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抗うつ剤の炎症性皮膚疾患改善作用 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
抗うつ剤の皮膚病に対する効果.jpg
2017年のActa Dermato-venereologica誌に掲載された、
抗うつ剤治療と皮膚疾患との関連についてのレビューです。
昨日の記事とも関連する話題です。

蕁麻疹やアトピー性皮膚炎、乾癬などの慢性の皮膚疾患は、
ウイルス疾患など全身の炎症により悪化し、
またストレスによっても悪化するという特徴があります。
つまり、ストレスと炎症とこうした皮膚疾患は関連しています。

抗うつ剤はうつ病の治療薬である共に、
炎症を抑えるような作用のあることが、
これまでの動物実験を含む知見から確認されています。

それでは、
抗うつ剤の治療により蕁麻疹や乾癬、
アトピー性皮膚炎などの炎症性の皮膚疾患は改善するのでしょうか?

今回のレビューでは、
これまでの28の臨床試験や症例報告のデータをまとめて、
その有効性を検証しています。

その結果、
三環系抗うつ剤で日本未発売のドキセピンにより、
慢性蕁麻疹、特に寒冷蕁麻疹に対する有効性が、
複数の臨床試験によりほぼ確認されています。
SSRIなどより新しいタイプの抗うつ剤の臨床試験も、
幾つか行われていますが、
三環系抗うつ剤に勝るような効果は確認されていません。

SSRIは皮膚掻痒症に対する有効性が確認されていて、
乾癬の治療に対する有効性も報告されています。
これも日本未発売の抗うつ剤であるブプロピオン(DNRI)は、
乾癬やアトピー性皮膚炎への改善効果が報告されています。

このように、
炎症性の皮膚疾患に対して、
おそらく炎症を抑える作用により、
抗うつ剤の有効性がほぼ確認をされています。

ただ、抗うつ剤は多くの副作用のある薬でもあり、
単純に皮膚疾患の治療目的での使用については、
慎重に考えるべきであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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消炎鎮痛剤の抗うつ作用について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
消炎鎮痛剤の抗うつ作用.jpg
2014年のJAMA Psychiatry誌に掲載された、
抗炎症作用を持つ薬剤でうつ状態が改善するという、
興味深い現象についての論文です。

うつ状態と炎症は決して無関係なものではありません。

感染症の時にはうつ状態が生じたり、
悪化したりすることは良く知られていますし、
インターフェロンのように、
炎症性サイトカインを増加させる、
つまり疑似的に炎症を起こすような薬剤が、
うつ状態を起こすことも知られています。

こうした知見からは、
炎症に伴うサイトカインなどの上昇が、
うつ状態と関連しているという可能性が示唆されます。

仮にそれが事実であるとすると、
炎症を抑えてサイトカインを低下させるような治療により、
うつ状態自体も改善する、
という可能性が示唆されます。

しかし、実際には消炎鎮痛剤や、
インフリキシマブのような炎症シグナルの抑制剤の、
抑うつ状態への効果を見た臨床試験は、
症例数が少ないなど不充分なものが多く、
その結果も一定の有効性があった、というものから、
無効であったというものまで様々です。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床試験のデータを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
炎症を抑制する治療の、
うつ状態に対する効果を検証しています。

その結果…

14の臨床研究がリストアップされていて、
そのうちの10の研究は非ステロイド系消炎鎮痛剤が対象となり、
4つの研究ではインフリマキシブのような、
炎症性疾患の治療薬が対象となっています。
トータルな症例数は6262名です。

抗炎症治療により、
うつ状態の指標には一定の改善効果が確認され、
その効果は選択的COX2阻害剤である、
セレコキシブでより高い傾向がありました。

今回解析された臨床データはかなり条件には違いがあるものなので、
これをもって消炎鎮痛剤がうつ病に有効とは、
言い切れないのですが、
うつ状態と炎症との関連があり、
炎症を抑えることによりうつ状態も改善する可能性がある、
という知見は非常に興味深く、
今後の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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漢方薬の甘草とそのリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
甘草とそのリスク.jpg
今年のJournal of Human Hypertension誌に掲載された、
漢方薬などに含まれる、
甘草(licorice)という生薬の使用による、
低カリウム血症と高血圧(偽アルドステロン症)についての論文です。

甘草は植物の根の抽出物で、
日本の甘草と西洋のリコリス(licorice)は、
少し性質は違う植物由来のものですが、
その主成分は同じです。

甘草という生薬の薬効の主成分はグリチルリチンで、
抗アレルギー作用や肝細胞の安定化作用を持つことから、
主にその注射薬が慢性肝炎やアレルギー疾患の治療薬として、
保険適応されています。

また、甘草には疼痛を改善する作用や、
独特の甘さがあって、
そのため甘味料や痛み止め、
胃潰瘍や便秘の治療薬としても伝統的に使用されています。
甘草ドロップのような飴が海外ではポピュラーですし、
仁丹の独特の甘みは甘草によるものです。

日本では漢方薬の成分としての使用がポピュラーで、
この場合は通常複数の生薬が組み合わせて使用されています。
健康保険で使用されるエキス剤としての漢方薬では、
甘草湯が甘草単剤の薬剤で、
1日量8グラムと最も多いのですが、
使用されることはかなり稀です。(ほぼない)
使用頻度の多いものは、芍薬甘草湯で、
1日量で6グラムが含まれています。

甘草はこのように昔から、
甘味料や治療薬として広く使用されている成分です。

基本的には安全性の高い成分と考えられていますが、
唯一問題となっているのが、
その有害事象としての偽アルドステロン症です。

偽アルドステロン症というのは、
低カリウム血症と高血圧症という、
原発性アルドステロン症に非常に似通った症状が、
アルドステロン以外の原因で起こる状態のことです。
その現象が甘草を含む食品や薬品で起こることが、
1968年に初めて論文として報告されました。

軽症の事例が多い一方で、
重篤な事例の報告もあります。
こちらをご覧ください。
甘草による心停止の事例.jpg
2009年のCanadian Journal of Cardiology誌に掲載された、
症例報告ですが、
71歳の高血圧や心疾患の既往があり、
ACE阻害剤と利尿剤を使用していた女性が、
下剤として甘草を連用したところ、
1.6mEq/Lという高度の低カリウム血症を来し、
頻回の心室細動という重症な不整脈を起こして、
心停止を繰り返したという事例です。

それでは、
何故甘草により低カリウム血症や高血圧が起こるのでしょうか?

僕が大学の医局にいた頃の理解では、
甘草にアルドステロン様の作用があると思っていました。
そのような説明が当時は一般的であったように思います。

しかし、実はそのメカニズムはもう少し複雑です。

こちらをご覧下さい。
甘草の低カリウム血症のメカニズム.png
これが1987年のLancet誌に掲載された論文で、
この問題のトピックとなったものです。

甘草による偽アルドステロン症は、
副腎不全でコルチゾールが低下しているような患者さんでは、
起こらないことが分かっています。
実は甘草に含まれるグリチルリチンは、
それ自体がアルドステロン様作用を持っているのではありません。
糖質コルチコイドであるコルチゾールは、
アルドステロンの受容体にも結合する性質を持っているのですが、
実際にあまりそうした作用に関係をしていないのは、
腎臓の尿細管においては、
コルチゾールを分解してコルチゾンにする酵素が発現していて、
コルチゾールのアルドステロン様作用をブロックしているのです。
ところがグリチルリチンはその酵素の活性を阻害する作用があるので、
尿細管のアルドステロンの受容体に、
コルチゾールが過剰に結合して、
それでアルドステロン様作用が増強するのです。

つまり、アルドステロン様作用の主体は、
身体にあるコルチゾールで、
その分解を抑えることが、
甘草由来の偽アルドステロン症のメカニズムであったのです。

ですから裏技的には、
副腎不全の患者さんでコートリルの補充のみで、
電解質バランスや血圧が改善しない時には、
甘草を少し使用すると、
調整が付くという可能性がある訳です。

一般の方にとってもどうでも良いことかも知れませんが、
ホルモンオタクにとっては、
とても画期的な大発見です。

さて、それでは一体どのくらいの甘草を摂取すると、
偽アルドステロン症になるのでしょうか?

西洋のリコリスには0.2%、
つまり1グラムに2ミリグラムのグリチルリチンが含まれています。
日本の漢方薬については、
甘草の2.5グラムに100ミリグラムのグリチルリチンが含まれています。

重症の偽アルドステロン症は、
1日500ミリグラムを超えるグリチルリチンの服用継続で、
生じる事例が多いと考えられていますが、
最近では1日100ミリグラムやそれ以下の量でも、
そうした報告が散見されています。

上記のメタ解析の文献においても、
症状を来した甘草の使用量にはかなりのばらつきがあり、
血圧値以外では甘草の使用量と症状やデータとの間に、
明確な相関は見られていません。

強力ネオミノファーゲンなど、
他にグリチルリチンを含む薬やサプリメントなどを、
一緒に使用している場合や、
利尿剤や降圧剤などカリウムの低下作用を持つ薬を、
併用している場合などは、
より注意が必要であることは間違いがありませんが、
事例を見ているとそれだけでは説明が付かないようにも思います。

漢方薬で報告の頻度が多いのは小柴胡湯で、
甘草の含有量は1日量で2グラム、
グリチルリチンで80ミリグラムですから、
甘草を含む漢方薬としては少ない方です。

ただ、一時C型肝炎に対して、
インターフェロンとの併用が行われて、
間質性肺炎の副作用で併用が中止された経緯があり、
有害事象に留意して、
血液検査などが行われることが多い、
というバイアスもあるように思います。

従って、現状は甘草を少しでも含む漢方薬の、
継続的な使用(通常2週間以上)においては、
筋脱力や不整脈などの症状の聞き取りは継続的に行ない、
必要に応じて血液検査を行うことが、
やや過剰ではあっても、
必要な対応ではあるように思います。
甘草を多く含む処方である芍薬甘草湯や桔梗湯は、
頓用を原則として1日量を使用することは避け、
短期間の使用にとどめることが原則です。

矢張り心疾患があったり、
利尿剤を使用していたり、
甘草の使用量が1日3グラムを超えるようなケースでは、
より注意が必要ではないかと思われますが、
その根拠はそれほど明確なものではないことも、
また知っておく必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっとー」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
マームとジプシー.jpg
最近時々観るようになったマームとジプシーの、
10周年記念公演の1本、
「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっとー」
の彩の国の公演に足を運びました。
彩の国は遠いので休日を潰さないと行けないのがきついです。

この作品は僕は初見ですが、
これまでの3本の作品を再構成して2014年に上演され、
今回は10周年を記念とした再演ということのようです。

藤田貴大さんの劇作はこうした作品が非常に多く、
普通はこうした過去作品の再構成や総集編という趣向は、
オリジナルより落ちるものになることが多いと思うのですが、
不思議とそうはなっていないのは、
藤田さんの劇作は寺山修司と同じように、
同じテーマを複数の作品で分析的に繰り返すので、
その構成を変更することは、
あまり作品の質を変えることはないのかも知れません。

今回の作品はチェホフの「三人姉妹」のバリエーションで、
本当に演劇の人はチェホフが好きだなあ、
という気がします。
2人の女性と1人の男性の兄弟がいて、
長女が東京に出るところから、
少しずつ家族は家を離れ、
次女も家を離れて長男と父親だけが家に残されたところで、
父親の急病による入院から死で家に家族が集まり、
翌年の一周忌での集まりの夜が、
物語の中心となります。

その場で家が新しい道路の用地として取り壊される対象となり、
家がなくなり道になった10年後に、
もう一度3人の兄弟が集って物語は終わります。

特にドラマチックな展開があるということではなく、
ある種の普遍的な風景として、
当たり前に見えた家族の食卓と、
それが家族の死や人間の成長と旅立ち、
などによって変容し、
最後には取り壊しによって家自体がなくなるまでが、
ある種淡々と描かれます。

戯曲の文体は家族のその場での日常会話と、
その個人が現在から過去のその時点を思い返して、
思い出や悔恨や切なさを語る独白とが、
そのまま綴れ織りのように絡み合う構成が面白く、
それが同じ場面を前後などの角度を変えて繰り返したり、
役者さんが回転すると時間が飛ぶような、
独特の演出と相俟って、
非常に自然に時間と空間を行き来して、
現在が一瞬にして思い出に変容するという、
人間の心の不思議を鮮やかに視覚化しています。

今回は特に家族の象徴ともいうべき家がなくなるという、
多くの人が思い当たる部分があるであろう、
内なる故郷の喪失というテーマなので、
枠組みだけの大きな家のセットを舞台に組んで、
即座にそれを解体するという視覚的な効果とも相俟って、
なかなか抒情的で忘れがたい部分のある1作になっていたと思います。

かつて水死した少年に海で救われた少女が、
大人になってその町に戻って来て、
海を訪れて主人公達に出逢う、
という脇筋などもなかなか面白く、
複数の作品を組み合わせる構成の妙を感じました。

ただ、幾つか不満もあります。

3世代に渡る物語なのですが、
親子を同じくらいの年齢の役者さんが演じていて、
衣装も中途半端に白いもので統一されているので、
かなり人物関係の分かりにくい部分がありました。
近所のおばさん役の役者さんの芝居も、
何か中途半端に感じました。
基本的に等身大の芝居が身上のように思うので、
こうした年齢差のある役柄は、
実際の年齢に近い役者さんを起用するか、
衣装などで分かりやすくする方が、
ニュアンスが伝わりやすかったように感じました。

精力的な活動を続けている藤田さんですが、
その独特の様式は完成に近づいているにしても、
まだまだ新しい様式や芝居にもチャレンジして欲しいと思いますし、
これからの活躍に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

シンクロ少女「シンクロ・ゴッサム・シティ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
シンクロ少女.jpg
シンクロ少女の本公演に足を運びました。
この劇団は初見です。
初物を観たいという気がして、
あまり予備知識なく直前に予約をして衝動的に観に行きました。

予想していたような感じとは違っていたのですが、
なかなか面白い芝居で、
観て損はありませんでした。
戯曲は新しいという感じはしないのですが、
凝ったトリッキーな構成が面白く、
役者さんの芝居も作品世界にフィットしています。
演出も悪くありません。
特に最初にインチキ・コスプレダンスのような場面があって、
おやおや、と思うのですが、
最後にもほぼ同じダンスがあって、
その時にはオープニングとは全く別の風景が見えるのです。
なるほどとちょっと感心しました。

「シンクロ・ゴッサム・シティ」という題名の通り、
バットマンの舞台である架空の大都市ゴッサム・シティで、
善と悪とがどのような成り立ちで生じるに至ったのかを、
小劇場的なレトリックを駆使して描いた作品です。

元のゴッサム・シティはダークなニューヨークですが、
このお芝居のゴッサム・シティは、
要するにダークな東京です。

ちらしが上のような感じですし、
何となくバットマンのコスプレ芝居みたいなものを期待してしまうのですが、
ペンギンっぽい人物や、
キャットウーマンっぽい人物、
悪の三姉妹みたいな感じのキャラなどが、
登場することはするのですが、
それっぽい、というだけのことで、
別にバットマンのパロディやコスプレではありません。
東京に暮らす等身大のそれでいてちょっと歪んだ人達が、
それっぽく登場する、というだけです。

肌合いとしては昔の倉持裕作品に似ています。
元ネタは別役実のパロディ風の作品だと思うのですが、
誰でも知っているような、
ある種の固定観念に包まれた物語の世界を舞台にして、
演劇ならではトリッキーな仕掛けを施して、
物語の底にある不条理のようなものを、
浮かび上がらせるという作劇です。

兄が弟に捧げる強烈で純粋な秘められた愛が、
誠実で無垢で愚鈍に見えた人間を、
破滅的で醜悪な悪党に変えてしまうのですが、
実際には人間の外面的な善も悪も、
同じ愛から生じているという物語で、
チラシにある「動機は愛」という一言がテーマでもあって、
それがラストに発せられる台詞でもある、
と言う辺りが極めて技巧的で巧みです。
2人1役という演劇的な仕掛けが、
上手く機能しているのも面白いと思いました。

作・演出の名嘉友美さんは、
非常に構成力に長けた方だと思います。

ただ、それが作品の弱点でもあって、
たとえば松尾スズキ作品などは、
まともに物語が収束することなど殆どなく、
概ね空中分解してしまうのですが、
キャラクターの破天荒さや畸形の魅力は、
今回の作品の比ではなく、
今回の作品はせっかく畸形的なキャラに命を吹き込みながら、
お話のまとまりを重視して、
全体をこじんまりとしたものにしてしまったようにも思います。

もっと役者の瞬発力でもたせるような場面や、
意味不明だけれども魅力的な場面などが少しあると、
作品自体の魅力ももっと大きく花開くのではないか、
というようにも感じました。

もう何回かは観てみようと思いました。
これからも期待しています。
頑張って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

リポ蛋白(a)濃度と心血管疾患リスク(メンデル無作為化解析による検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
Lp(a)と心血管疾患リスク.jpg
今年のthe Lancet Diabetes &Endocrinology誌に掲載された、
血液の脂質の数値とその意味についての遺伝子解析を利用した論文です。

リポ蛋白(a)というのは、
比較的簡単に測定可能な血液中の脂質の1つで、
動脈硬化性疾患に関連する指標として、
健康保険でも測定が可能です。

ただ、その数値の意味と、
高コレステロール血症の治療における意義については、
まだあまり一定の評価がありません。

そもそもリポ蛋白(a)というのは一体何でしょうか?

血液の中をコレステロールや中性脂肪などの脂質を移動させるため、
脂質はアポ蛋白という蛋白質と結合して、
リポ蛋白という形態を取っています。

要するに、荷台にコレステロールなどの荷物を載せた、
トラックのようなものがリポ蛋白です。

このリポ蛋白にも種類があって、
俗に悪玉コレステロールと言われているLDLコレステロールは、
LDLというリポ蛋白の荷台に載っているコレステロールの量のことです。

このLDLは主にアポB100というアポ蛋白が脂質と結合したものですが、
アポB100以外にアポリポ蛋白(a)という別の蛋白が、
一緒に結合したLDLの一種が存在していて、
これをリポ蛋白(a)と呼んでいるのです。

このアポリポ蛋白(a)というのは、
プラスミノーゲンという血栓などを溶解する仕組みに、
関連する物質と非常に良く似た構造を持っています。

通常血液中のリポ蛋白(a)濃度は、
20mg/dL以下に保たれていますが、
その血液濃度が高い体質があり、
そうした人では狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患が、
多く発症するということが確認されています。

非常に興味深い点は、
この血液中のリポ蛋白(a)濃度は、
食事などの影響はあまり受けず、
基本的にその高低は、
アポリポ蛋白(a)をコードしている遺伝子のタイプで決まっている、
ということです。

高リポ蛋白(a)血症は、
ほぼ全て遺伝で決まっているのです。

最近このリポ蛋白(a)濃度とは別個にそのサイズ(粒子径)も、
遺伝子レベルで決定されていて、
より小さな粒子径のリポ蛋白(a)が、
より心血管疾患のリスクが高い、
という知見も発表されています。

ただ、このリポ蛋白の濃度と粒子径とが、
どの程度別個に心血管疾患のリスクに関連しているのか、
というような点については、
今までに名良なことが分かっていませんでした。

そこで今回の研究では、
リポ蛋白(a)の濃度と粒子径に関連する遺伝子変異を解析して、
その心血管疾患との関連を多数例で検証しています。
遺伝子の変異自体は無作為に生じるという性質を利用した、
メンデル無作為化解析という手法による解析です。

その結果、
リポ蛋白(a)の濃度と粒子径の小ささのいずれもが、
総コレステロール値やLDLコレステロール値とは独立した指標として、
それぞれ独立に心血管疾患のリスクと関連していました。

現状リポ蛋白(a)のみの濃度を低下させたり、
その粒子径を大きくするような治療は確認されておらず、
その意味では現状この知見を臨床に活用する名案はないのですが、
今後リポ蛋白(a)をターゲットとした治療が、
クロースアップされることは間違いなく、
今後の研究の進捗を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

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睡眠時無呼吸のCPAP治療の心血管疾患に対する効果(2017年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です

今日はこちら。
CPAPの長期効果.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
睡眠時無呼吸症候群の心血管疾患に対する治療効果についての論文です。

睡眠時無呼吸症候群というのは、
睡眠中に10秒以上の呼吸の停止(無呼吸)や、
低呼吸と呼ばれる、
酸素が充分肺に入らないような呼吸の低下が、
1時間に5回以上認められる状態のことです。

肥満などの要因により気道が狭くなることが、
その主な要因と考えられていますが、
顎の形や口呼吸などが原因となることもあり、
必ずしも肥満による病気、と言う訳ではありません。

睡眠時無呼吸症候群があると、
眠りの質が悪化するので、
眠っていても熟睡感がなく、
昼に強い眠気が生じます。

そのため、居眠りの原因となり、
仕事に差し支えたり、
運転中の居眠りが事故に繋がったりすることが、
社会問題になっているのは、
皆さんもご存じの通りです。

そして、患者さんの睡眠の状態の改善のため、
主に行なわれている治療が、
CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)と呼ばれるものです。

これは特殊なマスクを鼻に付け、
そこから少し圧力を掛けて空気を鼻に送り込むことにより、
夜間の呼吸状態の悪化を改善するというものです。

このCPAPによって、
多くの睡眠時無呼吸の患者さんでは、
夜間の呼吸状態が改善し、
昼間の眠気や居眠りが予防されます。

そこまでは問題がありません。

睡眠時無呼吸症候群は、
他の多くの病気と関連があると考えられていて、
それを示唆する疫学データも多く発表されています。
その中には心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化の病気や、
糖尿病、脂肪肝炎などが含まれています。
血圧特に拡張期血圧の上昇もしばしば見られる所見です。

テレビに登場するような「名医」の先生は、
脳卒中や心筋梗塞などが無呼吸によって起こり、
無呼吸をCPAPで治療することにより、
そうした病気の予防になるような話をしています。
無呼吸によって突然死が起こり、
それが治療により予防されるような言い方もされることがあります。

しかし、実際にはそれは明確に証明された事実ではありません。

事例を観察してCPAPにより病状が改善した、
というような文献は多数存在しています。

しかし、症例を登録して治療と未治療とをくじ引きで決め、
本当に治療により病気が予防された、
というような報告は殆どなく、
治療により患者さんの生命予後が改善した、
というような報告もないのです。

証明されているのは、
せいぜい血圧が若干低下する、
ということくらいです。

2016年の9月に掲載されたNew England…誌の論文では、
無呼吸に心血管疾患を合併した患者さんでの通常治療への上乗せで、
再発予防目的でのCPAP治療の効果が、
未治療との比較で検証されていますが、
結論としては矢張りその上乗せの予防効果は確認されませんでした。
ただ、CPAPを実際に患者さんが使用した時間は3時間程度と短く、
CPAPがもっとしっかり施行されていれば、
より効果が出たという可能性は残ります。

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、
所謂メタ解析の論文ですが、
10の臨床試験における7266名の睡眠時無呼吸の患者さんを、
まとめて解析した結果として、
矢張り未治療と比較した場合に、
心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクや、
心血管疾患による死亡や総死亡のリスクには、
CPAPによる改善効果は確認されませんでした。

閉塞性睡眠時無呼吸の患者さんに対する、
適切なCPAP治療は、
無呼吸による昼間の眠気などの症状に対する有効性は確認されていますが、
血圧の若干の低下以外、
心血管疾患の予防効果や生命予後の改善効果については、
現時点では確認されたものはないと、
そう考えるのが現状は妥当なようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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パッチ型インフルエンザワクチンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
パッチ型インフルエンザワクチンの効果.jpg
2017年6月のLancet誌にウェブ掲載された、
皮膚にパッチとして貼るタイプのインフルエンザワクチンの、
効果と安全性についての論文です。

痛くないインフルエンザワクチンの開発というのは、
一般の接種者のニーズも非常に高い分野ですが、
一時もてはやされた点鼻の生ワクチンは、
接種者がかなり限られる上に、
その効果にも疑問符が投げかけられるなど、
なかなか一筋縄ではいかないのが、
ワクチンの接種法であるようです。

今回ご紹介するのは肌に張り付けるパッチ型のワクチンで、
こう書くと湿布のようなものを想像されるかも知れませんが、
実際には微小は針が沢山埋め込まれたパッチで、
肌に極小さな傷を付けて接種するという手法で、
日本で行われているBCGワクチンの考え方に近いものです。

こちらをご覧下さい。
パッチ型のインフルエンザワクチン.jpg
これが今回の臨床試験で使用されている、
パッチ型のインフルエンザワクチンです。

絆創膏のようなものの中央に、
極小の針が沢山付いていて、
そこにワクチン抗原がしみ込んでいます。
これを自分の効き手でない方の手首に押し付け、
20分そのままにした上で、
パッチを外します。
殆ど痛みはありません。
接種した当日からその摂取部位は赤く腫れ、
その腫れは徐々に落ち着いて、
4週間後には完全に見えなくなります。

今回の臨床試験では、
18歳から49歳の100名を、
クジ引きで4つの群に分け、
第1群は医療従事者がパッチ型ワクチンを接種し、
第2群は通常の筋肉注射(海外ではこれ)でワクチンを接種、
第3群は偽のパッチを医療従事者が接種、
第4群は接種者自身がパッチ型ワクチンを接種して、
その副反応や有害事象と、
4週間後の抗体価の上昇を比較検証しています。

その結果…

パッチ型ワクチンの抗体価の上昇効果は、
注射によるワクチンと同等で、
偽ワクチンとは明確な差があり、
接種者自身による接種でも、
パッチ型ワクチンの効果は変わりませんでした。

接種の副反応や有害事象は、
パッチ型ワクチンでは接種部位の発赤やかゆみが主で、
概ね軽症のものでした。
また有害事象は接種者自身の接種でも、
特に差はありませんでした。

このようにパッチ型のワクチンは概ね注射と遜色のない効果があり、
理屈から言っても沢山の微小な針で、
BCGのように刺激をする訳ですから、
その有効性はむしろ勝っている可能性もあるのではないかと思います。
ただ、皮膚が弱い方には反応が長く残るので、
あまり向いていない可能性があるのと、
20分は固定するという手法は、
小さなお子さんにはむしろ不向きであるようにも思います。

今後実際のインフルエンザ感染の予防効果を含めて、
臨床試験の推移を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


食塩過剰摂取とそのリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
塩分中毒とその頻度.jpg
2017年のNutrients誌に掲載された、
急性の食塩中毒のこれまでの報告をまとめたレビューです。

2017年の7月11日に、
岩手県の預かり保育の施設で、
職員が乳児に食塩を混ぜた液体を飲ませ、
食塩中毒で死亡させたという事例が報道されました。

食塩の中毒で亡くなるということがあるのだろうかと、
驚かれた方も多かったのではないかと思います。

ただ、醤油を1升びんでまるごと飲んで、
自殺をしたというような話は、
お聞きになった方も多いのではないかと思います。

僕は小学生くらいの時に、
もうお酒を1升一気に飲むのと、
醤油を一升一気に飲むのとどっちがより危険か、
というようなブラックなクイズが流行していたのを覚えています。
勿論答えは醤油なのです。
そして、醤油を1升飲んでも死なない方法として、
すぐにお風呂に入ることが豆知識として披露されることもありました。
お風呂に入って大量に発汗することにより、
塩分が外に出るというのがその理屈でした。
ただ、実際のその効果は定かではありません。

このように、醤油を大量に飲んで自殺を図るというのは、
昔から結構知られていた方法のようで、
報道されることも多く、
一般の方の興味を惹いていたようです。

醤油を大量の飲むことで死亡することがあるのは、
大量の食塩が身体に入ることにより、
血液のナトリウム濃度が急上昇して細胞内脱水の状態となり、
脳細胞が萎縮して引っ張られた血管が破綻、
脳内出血やクモ膜下出血などを来すことがその主な原因と考えられています。

正常の血液のナトリウム濃度が140mEq/Lくらいで、
これが185mEq/L以上まで上昇すると、
そうした致命的な細胞内脱水の危険性があると考えられています。
これを単純に大人の循環血液量で計算すると、
10グラムくらいの食塩でも、
一気に摂取するとその危険があるという計算になります。

ただ、実際には汗や尿からナトリウムは排泄されますし、
細胞内外への体液やナトリウムの移動がありますから、
その程度の量ではそうしたことは起こらないのが通常だと思います。

そして、これまでの事例の検討から、
25グラムを超える食塩を一気に摂取すると、
高ナトリウム血症により死亡する危険性はあり得る、
という知見が集まっています。
それ以下の量でも死亡事例はあり、
おそらくは元々脱水状態であったとか、
発汗が困難な状態であったり、腎機能が低下しているなど、
その他の要因が合わさった結果ではないかと思われます。

醤油を1升飲むと200グラムの食塩を、
一気に摂取したことと同じになり、
これが如何に危険であるかは、
お分かりになるかと思います。
これまでの検証から、
概ね大人の致死量は100グラムくらいと想定して、
大きな誤りはないように思います。

以上は勿論成人の場合です。

たとえば体重10キロの小児の場合、
計算上は10グラム未満の食塩の摂取でも、
致死的になる可能性はあるのですが、
10グラムを超えないレベルの食塩で、
小児が死亡したことが確定したような事例は、
それほど多くは報告されていません。
上記レビューの記載によれば、
英語の文献でこれまでに報告された食塩中毒の死亡事例は15名で、
その多くは摂取された食塩の量は不明です。
乳幼児の場合、自分で好んで摂取することはありませんから、
報告された事例の多くは、
今回の岩手のケースのように、
他人から意図的に摂取させられたものなのです。

従って、不明の点がまだ多いのですが、
10グラムを超える塩分を一気に摂取すると、
お子さんでは致死的になる可能性が高いと、
そう考えるのが妥当であるようです。

1993年の小児科の専門誌に、
「Non‐accidental salt poisoning」という論文があり、
上記のレビューにも引用されているのですが、
そこでは小児の急性中毒の事例の中から、
12例の食塩中毒の疑われる事例が抽出されていて、
考察で食塩中毒は成人より赤ちゃんが圧倒的に多い、
というように取れる記載があるのですが、
あまり根拠のある記載とは思えず、
今回上記のレビューと関連の報告などを幾つか読んだ範囲では、
少なくとも食塩中毒を死亡事例に限ってみると、
圧倒的に成人の事例が多く、
その多くは自殺目的の使用のようです。
それ以外で意外に多いのは、
砂糖の塊と間違って、
塩の塊をそのまま摂取したようなケースです。
乳幼児では矢張り虐待のケースが多いのですが、
報告頻度から言えば少なく、
その摂取量も不明のものが多いようです。

食塩中毒の治療は、
大量輸液や透析によって、
高ナトリウム血症を補正するより方法はないのですが、
発見の時点で脳出血などが生じていると、
救命は困難な場合が多いようです。
また、一般的には急激な補正は、
却って脳幹の壊死などを招く原因となるので、
ゆっくり補正することが適切と考えられているのですが、
この急性の食塩中毒の救命においては、
ゆっくりとした補正で救命されたことはあまりなく、
救命例は急速補正の事例に限られているという知見も報告されています。

1回に10グラムや20グラムという食塩は、
摂取すること自体はそれほど難しいことではなく、
それで致死的であるとすると、
食塩自体を劇物や毒物に指定する必要があるようにも思いますが、
実際には通常の食事でちょっとやそっと塩分を摂っても、
それで死亡したというような事例は殆ど報告はなく、
人間の身体の調節力は、
単純計算では測れないもののようです。

ただ、最近熱中症予防に食塩摂取の重要性が、
強調され過ぎることが多く、
塩の塊をそのまま摂取したりすると、
元々が脱水になっている炎天下では、
食塩中毒の危険が高まると思いますし、
激辛ブームで食塩を大量に含むような激辛料理を、
何処かの芸能人のように一気食いすると、
食塩中毒になる危険も否定は出来ません。
激辛料理を食べた時のあの大量の発汗は、
身体が塩分を必死で体外に排泄しようとしているからで、
そこにはリスクがあると、
想定した方が良いように思います。

このように、食塩というのは、
人間に必要不可欠な反面、
非常に危険を孕んだものでもあり、
極端な食塩の多量摂取は、
命に関わることがあるということは、
心に留める必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


「忍びの国」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日で何もなければ1日のんびり過ごすつもりです。
と言ってもやることは山積みなので、
なかなか進まないと悶々としつつ、
今日の日を終わることになりそうです。

今日は祝日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
忍びの国.jpg
和田竜さんのベストセラー「忍びの国」が、
大野智さんを主役にして映画化され今公開中です。

これは原作も読んで映画を観ました。

忍者で有名な伊賀の国を、
信長の次男である信雄が父には無断で攻めるのですが、
それに失敗。
その2年後に今度は信長が指揮を執って攻め、
伊賀の国は滅ぼされる、
という史実を元にした物語で、
信雄の伊賀攻めの裏にあった駆け引きと、
規格外の最強忍者であった無門の活躍によって、
最初の伊賀攻めが失敗に終わる顛末が、
作品の肝になっています。

僕はこの和田竜さんという人の作品はちょっと苦手で、
「のぼうの城」とこの「忍びの国」を読みましたが、
どちらもあまりすっきりとした読後感を感じませんでした。

「のぼうの城」は秀吉の小田原攻めの時に、
石田三成の指揮による水攻めを受けながら、
小田原城の落城まで持ちこたえた忍城のエピソードで、
「忍びの国」は信雄の伊賀攻めですから、
どちらも1回は強敵を跳ね返したものの、
結局は歴史の流れには抗えずに、
滅んでしまうというところは同じです。

それを最初に強敵を跳ね返したのは、
そこに変わり者のヒーローがいたからだ、
というように物語を作っているのですが、
結局はすぐにやられてしまうのですから、
何かスカッとはしません。
両方のエピソードとも、
「のぼうの城」は石田三成が、
「忍びの国」は織田信雄が、
無能であったために起こったのだと思えてしまう展開なので、
これも盛り上がらない原因となっているように思います。

「忍びの国」の方は、
伊賀の国を率いている頭目のような人たちが、
色々と企みを巡らしているのですが、
それが自分の息子を殺させておいて、
もう1人の息子に伊賀をわざわざ裏切らせる、
というようなもってまわった馬鹿馬鹿しいもので、
とても説得力がないように感じますし、
それでいてすぐに下人の忍者には裏切られてしまい、
それを察知することも出来ない、
というあまりに間抜けで脱力してしまいます。

悪党が間抜けにしか描かれていないので、
主人公がそんな馬鹿を最初は信用していて、
最後は裏切られたと言って怒り、
それで自分の国を滅ぼしてしまうという展開にも、
違和感があります。
時代物というのは、
現代の感覚では了解不能のような人物がいるからこそ、
面白いのだと思うのですが、
それが了解可能のように主人公が描かれているのも、
どうにも物足りない感じがするのです。

そんな訳でとても上出来とは思えないのですが、
実際にはとても売れていて人気もあるので、
どうやら僕の感覚が多くの方とは違っているようです。

今回の映画は登場人物を少し整理している以外は、
ほぼ原作通りの映画化になっています。

人物の整理の仕方も、
伊賀を裏切った忍びを2人から1人にしたりと、
映像化するとゴタゴタしてしまう部分を切っているので、
なるほどと思う、クレヴァ―な改変で、
台本はまずまず巧みに構成されていると思います。
ラストは白戸三平みたいな感じを入れていて、
無門が影丸とダブるのですが、
それもなるほどという感じです。

演出はかなりムラがあって、
昔の作家性の強い低予算の時代劇のような、
様式的でシュールな感じの場面も少しあり、
最初に國村隼さん扮する北畠具教が殺されるところなどは、
なかなか良い感じなのですが、
後半の合戦場面になると、
お金が足りずにエキストラが少ないことがありありで、
合戦の筈が数人の小競り合いというようなビジュアルで、
これにはかなりガッカリしました。
チープなCGの乱用もどうかと思います。

総じてセットの場面は良いのですが、
野外のシーンは概ね駄目でした。

同じ予算でももう少しお金を掛けるべきところを変えて、
構成するべきではなかったのかな、
というようには思いましたが、
「のぼうの城」は小城の城攻めですから、
お城を1つ用意すれば良いところを、
今回は伊賀の国自体を攻めるという設定で、
仮の城を作ってすぐに壊したり、
忍者の砦も登場したりするので、
今の日本映画の現状からすると、
少し無理があったのかも知れません。

役者は主役の大野さんを含めて概ね好演で、
娯楽時代劇としてかなり頑張っていたと思うのですが、
スケールに予算が追い付かず、
やや空中分解気味になったことは残念に思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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