So-net無料ブログ作成

ニューヨークにおける認知症発症率の低下について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
認知症は減少している.jpg
今年のJAMA Neurology誌に掲載された、
アメリカにおいて認知症の発症率(incidence)は減っている、
というデータを詳細に解析した論文です。

認知症は人口の高齢化に従って、
その有病率(人口の中で認知症の人の割合)は増加していますが、
実際に新規に認知症と診断される数は、
1980年代以降アメリカにおいては減少している、
という複数の疫学データが存在しています。

今回の研究は、
アメリカのニューヨーク州ブロンクス郡で行われた、
アインシュタイン加齢研究という疫学調査のデータを活用して、
出生年齢毎に診断される認知症の頻度が、
どのように異なっているのかを検証したものです。

対象者は70歳以上の1348名で、
平均で4.4年の経過観察が行われています。
観察期間中に150例の認知症が診断されています。
この認知症の発症率を出生年毎に見てみると、
1920年以前に生まれた人では、
年間100人当たり5.09人が認知症を発症したのに対して、
1920年から24年に生まれた人では、
年間100人当たり3.11人、
1925年から29年の出生者では1.73人、
1929年以降の出生者では0.23人と、
認知症とその後診断されるリスクは、
出生年度が下るほど明らかに低下していました。
診断を受けた年齢毎に検討してみても、
矢張りその年齢層毎の発症率も出生年が下るほど低下していて、
この傾向は間違いのない事実であるようです。

この間糖尿病の発症率は上昇している一方で、
脳卒中や心筋梗塞の発症率は低下していて、
心血管疾患はアルツハイマー病のリスクでもありますから、
心血管疾患のリスクの低下が、
認知症の発症率の低下に結び付いたという可能性はありますが、
一方で糖尿病のリスクは増加していて、
その解釈は難しいところです。

従って、その原因は不明ではあるのですが、
認知症の発症率がニューヨークでこの20年に低下していることは、
間違いのない事実で、
それは1920年以降の出生年齢と強い関連が認められます。
つまり、1920年以前と比較して、
それ以降に生まれた人は、
認知症になるリスクが年ごとに低下しているのです。

そうは言っても、
高齢化は先進国では世界的に進行するので、
認知症の患者さんが増えることは間違いがなく、
ただ今後の対策においては、
認知症発症率の低下傾向についても、
同時に織り込むということが必要になるのだと思います。

日本でもおそらく、
同様の傾向は存在しているのだと推察されますが、
それを裏付ける精度の高いデータが、
発表されることを待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


nice!(10)  コメント(0) 
メッセージを送る