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15年の胃癌予防効果(ピロリ除菌とサプリメント) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
15年の胃がん予防の効果.jpg
2012年のJ Natl Cancer Inst誌に掲載された、
14.7年という長期に渡り、
胃癌予防のためにピロリ菌除菌とサプリメントの使用の効果を、
偽薬と比較検証した中国の論文です。

ピロリ菌の感染が胃癌のリスクであることは、
実証された事実ですが、
ピロリ菌を除菌することにより、
実際に長期的にどれだけ胃癌を減らし、
癌による死亡を減らすのか、
という点については、
あまり実証的な研究結果がある訳ではありません。

その意味でこの研究は貴重なものです。

3365名の中国の一般住民(35から64歳)を対象として、
まず胃カメラ検査や血液検査でピロリ菌の感染の有無をチェックし、
感染の陽性者(2258名;全体の67%)を、
クジ引き希望者で2つの群に分けると、
一方は2週間のピロリ菌除菌治療
(アモキシシリンとランソプラゾールで2週間)を行ない、
もう一方は偽薬を使用して、
その後14.7年の経過観察を施行します。

これとは別個にビタミンCとE,
そしてニンニクのサプリメントの予防効果も、
偽薬と比較の上施行されています。

その結果…

ピロリ菌の除菌治療群では3.0%に胃癌が発症したのに対して、
偽薬群では4.6%に胃癌が発症していて、
除菌治療により胃癌の発症は39%有意に抑制されていました。
(95%CI;0.38から0.96)
ただ、これは7年の経過観察では有意にはなっておらず、
今回も信頼区間から見ると微妙な結果です。

そして、胃癌による死亡は、
ピロリ菌除菌群の1.5%と偽薬群の2.1%に認められ、
33%死亡リスクを低下させていましたが、
統計的には有意ではありませんでした。
(95%CI;0.36から1.28)
全ての癌による死亡や総死亡にも有意差はなく、
胃癌を食道癌を併せた死亡リスクは、
胃癌単独よりも除菌の影響が少ない傾向を示しました。

要するにピロリ菌の除菌治療を行なうことにより、
その後ほぼ15年の胃癌の発症率は、
4割程度低下しますが、
それはその方の生命予後に影響するほどではなく、
胃癌そのものは減っても、
胃酸の分泌増加により一部の食道癌がむしろ増える可能性や、
本当に生命予後に関わるような悪性度の高い胃癌は、
減らしていないという可能性などが考えられます。

同時に行われたビタミンやニンニクのサプリメントの効果については、
意外にもビタミン剤の使用において、
胃癌と食道癌を併せた死亡リスクが49%有意に低下していました。
(95%Ci:0.30から0.87)
これは発症リスク自体は減っていないので、
その判断は微妙ですが、
死亡リスクが低下しているという結果は、
このビタミン剤のみでした。

ピロリ菌の除菌で胃癌はなくなるような、
夢物語を主張される方もいるのですが、
実際に証明されているのはこのレベルの結果で、
生命予後に確実に良い影響を与えるという根拠も、
今のところはあまりないということは、
確認しておく必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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