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急性の咽頭痛へのステロイド使用のガイドライン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
今週木曜日(28日)の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ステロイドを咽頭痛に.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
急性の咽喉の痛みに対して、
1回のみ比較的大量のステロイド剤を使用する、
という治療の新しい考え方の、
一定のガイドラインを提示した記事です。

急性の咽喉の痛みというのは、
非常に良く見られる症状で、
その多くは短期間で治療をしなくても改善するものですが、
中には急激に悪化して、
食事が全く摂れなくなって、
入院を要するような事態になることもあります。

扁桃腺の炎症の場合には、
原因が溶連菌という細菌であれば、
お子さんでは抗生物質を使用して、
除菌を図ることが推奨されています。
そのために、一般の臨床において、
溶連菌の迅速テストが普及しています。

ただ、大人の場合には、
それほど明確な方針が定まっている、
という訳ではありません。

未治療で様子を見るのと比較して、
炎症を抑える作用が強いステロイド剤や、
抗生物質を症状出現後すぐに使用した場合に、
より早期に症状が改善した、
という臨床データが幾つかあります。

ただ、抗生物質とステロイドを併用している研究が多く、
ステロイドの単独の作用については明確ではありません。

2017年の4月のJAMA誌に、
急性の咽頭痛の症状に対して、
すぐにステロイドを単回大量経口投与した場合と、
何もしなかった場合とを、
厳密な方法で比較検証した論文が掲載されて話題になりました。

同時期にブログ記事にもしています。

イギリスのプライマリケアの複数の医療機関において、
1週間以内に発症した、
咽喉の痛みと嚥下時の痛みのある18歳以上70歳以下の患者さんで、
すぐに抗生物質などによる治療は必要ないと、
主治医が判断した576名を登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分け、
一方はステロイド剤を1回内服し、
もう一方は偽薬を使用して、
登録後24時間と48時間の時点での、
症状の消失の頻度を比較検証しています。

患者さんには抗生物質をあらかじめ渡しておいて、
病状が48時間後に改善しなければ使用が指示されます。
直近のステロイド剤の使用や抗生物質の使用者、
妊娠中の女性やその可能性のある人、
糖尿病の患者さんなどは除外されています。

ステロイドはデカドロンが10ミリグラム、
1回で使用されています。
これはプレドニゾロンで60ミリグラム、
コートリルで250ミリグラムくらいに相当する、
かなりの高用量です。

その結果…

登録後24時間で完全に症状が消失した頻度は、
ステロイド使用群で全体の22.6%に当たる65名だったのに対して、
偽薬群では全体の17.7%に当たる49名で、
統計的には2群に有意な差はありませんでした。
48時間後に症状が消失した頻度では、
ステロイド使用群で35.4%に当たる102名であったのに対して、
偽薬群では27.1%に当たる75名で、
この差は8.7%(95%CI;1.2から16.2)で有意と判断されました。

咽頭培養は施行されていて、
溶連菌は2割弱くらいで検出されていましたが、
その差はステロイドの効果の差とは関連していませんでした。

このように、
咽頭炎もしくは扁桃炎と判断した段階で、
重症でなければステロイドを単回大量で使用すると、
48時間以内に症状が消失する頻度は、
10%程度増加する可能性があります。

これが最善の治療であるとは、
勿論現時点では言えませんが、
症例を選んでのステロイドの使用は、
症状が強い場合には1つの選択肢ではあると考えられます。

この研究結果及び、幾つかの先行研究の結果などをまとめて、
今回のガイドラインが作られました。

その一部がこちらです。
ステロイドの咽頭痛への使用の図.png
5歳以上の年齢の強い咽頭痛の症状に対して、
1回のみ成人では10ミリグラム、
小児では体重1キロ当たり0.6ミリグラムの、
デキサメサゾンという高力価のステロイド剤を、
経口で1回のみ使用します。

抗生物質や消炎鎮痛剤の使用は、
必要に応じて併用されます。

免疫低下状態や伝染性単核球症というウイルス感染症、
手術や人工呼吸器の装着による咽頭痛は、
ステロイド治療の禁忌となっています。

このステロイド治療により、
咽頭痛の改善や症状の持続期間の短縮が期待出来ます。
一方で使用するのは1回のみですから、
強い副作用は通常はあまり想定はされません。

そのために今回のガイドライン作成となったのです。

ただ、これは敢くまで「弱い推奨」というレベルのものなので、
常に行った方が良い、というものではなく、
症例に応じて、1つの選択肢として検討するべきものなのだと思います。

現時点で不明であるのは、
単回とは言え大量のステロイドを使用することが、
本当に重篤な副作用に繋がることはないのか、
と言う点と、
しばしばみられる再発性の扁桃炎に対して、
ステロイドを使用することが適切かどうか、
というような点にあり、
今後の検証が必要だと記載されています。

欧米では臨床的なやや些細な、と思われるような事項や、
それぞれの医師の個性によって、
変わりがちな事項について、
その都度検証が行われ、
ガイドラインが作成されていて、
そうした点は是非、
日本でも見習うべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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