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プレガバリン(リリカ)の坐骨神経痛に対する効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
今週の土曜日4月1日の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リリカの坐骨神経痛への効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
抗痙攣剤の一種で痛みに対して現在多用されている、
プレガバリン(リリカ)を、
非常に一般的な症状である坐骨神経痛に、
使用した場合の効果を検証した、
臨床試験の論文です。

プレガバリン(リリカ)という痛みの治療薬は、
ここ数年非常に広く使用されるようになりました。

これは痛みを伝える神経の働きを、
抑えるような作用の薬で、
元が抗痙攣剤ですから、
ふらつきやめまいなどの副作用はあるのですが、
他の同種の薬剤と比較すると比較的軽微で、
そのため急速にその使用は拡大しました。

日本での保険適応は神経障害性疼痛と、
慢性疼痛の一種である線維筋痛症です。

神経障害性疼痛というのは、
痛みを伝える神経が何等かの原因で障害されることにより、
神経が過敏になって痛みを生じるもので、
たとえば帯状疱疹というウイルスの皮膚の病気の後で、
炎症を起こした場所がピリピリと痛む、
帯状疱疹後神経痛はその代表です。

帯状疱疹という病気は、
発見が遅れることも多く、
痛みが残ることが患者さんにとっては大きな苦痛です。

少し前まではそうした時に使って効果のあるような、
良い薬が全くなかったので、
その点については患者さんの福音であったように思います。

ただ、神経障害性疼痛には、
非常に多くの病気や病態が含まれているのですが、
実際に精度の高い臨床試験において、
プレガバリンの効果が実証されているのは、
この帯状疱疹後神経痛と糖尿病の神経合併症による疼痛だけです。

もっと幅広く慢性疼痛に対しての介入試験は1つだけあるのですが、
試験のデザインには問題が指摘されていて、
その有効性は確認されていません。

もっとも馴染みのある神経障害性疼痛の1つは、
いわゆる坐骨神経痛です。

坐骨神経痛というのは、
太腿の後ろ側から足に掛けて生じる痛みで、
脊柱管狭窄症や腰椎ヘルニアなどの腰の病気が原因となることが多く、
手術の適応がないものについては、
痛み止めが対処療法として使用されます。
特に電気の走るような痛みが持続するようなケースでは、
プレガバリンがしばしば使用されます。

これは勿論保険適応のある治療ですが、
前述のように、その有効性の根拠は、
実際にはあまり明確なものはないのです。

そこで今回の研究ではオーストラリアにおいて、
複数施設で中等度以上の坐骨神経痛の患者さんを登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はプレガバリンを1日150㎎から開始して、
600㎎まで効果を見ながら増量し、
もう一方は見分けの付かない偽薬を同様に使用して、
8週間の治療を行ない、
その治療の前後及び、
試験開始後52週時点での症状の比較を行っています。
登録された事例は209例です。

その結果…

治療8週間後と52週時点での比較において、
プレガバリン使用群と偽薬使用群との間に、
有意な差は認められませんでした。
データを見ると、症状は治療期間において、
改善しているのですが、
それは偽薬でもほぼ同一で差は認められませんでした。

一方で当然のことですが、
偽薬と比較してプレガバリン群では、
めまいなどの副作用は明らかに多く認められました。

この試験のデザインと症例数は、
これまでプレガバリンによる治療効果が認められた、
帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害の臨床試験と、
ほぼ同レベルのものです。

従って、今回の結果から見る限り、
プレガバリンは同じ神経障害性疼痛であっても、
帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害では効果があっても、
坐骨神経痛に対しては効果はない、
ということになります。

ただし…

今回のデータは急性の坐骨神経痛と慢性の坐骨神経痛が混在していて、
実際には8割の患者さんは3か月以内の発症、
つまり急性の坐骨神経痛の可能性があります。
急性の坐骨神経痛の4分の3は3か月以内に未治療で改善すると言われているので、
そうしたケースではプレガバリンを使用してもしなくても、
結果は同じであった可能性があります。
偽薬でもかなりの改善が認められているという事実は、
そうした可能性を示唆するものです。
また、坐骨神経痛自体、純粋に神経障害性疼痛によるものではなく、
実際には侵害受容性疼痛という、
別個のメカニズムによる疼痛との混合であると考えられています。

従って、全ての坐骨神経痛にプレガバリンが無効、
というようには言い切れず、
3か月を超える慢性の経過で、
症状的にも神経障害性疼痛の関与が大きいことが想定される事例を選べば、
今回とは違った結果が得られる可能性も残っているのです。

いずれにしても、
全ての慢性の痛みにプレガバリンが有効な訳ではなく、
神経障害性疼痛が想定される病変の全てに有効な訳ではない、
ということは明らかなので、
今後はどのような事例に対してプレガバリンが適応となるのか、
そのもっと厳密な線引きが、
必要なのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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