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急性の咽頭痛へのステロイド使用のガイドライン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
今週木曜日(28日)の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ステロイドを咽頭痛に.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
急性の咽喉の痛みに対して、
1回のみ比較的大量のステロイド剤を使用する、
という治療の新しい考え方の、
一定のガイドラインを提示した記事です。

急性の咽喉の痛みというのは、
非常に良く見られる症状で、
その多くは短期間で治療をしなくても改善するものですが、
中には急激に悪化して、
食事が全く摂れなくなって、
入院を要するような事態になることもあります。

扁桃腺の炎症の場合には、
原因が溶連菌という細菌であれば、
お子さんでは抗生物質を使用して、
除菌を図ることが推奨されています。
そのために、一般の臨床において、
溶連菌の迅速テストが普及しています。

ただ、大人の場合には、
それほど明確な方針が定まっている、
という訳ではありません。

未治療で様子を見るのと比較して、
炎症を抑える作用が強いステロイド剤や、
抗生物質を症状出現後すぐに使用した場合に、
より早期に症状が改善した、
という臨床データが幾つかあります。

ただ、抗生物質とステロイドを併用している研究が多く、
ステロイドの単独の作用については明確ではありません。

2017年の4月のJAMA誌に、
急性の咽頭痛の症状に対して、
すぐにステロイドを単回大量経口投与した場合と、
何もしなかった場合とを、
厳密な方法で比較検証した論文が掲載されて話題になりました。

同時期にブログ記事にもしています。

イギリスのプライマリケアの複数の医療機関において、
1週間以内に発症した、
咽喉の痛みと嚥下時の痛みのある18歳以上70歳以下の患者さんで、
すぐに抗生物質などによる治療は必要ないと、
主治医が判断した576名を登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分け、
一方はステロイド剤を1回内服し、
もう一方は偽薬を使用して、
登録後24時間と48時間の時点での、
症状の消失の頻度を比較検証しています。

患者さんには抗生物質をあらかじめ渡しておいて、
病状が48時間後に改善しなければ使用が指示されます。
直近のステロイド剤の使用や抗生物質の使用者、
妊娠中の女性やその可能性のある人、
糖尿病の患者さんなどは除外されています。

ステロイドはデカドロンが10ミリグラム、
1回で使用されています。
これはプレドニゾロンで60ミリグラム、
コートリルで250ミリグラムくらいに相当する、
かなりの高用量です。

その結果…

登録後24時間で完全に症状が消失した頻度は、
ステロイド使用群で全体の22.6%に当たる65名だったのに対して、
偽薬群では全体の17.7%に当たる49名で、
統計的には2群に有意な差はありませんでした。
48時間後に症状が消失した頻度では、
ステロイド使用群で35.4%に当たる102名であったのに対して、
偽薬群では27.1%に当たる75名で、
この差は8.7%(95%CI;1.2から16.2)で有意と判断されました。

咽頭培養は施行されていて、
溶連菌は2割弱くらいで検出されていましたが、
その差はステロイドの効果の差とは関連していませんでした。

このように、
咽頭炎もしくは扁桃炎と判断した段階で、
重症でなければステロイドを単回大量で使用すると、
48時間以内に症状が消失する頻度は、
10%程度増加する可能性があります。

これが最善の治療であるとは、
勿論現時点では言えませんが、
症例を選んでのステロイドの使用は、
症状が強い場合には1つの選択肢ではあると考えられます。

この研究結果及び、幾つかの先行研究の結果などをまとめて、
今回のガイドラインが作られました。

その一部がこちらです。
ステロイドの咽頭痛への使用の図.png
5歳以上の年齢の強い咽頭痛の症状に対して、
1回のみ成人では10ミリグラム、
小児では体重1キロ当たり0.6ミリグラムの、
デキサメサゾンという高力価のステロイド剤を、
経口で1回のみ使用します。

抗生物質や消炎鎮痛剤の使用は、
必要に応じて併用されます。

免疫低下状態や伝染性単核球症というウイルス感染症、
手術や人工呼吸器の装着による咽頭痛は、
ステロイド治療の禁忌となっています。

このステロイド治療により、
咽頭痛の改善や症状の持続期間の短縮が期待出来ます。
一方で使用するのは1回のみですから、
強い副作用は通常はあまり想定はされません。

そのために今回のガイドライン作成となったのです。

ただ、これは敢くまで「弱い推奨」というレベルのものなので、
常に行った方が良い、というものではなく、
症例に応じて、1つの選択肢として検討するべきものなのだと思います。

現時点で不明であるのは、
単回とは言え大量のステロイドを使用することが、
本当に重篤な副作用に繋がることはないのか、
と言う点と、
しばしばみられる再発性の扁桃炎に対して、
ステロイドを使用することが適切かどうか、
というような点にあり、
今後の検証が必要だと記載されています。

欧米では臨床的なやや些細な、と思われるような事項や、
それぞれの医師の個性によって、
変わりがちな事項について、
その都度検証が行われ、
ガイドラインが作成されていて、
そうした点は是非、
日本でも見習うべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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「散歩する侵略者」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
散歩する侵略者.jpg
僕の大好きな黒沢清監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
これはイキウメの前川知大さんの戯曲(後に小説化)が原作で、
二重の意味で興味のある作品でした。

「散歩する侵略者」は前川さんの代表作の1つで、
イキウメで何度か再演されていて、
今年も映画化に併せての再演が控えています。
別に集客のあるスターが出演するという訳ではないのに、
完売で追加公演まで決まる盛況のようです。

僕もイキウメ版は一度観ましたが、
人間の「観念」を奪い取る宇宙人、
という発想自体は如何にも前川さんというものなのですが、
妻の「愛」を奪った宇宙人が苦悩する、
というラストにはやや脱力する感じがありました。
しかも、このラストを再演の度に前川さんは直していて、
それも腰が据わらない感じがして納得出来ないのです。

僕はイキウメも前川さんのお芝居も大好きなのですが、
この「散歩する侵略者」は正直あまり好きではありません。

このそれ自体観念的な地味な戯曲を、
どうやって黒沢監督は映画化するのだろうと思うと、
1950年代くらいの侵略SF映画のテイストで、
なかなか鮮やかにスペクタクル化していました。
原作のテイストは「観念」を奪うという趣向のみ残して、
後は昔懐かしいSF娯楽映画の、
やや歪んだ不思議な世界が、
見どころ満載で展開されていたのです。

1950年代はアメリカを、
目に見えない共産主義の恐怖が覆っていて、
それが赤狩りに繋がるのですが、
その「見えない侵略者」がSFに変化して、
「盗まれた町」や「惑星アドベンチャー」に代表される、
一連の侵略物SFが生まれました。
パターンはほぼ一緒で、
住民が密かに宇宙人に入れ替わってしまい、
いつの間にか人間は少数派となり、
主人公達はその恐怖の中に逃げ回ることになるのです。

今回の作品は中でも「惑星アドベンチャー」との類似が顕著で、
そこでは田舎町の住民が1人ずつ宇宙人に入れ替わり、
少年と犬だけが真実を知って宇宙人に闘いを挑み、
警察や軍隊も登場して活劇が繰り広げられるのです。

これをそのまま今の日本を舞台にやろうと言うのは、
ちょっと常軌を逸しているようにも思えるのですが、
それが意外にそうでもないのではないか、
という計算が、黒沢監督の頭にはあったのではないかと思います。

つまり、今の世界はほぼほぼ、
50年代の侵略SFの荒唐無稽さに近いのではないか、
今の世界を表現する最適な方法は、
実はこうした荒唐無稽さにこそあるのではないか、
と言う計算です。

そしてその計算は、
ある程度正鵠を射ていたように思います。

長谷川博己さん演じるジャーナリストや、
主婦でデザイナーの長澤まさみさんが、
人類が滅びると理解していながら、
宇宙人の方にシンパシーを感じてしまったり、
宇宙人と戦っている筈の国家が、
得体の知れないインチキ集団のようにしか見えなかったり、
宇宙人自体の無防備な無軌道さにしても、
微妙に日本の今とリンクしているように思えるのが、
ある意味とても恐ろしく感じます。

押しも押されぬ大家となった感じの黒沢監督ですし、
昨年の「クリーピー」にしても、
「ダゲレオタイプの女」にしても、
かなり暗く重厚な感じの作品でしたから、
もうそんな感じなのかなと思っていたのですが、
今回の作品は黒沢監督のキャリアの中では、
初期作を思わせるようなアナーキーで破れかぶれのような感じもあって、
笑えるかどうかはともかくとして、
スラプスティックなコメディのような描写もあります。

黒沢監督の作品をあまり観慣れていない方には、
何処までが本気なのか分からない気分になるかも知れません。
僕も正直キョンキョンが出て来るラストなどは、
ぶっ飛び過ぎていて如何なものかなと思いますし、
堂々と「愛」という観念の素晴らしさを盛り上げるのも、
原作通りとは言え、
かなり気恥ずかしい思いもするのですが、
「愛」を奪うラストは、
「ドクトル・ジバゴ」と同じと考えれば、
文学と言えるようにも思います。

黒沢清監督の映像の大ファンとしては、
オープニングの血まみれ女子高生が道を歩き、
ワンカットで後ろで車が大爆発というショットからして凄いですし、
監督が以前からこだわっているという銃撃戦を、
今回は派手にやっているのも嬉しい気がします。
パトカーのガラスを手で突き破っての拳銃発射とか、
ワンカットでの銃の乱射、
女子高生の宇宙人を即物的にはねる車のシーンにも凄みがあります。
長谷川博己さんが死ぬ爆撃のシーンなどは、
おそらく黒沢監督のフィルモグラフィの中で、
最も派手でハリウッド映画的な、
アクションスペクタクルではないでしょうか?
主人公の夫婦2人の道行に、
異様な色の夕景がバッと広がる辺り、
ドライブインの部屋で語らいながら、
窓の向こうは何か凄いことになっている、
というようなお馴染みの描写も素敵でした。

これはまあ黒沢監督が、
滅びに一直線の今の世界を笑ってしまおう、
という怪作で、
吉田大八監督の「美しい星」も、
同じような発想の作品でしたが、
間違いなく出来は「散歩する侵略者」の方が上でした。

これはとてもお勧めですが、
受け付けない方も多いと思います。
どうかその本質を見誤らないように、
黒沢版惑星アドベンチャーを、
楽しむ気分で観て頂ければと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「三度目の殺人」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。
朝からちょっと買い物に出て、
今戻って来たところです。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
三度目の殺人.jpg
福山雅治さんと役所広司さんの主演で、
是枝裕和監督の新作映画が今公開されています。

是枝監督のこれまでの路線とはかなり異なる、
福山雅治さん演じる弁護士と、
殺人自体は自白しながらコロコロと発言を変える、
役所広司さん演じる再犯の殺人犯との対決を描いた、
裁判物のサスペンスです。

これはフィルム・ノワールなんですよね。
フリッツ・ラングやジョン・ヒューストンの、
モノクロのハードボイルド映画みたいな感じ。
ヒッチコックの「めまい」や、
「セブン」や「羊たちの沈黙」、
黒沢清監督の「CURE」辺りも入っているんですが、
基本的には1940年代くらいのノワールが基本ラインなんだと思います。

広瀬すずさんは、
現在の是枝監督のお気に入りだと思うのですが、
足の悪い少女を演じていて、
学校から制服の上に深紅のダッフルコートを着て、
足を引きずりながら下校する姿を、
弁護士の福山雅治が尾行するんですよね。
これだけでノワールの呼吸で、
なかなか良い感じの絵になっているのです。

この映画の広瀬すずさんは、
とても美しく魅力的です。

主演の2人もとても良いんですよね。

福山雅治さんの弁護士の、
何か斜に構えた屈折した造形も、
それらしくてなかなか良い感じですし、
対する犯人の役所広司さんも、
レクター博士の向こうを張ったような、
凄みのある芝居、それでいて、
ちょっと弱い人間的な苦悩も見せていて、
それが矛盾せずに1つの人格に溶け合っている辺りも、
なかなかに凄いと思います。

話はある意味とてもありがちで、
読めてしまうような感じがある一方で、
ラストはかなりモヤモヤする感じになっているのですが、
映像的なディテールが上手いですよね。
謎の十字架のサインというのは、
「CURE」の頂きと思いますが、
ラストの十字路に繋がるのは洒落ていますし、
役所さんが飼っていた鳥を殺して、1羽だけ逃げて、
それが後半に戻って来たり、
福山さんの今は離れている娘さんがウソ泣きをして、
それが最後に福山さんの本物の涙に繋がったり、
雪の北海道の雪だるまの思い出が繋がったり、
ともかく丹念に絵的に考えていると感心します。

撮り方も何度も何度も繰り返される接見で、
役所さんと福山さんを隔てている硝子が、
後半溶けたように見えたり、
2人の顔が反射でオーバーラップしたりと、
凝りに凝っています。

日本映画で裁判ドラマというと、
野村芳太郎監督の「事件」とかをどうしても思い浮かべるので、
ああいう、クライマックスで日本的情念大爆発みたいな、
そうしたものをどうしても少し期待してしまうのですが、
この作品にはそうしたカタルシスはなく、
重要人物の告白が、
結局なされないままに終わってしまい、
司法としての幕引きがされてしまう、
というモヤモヤしたものになっていて、
その後の接見でもそうしたものは何も出て来ないので、
ストレスは溜まるのですが、
色々考えた上で、
福山さんの無自覚な一筋の涙と、
十字路での当惑で終わるというのが、
是枝イズムなのかも知れません。

2時間を超える長さですが退屈はしませんし、
客席の反応も悪くありませんでした。
ヒットしてくれたらいいな、
と思いますが、
どうなのでしょうか?

観てから感想を友達と話したくなるような映画です。
そこそこお勧めです。
ただ、個人的には司法の意味を問う、
というような映画ではなく、
フィルム・ノワールの是枝監督版として、
観るのが正解のように感じました。
その路線としてはとても良く出来ていると思いますし、
何度も観返したくなる、
「残る映画」になっていると思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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味噌や納豆の高血圧予防効果(多目的コホート研究サブ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。

今日は1年に一度の人間ドックの日です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
味噌の血圧上昇予防作用.jpg
今年のthe Journal of Nutrition誌に掲載された、
大豆の発酵食品に高血圧の予防効果があるのでは、
という有名な日本の疫学データのサブ解析結果の論文です。

大豆に含まれているイソフラボンというポリフェノールには、
血管の平滑筋の増殖を抑えるなど、
動脈硬化を予防するような作用のあることが報告されていて、
心血管疾患の予防や、
高血圧の予防に有効であるという可能性が示唆されています。

ただ、動物実験では高血圧予防効果が報告されている一方で、
大豆蛋白の摂取と高血圧との関連を検証したデータを、
まとめて解析したメタ解析の論文では、
あるものでは血圧降下作用が認められたとされている一方で、
別のものでは有意な降下作用が認められていないなど、
その結果は一定していません。

ここで1つ原因として考えられるのは、
大豆食品と大豆発酵食品(味噌や納豆など)との違いです。

大豆に含まれるイソフラボンは、
腸内細菌の働きによって代謝されてから吸収されるので、
その吸収には個人差があってかなり不安定なのですが、
発酵食品に含まれているイソフラボンは、
アグリコン型と呼ばれる小分子となっていて、
腸内細菌によらずにそのまま吸収されるからです。

今回の研究は、
日本の有数の大規模疫学データである、
多目的コホート研究のデータを活用して、
この問題を日本人で検証しています。

多目的コホート研究に参加した一般住民のうち、
収縮期血圧が130mmHg未満で拡張期血圧が85mmHg未満という、
血圧上昇のない人だけを対象として、
食事調査から大豆製品の摂取量を、
発酵食品とそうでないものとに分けて算出し、
その摂取量と5年後の血圧上昇との関連を検証しています。

対象人数は登録時点で40から69歳の4165名です。

その結果…

トータルの大豆蛋白の摂取量と5年後の血圧上昇との間には、
有意な関係は認められませんでしたが、
味噌や納豆のような発酵大豆食品の摂取量についてみると、
摂取量が少ない場合と比較して、
摂取量が多いと血圧が130/85を超えるリスクが、
23%(95%CI; 0.66から0.91)有意に低下していました。
この量は納豆を毎日1パック摂っていれば、
達する程度の分量です。

今回のデータは元々このために調査されたものではありませんし、
食事調査から推測された大豆蛋白の摂取量も、
それほど正確なものとは言えませんから、
1つの参考として考えるレベルのものだと思いますが、
味噌や納豆をどのようにして摂取することが良いのか、
その塩分量との関連も含めて、
再検証が必要であるようには思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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2型糖尿病の既存薬による併用治療の長期効果(2017年イタリアの研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病併用治療の比較.jpg
今年のthe Lancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
2型糖尿病の2種類の飲み薬による併用治療の効果についての論文です。

2型糖尿病の第1選択薬がメトホルミンであることは、
世界的に認められている大原則ですが、
実際には充分量のメトホルミンを使用しても、
血糖コントロールが不充分であることは、
臨床ではしばしば遭遇することです。

この場合欧米のガイドラインにおいては、
メトホルミンに上乗せする形で、
別の種類の血糖降下剤を、
併用することが推奨されています。

ただ、併用薬としてどの薬が最も優れているのか、
と言う点については、
未だ結論は得られていません。

最近インクレチン関連薬やSGLT2阻害剤という、
新しいメカニズムの薬の評判が高く、
そうした薬の併用は臨床医にとっては魅力的ですが、
新薬は高価ですし、
その長期効果もまだ分からない面は多いので、
長く使用され薬価も安い併用薬の可能性を、
検証することも非常に重要なことです。

以前よりメトホルミンの併用薬として使用されている薬は、
SU剤とピオグリタゾンです。

SU剤は飲み薬の血糖降下剤としては最も強力な薬で、
その血糖降下作用が一番強いことは間違いがありません。
その一方で低血糖を起こしやすいという欠点があり、
またインスリン濃度の上昇により体重増加を来しやすく、
長期的な心血管疾患の予防にも、
悪い影響を及ぼすのではないか、
という危惧があります。

ピオグリタゾンはインスリン抵抗性を改善する効果があり、
その血糖降下作用はSU剤より弱いのですが、
低血糖を起こしにくいという利点があります。
また、心不全に対しては悪化させるという危惧はあるものの、
トータルには心血管疾患の進行予防効果も期待されています。

2型糖尿病の治療目的は、
現在では心血管疾患の予防が最大のものとなっています。

それでは、
メトホルミンへの上乗せ治療として、
SU剤とピオグリタゾンの、
どちらが心血管疾患の予後に良い影響を与えるのでしょうか?

今回の研究はイタリアにおいて、
その点を直接比較で検証したものです。

患者さんはイタリアの57か所の糖尿病専門施設で、
2年間以上メトホルミン単剤の治療を受け、
1日2000mgから3000㎎(日本での使用量は原則2250mg まで)という、
充分量の治療を継続していても、
血糖コントロールの指標であるHbA1cの数値が、
7から9%の50から75歳の2型糖尿病の患者さんで、
トータルな人数は3028名です。
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はSU剤を使用して、
もう一方はピオグリタゾンをそれぞれ上乗せで使用して、
半年毎にHbA1cを測定、
それが8%を下回ることを目標に、
量の調整を行います。
ピオグリタゾンは1日15から45㎎(日本での使用量と同じ)で使用され、
SU剤はグリベンクラミドが5から15㎎(日本では10㎎が上限)、
グリメピリドが2から6㎎(ほぼ日本の使用量と同じ)、
グリクラジドが30から120㎎(ほぼ日本の使用量と同じ)、
で使用されます。

試験はもっと長期行われる筈でしたが、
中間解析においてそれ以上の継続をしても、
結果が変わる可能性はほぼないとの判断で、
平均観察期間が57.3か月の時点で途中終了となっています。
それでも5年弱の観察期間です。

試験の目的は、
総死亡と心血管疾患の新規発症とを併せたリスクで、
これは両群に差はありませんでした。
SU剤は結構高用量を使用していますが、
意外にも長期のHbA1cはピオグリタゾンの方が安定して低下しています。

そして、これは当然と言えば当然ですが、
低血糖のリスクについては、
ピオグリタゾンよりSU剤で高くなっていました。
ピオグリタゾンで指摘されることの多い心不全と膀胱癌については、
今回の試験の範囲では、
特に問題になることはありませんでした。

このように、
ピオグリタゾンもSU剤も、
生命予後を含めた心血管疾患の5年程度の予後については、
それほどの差はないと考えて良く、
後は低血糖のリスクや他の有害事象のリスクに勘案して、
その選択を行うことが妥当であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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卵円孔閉鎖術とその脳梗塞予防効果(2017年の臨床データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
卵円孔閉鎖の効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
若年性脳梗塞の原因として多いとされる、
卵円孔開存の心臓カテーテル手術の有効性を検証した論文です。

今回の紙面にはこれを含めて3編の、
ほぼ同じ内容の臨床研究が、
別個の研究グループから報告されています。

3つの研究ともこのカテーテル治療の有効性を明確に示したもので、
今後のこの問題についてのトレンドが変わる、
きっかけとなる知見であると思います。

若年性脳梗塞の原因の1つとして、
卵円孔開存症による奇異性脳塞栓症が、
近年注目されています。

脳梗塞には脳血栓と脳塞栓とがあり、
脳塞栓というのは、
別の場所から飛んで来た血の塊などが、
脳の血管に詰まることにより起こります。

脳に詰まる血栓は、
通常は心臓から飛んで来ます。

心房細動という不整脈があると、
心臓の中の左房という場所に、
血の塊が出来易くなり、
それが動脈の血流に乗って、
脳に至るのです。

その一方で足などの静脈に静脈瘤と呼ばれるこぶが出来、
そこに炎症などが起こると、
そうした場所にも血の塊が出来易くなります。

この静脈に出来た血の塊が、
血流によって運ばれると、
心臓の右房から右室を介して、
肺の動脈に詰まることがあります。
これを肺血栓塞栓症と呼んでいます。

動脈と静脈の血液は混ざらないように出来ていますから、
通常は静脈の血栓が、
脳塞栓を起こすことはありません。

ただし…

脳塞栓の原因が、
足などの静脈にある血栓であるとしか、
考えられない事例が稀にあり、
それを奇異性脳塞栓と呼んでいます。

この奇異性脳塞栓症の原因は、
主に卵円孔開存症であると考えられています。

卵円孔というのは、
胎児期に心臓の左房と呼ばれる部分と、
右房と呼ばれる部分の間に開いている小さな穴で、
生まれてからすぐに塞がるのですが、
完全に塞がらずに一種の弁のようになり、
一定の交通が残ってしまう場合があります。

これが卵円孔開存症です。

卵円孔開存症は、
心房中隔欠損症の一種ですが、
交通する血流の量はごく僅かで、
それも咳込んだりいきんだりして、
腹圧が掛かるような時のみに、
血液の漏れが起こるだけなので、
通常は病気とは見做されません。

その頻度も解剖の所見などでは、
人口の25~30%に見付かるとされていますから、
実際には多くの人が知らずに持っているのです。

心房中隔欠損症の診断は、
通常は心臓の超音波検査で可能ですが、
卵円孔開存症の場合、
孔を通る血流が少なければ、
通常の超音波検査では診断は困難で、
胃カメラを太くしたような管を、
口から入れてそこから超音波検査を行なう、
経食道超音波検査を行わないと、
診断は出来ません。

従って、
実際には多くの卵円孔開存症は、
診断はされてはいないのです。

問題になるのは、
若年性脳梗塞を起こした患者さんで、
その原因がはっきりしない場合です。

海外の統計によると、
若年性脳卒中の3割は原因が分からず、
そうした患者さんの半数で、
卵円孔開存症が見付かる、
とされています。

人口の3割近くで、
卵円孔開存症が見付かる可能性のあることから考えると、
この頻度は非常に微妙です。

ただ、当然のごとく、
こうした知見があれば、
卵円孔を塞ぐ治療を行なうことにより、
若年性脳卒中の再発が予防出来るのでは、
という考え方が生まれます。

そうした臨床試験が複数行われ、
まずその結果が発表されたのが、
2012年3月のNew England…誌においてでした。

この試験はCLOSURE1と名付けられ、
アメリカとカナダにおいて、
18歳から60歳までの患者さん909名を対象に、
行なわれました。

一過性の脳虚血発作か脳卒中を来し、
その原因がはっきりしない患者さんで、
経食道超音波検査により、
卵円孔の開存が、
確認されている患者さんを、
2つの群にくじ引きで分け、
一方にはSTARFlexと呼ばれる器具を用いた、
卵円孔の閉鎖術を行ない、
もう一方では抗血小板剤や抗凝固剤による、
抗凝固療法のみを行なって、
その後の2年間の経過を観察しています。

しかし、
当初の期待とは裏腹に、
この研究においては、
卵円孔の閉鎖を行なっても、
その後の脳卒中の再発率には、
統計的に有意な差は付きませんでした。

ただし、
この研究に使われた器具はあまり良い出来のものではなく、
施行により心房細動という不整脈が、
未施行の10倍も多く発症する、
という問題がありました。

現在最も多くこの目的で使用されているのは、
アンプラッツアー閉塞栓と呼ばれる、
特殊な金属を用いたメッシュ状の閉塞栓で、
この用具を用いれば、
より良い結果が得られると期待がされました。

そして2013年の同じNew England…誌に、
今度は2編の論文が同時に掲載されました。

いずれもそのアンプラッツアー閉塞栓を用いて、
同様の検討を行なったものです。

こちらをご覧ください。
卵円孔閉鎖デバイス.jpg
これが新しいタイプの卵円孔を塞ぐ器具で、
2つのパラボラアンテナのような部分が開いて、
両側から穴を塞いで固定するように出来ています。
これ以降複数の器具が発売され使用されていますが、
基本的な構造は大きくは変わっていません。

2013年に発表された論文の1編では、
患者さんはヨーロッパ、カナダ、ブラジル、オーストラリアの、
29の施設の患者さん414例を2群に分けて、
一方では閉塞栓を用いた閉鎖術を行ない、
もう一方では抗血小板剤もしくは抗凝固剤による、
薬物のみの治療を行なって、
平均4年というより長期の経過観察を行なっています。

その結果…

観察期間中の死亡や血栓症や脳卒中の再発は、
閉鎖術群で3.4%、薬剤治療群で5.2%に認められました。

この比率だけを見ると、
閉鎖術群の効果が認められたように思えますが、
実際には統計的な有意差は認められていません。

もう1つの試験はRESPECTと呼ばれる臨床試験で、
同じ雑誌のもう1篇の論文になっています。

こちらはアメリカの69の施設において、
980名の患者さんが対象になっています。
この研究ではその観察期間中に、
閉鎖術群では9名、薬物療法群では16例が、
脳卒中の再発を来し、
相対リスクは51%の低下となりましたが、
統計的に有意な差は矢張り認められませんでした。

要するに、
これまでの3つの臨床試験の結果として、
卵円孔の閉鎖術の効果は、
その後の脳卒中の予防効果としては、
いずれも再発を抑制した、
という傾向は認められるものの、
統計的に有意な差は見られていません。

ただ、
古いタイプの器具と比較して、
アンプラッツアー閉塞栓を用いた手技では、
術後の心房細動の発症率が、
高く見積もっても未施行の2~3倍程度に留まっていて、
その点は明確に優位性が示されています。

いずれの試験においても、
抗凝固療法は複数の方法で行なわれていて、
比較としては問題がありますし、
脱落の事例が非常に多く、
その点が有意差の出ない、
1つの大きな理由になっています。

それから4年が経ち、
今回またNew England…の紙面の巻頭を飾った上記の論文では、
卵円孔開存のある全ての患者さんを治療対象とするのではなく、
卵円孔を通る血流量が多いか、
心房中隔瘤という、
より塞栓症のリスクが高いと想定される所見のある患者さんに限って、
治療を行なうという患者さんの絞り込みを行なっています。

対象となっているのは他に原因の明確ではない脳梗塞を起こした、
年齢は16から60歳までで、
検査により上記の所見のある卵円孔開存症が診断された663名で、
クジ引きで3つの群に分け、
第1群は抗血小板療法に加えてカテーテルによる卵円孔閉鎖術を施行し、
第2群は抗血小板療法のみを、
第3群は抗血小板療法より予防効果が高い抗凝固療法を、
それぞれ継続して脳梗塞の予防効果を比較しています。

平均の観察期間は5.3年です。

その結果、
観察期間中の脳梗塞の発症は、
カテーテル治療群ではなかったのに対して、
抗血小板療法群では14例発症していて、
抗血小板療法の単独と比較して、
カテーテル治療は脳梗塞の発症を、
97%有意に低下させていました。
ちょっと出来すぎの感じもありますが、
これまでにない画期的な結果です。

ただ、カテーテル治療後の心房細動の発症率については、
カテーテル治療群では4.6%に認められたのに対して、
抗血小板剤治療のみの群では0.9%しか認められていませんから、
合併症としての心房細動は、
矢張りカテーテル治療により増加することは間違いがありません。

これ以外に抗凝固療法と抗血小板療法との比較が行われていますが、
こちらは抗凝固療法の方が脳梗塞の発症は少ない傾向はあるものの、
有意な差は認められませんでした。

同じ紙面に載っている他の2編の論文においても、
解析法や対象とする患者さんの絞り込みの方法には、
それぞれ違いはあるのですが、
両者とも卵円孔閉鎖術によって、
抗血小板療法単独との比較べ、
その予防効果は有意に高いものとなっていました。
そのうちの1つは2013年の時点では差が見られなかったデータの、
より長期の解析結果となっています。

このようにカテーテル治療の手技や使用する器具の進歩、
また確実に卵円孔開存が関連していることが疑われる患者さんの絞り込みと、
以前の臨床研究とは別個の要素が加わることにより、
今回発表された3つの臨床研究においては、
いずれも一定の有効性がカテーテル治療により認められています。

今後どのような患者さんに対して、
最もこの治療の有効性が高く、
合併症などのリスクが少ないのか、
その検証を元に的確なガイドラインが、
作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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原発性アルドステロン症の術後評価の国際基準(2017年作成) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
原発性アルドステロン症の予後判定.jpg
今年のthe Lancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
片側副腎切除を施行された原発性アルドステロン症の患者さんの、
予後判定を国際的に行った結果をまとめた論文です。

原発性アルドステロン症は、
アルドステロンという水と塩分を保持する役割をするホルモンが、
過剰に分泌されることによって、
高血圧や低カリウム血症を生じる病気で、
治療抵抗性の高血圧の患者さんの2割はこの病気である、
という報告があるほど、
高血圧の原因としては多い病気です。

この原発性アルドステロン症は、
片側の副腎に腺腫というしこりがあって、
そこからアルドステロンが分泌される場合と、
両側の副腎に複数の過形成というしこりがあって、
そこからホルモンが分泌される場合とがあります。

両側性の場合には通常薬による治療が選択され、
片側のみにしこりがある場合には、
その切除の手術が検討されることが一般的です。

それでは、片側の副腎切除術を施行した場合の、
治療の成功率はどのくらいでしょうか?

これはどのような基準で治療が成功したと判断するのかによって、
異なって来る事項です。

手術前には高かったアルドステロンが正常化し、
低かったカリウムが正常化するという検査値で考えると、
成功した手術であればほぼ100%検査値は改善します。
これを生化学的寛解(biochemical remission)と呼んでいます。
これまでの報告では、
専門施設の手術後の生化学的寛解率は、
96から100%と報告されています。

しかし、原発性アルドステロン症の主症状である高血圧が、
手術後に治る患者さんはそこまで多くはありません。

手術の治療後に高血圧の症状が改善することを、
臨床的寛解(clinical remission)と呼んでいますが、
この臨床的な寛解率は報告された施設や地域によって、
非常にばらつきがあり、
報告では16から72%とされています。
要するにてんでバラバラです。

何故こうした違いが生じるのかと言うと、
それは1つには臨床的寛解についての明確な国際基準のようなものがなく、
報告する個々の施設や研究者の独自の基準によって、
臨床的寛解が決められている、と言う点が大きいと考えられます。

このように基準がバラバラであれば、
施設や地域の違いを比較検証することは出来ません。

そこで今回世界中の研究者が協力をして、
一定の手術後の寛解の基準を定め、
それに基づく寛解率をそれぞれの施設の患者さんで適応して、
その世界的な比較を初めて試みました。

今回参加しているのは世界12か所の専門施設です。
具体的には、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、
ポーランド、スロベニア、ニュージーランド、日本が協力し、
日本では横浜労災病院、東北大学医学部附属病院、
国立病院機構京都医療センターが協力しています。
まず片側副腎切除後の改善の評価を、
次の6段階で行うことを取り決めています。

①臨床的完全寛解(Complete clinical success);これは術後に降圧剤なしで外来血圧が140/90mmHg未満が維持されることです。
②臨床的部分寛解(Partial clinical success);これは降圧剤の減量が可能になるか、術前と同じ治療で血圧は術前より低下している状態です。
③臨床的改善なし(Absent clinical success);これは術前と同じ治療で血圧が同等であるか、むしろ悪化する場合です。
④生化学的完全寛解(Complete biochemical success);これはカリウム値とアルドステロン濃度、アルドステロン・レニン比が正常となることです。
⑤生化学的部分寛解(Partial biochemical success);これは一定の数値の改善があるものの、術後も異常値が続いている状態です。
⑥生化学的改善なし(Absent biochemical success);これは術後もカリウム値やアルドステロン分泌の異常が術前と変わりなく継続するものです。
以上の6段階の判定は術後3か月後に最初に行い、
術後半年から1年後に最終判定を行うとされていて、
最終判定後も1年毎に判定は継続するとされています。
(以上の文面の訳語は個人訳で正式ではありません)

この判定基準で個々の専門機関の患者さんを判定したところ、
全体で705名の患者中、
臨床的完全寛解率は37%、
施設間での差は17から62%と幅の広いものになっていました。
ちなみに最も臨床的完全寛解率が高かったのはオーストラリアで、
日本の3施設の臨床的完全緩解率は、
東北大学附属病院が63例中28.6%、
横浜労災病院が76例中46.0%、
京都医療センターが40例中42.5%となっていました。

臨床的部分寛解率は47%、
そして生化学完全寛解率は94%でした。

臨床的完全寛解率は、
男性より女性が高く、
術前の高血圧の程度が軽く、
年齢も若いほど高い傾向が認められました。

世界中の一流の専門機関において、
このような統一基準での比較がされたことは非常に有意義なことで、
今後はこの基準をより広く活用することにより、
本当の意味での原発性アルドステロン症の予後が、
明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
数字に誤りと不充分な点がありましたので、
その部分の修正を行ないました。
(2019年9月20日午前8時22分修正)
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アガリスクエンターテインメント「そして怒涛の伏線回収」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の話題は演劇です。

それがこちら。
アガリスクエンターテインメント.jpg
緻密なシチュエーションコメディに勢いのある、
アガリスクエンターテインメントの新作が、
今新宿のシアター・ミラクルで上演されています。

今回はこの劇団得意の「会議もの」で、
以前は学校で学生の会議などが描かれましたが、
劇団員も年齢を重ねて来たので、
商店街の活性化のための会議、
という内容になっています。

それに加えて今回は、
作品作りを企画の段階から、
募集した観客との相談の上公開で行うという、
特殊な試みを同時に行っています。

役者さんは今回は非常に充実していて、
特にまとめ役の伊藤圭太さんが、
抜群の熱演で感心させられました。
アンサンブルはいつもながら抜群です。

内容についてはシャッター通りの商店街を、
活性化するために、
地元出身のコンサルタントが、
商店街のアーケードを撤去するというプランを出し、
それで商店街の面々が2つに割れてドタバタを繰り広げる、
という物語で、
この劇団の作品を見慣れていると、
定番で何となく展開が読めてしまう、
という感じはあるのですが、
お馴染みの面々がお馴染みのドラマを、
楽しそうに演じているので、
こちらも肩の力を抜いて、
楽しみながら見ることが出来ます。
小空間の劇場の中央に机と椅子を並べて会議室を作り、
それを取り巻くように客席を配置した構造も、
舞台の臨場感と親近感を高めるのに効果を上げています。

皆が最後に一致団結して、
1つの結論に達したところで、
物語に登場したディテールのうち、
まだその結論と関連がないものがある、
という指摘があり、
それを無理矢理に関連付けようという、
やや意味不明の段取り作りが始まります。
これが「怒涛の伏線回収」ということのようです。

別に悪くはないのですが、
「伏線回収」という言葉を台詞で出した時点で、
商店街の活性化の会議というリアルは後退して、
一種のメタフィクションの物語になってしまうのが、
ちょっと引っかかる感じがありました。
商店街の個人事業主にとって、
「伏線回収」という言葉は異次元のものだと思うからです。

伏線回収というと、
シベリア少女鉄道に無理矢理の伏線回収をテーマにした作品があって、
そこでは前半に謎めいた設定や謎のキーワードなどが、
次々と登場し、
その度に舞台横に数字が加算されて表示され、
それが後半伏線が回収される度に、
今度は減少してゆきます。
しかし、そもそも無理な伏線が多いので、
伏線を全身にくっつけた、
謎の怪獣が登場するなど、
出鱈目の極致のような回収作業になる、
というような怪作でした。

この場合は前半の謎の伏線だらけの物語と、
後半の怒涛の伏線回収の物語を、
明確に別物として作品世界が変貌するのが見どころになっていました。

また伏線回収のプロと言えば、
芝居としては三谷幸喜さんが天才的な手腕ですが、
必ずきちんと観客の印象に残る形で伏線やキーワードが提示され、
それが必ず巧妙にラストに再度提示されて、
大団円のパズルのピースとして嵌り込みます。

それと比較すると今回の作品は、
最後までリアルな会議としての枠組みが維持されていながら、
後半にやや唐突に「伏線回収」という用語が登場して、
後はその議論がキャストによって行われる、
という経過になります。

個人的にはどうもその辺りに違和感があり、
後半の伏線回収にはちょっと乗れませんでした。
また、回収するべき伏線が、
再度台詞として言わないと分からないものが多い、
という点にも物足りないものを感じました。
三谷幸喜さんの作品では、
別にわざわざそんな台詞はなくても、
観客の方が、
「あの話はどうなったんだっけ?」
と伏線を覚えているからです。

作品内容的にも、これまでの、
ある種守られた世界である学校での会議と比較すると、
商店街の活性化というのはかなりシビアな議論であり、
作品中での解決策は、
実際にはあまり解決にはなっていないように、
個人的には思いました。

私も商店街の個人事業主なので、
その立場から考えると、
現実のシビアさを物語が上手く捉えていないように、
どうしても考えてしまったのです。
生活に直結する経営の問題は、
笑い事ではそもそもないので、
それを「笑い」に変換するには、
もっと超絶技巧が必要となるように思うからです。

この辺りは脚本のもう一段の深化を、
今後に期待したいと思います。

そんな訳で今回はキャストの演技などはとても見応えがありましたが、
内容は特に後半の伏線回収を、
あまり楽しむことが出来ませんでした。

ただ、新しい取り組みが、
最初から大成功ということもないと思いますし、
今後もアイデア満載の常に勝負している舞台を、
楽しみに待ちたいと思います。

これからも頑張って下さい。
応援しています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ダンケルク」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。
何もなければ今日は1日家で過ごすつもりです。

休みの日は趣味の話題です。
今日は映画の話題が1本と演劇の話題が1本です。

まずこちらから。
ダンケルク.jpg
クリストファー・ノーランの新作「ダンケルク」が、
今ロードショー公開されています。

品川のIMAXで観て来ました。

これはサイレント映画の時代の戦争映画をお手本に、
それを現代の技術で精緻に映像化した、
かなりマニアックな作品で、
ストーリーは殆どなく、
台詞も極端に少なく切り詰められていて、
昔の戦意高揚映画にお決まりの、
「勝つまで闘いを止めないぞ!」というような、
アジテーションが最後に付く形式になっているので、
純粋の映像表現のみを楽しむ、
という感覚で観ないと、
おそらく落胆は必至の作品です。

ただ、映像はともかく凄まじくも素晴らしくて、
全編がIMAXフィルムで撮影されているので、
IMAXで観ないと全く面白くはないと思うのですが、
こんなものはテレビで観ても、
何1つ面白くはないと思いますから、
IMAXで体験してみる価値は、
充分にあると思います。

まさしく現場を体感しているという感じで、
最初に若者の目の前に、
グワっと浜辺の情景が広がるところも凄いですし、
戦闘機の空中戦の極めてリアルな迫力や、
沈んだ船に閉じ込められる感じ、
船倉に潜んでそこに銃弾が撃ち込まれて、
ボコボコ穴の開く恐怖感など、
物凄く手が掛かっていることは間違いのない映像の数々が、
これでもかと連続して大画面に現れるのですから、
映像としての映画を愛する人には、
たまらない魅力に満ちています。

ただ、その一方でストーリー重視で映画を観るという方には、
この映画はあまり向いていないと思います。
実際、一緒に行った妻は、
何ひとつ見る物がない、
ただ最初から最後までドンパチしているだけ、
と怒っていました。

僕はノーランの初期作の「メメント」が大好きで、
今回も3つの物語を時制を変えて並立的に描く、
というようなことが書かれていたので、
これは超絶技巧がまた観られるのかしら、
とそれはちょっと期待をしたのですが、
実際には後から言われれば、なるほどね、
という感じもあるのですが、
語り口の1つとしての技巧であって、
特にそれが前面に立っている、
と言う感じの映画ではありませんでした。

ラストに飛行機の不時着を、
長く長く引き伸ばすのだけは、
ちょっと面白いと思いました。

そんな訳で宣伝は極めて仰々しいのですが、
万人向けの映画でないことは確実なので、
凄い映像を観たいという方だけ、
必ずIMAXの劇場で「体感」して頂きたいと思います。

僕は結構好きです。
凄いですよ。
でも、ラストは何か、
モヤモヤします。

それでは次の記事に続きます。
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「追想」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
追想.jpg
1975年のフランス映画でカルト的な人気のある「追想」が、
今新宿のシネマカリテでリバイバル公開されています。

スクリーンで観る機会は滅多にないと、
結構無理をして足を運びました。

監督のロベール・アンリコは、
アラン・ドロンとリノ・バンチェラの「冒険者たち」が、
日本では非常に有名で、
僕も確か高校生の時に名画座で観て、
とても感銘を受けました。

サスペンスなのですが切ない青春映画の趣きがあり、
ラストには胸の詰まるような情感と、
説明不能の感動がありました。
青い空と青い海の鮮やかな色彩も心に残ります。

テレビシリーズの「ルパン三世」の幾つかの作品には、
この「冒険者たち」の影響が色濃く投影されています。

この「冒険者たち」に次いで、
アンリコ作品で日本で人気の高いのがこの「追想」です。

時は1944年の南フランスで、
ノルマンディ上陸作戦が敢行され、
一気にフランスの戦局はドイツにとっては不利となったのですが、
まだ敗走するドイツ軍による残虐行為や、
ドイツ軍に協力する民兵の暗躍などもあって、
まだ情勢は混沌としています。

フィリップ・ノワレ演じる主人公は裕福な外科医で、
前妻との間に娘が1人いて、
うら若いロミー・シュナイダー演じる美女と再婚しているのですが、
レジスタンスに協力していたため、
ナチスや民兵には目を付けられています。

危険を察知して妻と娘を、
自分が持っている田舎の古城に逃すのですが、
その古城に敗走中のドイツ軍の部隊が侵入し、
村人共々妻と娘は無残に殺されてしまいます。

それを知った主人公は、
隠してあったショットガンを手に取り、
城で敗走の時をうかがうドイツ軍の部隊に、
たった1人で復讐を試みるのです。

「冒険者たち」ほどではありませんが、
この作品も不思議な抒情と陶酔に満ちていて、
とても魅力的な作品です。

舞台はフランスの古城で、
隠し部屋や隠し通路、地下室や深い井戸などがあり、
主人公はそこに身を潜めながら、
1人ずつナチの兵士に復讐を果たしてゆきます。
1960年代に盛んに作られた、
これはゴシックホラー映画のパターンで、
古城に身を潜める怪物の役回りを、
主人公が演じていて、
怪物に襲われる人々の役回りを、
ナチの兵士が演じるという、
不可思議な入れ替わりが設定されているのです。

ホラー映画の道具立てで戦争の復讐劇を演じるという、
なかなかユニークな趣向です。

抜けるような青空と田園の風景、
日差しを浴びるの古城の土壁のシルエット、
そしてこの映画の象徴とも言うべき、
火炎放射器から吹き上げられる紅蓮の炎。
「冒険者たち」と同じようにこの映画も色彩が美しく、
それ自体が感情を揺さぶるように心に残ります。

特にロミー・シュナイダーが無残に炎に焼かれる場面と、
ナチの将校の目の前の鏡が見る間に歪み、
それを突き破って炎が噴出し復讐が貫徹される瞬間は、
極めつけの名シーンです。

この映画のロミー・シュナイダーは、
殆ど回想で登場するだけなのですが、
その年増の艶っぽい姿は極めて魅惑的で美しく、
改めて昔の銀幕の女優さんの素晴らしさを感じました。
また、CGなどない時代で、
スクリーンプロセスや合成なども、
殆ど使っていないと思うのですが、
ロミー・シュナイダーが丸焼けになる場面や、
城が炎に包まれる場面などは、
極めてリアルで、
どうやって撮ったのか不思議に感じるほどです。

これはまあ昔観たらとても感銘を受けて、
トラウマ的に心に残った映画だと思いました。

ただ、どうも徹底的に年を取ってしまったので、
作品のアラの方が何となく目について、
作品世界に没入する、
という感じの鑑賞にはなりませんでした。

年を取るのは嫌だなあ、とちょっと切なく思いました。

この時代の映画は、
編集はかなり荒いですよね。
編集権が監督にはなかったせいもあるのだと思いますが、
場面の繋がりがあまり上手くはなく、
現実の復讐劇とかつての妻との愛の日々の回想が、
頻繁に交錯して現れるのですが、
回想のエピソードにはあまり魅力がなく、
つぎはぎの感じであまり復讐劇のサスペンスが盛り上がりません。

またデジタルで修復された映像は、
ぶれ方がフィルムのそれとは明らかに異なっているので、
フィルムの映画に親しんできた世代としては、
家でブルーレイを観ているようで何か違和感がありました。

同時期にペキンパーの「戦争のはらわた」も観たのですが、
矢張りデジタル修復された映像の質感とぶれ方には違和感があり、
あの映画も編集は無茶苦茶で粗雑なので、
昔の映画は確かにこんなものだったなあ、
とは一方では思いながらも、
落胆する気持ちが大きくなってしまいました。

デジタル映像というのは、
今の映画を観るには良いのですが、
過去のフィルムの映画を再生するには矢張り根本的な問題があって、
過去の映画はもう、
映画館では観ない方が良いのかも知れない、
と今回はとても強く感じることになったのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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