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デクスメデトミジンの術後高齢者せん妄への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
デクスメデトミジン.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
人工呼吸器装着時の鎮静に用いる鎮静剤を、
より少量で使用することにより、
術後のせん妄を予防しようという、
研究についての論文です。

せん妄というのは、意識障害の一種で、
意識が混乱し、幻覚な妄想、興奮状態などが生じるもので、
大きな手術の後などで、
集中治療室で起こることが多く、
薬剤などが原因となることもあります。

よくそれまでしっかりとしていた人が、
病気で入院したり手術を受けたような時に、
急に意味不明のことを口走ったり、
暴れたりして、
病状が落ち着けばまたケロリとしている、
というのがせん妄です。

海外統計では、
手術の後の患者さんの11から51%に発生する、
というほど頻度の多い現象で、
年齢と共にその頻度は更に増加します。

若い方であればその症状は一過性で、
後遺症なく改善しますが、
高齢者の場合には、
せん妄をきっかけとして、
急速に認知症が進行することが、
しばしばあることも知られています。

このように医療現場において大きな問題となるせん妄ですが、
現時点で手術後のせん妄を、
確実に予防するような方法は存在していません。

通常は鎮静剤として使用されるベンゾジアゼピンは、
こうしたせん妄の興奮は、
むしろ増強してしまうことがあります。

この分野において、最近注目されているのが、
今回の研究に使用されているデクスメデトミジン(商品名プレセデックス)です。

この薬は中枢性α2受容体作動薬で、
他の多くの鎮静剤とはその作用メカニズムを異にしています。

この薬が注目されるようになったのは、
他のベンゾジアゼピンなどの鎮静剤と比較して、
人工呼吸器装着中の鎮静に使用したところ、
患者さんのせん妄が予防された、
というデータが報告されたからです。

ただ、多くのこれまでのデータは、
ベンゾジアゼピンなどの他の鎮静剤との比較なので、
ベンゾジアゼピンがせん妄を誘発するということであって、
デクスメデトミジンにせん妄の予防効果があるとは言えない、
という欠点があります。
また、この薬を人工呼吸器装着時以外の、
手術後などに使用しても、
術後のせん妄を予防出来るのかどうかについても、
これまで精度の高いデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究においては、
通常人工呼吸器装着時の鎮静より、
ずっと低用量でデクスメデトミジンを術後に使用して、
偽薬との比較でせん妄の予防効果があるかどうかを検証しています。

中国北京の2箇所の専門病院において、
心臓以外の手術を施行した65歳以上の患者さん700名を、
患者さんにも主治医にも分からないように2つの群に分け、
一方は術後の集中治療室入室時から、
デクスメデトミジンの持続静脈投与を、
翌日の朝8時まで継続し、
もう一方はただの生理食塩水を注入して、
術後7日間のせん妄の頻度を比較検証します。

デクスメデトミジンの投与量は、
1時間体重1キロ辺り0.1μgに設定されています。
これは通常の人工呼吸器使用時の使用量の、
2分の1から7分の1くらいの低用量です。

その結果…

せん妄の発症はデクスメデトミジン群で、
全体の9%に当たる32名であったのに対して、
偽薬群では全体の23%に当たる79名で、
デクスメデトミジンの使用により、
術後のせん妄は65%(0.22から0.54)有意に抑制されていました。

低血圧や徐脈などの予想される有害事象には、
両群で有意な差はありませんでした。

このように、術後1晩低用量のデクスメデトミジンを注入することは、
術後せん妄の予防に有効な可能性が高く、
従来の治療と比較すると、
有害事象や副作用も少ないと考えられるので、
今後の知見の蓄積に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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