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第19回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日は告知です。
それがこちら。
第19回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
4月15日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。

テーマは今回は「痛みの原因と治療」です。

痛みの治療は西洋医学のウィークポイントの1つです。

痛みはつらく耐えがたい症状です。
それが慢性の症状であればなおさらです。

しかし、鍼灸やマッサージなどの施術が、
幅広く支持されていることからも分かるように、
西洋医学のこの面での治療は、
決定打に欠け、
患者さんの支持をあまり多くは集めていない、
という現状があるように思います。

リリカ(プロガバリン)や、
トラムセットのようなオピオイド系の鎮痛剤が、
少し前から急速に広まりましたが、
万能薬と言えるようなものではなく、
その使用には多くの問題が指摘されるようになって来ています。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
4月13日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

ワルファリンとダビガトランの骨折リスク比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今週土曜日(4月1日)の午後は、
休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ワルファリンとダビガトランの骨折リスク.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
抗凝固剤の骨折リスクについての論文です。

心房細動という不整脈があると、
心臓の中の血流が滞って血栓が出来、
それが脳の血管に詰まって脳梗塞(脳塞栓)を起こす原因となります。

その予防のために今でも広く使用されているのが、
血液が固まる(凝固する)のを抑える抗凝固剤のワルファリンです。

ワルファリンは50年以上前に、
殺鼠剤として開発された薬ですが、
その作用はビタミンKというビタミンと深い関わりがあります。

ビタミンKは骨の健康な発育に必須のビタミンですが、
それ以外に血液が固まる際に必要な、
凝固因子の一部の活性化に関わっています。
ビタミンKが活性化に必要とされる凝固因子を、
ビタミンK依存性凝固因子と呼んでいますが、
このビタミンK依存性凝固因子の働きを妨害するのが、
ワルファリンの作用なのです。

ただ、
ビタミンKに係わる凝固因子の働きを妨害する、
ということは分かっていても、
その詳細なメカニズムは長く不明でした。

それが分かったのは2004年にNature誌に掲載された論文においてで、
ワルファリンのターゲットが、
ビタミンKの再生回路に係わる、
VKORC1(vitaminK epoxide reductase complex 1 )という蛋白質であることが、
初めて明らかになったのです。

さて、
ワルファリンによりビタミンKの再利用が阻害されるということは、
当然ビタミンKが主に働く骨においても、
その影響が大きい可能性があります。

つまり、ワルファリンを継続的に使用することにより、
骨が脆くなって骨折をし易くなる可能性があるのです。

実際に2006年に発表された疫学データでは、
1年以上ワルファリンを使用していると、
未使用と比較して骨粗鬆症による骨折のリスクが、
1.25倍有意に増加していました。

一般論で言って、
心房細動の患者さんの脳梗塞の予防効果と比較すれば、
このレベルの骨折リスクの増加は比較的軽微な有害事象である、
と言うことは出来ます。

しかし、ワルファリン使用者の多くは高齢者で、
高齢者が寝たきりになる大きな要因は骨折ですから、
その患者さんの人生をトータルに考えると、
これは決して些細なことではない、
というようにも考えられます。

ここで問題は、
ワルファリン以外の最近使用されている抗凝固剤では、
そうしたリスクは少ないのか、
ということです。

新しいタイプの抗凝固剤は、
非ビタミンK阻害経口抗凝固剤と呼ばれているくらいで、
そのメカニズムとビタミンKには関連はありませんから、
理屈から言えば、
ワルファリンより骨折リスクは低くなりそうです。

しかし、
実際には直接の比較でそれを明確に証明したような研究は、
これまでにあまり存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
非弁膜症性心房細動の患者さんに対して、
直接トロンビン阻害剤であるダビガトラン(プラザキサ)と、
ワルファリンを使用した事例を、
香港の公立病院の医療データから抽出し、
骨折リスクに関しての両薬剤の比較を行っています。

両群に振り分けには、
傾向スコア(プロペンシティスコア)と呼ばれる手法を応用しています。
これは処方された患者さんの背景などを、
傾向スコアとして解析し、
同じスコアを持つ患者さんを両群に均等に振り分ける、
という方法によって行われるもので、
従来の方法よりも精度の高い比較が可能だと、
考えられています。

これは最近流行りの手法で、
データ自体は後から抽出したものなのですが、
傾向スコアを用いて振る分けをすることにより、
最初から患者さんを登録して観察したようなデータに、
近い精度のものに近づくという考え方です。

新規に非弁膜症性心房細動と診断された51496名の患者さんのうち、
傾向スコアによって、
ダビガトランが処方された3268名と、
ワルファリンが処方された4884名が比較されています。

観察期間中にダビガトラン群の32例(1.0%)と、
ワルファリン群の72例(1.5%)に骨粗鬆症性の骨折が発症していて、
ワルファリン群と比較して、
ダビガトランの使用は骨折のリスクを、
62%(95%CI:0.22から0.66)有意に低下させていました。
実際の骨折頻度の差は、
年間100人当たり0.68件でした。(95%CI;-0.38から-0.86)

このリスクは過去の骨折や転倒のあった患者さんのみで解析すると、
骨折頻度の差は年間100人当たり3.15件と拡大し、
相対リスクでは88%の低下を示しましたが、
その一方で骨折は転倒の既往のない患者さんのみの解析では、
有意な差は得られませんでした。

つまり、
ワルファリンはダビガトランと比較して、
骨折のリスクが明確に高いのですが、
そのリスクは骨折や転倒の既往のある患者さんでは、
明確に高いものになる一方、
そうした既往のない患者さんでは、
軽微なものに留まる、という結果です。

従って、
全ての患者さんで骨折予防のために、
ワルファリン以外の抗凝固剤を使用する必要があるかどうかは、
まだ議論の余地のあるところですが、
少なくとも骨折や転倒の既往のある患者さんでは、
積極的にワルファリン以外の抗凝固剤を、
選択するという判断が現時点では妥当なようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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アルコール摂取量と心血管疾患との関連について(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

今週土曜日(4月1日)の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アルコールの摂取量と疾患.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アルコールの摂取量と病気との関連についての論文です。

お酒の量と病気との関係については、
色々な意見があります。

大量のお酒を飲んでいれば、
肝臓も悪くなりますし、
心臓病や脳卒中、高血圧などにも、
悪影響を及ぼすことは間違いがありません。

ただ、アルコールを少量飲む習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりも、
一部の病気のリスクは低くなり、
寿命にも良い影響がある、
というような知見も複数存在しています。

日本では厚労省のe-ヘルスケアネットに、
日本のデータを元にして、
がんと心血管疾患、総死亡において、
純アルコールで平均23グラム未満(日本酒1合未満)の飲酒習慣のある方が、
全く飲まない人よりリスクが低い、
という結果を紹介しています。

その一方で、
昨年のメタ解析の論文によると、
確かに飲酒量が1日アルコール23グラム未満であれば、
機会飲酒の人とその死亡リスクには左程の差はないのですが、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
矢張り死亡リスクは増加する傾向を示していた、
というようなデータが紹介されています。

今回の研究はイギリスのもので、
プライマリケアの診療データをまとめて解析することにより、
個々の心血管疾患の発症リスクと、
アルコールの摂取量との関連を検証しています。

登録の時点では心血管疾患にかかっていない、
30歳以上の1937360名の診療データが解析の対象となっています。

その結果…

登録された190万人余のうち、
観察期間中に114859名が心血管疾患の診断を受けていました。
お酒をイギリスで規定された適正飲酒量の範囲で飲む人と比較して、
全くお酒を飲まない人は、
不安定狭心症のリスクが1.33倍(95%CI; 1.21から1.45)、
心筋梗塞のリスクが1.32倍(95%CI; 1.24から1.41)、
予期せぬ心臓死のリスクが1.56倍(95%CI; 1.38から1.76)、
心不全のリスクが1.24倍(95%CI; 1.11から1.38)、
虚血性脳梗塞のリスクが1.12倍(95%CI;1.01から1.24)、
末梢の動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)のリスクが1.22倍(95%CI;1.13から1.32)、
腹部大動脈瘤のリスクが1.32倍(95%CI; 1.17から1.49)、
それぞれ有意に増加していました。

この場合の適正飲酒というのは、
男性で1日アルコール量30グラム以内(1週間で210グラム以内)、
女性で1日アルコール量20グラム以内(1週間で140グラム以内)、
という基準が採用されています。
2016年に男女とも適正飲酒量は1日20グラム以内(1週間で140グラム以内)、
と改訂が行われたのですが、
このデータはそれ以前のものなので、
古い基準が適応されています。

一方で適正量の飲酒を基準とした場合に、
それを超える飲酒量では、
予期せぬ心臓死のリスクが1.21倍(95%CI; 1.08から1.35)、
心不全のリスクが1.22倍(95%CI; 1.08から1.37)、
心停止のリスクが1.50倍(95%CI; 1.26から1.77)、
一過性脳虚血発作のリスクが1.11倍(95%CI; 1.02から1.37)、
虚血性脳梗塞のリスクが1.33倍(95%CI; 1.09から1.63)、
脳内出血のリスクが1.37倍(95%CI; 1.16から1.62)、
末梢動脈疾患のリスクが1.35倍(95%CI; 1.23から1.48)、
それぞれ有意に増加していました。
しかし、心筋梗塞と安定狭心症の発症リスクについては、
有意ではないものの、
飲酒量が多い群の方がリスクが低い傾向が認められました。

総死亡のリスクについては、
矢張り適正範囲の飲酒量を基準とした時に、
全くお酒を飲まない人は1.24倍(95%CI; 1.20から1.28)、
適正量を超える飲酒をしている人は1.34倍(95%CI; 1.31から1.38)と、
いずれも有意に上昇していました。
つまり、お酒を少し飲む人が一番長生きで、
沢山飲む人も全く飲まない人も、
どちらも死亡リスクは高くなるという結果です。

今回のデータは概ね多くの病気において、
全くお酒を飲まない人より、
1日20グラム程度のアルコールを摂取している人の方が、
その発症リスクは低く、
それが適正量を超えるとリスクの増加に繋がる、
というものになっています。

ただ、注意が必要なのは、
適度に美味しくお酒を飲めている人は、
トータルには体調の良い人が多く、
一切お酒を飲まない人は、
お酒を飲めない人もいますし、
体調があまり良くなくてお酒が飲めない、
というような人もいるので、
そうしたバイアスが影響している可能性がある、
ということです。

今回のデータでは、
適正飲酒量を超える集団はひとまとめで評価しているので、
より適正範囲の飲酒の人の状態が、
良く評価されやすかった、
という面もあるように思います。

いずれにしても、
お酒を適度に飲むことは、
トータルに見て健康上の大きなリスクになることはなく、
その習慣の継続に問題はないと思いますし、
アルコールを全く飲まれない方は、
健康のために無理に飲むようなことは、
お考えにはならないのが良いと思います。

アルコールの害が問題になるのは、
概ね1日のアルコール量が20グラム(~25グラム)を超えてからで、
それより少ない量のアルコールは、
全く飲まないこととほぼ同一に考えて問題はない、
という理解が妥当ではないかと思います。

ただ、勿論アルコール依存症や、
肝機能低下や糖尿病の状態によっては、
完全な禁酒の継続が医療上必要なケースもあるので、
これはあくまでその時点で健康上の大きな問題がない方に限る、
ということは強調しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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ニジェールにおける安価なロタウイルスワクチンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今週の土曜日(4月1日)の午後は休診となりますので、
受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
安いロタウイルスワクチン.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
インド製の安価なロタウイルスワクチンの、
アフリカでの臨床試験の結果についての論文です。

ロタウイルスはノロウイルスと並んで、
乳児のウイルス性胃腸炎の代表的な原因ウイルスで、
嘔吐と下痢がその主な症状です。

日本のような医療がそれなりに発達している国では、
軽症の事例は対処療法で様子をみて、
重症のケースは入院して点滴治療などを行なえば、
命に関わるような事態は稀ですが、
アフリカなどの衛生状態の悪い地域では、
重症化して死亡するケースも稀ではありません。

世界的に見ると、
5歳未満の下痢による死亡事例のおよそ37%は、
毎年ロタウイルスが原因である、
という試算があります。

このロタウイルスによる子供の死亡を減らすためには、
衛生状況の改善と公衆衛生的な知識の普及と共に、
有効なワクチンの接種が必要と考えられます。

現状2種類のワクチンが、
日本を含む世界中で使用されています。
それがグラクソ社のロタリックスと、
メルク社のロタテックです。

この2種類のワクチンはその有効性と安全性とがほぼ確立されていて、
その使用により60から70%程度は、
ロタウイルスによる重症の腸炎を予防することが確認されています。

しかし…

ロタリックスもロタテックも、
ワクチンとしては非常に高価な商品です。
日本では1本の接種で1万円を超えるコストが掛かります。
発展途上国での接種は製薬会社も価格を下げており、
また国際的な補助の仕組みもありますが、
それでも他のワクチンと比較して、
高価であることには変わりはありません。
更にもう1つの問題は、
ワクチンの温度管理で、
ロタリックスもロタテックも、
添付文書上2から8℃の低温で遮光で管理せよ、
というように書かれています。
しかし、現実には低温での輸送や管理にはコストが掛かり、
アフリカなどでの集団接種に、
その温度管理を要求することは、
現実的ではないのです。

そこで、最近インドの製薬会社により、
この問題の解決に結び付く商品が開発されました。
物自体はヒトやウシ由来の複数の型のロタウイルスの抗原を、
再集合させて1つの粒子としたワクチンで、
そこに含まれている5つの型を含めて、
ロタテックとほぼ同一のワクチンです。
特許のこととか問題はないのだろうか、
と、ちょっと気になりますが、
現状は問題はないようです。

その特徴はまずロタテックより安いということで、
もう1つは温度管理があまり必要ではなく、
37℃の条件で2年間、
40℃の条件でも半年は安定している、
と記載がされています。
つまり、低温にすることなく、
そのまま輸送してそのまま接種してもOKということです。

そんな都合の良い話があるのだろうか、
とそこもちょっと疑問に感じるところですが、
今のところはこの点も問題とはされていないようです。

今回の臨床試験はこのインド製ロタウイルスワクチンを、
アフリカのニジェールで摂取した臨床試験の結果です。

3508名の新生児を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はインド製のロタウイルスワクチンを経口接種し、
もう一方は効能のない偽ワクチンを接種して、
接種終了28日後以降のロタウイルスによる重症の胃腸炎の発症を、
比較検証しています。
新生児が2歳になるまで観察は継続される予定ですが、
現状は118例のロタウイルスによる重症胃腸炎が報告された時点で、
解析は行われています。
ワクチンは生後6週、10週、14週の3回接種されていて、
これは現行のロタテックと同じスケジュールです。

その結果…

118例のロタウイルスによる重症胃腸炎が報告され、
そのうちの31例がワクチン接種群で、
残りの87例が偽ワクチン群でした。
これによりロタウイルスワクチンの、
ロタウイルスによる重症胃腸炎予防効果は、
66.7%と算出されました。
(Per-protocol 解析。95%CI;49.9から77.9)
ロタウイルス胃腸炎の事例全てで見ると、
その有効率は34.5%で、
全ての感染性胃腸炎での解析では、
ワクチン接種群で666例に対して偽ワクチン群で646例と、
トータルには予防効果は認められませんでした。
ワクチンの有害事象として指摘されている腸重積については、
今回の研究では報告事例はありませんでした。

今回のロタウイルス由来の重症胃腸炎を66.7%低下させた、
というワクチンの有効性は、
ロタリックスやロタテックの臨床試験とほぼ一致する結果で、
この2種のワクチンの代わりに、
インド製の今回のワクチンを用いても、
大きな問題はなさそうであることを、
示唆する結果です。

このくらいの例数では当然のことではあるのですが、
ロタウイルスによる重症胃腸炎は減っても、
トータルに全ての原因による重症胃腸炎は減っていないので、
少しモヤモヤする結果ではあります。

いずれにしても、
今後は医療コストを考えた製品選びという、
こうした目的の研究が増えることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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プレガバリン(リリカ)の坐骨神経痛に対する効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
今週の土曜日4月1日の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リリカの坐骨神経痛への効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
抗痙攣剤の一種で痛みに対して現在多用されている、
プレガバリン(リリカ)を、
非常に一般的な症状である坐骨神経痛に、
使用した場合の効果を検証した、
臨床試験の論文です。

プレガバリン(リリカ)という痛みの治療薬は、
ここ数年非常に広く使用されるようになりました。

これは痛みを伝える神経の働きを、
抑えるような作用の薬で、
元が抗痙攣剤ですから、
ふらつきやめまいなどの副作用はあるのですが、
他の同種の薬剤と比較すると比較的軽微で、
そのため急速にその使用は拡大しました。

日本での保険適応は神経障害性疼痛と、
慢性疼痛の一種である線維筋痛症です。

神経障害性疼痛というのは、
痛みを伝える神経が何等かの原因で障害されることにより、
神経が過敏になって痛みを生じるもので、
たとえば帯状疱疹というウイルスの皮膚の病気の後で、
炎症を起こした場所がピリピリと痛む、
帯状疱疹後神経痛はその代表です。

帯状疱疹という病気は、
発見が遅れることも多く、
痛みが残ることが患者さんにとっては大きな苦痛です。

少し前まではそうした時に使って効果のあるような、
良い薬が全くなかったので、
その点については患者さんの福音であったように思います。

ただ、神経障害性疼痛には、
非常に多くの病気や病態が含まれているのですが、
実際に精度の高い臨床試験において、
プレガバリンの効果が実証されているのは、
この帯状疱疹後神経痛と糖尿病の神経合併症による疼痛だけです。

もっと幅広く慢性疼痛に対しての介入試験は1つだけあるのですが、
試験のデザインには問題が指摘されていて、
その有効性は確認されていません。

もっとも馴染みのある神経障害性疼痛の1つは、
いわゆる坐骨神経痛です。

坐骨神経痛というのは、
太腿の後ろ側から足に掛けて生じる痛みで、
脊柱管狭窄症や腰椎ヘルニアなどの腰の病気が原因となることが多く、
手術の適応がないものについては、
痛み止めが対処療法として使用されます。
特に電気の走るような痛みが持続するようなケースでは、
プレガバリンがしばしば使用されます。

これは勿論保険適応のある治療ですが、
前述のように、その有効性の根拠は、
実際にはあまり明確なものはないのです。

そこで今回の研究ではオーストラリアにおいて、
複数施設で中等度以上の坐骨神経痛の患者さんを登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はプレガバリンを1日150㎎から開始して、
600㎎まで効果を見ながら増量し、
もう一方は見分けの付かない偽薬を同様に使用して、
8週間の治療を行ない、
その治療の前後及び、
試験開始後52週時点での症状の比較を行っています。
登録された事例は209例です。

その結果…

治療8週間後と52週時点での比較において、
プレガバリン使用群と偽薬使用群との間に、
有意な差は認められませんでした。
データを見ると、症状は治療期間において、
改善しているのですが、
それは偽薬でもほぼ同一で差は認められませんでした。

一方で当然のことですが、
偽薬と比較してプレガバリン群では、
めまいなどの副作用は明らかに多く認められました。

この試験のデザインと症例数は、
これまでプレガバリンによる治療効果が認められた、
帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害の臨床試験と、
ほぼ同レベルのものです。

従って、今回の結果から見る限り、
プレガバリンは同じ神経障害性疼痛であっても、
帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害では効果があっても、
坐骨神経痛に対しては効果はない、
ということになります。

ただし…

今回のデータは急性の坐骨神経痛と慢性の坐骨神経痛が混在していて、
実際には8割の患者さんは3か月以内の発症、
つまり急性の坐骨神経痛の可能性があります。
急性の坐骨神経痛の4分の3は3か月以内に未治療で改善すると言われているので、
そうしたケースではプレガバリンを使用してもしなくても、
結果は同じであった可能性があります。
偽薬でもかなりの改善が認められているという事実は、
そうした可能性を示唆するものです。
また、坐骨神経痛自体、純粋に神経障害性疼痛によるものではなく、
実際には侵害受容性疼痛という、
別個のメカニズムによる疼痛との混合であると考えられています。

従って、全ての坐骨神経痛にプレガバリンが無効、
というようには言い切れず、
3か月を超える慢性の経過で、
症状的にも神経障害性疼痛の関与が大きいことが想定される事例を選べば、
今回とは違った結果が得られる可能性も残っているのです。

いずれにしても、
全ての慢性の痛みにプレガバリンが有効な訳ではなく、
神経障害性疼痛が想定される病変の全てに有効な訳ではない、
ということは明らかなので、
今後はどのような事例に対してプレガバリンが適応となるのか、
そのもっと厳密な線引きが、
必要なのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

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アガリスクエンターテイメント「時をかける稽古場2.0」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
時をかける稽古場.jpg
討論型のシチュエーションコメディに異彩を放つ、
アガリスクエンターテイメントの公演に足を運びました。

今回は2014年に好評であった作品の再演で、
僕は初演は映像でしか見ていません。
人物設定などが少し異なっていましたが、
基本的な内容は初演と同じだったと思います。

小劇場の劇団が、
公演の2週間前になっても台本が全く出来ていない、
という状況で、
公演前日と入れ替わることが出来るという、
一種のタイムマシンが出現して、
如何に次の公演を実現するかというその一点で、
劇団員が大騒ぎを繰り広げるという2時間10分のドラマです。

アガリスクエンターテイメントという劇団が、
今のメンバーで上演する芝居としては、
一番無理のない設定であり内容だったと思います。
海外を舞台にしたシチュエーションコメディなども、
上演はされているのですが、
このキャストでは厳しいなあ、
と正直思うことが多く、
その点今回の作品はほぼ等身大の自分自身を演じているので、
違和感なく観ることが出来ますし、
作品世界にも入り込みやすいのです。

話し合いやエチュードを重ねながら、
丁寧に作品世界を構成したいったことが分かる内容で、
個々の役者さんの台詞は皆自分のものになっていて、
実際に稽古場に居合わせているように、
その遣り取りをリアルに感じることが出来ます。

正直なところ、
後半に少し失速する感じがあり、
トータルな完成度は後半で盛り上がりを見せる、
「紅白旗合戦」辺りと比べると落ちると思うのですが、
スタッフワークを含めたトータルな舞台の質としては、
僕が観た作品の中では、
これまでで最も高いものだったと思います。

一見の価値はある舞台としてお勧めです。

以下ネタバレを含む感想です。

発想の元ネタは、
ドラえもんの続きが描けなくなった人気漫画家のエピソードで、
タイムマシンで未来に行き、
次回の連載の載った雑誌を買って来て、
それを元にして続きを描くのですが、
それを実際に描いたのは誰なのかが分からなくなるという、
タイムパラドックスを扱った話です。
それ以外に藤子不二雄の短編の、
色々な年代の自分が会議をする話も、
参考にされているという気がします。

それを、戯曲が書けなくて本番2週間前になった、
小劇場の話に置き換えて、
台本がギリギリで出来上がった、
本番1日前と人物だけが入れ替わる、という話にして、
ちょっとひねった「ショー・マスト・ゴー・オン」の、
シチュエーションコメディに仕立てています。

前半は軽快に物語は進み、
公演直前に代役が立っているのは何故、
というようなミステリアスな部分を作って、
そこから未来の人間に現在の人間が、
次々と乗っ取られるような、
「ボディ・スナッチャー」テーマに移行する辺りが冴えていて、
これは素晴らしいじゃないか、
と感心しながら舞台を見つめました。
ここまでは最高です。

ただ、それ以降でより未来の人間が現れたりする辺りから、
少し物語が失速する感じになり、
インフルエンザで公演中止という展開には、
オヤオヤという感じで元気がなくなり、
最後もあまりキチンと物語に決着が付く、
というようにはならないので、
何かモヤモヤした終演となりました。

中段までは抜群の破壊力だっただけに、
個人的にはとても残念です。

結果的に「好きな時間を念じるとそこに行ける」
というようなご都合主義の話になっていて、
最初の公演直前と2週間前のみが入れ替わる、
という設定から、
大きく逸脱してしまったのが、
作品の求心力を弱めてしまったような気がします。

「それならもう、何でもありじゃん」
と思ってしまって、
舞台上の理屈っぽい遣り取りに、
あまり興味が持てなくなってしまうのです。

ここは矢張りワーム・ホールが1か所だけ開いている、
ということにして、
その枠組みの中で物語を展開させた方が、
より求心力のある作品に仕上がったのではないでしょうか?

作品の前半と後半とで、
この作品はテーマが変わるのですが、
そこが観客の生理と上手く一致していないという気がするのです。
台本がないから舞台が開かない、
という話が、
劇団員がインフルエンザで休んだので公演が中止になった、
という話になってしまって、
台本はどうとでもなるかのように、
後半には感じられてしまうので、
台本が出来ないというハラハラドキドキが、
消滅してしまうのが良くないと思うのです。

どちらかにテーマを絞った方が、
良かったのではないでしょうか?

この作品の良さは全編に横溢する熱気のようなもので、
ほぼ等身大の自分を演じている役者さんが皆生き生きと躍動し、
冷静に考えれば詰まらないことに、
必死で向かう姿は感動すら覚えます。
役者さんは皆好演で、
僕のひいきは凛々しい熊谷有芳さんですが、
台詞がないと悲しむ姿も楽しく、
大倉孝二さんそっくりの突っ込みボケをする津和野諒さんは、
今回に関しては抜群の脇でした。

セットもこれまでの舞台と比べると、
カッチリプロ仕様で出来ていましたし、
演出も綺麗で洒落ていました。

それだけに内容の求心力の不足には、
少し残念な思いもあったのです。

いずれにしても、
主宰の冨坂友さんが、
シチュエーション・コメディの、
稀有の書き手であることは間違いなく、
今後も期待をしつつ公演を待ちたいと思います。

頑張って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

ドニゼッティ「ルチア」(2017年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ルチア.jpg
ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」が、
今新国立劇場のオペラ・パレスで上演されています。

ルチアはソプラノの超絶技巧の狂乱の場が有名なオペラで、
マリア・カラスやサザーランドなど、
これまでに多くの名ソプラノが名演の数々を残しています。

狂乱の場以外にも、
全編が聴きどころと言って良い充実した作品で、
以前はかなりカットされて短縮版での上演が多かったのですが、
最近はほぼ完全に全編を上演することが多くなりました。

今回もほぼノーカットに近い上演だったと思います。

僕は割と「ルチア」は好きな部類のオペラで、
これまでに1996年のフィレンツェ歌劇場のデヴィ―アのルチアが、
この作品の生での初体験で、
2002年に新国立劇場でルキアネッツのルチアを聴き、
2003年トリエステオペラのボンファデッリ、
2007年ドニゼッティ劇場のランカトーレ
(この2回は滅茶苦茶短縮版でした)、
2011年メトロポリタン歌劇場のダムラウ、
そして2012年の演奏会形式のデセイ様、
と結構この作品は沢山聴いています。

中ではデヴィ―アのルチアは、
その当時のベルカントのお手本のような見事な歌唱でした。
ダムラウのルチアは、正統的な解釈とは違うと思うのですが、
如何にもドイツ的で理知的な狂気の表現が面白く、
技巧もほぼ完璧でした。
2012年のマリインスキー・オペラにデセイ様がゲストで出た舞台も、
僕は何と言ってもデセイ様が一番の女神なので、
1回限りの歌声を聴けて幸せでした。
デセイ様の良い時の、
あの伸びとスピードのある超高音は、
今出せるソプラノはいないと思います。

さて、今回のルチアですが、
トータルにはなかなか頑張っていたと思います。

イタリアの若手の指揮者ですが、
母国のベルカントを、
良く理解していることの分かる演奏でした。
オケもいい感じで鳴っていました。
特に1幕(第一部)は、
凝縮力のある演奏であったと思います。
狂乱の場の掛け合いは、
フルートではなくグラスハーモニカを使用していました。
最近はその方が多いという感じです。

演出はプロジェクションマッピングを使用した、
立体的な舞台がなかなか美しく、
オープニングで岩礁に映像の波濤が轟くのも、
「おっ」と思いますし、
ラストの岬のセットも良い感じです。
狂乱の場では、
何と花婿の生首を突き刺した槍を持って、
ルチアは登場し、
幻想に酔いしれる場面では、
背後から死の泉と荒野がせり出して来ます。
ただ、狂乱の場は歌で盛り上げるのが筋ですから、
演出過多な印象はありました。
ラストではルチアの死体が登場し、
それを抱えてテノールがアリアを歌い、
そのまま岬の突端から海に身を投げようという瞬間で幕が下ります。
今時珍しいグランギニュール劇のような趣向で、
僕はこうした物が嫌いではないので印象は悪くないのですが、
音楽に合っていたかどうかと言うと、
そこは疑問も残ります。
全体に濃厚な死の匂いが全編を覆うような演出でしたが、
音楽はそこまで退廃的ではないように思うからです。
衣装も擬古典という感じで、
年代不明という雰囲気ですが、
ルチアの最初の衣装を男装にしたのは面白いと思います。
黒いヴェールの使い方も面白かったと思います。

歌手陣ではルチア役のソプラノは、
オルガ・ペレチャッコというロシアの若手で、
ビジュアルはルチアにピタリの美形ですが、
まずまずソツのない歌唱で、
及第点だけれど物足りなさは残りました。
超高音はあまり伸びのある声は出せないようです。
初日の映像を見ると、
カヴァレッタの部分がかなりのスローテンポで、
これじゃダメじゃん、と思ったのですが、
僕の聴いた20日の舞台では、
テンポはもう少し速くなっていました。
ただ、高音の決めは苦手らしく、
その前になるとかなりの安全運転でスリリングさのない歌唱になります。
テノールはボチボチ。
エンリーコのルチンスキーはなかなか良かったと思います。
ただ、いいな、と思うと頑張り過ぎて失速したりして、
やや安定感のない印象はありました。
得意な場所は頑張るけれど、
苦手な部分は声が小さくなる、というタイプです。

そんな訳で不満はありますし、
抜群という舞台ではありませんでしたが、
なかなか演出には面白い部分があり、
何より久しぶりに新国立にベルカントの風が吹いた、
という感じのある、
聴き応えのあるオペラだったと思います。

一聴の価値は間違いなくあると思います。

1つこれはあまり言いたくはないのですが、
新国立劇場は最近良い舞台が多い一方で、
観客の質はかなり悪く、
今回も狂乱の場の直前に、
正面1列目のど真ん中くらいにお掛けになっているおじさんが、
盛大に携帯を鳴らされていました。
ある意味その後の狂乱の場より、
聴く方にとっては戦慄的な体験でした。
勘弁して欲しいものだと本当に思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

食生活と生命予後との関連について(アメリカの大規模調査) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
食事内容と病気との関連.jpg
本年のJAMA誌に掲載された、
食生活と病気との関連についての論文です。

食事は健康の維持や病気の予防のために、
非常に重要であると考えられています。

ただ、加工肉が多いと健康に良くないとか、
塩分の多い食事は高血圧になる、
というようなデータは沢山あっても、
その人にとってトータルに見た時に、
健康に食事の個々のバランスが、
どの程度の影響を与えているかについての、
精度の高いデータはあまり存在していません。

今回の研究はアメリカにおいて、
NHANESと呼ばれる大規模な健康栄養調査の結果を解析することで、
食事の内容と心臓疾患、脳卒中、2型糖尿病などによる死亡リスクとの関連を、
検証しています。

トータルな対象者は16620名で、
観察期間中に506100名は心臓病のために、
128294名は脳卒中のために、
67914名は2型糖尿病のために死亡しています。

このうちの45.4%に当たる318656件の死亡は、
食事内容の偏りとの関連が認められました。
その影響が最も大きかったのはナトリウムの摂取量で、
心臓病、脳卒中、2型糖尿病などによる死亡の9.5%が、
1日2000㎎(食塩に換算して5グラム)を超える塩分を摂っていることにより、
生じた死亡と推定され、
また8.5%の死亡は、
ナッツを1日20.2グラム未満しか摂らなかったことから、
7.8%の死亡は、
EPAなどの魚由来のω3脂肪酸が1日250㎎未満であることから、
7.6%の死亡は、
野菜の摂取量が1日400グラム未満であることから、
7.5%の死亡は、
果物の摂取量が1日300グラム未満であることから、
そして7.4%の死亡は、
コーラなどの砂糖含有清涼飲料水の摂取習慣から生じていると、
推定されました。

これは逆に言えば、
塩分を控え、果物や野菜を多く摂り、
砂糖を含むジュースは飲まず、
青身魚の脂とナッツを多く摂れば、
生活習慣病による死亡をかなり減らすことが可能だ、
ということを示しています。

これは1つの推計に過ぎないものですが、
大規模で長期間の調査によって、
食事内容の偏りが、
意外に大きく心血管疾患や代謝疾患の死亡リスクに関連している、
という指摘は興味深く、
今後の食事指導や生活指導においても、
大きなインパクトを持つ調査であると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


乳製品の摂取と高血圧の関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
乳製品と高血圧.jpg
本年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
乳製品の摂取と血圧との関係についての論文です。

乳製品にはカルシウムが多く含まれ、
そのため血圧には良い影響があると想定されます。
その一方で乳脂肪は動物性の脂肪ですから、
その摂り過ぎはメタボにも繋がり、
血圧にも悪影響を与える可能性があります。

これまでの疫学データにおいて、
乳製品の摂取量が多いほど、
高血圧が少なく血圧も低い、
という結果がある一方、
そうした関連は認められない、
というような結果も報告されています。

そこで今回の研究では、
乳糖分解酵素に関する遺伝子変異を、
これまでのデータを元に解析して、
その検証を行っています。
遺伝性変異のあるなしは無作為に決められているとして、
その比較を行う、
メンデル無作為化解析という手法です。

乳酸分解酵素が機能しないような変異がある場合、
乳製品を摂れば下痢になってしまうので、
乳製品は殆ど摂らないと想定されます。
この変異のあるなしは無作為に決められると想定されるので、
変異のある群とない群で比較するということは、
クジ引きで乳製品を摂る人と摂らない人とを分けて観察することと、
同じ意味があるという考え方になるのです。

今回の研究では、
これまでの遺伝子変異と病気についての、
22の臨床研究からのトータル171213名のデータを元に、
乳酸分解酵素に関わる遺伝子変異と、
高血圧及び収縮期血圧との関連を検証しています。

その結果、
乳製品の摂取に関連のある遺伝子変異と、
高血圧の発症及び収縮期血圧との間に、
有意な関係は認められませんでした。

つまり、乳製品の摂取と血圧との間には、
良くも悪くもそれほど明確な因果関係はなさそう、
という結果になっています。

乳製品と健康や病気との関連については、
色々な見解がありまだ一定はしていませんが、
高血圧に関しては、
ある程度の乳製品の摂取が、
少なくとも悪く働くということはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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抗凝固療法の質と脳梗塞の予後について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
抗凝固療法と脳卒中の予後.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
心房細動不整脈に伴う脳梗塞の発症と、
その重症度に与える抗凝固療法の効果についての論文です。

心房細動という不整脈があり、
心臓内の血液の滞りにより血の塊が出来て、
それが脳に飛んで脳梗塞(脳塞栓)を起こす原因となります。
心房細動になることにより、
4から5倍脳梗塞の危険性が増すと考えられています。

その予防のために、
通常血液を固まりにくくするような薬が使用されます。

心房細動患者さんの脳梗塞予防として、
最もその有効性が確認されているのは、
ワルファリンの使用です。

しっかりとコントロールされたワルファリンの使用により、
脳梗塞は6割以上予防されると報告されています。

アスピリンなどの抗血小板剤と呼ばれる薬が、
脳梗塞予防として使用されることもありますが、
その予防効果はせいぜい2割程度で、
ワルファリンとは大きな差があります。

最近ワルファリンと同等の効果を持つとされる、
非ビタミンK阻害経口抗凝固剤と呼ばれる薬が、
2011年以降に日本でも使用が開始されています。
直接トロンビン阻害剤やⅩa因子阻害剤の、
以前は新規抗凝固剤と呼ばれていた一連の薬剤です。

直接トロンビン阻害剤のダビガトラン(商品名プラザキサ)、
Ⅹa因子阻害剤のリバーロキサバン(商品名イグザレルト)、
アピキサバン(商品名エリキュース)、
エドキサバン(商品名リクシアナ)などがその代表です。

従って、脳梗塞のリスクがある程度高いと推定される場合には、
ワルファリンもしくは非ビタミンK阻害経口抗凝固剤を、
使用することが国際的に推奨されています。

ただ、実際の臨床においては、
ガイドラインで推奨されている患者さんのうち、
本当にしっかりと治療をされているのはどのくらいなのでしょうか?
ワルファリンはPT-INRという数値が、
2.0から3.0を目標としてコントロールすることが求められていますが、
それも実際にはどのくらいの患者さんで達成されているのでしょうか?

どちらも意外に低い数字であるような気もします。

今回の研究はアメリカの複数施設において、
心房細動があることが判明していて、
急性の虚血性脳梗塞を起こした患者さん、
トータル94474名の治療の実際と、
脳梗塞の予後との関連を検証しています。

実臨床における非常に大規模なデータです。

その結果…

解析されている患者さんの平均年齢は79.9歳で、
57.0%が女性です。
全体の7.6%に当たる7176名は、
PT-INRが2以上のコントロールされたワルファリン治療を受けていました。
また、8.8%に当たる8290名は、
非ビタミンK阻害経口抗凝固剤を使用していました。
一方で全体の83.6%に当たる79008名は、
ガイドラインで推奨されるような予防治療を受けてはいませんでした。
13.5%に当たる12751名は、
PT-INR2未満の不充分なワルファリン治療を受け、
39.9%に当たる37674名は、
アスピリンなどの抗血小板剤のみの治療を受け、
30.3%に当たる28583名は、
何の治療も予防のために行っていませんでした。

脳梗塞のリスクの指標であるCHA2DS2-VAScスコアが、
2以上という高リスクの91155名のみでの解析でも、
83.5%の患者さんは有効とされる抗凝固療法を受けていませんでした。

一方でNIHSSという指標で16点以上の中等度から重症の脳梗塞は、
未治療では27.1%で、抗血小板剤のみの治療では24.8%、
不充分なコントロールのワルファリンでは25.8%に見られたのに対して、
コントロールが適切なワルファリン治療では15.8%、
非ビタミンK阻害経口抗凝固剤治療では17.5%で、
脳梗塞を起こした場合の重症化は、
治療が適切ではない患者さんで、
より頻度が高くなっていました。

また、入院中の死亡率も、
未治療では9.3%で、抗血小板剤単独では8.1%、
不充分なコントロールのワルファリンでは8.8%であったのに対して、
コントロールが良好なワルファリンでは6.4%、
非ビタミンK阻害経口抗凝固剤では6.3%と、
死亡率も治療が適切である場合に有意に低くなっていました。

関連する因子を補正した結果として、
未治療の場合と比較して、
中等度から重度の脳梗塞になるリスクは、
コントロールされたワルファリン治療で44%(95%CI;0.51から0.60)、
非ビタミンK阻害経口抗凝固剤治療で35%(95%CI;0.61から0.71)、
抗血小板剤治療で12%(95%CI;0.84から0.92)、
それぞれ有意に抑制されていました。

つまり、
推奨される抗凝固療法を施行することにより、
万一脳梗塞を発症した場合でも、
その予後はより軽いものに留まっていた、
という結果になっています。

そして、心房細動においては抗凝固療法が推奨されていながら、
多くの高齢者において、
実際には不充分な治療しか行われていないか、
未治療のケースが、
脳梗塞を実際に起こした患者さんにおいては、
非常に多かった、ということも明らかになりました。

実臨床においては、
患者さんの年齢や状態、
出血系の合併症のリスクなどを重く見て、
抗凝固療法が控えられるケースが、
少なからずあるのですが、
今回の実際の臨床データを見る限り、
極力推奨される治療を行なった方が、
脳梗塞を発症したケースにおいても、
その予後には良い影響を与えることが多いと考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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