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腹部大動脈瘤の英米の手術適応と予後の差について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診察などには廻る予定です。

インフルエンザワクチンがほぼ枯渇した状態になっていて、
卸さんは新規の納入はもう不可という指示が出ているようです。

いつも思うことですが、
行政はワクチンが不足しそうになると、
医療機関ではなく卸さんに指示を出して、
「医療機関に指示を出して上手く調整しろ」
というような感じになります。
矢面に立つのは医療機関で、
取り敢えずそいつを悪者にしておこう、
といういつもの手口が透けて見えます。

インフルワクチン不足というような報道は、
今のところあまり大々的にありませんから、
報道規制というほどでもないのでしょうが、
行政の不手際と言われることは避けたいので、
「悪辣な医療機関がため込んでいるだけで、
トータルには足りているのだ」
という主張をしたいのだと思います。

近隣の医院では、
お子さんで初回の接種をされたお子さんの、
2回目の接種もお断りしているようです。
2回目の分は取っておくのが筋だと思うので、
それはどうかな、と思うところです。

実際のインフルエンザはA香港型が少し出ている、
という感じです。

すいません。
ちょっと雑談でした。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大動脈瘤の手術と予後.jpg
先月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
腹部大動脈瘤の手術適応と予後を、
米英で比較した論文です。

腹部大動脈瘤は、
動脈硬化や高血圧の合併症の1つです。
以前は破裂するより前には見付かることが少なかったのですが、
最近は腹部の超音波検査が行われることが多くなり、
それにより見付かることが多くなりました。

この腹部大動脈瘤は、
概ね大きさが5センチを超えるか、
経時的に大きさが増大する時に、
その治療が考慮されます。

治療法には、
お腹を切開して人工血管に取り替える開腹手術と、
カテーテルでステントグラフトと呼ばれる人工血管を、
血管の中から挿入する血管内治療とがあります。

近年では血管内治療が身体への負担の少ないことから、
国内外を問わずに急速に広まっていますが、
術前後の予後については、
血管内治療が開腹手術より良いという知見がありますが、
より長期の成績については、
現時点ではまだ議論のあるところです。

さて、一応の目安はあるとは言え、
それほど厳密なものではないので、
この腹部大動脈瘤の手術適応は、
国は地域によってもある程度の違いがあるようです。

今回の研究はアメリカとイギリスで、
腹部大動脈瘤の治療方針と予後の違いを検証したものですが、
意外に大きな差のあることが分かりました。

米英において2005年から2012年の、
医療統計から確認出来る、
未破裂の腹部大動脈瘤を手術した全事例を、
比較検証しています。
この期間にイギリスでは29300例の患者さんが、
そしてアメリカでは278921例の患者さんが、
未破裂腹部大動脈瘤の手術を受けていました。

年間の平均での手術施行率は、
人口当たりの比率でイギリスはアメリカのほぼ半分でした。
そして、腹部大動脈瘤による死亡率は、
イギリスはアメリカの3.6倍という高率でした。

手術施行時の動脈瘤の大きさは、
平均でイギリスが63.7ミリであったのに対して、
アメリカでは58.3ミリでした。

要するにイギリスではアメリカよりも、
未破裂の腹部大動脈瘤の手術には慎重で、
より大きくなってから手術を検討する傾向にあり、
そのため手術の件数も人口当たりで2倍近い差があるのですが、
それに伴い、腹部大動脈瘤関連の死亡は、
アメリカよりイギリスで有意に高くなっていました。

地域による医療体制や社会状況には差があるので、
これをもって腹部大動脈瘤は早く手術した方が予後が良い、
とまでは言い切れないのですが、
その可能性はかなり高いと想定され、
この後手術適応の標準化など、
患者さんの実際の予後の改善に繋がるような、
有意義な議論を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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