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甲状腺機能と心臓突然死との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
T4と心臓突然死.jpg
今年のCirculation誌に掲載された、
甲状腺機能と心臓突然死との関連を検証した論文です。

甲状腺機能と心臓の病気との間に、
関連のあること自体は広く知られている事実です。

重度の甲状腺機能低下症は、
粘液水腫と呼ばれる心不全の原因となりますし、
その一方で甲状腺機能亢進症では、
脈拍は増加し心房細動という不整脈の原因となります。

一方で特に症状が出ないようなレベルの、
軽度の甲状腺機能異常の心臓への影響については、
一般的な基準値の範囲内でも、
心血管疾患のリスクは増加する、
というような疫学データが存在する反面、
特にリスクの増加は見られなかった、
という報告も複数存在しています。

おおまかな傾向としては、
軽度の甲状腺機能低下症は、
むしろ心血管疾患の予後に良い影響を与える可能性がある一方で、
軽度であっても甲状腺機能亢進症があると、
心血管疾患のリスクは上昇する、
という報告が多いようです。

今回の研究は、臨床的に問題となる、
心臓突然死の発症と甲状腺機能との関連を、
中高年層の内臓疾患のリスクと予後を検証した、
別個のオランダの疫学研究のデータを活用して解析しています。

対象は甲状腺機能検査が施行された、
45歳以上の成人10318名で、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)と遊離T4濃度(FT4)の測定が行われています。
心血管疾患のリスク因子としては、
高血圧や体重、喫煙歴やコレステロール値が活用されています。
甲状腺ホルモン剤が使用されているケースは、
全体の2.9%と少数です。

中間値で9.1年の経過観察中に、
261件の心臓突然死が発症しています。

血液の甲状腺ホルモンであるFT4濃度が高いほど、
心臓突然死の発症リスクは増加する、
という相関が認められ、
甲状腺刺激ホルモンが0.4から4.0mIU/Lを、
甲状腺機能正常と定義すると、
甲状腺機能が正常であっても、
FT4濃度が1ng/dL増加する毎に、
心臓突然死のリスクは2.28倍(1.31から3.97)
有意に増加していました。
この相関はコレステロール値や年齢など、
他の心血管疾患のリスクを補正しても有意に認められました。

心臓突然死の10年間の絶対リスクは、
FT4濃度が正常域である0.93から1.86ng/dLに増加することにより、
1%から4%にほぼ直線的に増加が認められました。

この関連は甲状腺ホルモンの補充療法の如何には関わらず、
同じように成立していました。

TSHにはT4と同じような関連は認められませんでしたが、
有意ではないものの、
TSHが上昇するほど心臓突然死のリスクは低下する、
という一定の関連性が認められました。

要するに他の心血管疾患のリスクと同様、
心臓突然死のリスクについても、
中年以降の年齢層においては、
やや機能低下に傾いた方が、
その発症リスクは低く、
潜在性であっても機能亢進症の状態では、
そのリスクは上昇する、
という結果になっています。

ただ、僕はこれまでにも何度か触れましたが、
こうしたデータにはやや懐疑的で、
FT4とTSHが綺麗には相関していないという事実が、
FT4の測定値が本当に信頼の置けるものと言えるのか、
という疑問を生じさせますし、
甲状腺ホルモン剤を補充している患者さんにおいて、
同じ傾向があるかどうかの根拠は、
今のところは希薄であるように思います。

今後はまた検証の必要な事項であると思いますが、
基本的な考えとして、
中年以降の年齢層における、
潜在性の甲状腺機能低下症は、
病的な状態ではなく、
心臓に対してはむしろ保護的に働く可能性が高い、
という点は押さえておく必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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