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プレガバリン(リリカ)処方増加を考える [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リリカの使用過剰を考える.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された解説記事ですが、
慢性の痛みの治療薬として日本でも使用数が増加している、
プレガバリン(商品名リリカ)の、
アメリカでの処方著増について論じているものです。

ガバペンチン(商品名ガバペン)とプレガバリン(リリカ)は、
ガバペンチノイドとも総称される同種の薬で、
そもそもは抗痙攣剤の一種ですが、
その神経障害性疼痛への効果が注目され、
オピオイドのような麻薬系の薬剤と比較すると、
その副作用や依存性も少ないことから、
その使用が拡大している経緯があります。

これは世界的な現象です。

アメリカのFDAは、
帯状疱疹後神経痛に対してガバペンチンとプレガバリンを、
線維筋痛症に対してプレガバリンを、
糖尿病や脊髄損傷に伴う神経障害性疼痛に対してプレガバリンを、
それぞれ認可しています。

日本ではプレガバリンの保険適応は、
神経障害性疼痛と線維筋痛症です。

神経障害性疼痛というのは、
痛みを伝える神経が何等かの原因で障害されることにより、
神経が過敏になって痛みを生じるもので、
帯状疱疹というウイルスによる皮疹の出る病気の後で、
炎症をおこした場所がピリピリ痛む、
帯状疱疹後神経痛がその代表ですが、
太腿の裏側の痛みとしてポピュラーな、
坐骨神経痛もその仲間になりますから、
そう考えるとかなり多くの慢性の痛みが、
そこには含まれているということが分かります。

通常癌による痛み以外の慢性の痛みに対しては、
アセトアミノフェン(商品名カロナールなど)や、
NSAIDSと呼ばれる痛み止め(商品名ロキソニン、ボルタレンなど)
が使用されますが、
アセトアミノフェンはその効果が充分ではないことが多く、
NSAIDSは強力な薬ほど胃潰瘍や腎障害などの、
有害事象が起こりやすいという欠点があります。
そして、そうした薬が必要な患者さんでは、
副作用や有害事象も起こりやすいのです。

麻薬系の鎮痛剤であるオピオイドは、
トラマールやトラムセットなどの商品名で、
これも最近癌以外の慢性疼痛に対して広く使用されていますが、
癌性疼痛に使用される麻薬系鎮痛剤と比較すれば軽度ではあっても、
その常用性や依存性が問題となることが、
最近は多くなりました。

そのため、
慢性疼痛に対してオピオイドを使用していた患者さんが、
リリカに変更するようなケースも、
最近は増えているようです。

こちらをご覧ください。
リリカの処方数の増加.jpg
アメリカの最近のガバペンチノイドの処方数の推移を見たものです。
左側がガバペンチンで右がプレガバリン(リリカ)のものです。
特にリリカについては、
2012年から2016年の4年間に、
処方数が倍増していることが分かります。

上記解説記事の記載によると、アメリカにおいて、
先発医薬品でプライマリケアの臨床医に処方されている薬のうち、
インスリンのランタス、糖尿病治療薬のジャヌビア、
喘息治療薬のアドエアに引き続いて、
リリカは第4位の収益を上げた薬剤にランクされています。

勿論ニーズがあり正当な処方なのであれば、
この増加も問題があるとは言えません。

ただ、幾つかの問題を指摘する声もあります。

日本でリリカの適応とされている神経障害性疼痛には、
非常に多くの病気や病態が含まれているのですが、
実際に精度の高い臨床試験において、
リリカの効果が確認されているのは、
帯状疱疹後神経痛と糖尿病性神経障害による疼痛だけです。

これは2017年3月27日のブログ記事での紹介していますが、
同月のNew England…誌に掲載された論文によると、
坐骨神経痛に対して偽薬と比較してリリカの効果を検証した臨床試験では、
その効果は確認されませんでした。

従って、本来は全ての神経障害性疼痛への有効性が、
高いレベルで確認されているとは言えないリリカなのですが、
日本では拡大適応に近い形でその処方は容認され、
アメリカでも実際にはより広い適応で使用がされているようです。

効果がはっきりしないままの漫然とした適応拡大が行われている、
という点がまず第一の問題点です。

上記解説記事にある第二の問題点は、
ガバペンチノイドがそれほど副作用や有害事象の少ない薬剤とは、
言い切れないという点です。
鎮静作用やめまいは少なからず認められていて、
前述の坐骨神経痛への臨床試験では、
40%の患者さんがめまいを訴えています。
また、認知機能の低下を、
服用中に認めているケースもあります。
この副作用は確かに単剤で使用した場合には、
軽度のものと考えられなくはありませんが、
こうした薬は実際には複数の他の処方薬と、
併用されることが多く、
鎮静作用のあるような他の薬との併用により、
大きな問題が生じる可能性も否定は出来ません。

第三の問題点はガバペンチノイドの濫用や依存が、
認められる事例があることで、
こうしたケースはベンゾジアゼピンやオピオイドの、
使用者に多いとされていますが、
その頻度は影響については、
まだ未知数であるのが現状です。

最後にこうした薬剤が安易に慢性の痛みに使用されることにより、
本来はもっと原因を追究するべき痛みの診断が疎かになったり、
たとえば長期臥床による痛みであれば、
全身状態の改善やリハビリなどを優先するべきなのに、
痛みの訴えに安易にガバペンチノイドが使用されて、
それでよしとされるような医療レベルの低下が、
起こっている可能性も指摘をされています。

勿論オピオイドやガバペンチノイドが、
癌以外の慢性疼痛に対して使用出来るようになったことにより、
疼痛の治療が大きく進歩したことは間違いのない事実なのですが、
その一方で多くの弊害が生じつつあることもまた事実で、
その適応については、
もう一度慎重な線引きを行う必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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