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高齢男性の貧血に対する男性ホルモンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
テストステロンと貧血.jpg
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
高齢男性の原因不明の貧血を、
男性ホルモンの補充で改善しよう、
という臨床試験の報告です。

上記文献の記載によれば、
65歳以上の年齢ではおおよそ1割に貧血が認められ、
その頻度は女性より男性でより多いという報告があります。

この貧血の原因としては、
鉄やビタミンB12の欠乏に伴うもの、
慢性の炎症に伴うもの、
慢性腎不全に伴うもの、
骨髄異形成症候群などの造血機能の異常によるもの、
などがありますが、
高齢者の貧血の3分の1は、
原因不明の貧血だとされています。

原因が不明の貧血の患者さんに対しては、
適切な治療もありませんから、
そのまま様子をみるしかないのですが、
実際にはあまり根拠がないのに、
鉄剤などが使用されているケースも、
しばしば見ることがあります。

この原因不明の貧血の男性に限った場合の原因として、
最近注目されているのが男性ホルモンの不足です。

男性ホルモンは造血に関連のあるホルモンで、
年齢と共に低下します。
男性ホルモンが低値である人は貧血になりやすいことと、
それほど精度の高いデータではありませんが、
男性ホルモンの補充により貧血が改善したというデータも発表されています。

今回の研究はこれまでで最も厳密な方法で、
高齢男性の貧血に対する、
男性ホルモンの補充効果を検証したものです。

65歳以上の男性で2回測定した血液のテストステロン濃度が、
平均で275ng/dL未満で低いと考えられ、
前立腺癌のリスクは低いと考えられる788名が対象で、
このうち126名は血液のヘモグロビンが12.7g/dL以下の貧血あり、
そのうちの62名は検査を行っても原因は不明でした。
この場合の検査は血清鉄やビタミンB12濃度、
葉酸、腎機能、血小板や白血球数などが行われています。

貧血のない657名、
原因不明の貧血のある62名、
原因の判明した貧血のある64名、
のそれぞれをクジ引きで2群に分け、
対象者にも実施者にも分からないように、
一方はテストステロンの塗り薬を使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
1年間の経過観察を行います。

その結果…

原因不明の貧血のあるグループでは、
ヘモグロビンが1.0g/dL以上上がった比率が、
偽薬では15%であったのに対して、
テストステロン使用群では54%と、
ヘモグロビンの上昇がテストステロンで有意に認められました。
そして、1年後に貧血ではなくなった比率は、
偽薬で22.2%であったのに対して、
テストステロンでは58.3%とこれも有意に改善していました。

鉄欠乏など原因のある貧血のグループでは、
ヘモグロビンが1.0g/dL以上上がった比率が、
偽薬では19%であったのに対して、
テストステロン群では52%となっていました。

登録時に貧血がなかったグループでも、
テストステロンの使用により、
貧血群ほど顕著ではありませんが、
ヘモグロビン値の上昇が認められました。
そのうちの6名で、
多血症の水準であるヘモグロビン17.5g/dL以上の、
上昇が認められました。

つまりテストステロン濃度が低下している高齢男性においては、
その補充により造血が高まり、
血液のヘモグロビンの上昇が起こります。
この反応は原因不明の貧血がある事例において、
より顕著に認められますが、
原因の判明している貧血においても効果があり、
たとえば鉄欠乏性貧血と診断はされていても、
鉄の補充により貧血が充分に改善されない場合には、
テストステロンの不足もその貧血の成因の1つと、
なっている可能性が大きいようです。

テストステロンの補充には、
前立腺癌を含む癌のリスクや、
心血管疾患のリスクなども想定されていますから、
闇雲な補充は慎むべきですが、
高齢男性の原因不明の貧血については、
テストステロンの不足の可能性を念頭において、
検証を行うことは重要なことではないかと思います。

治療の可否については、
まだその適応は明確ではないと、
そう考えておいた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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