鑑賞後にお読み下さい。
この映画は予備知識はない方が絶対良いです。

作品はニューヨークに近いパターソンという小さな町(実在)に住む、
名前もパターソンというバス運転手の青年の、
月曜日から翌週の月曜日の朝までの1週間を、
妻との目覚めから運転手の仕事、
そして夜のバー通いという日課を基調音として、
ジャズのアドリブのように、
少しずつ微妙な変化を交えながら、
綴ってゆきます。

パターソンは地元出身の詩人に傾倒していて、
毎日自分の秘密のノートに、
自作の詩を綴るのが人生の楽しみになっています。

日常は極めて淡々と展開し、
そこに日常をテーマにした詩(実在の詩人のもの)が、
映画の主人公の自作として紹介されます。

時事ネタ的なものは全く登場しませんし、
日常に変化が起こるとしても、
バスの電気系統が故障して、
乗客を降ろす事態になったり、
バーでお客の揉め事があったり、
妻が高いギターを通販で買って、
カントリー歌手になりたいと言ったり、
と言う程度のことです。

妻は主人公の詩が気に入っていて、
それを是非コピーに取って読ませて欲しいと、
何度もその約束を主人公としますが、
主人公はあまりそれを真面目に聞いていません。
2人には子供はおらず、
ブルドックを1匹飼っています。
家の前の地面に固定された郵便受けは、
何度主人公が治しても、
何故か夕方にはいつも曲がっています。

こうした微妙な伏線が、
週末にある悲劇を起こします。

主人公が土曜の夜に妻と観る映画は、
実際のユニバーサルの1930年代の古典的怪奇映画、
「獣人島(the Island of Lost Souls)」です。
これはウェルズの「モロー博士の島」が原作で、
奇怪な獣人達が主人に反逆するのですが、
それも微妙に伏線になっているのです。

この映画には人生の素晴らしさと、
その儚さと切なさの全てが入っています。

ジャームッシュにして初めて為し得たある種の境地で、
水墨画を見るようなわびさびの美しさがあります。

最後に登場する謎の日本人永瀬正敏が、
また最高なのです。

もう終わってしまいそうな単館上映ですが、
とても素晴らしい作品なので、
ちょっと無理をしても是非ご覧下さい。

これはもう絶対のお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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