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「この世界の片隅に」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は年末でクリニックは休診です。
神奈川県の実家に戻る予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
この世界の片隅に.jpg
こうの史代さんの漫画の原作を、
片渕須直監督が映画化し、
主役の北條すずさんの声を、
能年玲奈さん(本名表示)が演じた、
話題の映画を観てきました。

昭和19年から20年の広島と呉を主な舞台にして、
ある平凡な若い女性が、
そこでどのように生きたのかを詩的に美しく綴った物語で、
現在の視点から過去を批評したり評価したりするのではなく、
ある時代に普通に生きた人間の心に、
寄り添うような視点が非常に新鮮で魅力的です。
言うのは簡単ですが、
物語として悲劇的というレッテルの張られた過去を描けば、
どうしても上から目線の批評性は出てしまうのが常なので、
それがほぼない、
という世界が実現されているという点は、
極めて稀有なことだと思います。

これは、
ちょっと頭のネジが緩んでしまったのではないか、
と不安になるほど、
大絶賛をされる方が沢山いらっしゃるので、
褒めるのはそうした方に、
任せておけばいいのかな、
と思わなくもありません。

褒める言葉というのも、
あまりに仰々しく大袈裟になると、
読む方は何となく引いてしまうと言うか、
「たかが映画じゃん」
と敢えてそんな風にも思ってしまいます。
少しでも悪口を言ったりすれば、
後ろから弓矢でも飛んできそうな勢いです。

ただ、良いことは間違いなく良くて、
淡々としたテンポで物語は進みますし、
展開にもそれほどの意外性や突飛なところはないのに、
126分という上映時間が、
全く長いとは感じませんし、
短いとも感じません。
つまり、かなり完璧に構成されていて、
観客の生理をガッチリと掴んで離すことがありません。
普通ここはなくてもいいな、
というような場面や台詞が、
1つや2つは絶対にあるものですが、
この作品は、
ラストの表現はやや好みが分かれるところですが、
それ以外はほぼそうしたところがありません。
物語映画として、
ほぼ完璧に成立している、
というところは非常に見事だと思います。

これはほぼ原作通りの映画で、
唯一主人公が広島で出逢う娼婦との、
関係性のエピソードが、
説明として省かれているのですが、
これは全体として考えると、
ない方が全然いいので、
その取捨選択も上手くいっています。

原作は事前に読みました。

原作も確かに優れた漫画なのですが、
さりげない家庭劇としてのエピソードはとても繊細で楽しい一方、
空襲から原爆、そして終戦という、
スケール感をもって戦争を描く部分は、
ちょっと力不足の感じがあります。
主人公が絵が得意ということから、
時々絵が塗り絵のような画面に変わるのですが、
漫画だとそれが何となく手抜きのようにも感じられるところがある一方、
映画では現実の風景が主人公の絵の世界に変化する様が、
より説得力を持って美しく描かれていたと思います。

作品の一番の成功のポイントは、
何と言っても主人公のほんわかとした魅力的な性格にあります。
残酷な時代を本当に普通に素直にまっすぐに生きている姿は、
人間というものの本質的な部分、
本質的な生の美しさのようなものを、
突きつけられるような思いがします。
能年さんの声がまた確かにバッチリと嵌っていて、
オープニングの子供時代の第一声には、
「おいおい、いつもの声じゃないか」
と違和感を持つのですが、
聞いているうちにそれが画面のイメージと合致して、
溶け込んでからは、
主人公の北條すずの声そのものとしか思えなくなります。
彼女が担当した時点で、
この作品の成功が決まったことは間違いがないと思います。

原作と映画とは補完し合っていて、
活字の方言の台詞は、
映画では意味を取りにくいところもあるのですが、
原作では台詞のニュアンスが分かりにくいところもあり、
映画を観てなるほどと思うところも随所にあります。

これまでの戦争ものの漫画映画とは、
間違いなく一線を画する作品で、
どんな方にも安心してお勧め出来る傑作であることは、
間違いがないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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