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妊娠後期の母乳搾乳の安全性と効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
妊娠後期の母乳搾乳の効果.jpg
今年のLancet誌に掲載された、
妊娠の後期に母乳を搾乳して保存するという、
ちょっと特殊な方法の効果と安全性とを検証した論文です。

糖尿病の女性が妊娠をした場合や、
妊娠中に母体の血糖値が上昇したような場合には、
胎児のインスリンが過剰に分泌されるため、
出生後に赤ちゃんが一時的な低血糖を起こす、
というリスクがあることが知られています。

こうした場合にも、
お母さんから離されて集中治療室に入った赤ちゃんが、
母乳による栄養を受けられるように、
妊娠の後期に母乳を搾乳して、
それを冷凍保存しておくことが、
欧米では1つの習慣として、
行なわれているようです。

授乳は妊娠糖尿病の糖尿病への進展を、
予防する効果のあることが知られています。
乳汁分泌ホルモンにインスリン抵抗性を改善する効果があることが、
その1つの要因と考えられています。
従って、早期に搾乳を行うことは、
胎児と母体にとってのメリットがあると、
そう考える意見があるのです。

その一方で、
妊娠中に搾乳することにより、
それをきっかけに陣痛が促進して出産が早まり、
胎児の低体重など、
予後に悪影響を与える可能性も否定は出来ません。

2014年のコクランレビューにおいては、
これまでのデータを収集しても、
この問題に解決を与えるような、
精度の高いデータは存在していない、
という結果になっていました。

そこで今回の検証ではオーストラリアの複数の病院において、
糖尿病があって妊娠をしたか、
妊娠糖尿病が診断された、
妊娠34から37週の女性635名を登録し、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方は妊娠36週以降で1日2回お乳を搾って搾乳を行い、
もう一方は搾乳はしないで、
出産後の胎児の経過を比較検証しています。

その結果、
両群で出生時が集中治療室(NICU)に入室するリスクには、
有意な差はなく、
出生時の体重やその健康状態にも、
有意な差は認められませんでした。
そして、搾乳を保存することにより、
出生後24時間以内の母乳栄養の割合は、
搾乳群で有意に高くなっていました。

つまり、
当初想定されたような、
搾乳により陣痛が早まることによる不利益は、
今回の研究では明らかには認められず、
妊娠後期の母乳搾乳の、
一定の安全性が確認をされています。

現状日本では推奨をされていない行為でもあり、
この結果が即日本で適応される、
というようには考えられませんが、
興味深い結果であり習慣であることは間違いがなく、
今後のデータの蓄積を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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