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プロトンポンプ阻害剤と総死亡リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
PPIによる総死亡リスク.jpg
今年のBMJ Open誌に掲載された、
プロトンポンプ阻害剤という最も広く使用されている胃薬と、
死亡リスクとの関連についての論文です。

プロトンポンプ阻害剤は、
強力な胃酸分泌の抑制剤で、
従来その目的に使用されていた、
H2ブロッカ-というタイプの薬よりも、
胃酸を抑える力はより強力でかつ安定している、
という特徴があります。

このタイプの薬は、
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療のために短期使用されると共に、
一部の機能性胃腸症や、
難治性の逆流性食道炎、
抗血小板剤や抗凝固剤を使用している患者さんの、
消化管出血の予防などに対しては、
長期の継続的な処方も広く行われています。

商品名ではオメプラゾンやタケプロン、
パリエットやタケキャブなどがそれに当たります。

このプロトンポンプ阻害剤は、
H2ブロッカーと比較しても、
副作用や有害事象の少ない薬と考えられて来ました。

ただ、その使用開始の当初から、
強力に胃酸を抑えるという性質上、
胃の低酸状態から消化管の感染症を増加させたり、
ミネラルなどの吸収を阻害したりする健康上の影響を、
危惧するような意見もありました。

そして、概ね2010年以降のデータの蓄積により、
幾つかの有害事象がプロトンポンプ阻害剤の使用により生じることが、
明らかになって来ました。

現時点でその関連が明確であるものとしては、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用により、
急性と慢性を含めた腎機能障害と、
低マグネシウム血症、
クロストリジウム・デフィシル菌による腸炎、
そして骨粗鬆症のリスクの増加が確認されています。

その一方でそのリスクは否定は出来ないものの、
確実とも言い切れない有害事象もあり、
肺炎のリスクの増加や、
骨粗鬆症や認知症のリスクの増加などがあります。

今回の研究はアメリカの退役軍人の医療データを活用して、
プロトンポンプ阻害剤やH2阻害剤の使用と、
生命予後との関連を検証しています。

新規にプロトンポンプ阻害剤やH2阻害剤を使用した349312名と、
プロトンポンプ阻害剤の使用者と未使用者を比較した3288092名、
プロトンポンプ阻害剤の使用者と未使用者及びH2阻害剤の未使用者を比較した、
2887030名が対象となっています。

中央値で5.71年の観察期間において、
H2阻害剤の使用者と比較してプロトンポンプ阻害剤の使用者は、
その総死亡のリスクが1.25倍(95%CI;1.23から1.28)有意に増加していました。
複数の解析法で解析を行っても、
ほぼ同様の結果が得られました。

プロトンポンプ阻害剤の使用による総死亡リスクの上昇は、
30日以下の使用の場合と比較して、
361以上の使用では1.51倍(95%CI;1.47から1.56)と、
使用期間が長いほど有意に増加していました。

今回のデータは死亡原因などの詳細は不明なので、
不充分なものですが、
個々の病態以外に生命予後においても、
大規模な疫学データによりリスクの上昇が認められた点は、
軽視するべきではなく、
プロトンポンプ阻害剤の使用は、
必要最小限にとどめるような配慮が望ましいと思いますし、
今後どのような患者さんにおいて、
プロトンポンプ阻害剤のリスクが高いのか、
より詳細な検証が必要だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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