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「パターソン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
パターソン.jpg
ジム・ジャームッシュ監督の新作「パターソン」が、
今ロードショー公開されています。

バスの運転手の平凡な日常を、
淡々と1週間描くだけの映画、
というような説明がされていたので、
どんなものかなあ、と、
観るかどうかかなり迷ったのですが、
観て本当に良かったと思いました。

確かに前半はその通りの内容なので、
中段の水曜日と木曜日の辺りは、
ちょっときつい感じもあるのですが、
月曜日から始まった物語が、
金曜日から週末に掛けて、
他人から見ればとても些細な、
しかし、主人公にとっては人生を揺るがすような展開を見せ、
そして最後には号泣するような感じとはまるで違う、
とてもジンワリとした、
心に沁み通るような感動が待っています。

その最後の勘所に、
永瀬正敏さんが絡んでいる、
というところもとても嬉しいのです。

今年これまでに観た映画の中で、
観終わった瞬間にもう一度観たくなったのは、
この作品が初めてでした。

これはとてもとてもお勧めします。

以下少し作品の内容に踏み込みますので、
鑑賞後にお読み下さい。
この映画は予備知識はない方が絶対良いです。

作品はニューヨークに近いパターソンという小さな町(実在)に住む、
名前もパターソンというバス運転手の青年の、
月曜日から翌週の月曜日の朝までの1週間を、
妻との目覚めから運転手の仕事、
そして夜のバー通いという日課を基調音として、
ジャズのアドリブのように、
少しずつ微妙な変化を交えながら、
綴ってゆきます。

パターソンは地元出身の詩人に傾倒していて、
毎日自分の秘密のノートに、
自作の詩を綴るのが人生の楽しみになっています。

日常は極めて淡々と展開し、
そこに日常をテーマにした詩(実在の詩人のもの)が、
映画の主人公の自作として紹介されます。

時事ネタ的なものは全く登場しませんし、
日常に変化が起こるとしても、
バスの電気系統が故障して、
乗客を降ろす事態になったり、
バーでお客の揉め事があったり、
妻が高いギターを通販で買って、
カントリー歌手になりたいと言ったり、
と言う程度のことです。

妻は主人公の詩が気に入っていて、
それを是非コピーに取って読ませて欲しいと、
何度もその約束を主人公としますが、
主人公はあまりそれを真面目に聞いていません。
2人には子供はおらず、
ブルドックを1匹飼っています。
家の前の地面に固定された郵便受けは、
何度主人公が治しても、
何故か夕方にはいつも曲がっています。

こうした微妙な伏線が、
週末にある悲劇を起こします。

主人公が土曜の夜に妻と観る映画は、
実際のユニバーサルの1930年代の古典的怪奇映画、
「獣人島(the Island of Lost Souls)」です。
これはウェルズの「モロー博士の島」が原作で、
奇怪な獣人達が主人に反逆するのですが、
それも微妙に伏線になっているのです。

この映画には人生の素晴らしさと、
その儚さと切なさの全てが入っています。

ジャームッシュにして初めて為し得たある種の境地で、
水墨画を見るようなわびさびの美しさがあります。

最後に登場する謎の日本人永瀬正敏が、
また最高なのです。

もう終わってしまいそうな単館上映ですが、
とても素晴らしい作品なので、
ちょっと無理をしても是非ご覧下さい。

これはもう絶対のお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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あくびの伝染のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
あくびの伝染.jpg
今年のCurrent Biology誌に掲載された、
あくびがうつるメカニズムについての論文です。

他人が目の前であくびをすると、
特別眠くなくても、
何かつられるようにして自分もあくびをすることは、
皆さん誰でも経験があることではないかと思います。

まるで風邪がうつるように、
「あくび」という現象がうつるのは何故でしょうか?

あくびがうつるという現象は、
相手の行為や音声を無意識に真似るという意味で、
反響現象(echophenoena)の1つの典型と考えられています。

あくびの伝染という現象は、
当初は人間だけの特徴と考えられていましたが、
チンパンジーなどの類人猿でも確認され、
類人猿以外の猿や犬でも同様の現象が確認されています。

人間の脳にはミラーニューロンという、
相手の行動や音声をそのままに模倣する、
という仕組みがあり、
赤ちゃんがお母さんの動作や言葉を真似て、
そこから成長してゆくのも、
このミラーニューロンの経路が関与していると言われています。

反響現象も,
当初はこのミラーニューロンの関与が大きいとされていましたが、
上記文献の著者らのデータでは、
むしろ運動を司る大脳の一次運動野の興奮と、
その生理学的抑制との関連が強いのではないか、
という仮説が得られていました。

今回の研究では、
TMS(経頭蓋磁気刺激)という手法を用いて、
あくびが伝染する時に脳内で起こる現象を検証しています。

TMSは磁気刺激によって、
非侵襲的に脳の特定部位を刺激することにより、
その反応パターンを解析して、
脳のどの部分がどのような機能を持っているのかを分析するもので、
最近ではうつ病などの治療にも応用が試みられています。

ボランティアの成人36人に、
あくびをしたくても我慢する、
という指示と、
我慢をしなくても良いという指示を出して、
他人があくびをしている映像を見せ、
その時の反応を検証してみたところ、
あくびは我慢するようにという指示を出すことにより、
より伝染し易さが増し、
それは大脳運動野の興奮のしやすさと、
その生理学的抑制の強さとに関連していることが、
機能的に確認されました。

つまり、
運動野が興奮しやすいか、
その抑制が掛かりにくいという体質があると、
あくびの伝染が起こりやすく、
それはあくびをするな、という命令により、
増強されるというのです。

無意識の癖が、
それを指摘されしないように命じられると、
却って強くなったり、
それをしたいという衝動が強くなることは、
誰でも実感として感じていることだと思いますが、
それはこの反響現象のメカニズムと、
深い関連のある現象のようです。

チックや発達障害における同じ動作の反復など、
コントロールの困難な無意識の動作の異常は、
おそらく同様のメカニズムで生じている可能性が高く、
今回の知見はその非侵襲的で薬物を用いない治療の可能性を、
開くもののように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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治療抵抗性高血圧の頻度とその推移(2017年イギリスの報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は木曜日なのですが、
午後は石原が研修会出席のため休診とさせて頂きます。
受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
治療抵抗性高血圧の疫学.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
イギリスにおける治療抵抗性高血圧の頻度を、
年代毎に検証した論文です。

治療抵抗性高血圧というのは、
利尿剤を含む3種類以上の降圧剤を、
充分量使用しても血圧が140/90mmHg以上ある、
という重症の高血圧のことを指していて、
上記文献では利尿剤を含む4種類以上の降圧剤を使用しないと、
目標血圧に達しない場合も、
その定義に含めています。

治療抵抗性高血圧の患者さんは、
通常の高血圧の患者さんの2倍以上、
心血管疾患のリスクがあると報告されていて、
その管理をどうするかは臨床上の大きな問題です。

これまでの報告によると、
高血圧の患者さん全体の14から16%は、
この治療抵抗性高血圧であると推計されています。

ただ、こうしたデータはそれほど精度の高いものではなく、
また時代による変化も反映はしているとは言えません。

今回の検証は、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用したもので、
1995年から2015年という20年間の、
131万人余りのデータを解析した、
非常に大規模なものです。

その結果、
年齢を平均化した1996年の治療抵抗性高血圧の発症率
(その年に新規に診断された患者さんの比率)は、
高血圧の患者さん年間100人当たり0.93件(95%CI;0.87から1.00)で、
2004年には2.07件(95%CI;2.03から2.12)とピークに達し、
その後は低下に転じて、
2015年には0.42件(95%CI; 0.40から0.44)まで低下しています。

年齢で平均化した、
その時点での高血圧の患者さんに占める比率である有病率は、
1995年には1.75%(95%CI;1.66から1.83)であったものが、
2007年には7.76%(95%CI;7.70から7.83)とピークに達し、
その後はほぼ横ばいとなって、
2015年には6.46%(95%CI;6.38から6.54)とやや減少に転じています。

年代は問わない傾向として、
治療抵抗性高血圧は、
65から69歳の年齢層と比較して、
80歳以上でより有病率が高い傾向にありました。

このようにイギリスにおいては、
1995年から2004年までは増加していた、
治療抵抗性高血圧の発症率が、
それ以降は著明に減少に転じています。

この説明として上記文献の解説では、
1995年以降高血圧の健康への悪影響が重要視され、
より多くの患者さんが診断されることになったため、
その頻度は増加したが、
治療の進歩や強力な降圧作用を持つ薬剤の普及、
また生活習慣の改善などによって、
その発症率は減少に転じたのではないかと推測しています。

確かに減塩の普及は1つの要因ではあると思いますし、
上記文献には記述はありませんが、
原発性アルドステロン症などの二次性高血圧症が、
より適切に診断されることが多くなったことも、
その現象の一因にはなっているように思います。

どうやらこれまで言われていたより、
一般の高血圧の患者さんにおける、
治療抵抗性高血圧の比率は低いものであるようです。

おそらく日本においても同様の傾向はあると思いますが、
高齢化の進行に伴い、
その発症率は減少しても、
実際にはその有病率は当面は増加を続けると思われるので、
治療抵抗性高血圧の管理の重要性は、
今後も増すことは間違いがないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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形成外科的に最も魅力的な女性の唇を科学する [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
理想の唇を科学する.jpg
今年のJAMA Facial Plastic Surgery誌に掲載された、
理想の女性の唇の形を検証する、
というちょっと科学誌としてはユニークな感じのする論文です。

これは実際にどのような唇の形が、
最も理想的な形状であるかを、
複数の画像への評価から解析したもので、
インターネットを利用して、
多くの意見を集積したもののようですが、
その集計などの詳細については、
本文を読んでも良く分かりません。

引用文献があって、
詳細はそちらにと書いてあるのですが、
それを読むのにも結構お金が掛かるので、
馬鹿馬鹿しくなってあきらめました。
ただ、男性のみにアンケートする、
というようなものではないようです。

何故こうしたミスコンテストまがいの調査をするのかと言うと、
病気で顔面が変形した方や失われた方の形成治療をするのに、
その基本となる理想の形状として、
必要になる、ということのようです。

勿論、それだけの理由ではなく、
興味を惹くという部分もおそらくはあるのだと思います。

また欧米的な考えの基礎には、
物には理想の形があるという、
プラトンから連なるイデア論や、
神様が理想的な形状で人間を作った、
という宗教的な考えもあるのだと思います。

唇の形状の複数の女性の写真でCGにより修整を加え、
様々なパターンを作って比較をしています。
具体的には唇が顔全体に占める面積と、
その上下のバランスの理想形を検証しています。

こちらをご覧下さい。
唇の大きさ.jpg
これが元画像の唇の大きさを複数パータンで変えて、
そのうちのどれが最も魅力的で理想的な形状であるかを、
検証してもらうためのテスト画像です。

もう1つご覧下さい。
唇の上下.jpg
こちらは唇の上下のバランスを変えて、
同様の検証を行なっています。

検証の結果としては、
テスト画像そのものの唇の占める面積を、
53.5%大きくするのが最も理想的な形状で、
上の唇と下の唇の幅の比率は1対2が最も理想的で、
逆に上が大きい2対1が最も評価が低いという結果になっていました。
実際の唇の占める面積は、
顔面の下3分の1の9.6%が最も理想的である、
という結果になりました。

それがどうした、
という気がしないでもありませんが、
形成外科の分野では、
こうした基礎データが手術の方向性を決める上で、
重要な情報の1つになることは、
間違いがないのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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甲状腺機能と生命予後について(2017年の住民研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
9月28日(木)の午後は休診になりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
甲状腺機能と生命予後.jpg
2017年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
甲状腺機能と生命予後についての住民研究の論文です。

甲状腺は首ののどぼとけの下の辺りに、
蝶が羽を広げたような形状で、
左右に広がる腺組織で、
そこから身体の代謝や交感神経の働きを調節する、
甲状腺ホルモンが分泌されています。

甲状腺ホルモンの分泌量は、
脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)で調節されていて、
一般的に甲状腺機能の簡単なスクリーニングとしては、
このTSHと遊離T4という甲状腺ホルモンの2種類の測定が行われます。

下垂体に大きな異常がなければ、
TSHが高くて遊離T4が低ければ、
甲状腺機能低下症ということになりますし、
TSHが低くて遊離T4が高ければ、
甲状腺機能亢進症ということになります。

現在病気のない健康な人の95%が含まれる範囲を、
TSHも遊離T4も正常値(基準値)として設定していて、
今回のヨーロッパの研究で採用されている基準値は、
TSHが0.40から4.0mIU/L、
遊離T4が0.86から1.94ng/dLとなっています。
日本の検査機関などが設定している基準値も、
それほど大きな差はありません。

それでは、この範囲にデータが収まっていれば、
甲状腺機能については健康上の問題はないと、
言ってしまって良いのでしょうか?

その点については疑義を呈する報告が複数存在しています。

この基準値は現行健康成人であれば、
年齢に関わらずに適応されています。

しかし、高齢者においては、
少し機能低下に傾いた状態、
つまりTSHは少し高めで遊離T4は少し低めであった方が、
心血管疾患のリスクが低く、
生命予後も良いとするデータが複数存在しています。

これは交感神経が心臓を刺激するため、
高齢となり心機能が生理的にやや低下した状態においては、
その刺激が少ない方がむしろ健康上のメリットが大きい、
というように考えると理に適っているようにも思えます。

それでは基準値内であっても、
数値がやや高めの人と低めの人の間で、
その後の健康や生命予後に違いはあるのでしょうか?

今回の研究は、
オランダの大規模な疫学データを活用して、
基準値内のTSHと遊離T4の数値の高低が、
その後の生命予後に与える影響を、
心血管疾患の有無によって比較し、
またこれまであまりデータ化されていなかった、
余命の延長や短縮への影響について検証しています。

対象となっているのは、
大規模疫学研究の対象者のうち、
TSHと遊離T4濃度が基準値内の7785名で、
平均で8.1年の経過観察を行なっています。
その間に789名が心血管疾患を発症し、
1357名が死亡しています。

ここでTSHと遊離T4のデータを、
低いものから高いものへ3等分にして比較すると、
心血管疾患の発症とTSHの数値との間には有意な関連はなく、
遊離T4との関連についてみると、
遊離T4が高めの群は、
低めの群の1.32倍(95%CI;1.10から1.58)
心血管疾患の発症リスクが有意に高くなっていました。

心血管疾患の発症がない場合の死亡リスクは、
TSHについては低めの群よりも、
高めの群で24%(95%CI; 0.64から0.91)有意に低下していて、
遊離T4については低めの群よりも、
高めの群で1.45倍(95%CI; 1.21から1.73)有意に増加していました。

心血管疾患の発症がある場合の死亡リスクは、
TSHについては高い方がリスクの低い傾向はあるものの有意ではなく、
遊離T4については低めの群よりも、
高めの群で1.64倍(95%CI; 1.32から2.02)有意に増加していました。

つまり、
甲状腺機能が基準値内であってもやや高めであると、
その後の死亡リスクは高くなる可能性があり、
それが心血管疾患を発症しているような人では、
より高くなる可能性がある、
ということになります。

ここで以上のデータを元に、
50歳の時点の男女の甲状腺機能の数値が、
その余命に与える影響を計算してみると、
心血管疾患を発症した場合、
TSHが基準値内で高めであることは、
低めであることと比較して、
その後の余命を男性で2.0年(95%CI;1.0から2.8)、
女性で1.4年(95%CI;0.2から2.4)、
それぞれ有意に延長していました。
これが心血管疾患を発症していない場合では、
同様にその後の余命を男性で1.5年(95%CI;0.2から2.6)、
有意に延長していましたが、
女性では有意な延長は認められませんでした。

遊離T4について同様に見てみると、
心血管疾患を発症している場合、
低めでることと比較して遊離T4が高めであることは、
男性で3.2年(95%CI;-5.0から-1.4)、
女性で3.5年(95%CI;-5.6から-1.5)、
それぞれ有意に余命を短縮していました。
これが心血管疾患を発症していない場合で、
男性で3.1年(95%CI;-4.9から-1.4)、
女性で2.5年(95%CI;-4.4から-0.7)、
それぞれ有意に余命の短縮を認めていました。

このように基準値内での変化であっても、
50歳の時点での甲状腺機能が、
やや高めであることがその後の余命に与える影響は、
今回の検討では意外に大きなもので、
それも特に心血管疾患のリスクのあるような人で、
顕著になっていました。

ただ、3群間で必ずしも直線的なリスクの増加はなく、
本来鋭敏である筈のTSHよりも、
遊離T4でより明確な差が出ているなど、
数値の信頼性にやや疑問を覚える点もあり、
中高年になるとやや甲状腺機能は低下していた方が、
その後の心血管疾患のリスクは少ない、
という知見は事実であると思いますが、
今回のデータのみを元に、
基準値の妥当性を議論することはやや時期尚早であるように思います。

また今後の知見の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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急性の咽頭痛へのステロイド使用のガイドライン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
今週木曜日(28日)の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ステロイドを咽頭痛に.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
急性の咽喉の痛みに対して、
1回のみ比較的大量のステロイド剤を使用する、
という治療の新しい考え方の、
一定のガイドラインを提示した記事です。

急性の咽喉の痛みというのは、
非常に良く見られる症状で、
その多くは短期間で治療をしなくても改善するものですが、
中には急激に悪化して、
食事が全く摂れなくなって、
入院を要するような事態になることもあります。

扁桃腺の炎症の場合には、
原因が溶連菌という細菌であれば、
お子さんでは抗生物質を使用して、
除菌を図ることが推奨されています。
そのために、一般の臨床において、
溶連菌の迅速テストが普及しています。

ただ、大人の場合には、
それほど明確な方針が定まっている、
という訳ではありません。

未治療で様子を見るのと比較して、
炎症を抑える作用が強いステロイド剤や、
抗生物質を症状出現後すぐに使用した場合に、
より早期に症状が改善した、
という臨床データが幾つかあります。

ただ、抗生物質とステロイドを併用している研究が多く、
ステロイドの単独の作用については明確ではありません。

2017年の4月のJAMA誌に、
急性の咽頭痛の症状に対して、
すぐにステロイドを単回大量経口投与した場合と、
何もしなかった場合とを、
厳密な方法で比較検証した論文が掲載されて話題になりました。

同時期にブログ記事にもしています。

イギリスのプライマリケアの複数の医療機関において、
1週間以内に発症した、
咽喉の痛みと嚥下時の痛みのある18歳以上70歳以下の患者さんで、
すぐに抗生物質などによる治療は必要ないと、
主治医が判断した576名を登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分け、
一方はステロイド剤を1回内服し、
もう一方は偽薬を使用して、
登録後24時間と48時間の時点での、
症状の消失の頻度を比較検証しています。

患者さんには抗生物質をあらかじめ渡しておいて、
病状が48時間後に改善しなければ使用が指示されます。
直近のステロイド剤の使用や抗生物質の使用者、
妊娠中の女性やその可能性のある人、
糖尿病の患者さんなどは除外されています。

ステロイドはデカドロンが10ミリグラム、
1回で使用されています。
これはプレドニゾロンで60ミリグラム、
コートリルで250ミリグラムくらいに相当する、
かなりの高用量です。

その結果…

登録後24時間で完全に症状が消失した頻度は、
ステロイド使用群で全体の22.6%に当たる65名だったのに対して、
偽薬群では全体の17.7%に当たる49名で、
統計的には2群に有意な差はありませんでした。
48時間後に症状が消失した頻度では、
ステロイド使用群で35.4%に当たる102名であったのに対して、
偽薬群では27.1%に当たる75名で、
この差は8.7%(95%CI;1.2から16.2)で有意と判断されました。

咽頭培養は施行されていて、
溶連菌は2割弱くらいで検出されていましたが、
その差はステロイドの効果の差とは関連していませんでした。

このように、
咽頭炎もしくは扁桃炎と判断した段階で、
重症でなければステロイドを単回大量で使用すると、
48時間以内に症状が消失する頻度は、
10%程度増加する可能性があります。

これが最善の治療であるとは、
勿論現時点では言えませんが、
症例を選んでのステロイドの使用は、
症状が強い場合には1つの選択肢ではあると考えられます。

この研究結果及び、幾つかの先行研究の結果などをまとめて、
今回のガイドラインが作られました。

その一部がこちらです。
ステロイドの咽頭痛への使用の図.png
5歳以上の年齢の強い咽頭痛の症状に対して、
1回のみ成人では10ミリグラム、
小児では体重1キロ当たり0.6ミリグラムの、
デキサメサゾンという高力価のステロイド剤を、
経口で1回のみ使用します。

抗生物質や消炎鎮痛剤の使用は、
必要に応じて併用されます。

免疫低下状態や伝染性単核球症というウイルス感染症、
手術や人工呼吸器の装着による咽頭痛は、
ステロイド治療の禁忌となっています。

このステロイド治療により、
咽頭痛の改善や症状の持続期間の短縮が期待出来ます。
一方で使用するのは1回のみですから、
強い副作用は通常はあまり想定はされません。

そのために今回のガイドライン作成となったのです。

ただ、これは敢くまで「弱い推奨」というレベルのものなので、
常に行った方が良い、というものではなく、
症例に応じて、1つの選択肢として検討するべきものなのだと思います。

現時点で不明であるのは、
単回とは言え大量のステロイドを使用することが、
本当に重篤な副作用に繋がることはないのか、
と言う点と、
しばしばみられる再発性の扁桃炎に対して、
ステロイドを使用することが適切かどうか、
というような点にあり、
今後の検証が必要だと記載されています。

欧米では臨床的なやや些細な、と思われるような事項や、
それぞれの医師の個性によって、
変わりがちな事項について、
その都度検証が行われ、
ガイドラインが作成されていて、
そうした点は是非、
日本でも見習うべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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「散歩する侵略者」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
散歩する侵略者.jpg
僕の大好きな黒沢清監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
これはイキウメの前川知大さんの戯曲(後に小説化)が原作で、
二重の意味で興味のある作品でした。

「散歩する侵略者」は前川さんの代表作の1つで、
イキウメで何度か再演されていて、
今年も映画化に併せての再演が控えています。
別に集客のあるスターが出演するという訳ではないのに、
完売で追加公演まで決まる盛況のようです。

僕もイキウメ版は一度観ましたが、
人間の「観念」を奪い取る宇宙人、
という発想自体は如何にも前川さんというものなのですが、
妻の「愛」を奪った宇宙人が苦悩する、
というラストにはやや脱力する感じがありました。
しかも、このラストを再演の度に前川さんは直していて、
それも腰が据わらない感じがして納得出来ないのです。

僕はイキウメも前川さんのお芝居も大好きなのですが、
この「散歩する侵略者」は正直あまり好きではありません。

このそれ自体観念的な地味な戯曲を、
どうやって黒沢監督は映画化するのだろうと思うと、
1950年代くらいの侵略SF映画のテイストで、
なかなか鮮やかにスペクタクル化していました。
原作のテイストは「観念」を奪うという趣向のみ残して、
後は昔懐かしいSF娯楽映画の、
やや歪んだ不思議な世界が、
見どころ満載で展開されていたのです。

1950年代はアメリカを、
目に見えない共産主義の恐怖が覆っていて、
それが赤狩りに繋がるのですが、
その「見えない侵略者」がSFに変化して、
「盗まれた町」や「惑星アドベンチャー」に代表される、
一連の侵略物SFが生まれました。
パターンはほぼ一緒で、
住民が密かに宇宙人に入れ替わってしまい、
いつの間にか人間は少数派となり、
主人公達はその恐怖の中に逃げ回ることになるのです。

今回の作品は中でも「惑星アドベンチャー」との類似が顕著で、
そこでは田舎町の住民が1人ずつ宇宙人に入れ替わり、
少年と犬だけが真実を知って宇宙人に闘いを挑み、
警察や軍隊も登場して活劇が繰り広げられるのです。

これをそのまま今の日本を舞台にやろうと言うのは、
ちょっと常軌を逸しているようにも思えるのですが、
それが意外にそうでもないのではないか、
という計算が、黒沢監督の頭にはあったのではないかと思います。

つまり、今の世界はほぼほぼ、
50年代の侵略SFの荒唐無稽さに近いのではないか、
今の世界を表現する最適な方法は、
実はこうした荒唐無稽さにこそあるのではないか、
と言う計算です。

そしてその計算は、
ある程度正鵠を射ていたように思います。

長谷川博己さん演じるジャーナリストや、
主婦でデザイナーの長澤まさみさんが、
人類が滅びると理解していながら、
宇宙人の方にシンパシーを感じてしまったり、
宇宙人と戦っている筈の国家が、
得体の知れないインチキ集団のようにしか見えなかったり、
宇宙人自体の無防備な無軌道さにしても、
微妙に日本の今とリンクしているように思えるのが、
ある意味とても恐ろしく感じます。

押しも押されぬ大家となった感じの黒沢監督ですし、
昨年の「クリーピー」にしても、
「ダゲレオタイプの女」にしても、
かなり暗く重厚な感じの作品でしたから、
もうそんな感じなのかなと思っていたのですが、
今回の作品は黒沢監督のキャリアの中では、
初期作を思わせるようなアナーキーで破れかぶれのような感じもあって、
笑えるかどうかはともかくとして、
スラプスティックなコメディのような描写もあります。

黒沢監督の作品をあまり観慣れていない方には、
何処までが本気なのか分からない気分になるかも知れません。
僕も正直キョンキョンが出て来るラストなどは、
ぶっ飛び過ぎていて如何なものかなと思いますし、
堂々と「愛」という観念の素晴らしさを盛り上げるのも、
原作通りとは言え、
かなり気恥ずかしい思いもするのですが、
「愛」を奪うラストは、
「ドクトル・ジバゴ」と同じと考えれば、
文学と言えるようにも思います。

黒沢清監督の映像の大ファンとしては、
オープニングの血まみれ女子高生が道を歩き、
ワンカットで後ろで車が大爆発というショットからして凄いですし、
監督が以前からこだわっているという銃撃戦を、
今回は派手にやっているのも嬉しい気がします。
パトカーのガラスを手で突き破っての拳銃発射とか、
ワンカットでの銃の乱射、
女子高生の宇宙人を即物的にはねる車のシーンにも凄みがあります。
長谷川博己さんが死ぬ爆撃のシーンなどは、
おそらく黒沢監督のフィルモグラフィの中で、
最も派手でハリウッド映画的な、
アクションスペクタクルではないでしょうか?
主人公の夫婦2人の道行に、
異様な色の夕景がバッと広がる辺り、
ドライブインの部屋で語らいながら、
窓の向こうは何か凄いことになっている、
というようなお馴染みの描写も素敵でした。

これはまあ黒沢監督が、
滅びに一直線の今の世界を笑ってしまおう、
という怪作で、
吉田大八監督の「美しい星」も、
同じような発想の作品でしたが、
間違いなく出来は「散歩する侵略者」の方が上でした。

これはとてもお勧めですが、
受け付けない方も多いと思います。
どうかその本質を見誤らないように、
黒沢版惑星アドベンチャーを、
楽しむ気分で観て頂ければと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「三度目の殺人」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。
朝からちょっと買い物に出て、
今戻って来たところです。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
三度目の殺人.jpg
福山雅治さんと役所広司さんの主演で、
是枝裕和監督の新作映画が今公開されています。

是枝監督のこれまでの路線とはかなり異なる、
福山雅治さん演じる弁護士と、
殺人自体は自白しながらコロコロと発言を変える、
役所広司さん演じる再犯の殺人犯との対決を描いた、
裁判物のサスペンスです。

これはフィルム・ノワールなんですよね。
フリッツ・ラングやジョン・ヒューストンの、
モノクロのハードボイルド映画みたいな感じ。
ヒッチコックの「めまい」や、
「セブン」や「羊たちの沈黙」、
黒沢清監督の「CURE」辺りも入っているんですが、
基本的には1940年代くらいのノワールが基本ラインなんだと思います。

広瀬すずさんは、
現在の是枝監督のお気に入りだと思うのですが、
足の悪い少女を演じていて、
学校から制服の上に深紅のダッフルコートを着て、
足を引きずりながら下校する姿を、
弁護士の福山雅治が尾行するんですよね。
これだけでノワールの呼吸で、
なかなか良い感じの絵になっているのです。

この映画の広瀬すずさんは、
とても美しく魅力的です。

主演の2人もとても良いんですよね。

福山雅治さんの弁護士の、
何か斜に構えた屈折した造形も、
それらしくてなかなか良い感じですし、
対する犯人の役所広司さんも、
レクター博士の向こうを張ったような、
凄みのある芝居、それでいて、
ちょっと弱い人間的な苦悩も見せていて、
それが矛盾せずに1つの人格に溶け合っている辺りも、
なかなかに凄いと思います。

話はある意味とてもありがちで、
読めてしまうような感じがある一方で、
ラストはかなりモヤモヤする感じになっているのですが、
映像的なディテールが上手いですよね。
謎の十字架のサインというのは、
「CURE」の頂きと思いますが、
ラストの十字路に繋がるのは洒落ていますし、
役所さんが飼っていた鳥を殺して、1羽だけ逃げて、
それが後半に戻って来たり、
福山さんの今は離れている娘さんがウソ泣きをして、
それが最後に福山さんの本物の涙に繋がったり、
雪の北海道の雪だるまの思い出が繋がったり、
ともかく丹念に絵的に考えていると感心します。

撮り方も何度も何度も繰り返される接見で、
役所さんと福山さんを隔てている硝子が、
後半溶けたように見えたり、
2人の顔が反射でオーバーラップしたりと、
凝りに凝っています。

日本映画で裁判ドラマというと、
野村芳太郎監督の「事件」とかをどうしても思い浮かべるので、
ああいう、クライマックスで日本的情念大爆発みたいな、
そうしたものをどうしても少し期待してしまうのですが、
この作品にはそうしたカタルシスはなく、
重要人物の告白が、
結局なされないままに終わってしまい、
司法としての幕引きがされてしまう、
というモヤモヤしたものになっていて、
その後の接見でもそうしたものは何も出て来ないので、
ストレスは溜まるのですが、
色々考えた上で、
福山さんの無自覚な一筋の涙と、
十字路での当惑で終わるというのが、
是枝イズムなのかも知れません。

2時間を超える長さですが退屈はしませんし、
客席の反応も悪くありませんでした。
ヒットしてくれたらいいな、
と思いますが、
どうなのでしょうか?

観てから感想を友達と話したくなるような映画です。
そこそこお勧めです。
ただ、個人的には司法の意味を問う、
というような映画ではなく、
フィルム・ノワールの是枝監督版として、
観るのが正解のように感じました。
その路線としてはとても良く出来ていると思いますし、
何度も観返したくなる、
「残る映画」になっていると思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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味噌や納豆の高血圧予防効果(多目的コホート研究サブ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。

今日は1年に一度の人間ドックの日です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
味噌の血圧上昇予防作用.jpg
今年のthe Journal of Nutrition誌に掲載された、
大豆の発酵食品に高血圧の予防効果があるのでは、
という有名な日本の疫学データのサブ解析結果の論文です。

大豆に含まれているイソフラボンというポリフェノールには、
血管の平滑筋の増殖を抑えるなど、
動脈硬化を予防するような作用のあることが報告されていて、
心血管疾患の予防や、
高血圧の予防に有効であるという可能性が示唆されています。

ただ、動物実験では高血圧予防効果が報告されている一方で、
大豆蛋白の摂取と高血圧との関連を検証したデータを、
まとめて解析したメタ解析の論文では、
あるものでは血圧降下作用が認められたとされている一方で、
別のものでは有意な降下作用が認められていないなど、
その結果は一定していません。

ここで1つ原因として考えられるのは、
大豆食品と大豆発酵食品(味噌や納豆など)との違いです。

大豆に含まれるイソフラボンは、
腸内細菌の働きによって代謝されてから吸収されるので、
その吸収には個人差があってかなり不安定なのですが、
発酵食品に含まれているイソフラボンは、
アグリコン型と呼ばれる小分子となっていて、
腸内細菌によらずにそのまま吸収されるからです。

今回の研究は、
日本の有数の大規模疫学データである、
多目的コホート研究のデータを活用して、
この問題を日本人で検証しています。

多目的コホート研究に参加した一般住民のうち、
収縮期血圧が130mmHg未満で拡張期血圧が85mmHg未満という、
血圧上昇のない人だけを対象として、
食事調査から大豆製品の摂取量を、
発酵食品とそうでないものとに分けて算出し、
その摂取量と5年後の血圧上昇との関連を検証しています。

対象人数は登録時点で40から69歳の4165名です。

その結果…

トータルの大豆蛋白の摂取量と5年後の血圧上昇との間には、
有意な関係は認められませんでしたが、
味噌や納豆のような発酵大豆食品の摂取量についてみると、
摂取量が少ない場合と比較して、
摂取量が多いと血圧が130/85を超えるリスクが、
23%(95%CI; 0.66から0.91)有意に低下していました。
この量は納豆を毎日1パック摂っていれば、
達する程度の分量です。

今回のデータは元々このために調査されたものではありませんし、
食事調査から推測された大豆蛋白の摂取量も、
それほど正確なものとは言えませんから、
1つの参考として考えるレベルのものだと思いますが、
味噌や納豆をどのようにして摂取することが良いのか、
その塩分量との関連も含めて、
再検証が必要であるようには思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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2型糖尿病の既存薬による併用治療の長期効果(2017年イタリアの研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病併用治療の比較.jpg
今年のthe Lancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
2型糖尿病の2種類の飲み薬による併用治療の効果についての論文です。

2型糖尿病の第1選択薬がメトホルミンであることは、
世界的に認められている大原則ですが、
実際には充分量のメトホルミンを使用しても、
血糖コントロールが不充分であることは、
臨床ではしばしば遭遇することです。

この場合欧米のガイドラインにおいては、
メトホルミンに上乗せする形で、
別の種類の血糖降下剤を、
併用することが推奨されています。

ただ、併用薬としてどの薬が最も優れているのか、
と言う点については、
未だ結論は得られていません。

最近インクレチン関連薬やSGLT2阻害剤という、
新しいメカニズムの薬の評判が高く、
そうした薬の併用は臨床医にとっては魅力的ですが、
新薬は高価ですし、
その長期効果もまだ分からない面は多いので、
長く使用され薬価も安い併用薬の可能性を、
検証することも非常に重要なことです。

以前よりメトホルミンの併用薬として使用されている薬は、
SU剤とピオグリタゾンです。

SU剤は飲み薬の血糖降下剤としては最も強力な薬で、
その血糖降下作用が一番強いことは間違いがありません。
その一方で低血糖を起こしやすいという欠点があり、
またインスリン濃度の上昇により体重増加を来しやすく、
長期的な心血管疾患の予防にも、
悪い影響を及ぼすのではないか、
という危惧があります。

ピオグリタゾンはインスリン抵抗性を改善する効果があり、
その血糖降下作用はSU剤より弱いのですが、
低血糖を起こしにくいという利点があります。
また、心不全に対しては悪化させるという危惧はあるものの、
トータルには心血管疾患の進行予防効果も期待されています。

2型糖尿病の治療目的は、
現在では心血管疾患の予防が最大のものとなっています。

それでは、
メトホルミンへの上乗せ治療として、
SU剤とピオグリタゾンの、
どちらが心血管疾患の予後に良い影響を与えるのでしょうか?

今回の研究はイタリアにおいて、
その点を直接比較で検証したものです。

患者さんはイタリアの57か所の糖尿病専門施設で、
2年間以上メトホルミン単剤の治療を受け、
1日2000mgから3000㎎(日本での使用量は原則2250mg まで)という、
充分量の治療を継続していても、
血糖コントロールの指標であるHbA1cの数値が、
7から9%の50から75歳の2型糖尿病の患者さんで、
トータルな人数は3028名です。
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はSU剤を使用して、
もう一方はピオグリタゾンをそれぞれ上乗せで使用して、
半年毎にHbA1cを測定、
それが8%を下回ることを目標に、
量の調整を行います。
ピオグリタゾンは1日15から45㎎(日本での使用量と同じ)で使用され、
SU剤はグリベンクラミドが5から15㎎(日本では10㎎が上限)、
グリメピリドが2から6㎎(ほぼ日本の使用量と同じ)、
グリクラジドが30から120㎎(ほぼ日本の使用量と同じ)、
で使用されます。

試験はもっと長期行われる筈でしたが、
中間解析においてそれ以上の継続をしても、
結果が変わる可能性はほぼないとの判断で、
平均観察期間が57.3か月の時点で途中終了となっています。
それでも5年弱の観察期間です。

試験の目的は、
総死亡と心血管疾患の新規発症とを併せたリスクで、
これは両群に差はありませんでした。
SU剤は結構高用量を使用していますが、
意外にも長期のHbA1cはピオグリタゾンの方が安定して低下しています。

そして、これは当然と言えば当然ですが、
低血糖のリスクについては、
ピオグリタゾンよりSU剤で高くなっていました。
ピオグリタゾンで指摘されることの多い心不全と膀胱癌については、
今回の試験の範囲では、
特に問題になることはありませんでした。

このように、
ピオグリタゾンもSU剤も、
生命予後を含めた心血管疾患の5年程度の予後については、
それほどの差はないと考えて良く、
後は低血糖のリスクや他の有害事象のリスクに勘案して、
その選択を行うことが妥当であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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