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運動は認知症を予防するのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
運動と認知症との関係.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
認知症の予防における運動の効果についての論文です。

適度な運動をする習慣を持つことが、
認知症の予防になるということは、
何となく直感的にはそうかな、と思うところですし、
医療機関などでもそうした指導が行われています。

しかし、
実際にその根拠はどの程度のものかと言うと、
運動の習慣のある人とない人とを比較すると、
10年未満くらいの観察期間の中で、
認知症になる人が運動習慣のない人で多かった、
という程度のデータが多く、
患者さんを登録して経過をみるような試験は、
数えるほどしか行われてはいません。

以前ご紹介した2011年のPNAS誌の論文では、
1年間有酸素運動を行うことにより、
MRIにより計算された海馬の容積が、
運動後に増加した、というようなものがありましたが、
その後追試はないようですし、
認知症そのものが予防された、
という訳ではありません。

10年未満の観察期間の試験の何が問題かと言うと、
認知症の物忘れなどの臨床症状が出現する10年以上前から、
βアミロイドなどの異常タンパクの蓄積は、
始まっていると想定されるからです。
つまり、10年以内の運動と認知症の出現との間に、
一定の関連が見られたとしても、
それは運動により認知症が予防されたとは、
必ずしも言えないからです。

そこで今回のイギリスの臨床研究では、
35歳から55歳の10308名を登録し、
運動習慣と認知症の発症との関連を、
平均で27年という長期間観察しています。

その結果、
観察期間10年から27年の間において、
運動習慣や強度と認知症の新規診断との間には、
有意な関連は認められませんでした。

その一方、認知症の診断から9年前の時点より、
登録者の運動量自体は有意に減少していました。

つまり、
これまで10年以内の観察期間において、
運動量が多いほど認知症の発症が少ないというデータが認められたのは、
運動が認知症を予防したのではなく、
認知症の初期変化の見られるような段階から、
その患者さんの運動量は低下し、
運動を自発的にすることが少なくなるので、
見かけ上そうした関連が認められる、
という可能性が高いと考えられます。

勿論適度な運動が、
心血管疾患の予防という観点からは、
有用であることは間違いがない事実なので、
このことによって運動は認知症に役に立たない、
というようには言えないのですが、
これまで報告された運動が認知症を予防する、
とされたデータの多くは、
認知症の初期症状を解析したいた可能性が高い、
という指摘は大変示唆的で、
運動の認知症に対する効果が、
実際にはどの程度のものであるのかについては、
今後再検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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