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「善玉」コレステロールは高いほど良いのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
HDLコレステロールと死亡リスク.jpg
今年のEur Heart J誌に掲載された、
HDLコレステロールの濃度と死亡リスクとの関連を検証した論文です。

HDLコレステロールは俗に「善玉コレステロール」
と呼ばれています。

それはこれまでの疫学データにおいて、
HDLコレステロールが低いことが、
独立した心血管疾患のリスクになることが分かっており、
HDLの持つ組織からコレステロールを引き抜くような作用も、
動脈硬化の進行阻止に働くと推測されているからです。

しかし、コレステロール(LDLコレステロール)を下げる、
という点についてはスタチンを始めとして、
有効性の確立された薬剤があり、
心血管疾患の予防効果もあることは確認されていますが、
同じようにHDLコレステロールを上げることにより、
心血管疾患が予防されるかどうかは、
まだ確認はされていません。

これは安全性の高い方法により、
確実にHDLコレステロールを増加させるような治療法が、
現時点では存在していない、
という点が最大の理由で、
2000年代にCETP阻害剤という、
直接的にHDLを増加させる作用を持つ薬が開発されましたが、
臨床試験で血圧の上昇、
死亡事例の増加などが認められたため、
その発売は中止されています。

HDLコレステロールを上昇させることが、
LDLコレステロールの低下療法と独立して、
意味のある治療行為であるかどうかは、
まだ結論は出ていないのです。

確かに疫学データとしては関連があるのですが、
本当にHDL自体が「善玉」であるのか、
それとも原因は他にあって、
代理のマーカーに過ぎないものなのかは、
まだ議論のあるところです。
HDLのコレステロール引き抜き能には差があり、
それはHDLの濃度とは必ずしも相関しない、
という実験データも存在していて、
それが事実であるとすると、
HDLの数値以外に、
もっとコレステロール引き抜き能を示すマーカーがないと、
治療の指標には成り得ないのかも知れません。

また、HDLコレステロールは、
高ければ高いほど良い、
という意見がある一方で、
遺伝子の変異を調べたようなデータでは、
HDLコレステロールが非常に高くなるような変異では、
心血管疾患リスクが増加するのではないか、
ということを示唆する結果も発表されています。

HDLコレステロールの健康影響については、
まだ不明な点も多いのです。

今回の研究はデンマークにおいて、
2つの大規模な疫学研究のデータをまとめて解析する方法で、
トータル男性52268名、女性64240名を登録し、
長期間の経過観察を行って、
HDLコレステロール値と死亡リスクとの関連を検証しています。

その結果、
男女ともHDLコレステロールが低くても高くても、
どちらも死亡リスクが増加する、
というこれまでの見解とは異なるデータが得られました。

男性においては、
総死亡のリスクはHDLコレステロールが73mg/dLが最も低く、
それと比較して97から115mg/dLでは、
総死亡のリスクは1.36倍(95%CI; 1.09から1.70)に、
116mg/dL以上では2.06倍(95%CI; 1.44から2.95)に、
それぞれ有意に増加していました。

女性においては、
総死亡のリスクはHDLコレステロールが93mg/dLが最も低く、
それと比較して135mg/dL以上では、
1.68倍(95%CI; 1.09から2.58)と有意に増加していました。

このようにHDLコレステロールが非常に高いことは、
必ずしも心血管疾患のリスクの低下とは、
結び付かない可能性もあり、
おそらくは現行のHDLコレステロールという検査は、
単純に「善玉コレステロール」を測定しているという訳ではない、
というのが実際なのだと思うので、
今後のより確実な指標の出現を待ちたいと思いますし、
この数値の評価についても、
今後の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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