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免疫増強剤を含むインフルエンザワクチンの胎児への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザワクチンの胎児奇形リスク.jpg
2016年9月のAnnals of Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
免疫増強剤を含む2009年の「新型」インフルエンザワクチンの、
胎児への安全性を検証した論文です。

季節性インフルエンザワクチンの妊娠中の接種は、
今ではガイドラインで推奨される流れになっていて、
妊娠初期については念のため接種を避けることが多いですが、
それ以外の時期では積極的に接種が勧められています。
母体や胎児を含めて、
悪影響はほぼないと考えられています。

ただ、グレイゾーンとして残っているのは、
免疫増強剤(アジュバント)を含むワクチンです。

通常の季節性インフルエンザのスプリットワクチンは、
ウイルス抗原をバラバラにしただけのもので、
免疫増強剤は含まれていませんが、
2009年に当時の「新型インフルエンザ」の流行があり、
その時には従来のワクチンでは効果が不十分と考えられたため、
免疫増強剤を含むワクチンが開発され使用されました。
AS03というアジュバントを含むグラクソ社のワクチンと、
MF59というアジュバントを含むノバルティス社のワクチンは、
その代表です。

アメリカはアジュバントを含むワクチンを認可しなかったのですが、
日本では認可はされたものの殆ど使用されず、
ヨーロッパではアジュバントを含むワクチンの方が、
より広く使用されました。

その後の検証においては、
意外なことに免疫増強剤を含むワクチンと、
含まない従来のワクチンとの間で、
大きな有効性の差はありませんでした。

要するに両者とも良く効いたのです。

それまでスプリットワクチンの効果は弱く、
個人予防にはあまり有効性はない、
と考えられていたのですが、
実際には流行株と完全にマッチングした抗原を含むワクチンであれば、
アジュバントを含まないワクチンでも、
充分な効果があったのです。

さて、
妊娠中のインフルエンザワクチンの接種は安全と考えられますが、
アジュバントを含むワクチンでも、
同じことが言えるかどうかは、
確実とは言えません。

これまでに複数の報告があり、
その一部では特に妊娠初期のワクチン接種により、
先天性の心疾患などの発症が増加した、
という結果になっています。

ただ、例数もそれほど多くはなく、
統計処理にも疑問のあるような報告が殆どです。

そこで今回の研究では、
グラクソ社のAS03アジュバントを含有する、
H1N1インフルエンザワクチンのみを採用して接種した、
国民総背番号制を取るスウェーデンにおいて、
2009年から2011年に、
妊娠中に接種を行ったトータル40983例の女性を、
接種しなかった197588例と比較し、
また接種しないで同じ母親から生まれた、
兄弟との比較も行って、
アジュバントを含むグラクソ社のワクチンの、
妊娠中の胎児への安全性を検証しています。

その結果、
出生児の先天性の異常は、
ワクチン接種群の4.97%に当たる2037名に発症したのに対して、
ワクチン未接種群でも4.78%に当たる9443名に発症していて、
ワクチン接種に関連のあるリスクの増加は認められませんでした。
兄弟を比較した検討においても、
矢張り両群には差はありませんでした。

妊娠初期の14週に限って検証すると、
最大で1000件の妊娠当たり6件の先天性の異常が、
ワクチンの影響で発症する可能性が否定出来ない、
という結果にはなるので
(これは有意差が出ている、ということではなく、
95%の信頼区間での議論になるので、
残りの5%を勘案するとそうなる、
という意味合いです)、
基本的にその時期のワクチン接種は、
避けることが望ましいのですが、
それ以外の時期におけるワクチン接種は、
今回の検証では先天性の異常との関連をほぼ完全に否定されています。

このように、
妊娠中の安全性に関しては、
グラクソ社のアジュバントを含むワクチンでも、
通常のスプリットワクチンと、
胎児への影響には大きな差はなさそうです。

ただ、アジュバントを含まないワクチンを含めて、
妊娠初期概ね14週までの接種については、
可能であれば避けるのが適切だと思います。
(してはいけないという意味ではなく、
感染のリスクと天秤に掛けて、
考える必要がある、という意味合いです)

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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