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インフルエンザに対するタミフル、抗生剤、NSAIDsの併用療法 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザへの抗生剤併用療法の効果.jpg
今月のChest誌に掲載された、
インフルエンザが重症化した患者さんに対して、
オセルタミビル(商品名タミフル)に加えて、
抗生物質のクラリスロマイシン(商品名クラシシッドなど)と、
非ステロイド系消炎鎮痛剤のナプロキセン(商品名ナイキサン)を、
一時的に併用したところ、
タミフル単独と比較して患者さんの生命予後が改善したとする、
臨床試験の結果をまとめた香港発の論文です。

季節性インフルエンザは、
多くは自然に回復する風邪の一種ですが、
肺炎や脳炎、心筋炎などを併発して重症化することもあります。

タミフルに代表されるノイラミニダーゼ阻害剤は、
人間の細胞内に侵入して増殖したウイルスが、
細胞から外に出ることを妨害することによって、
ウイルスの増殖にストップを掛けるというメカニズムの薬です。

インフルエンザ感染の現時点でほぼ唯一の治療薬で、
その有効性も実証されていますが、
重症の合併症を伴うようなインフルエンザの患者さんの予後を、
改善するには充分とは言えません。

発熱の期間を1日程度短縮するだけの効果と、
揶揄されることもあります。

そこで、タミフルに他の治療薬を併用することで、
よりその効果を増強することが出来ないか、
という考え方が生まれます。

クラリスロマイシンはマクロライド系の抗生物質で、
マクロライドには生体細胞の免疫反応を高めて、
ウイルスの細胞への接着を防止するような効果があると報告されています。

非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
炎症を抑えることにより、
サイトカインの過剰な産生を抑え、
肺炎などの経過を改善すると報告されています。

これまでに動物実験のレベルでは、
クラリスロマイシンもナプロキセンなどのNSAIDsも、
インフルエンザの感染を早期に改善するような効果があり、
少数ですが実際の臨床データも存在しています。

理屈から言えば、
ウイルスの細胞への接着阻止やサイトカインの過剰産生の阻止など、
タミフルとは別個の作用点で有効な薬剤を併用することにより、
併用で相乗効果が期待される、
ということになる訳です。

そこで今回の研究では、
香港の単独施設において、
遺伝子検査でH3N2(A香港型)のインフルエンザの感染が確認され、
肺炎を併発するなど症状が重篤で入院となった患者さん、
トータル217名をクジ引きで2つに分け、
一方はタミフルのみを5日間使用し、
もう一方はタミフルに加えて、
クラリスロマイシンとナプロキセンを併用して、
その後90日間の生命予後を比較しています。

使用法はちょっと複雑で、
最初の3日間は1日量150mgのタミフルを両群とも使用し、
その後の2日間のみ、
併用群ではクラリスロマイシンを1日量1000㎎と、
ナプロキセンを1日量400㎎で併用します。

両群とも、
抗生物質のアモキシシリンとクラブラン酸の合剤
(商品名オーグメンチンなど)を、
1日2グラムと、
エソメプラゾール(商品名ネキシウム)1日20㎎が、
最初から併用されています。

抗生剤を細菌による二次感染予防として最初から用い、
ストレスやNSAIDsによる潰瘍の予防のために、
プロトンポンプ阻害剤も併用する、
というかなり濃厚な治療が行われています。

クジ引きはして患者さんを選んでいますが、
偽薬などは使っていないので、
患者さん自身もどちらの群かは把握しています。

その結果…

登録後30日で、
タミフル単独群の110名中9名が亡くなり、
併用群の107名中死亡者は1名であったので、
生命予後は併用群で有意に改善している、
という結果になっています。

それ以外の指標としては、
ウイルス量の減少も併用群でより早く、
タミフル耐性の遺伝子変異の発生も、
併用群で少ないという結果が得られました。

単独施設のデータですし、
試験のデザインや併用薬剤にも、
やや問題があるように思います。
高齢者が多いので(平均年齢は80歳くらい)、
この死亡の差が併用薬の影響とするのは、
まだ時期尚早と思いますが、
従来から使用される薬剤の組み合わせが、
状況によっては有用であるという知見は興味深く、
今後のデータの蓄積を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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