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アジスロマイシンの喘息急性増悪への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診察には廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アジスロマイシンと喘息予防.jpg
先月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
成人の気管支喘息の患者さんの急性増悪時に、
アジスロマイシン(商品名ジスロマックなど)を使用した場合の、
安全生と有効性を検証した論文です。

気管支喘息の患者さんの治療は、
吸入ステロイドなど治療薬の進歩により改善されましたが、
それでも、急性増悪と呼ばれるような、
喘息症状の急激な悪化を来す患者さんは少なからずいて、
その対応が大きな問題となります。

喘息の急性増悪は、
気道の感染症がその誘因となることが知られています。

一番多い原因はウイルス感染症ですが、
細菌感染の関与も少なからず報告されています。
ある報告ではマイコプラズマやクラミジアの感染が、
喘息の急性増悪の患者さんの40から60%の高率で認められた、
という結果になっています。
ウイルス感染に伴う免疫力の低下により、
気道は細菌の感染症を併発しやすくなり、
急性増悪にはそうした細菌感染も少なからず影響している、
という報告も複数見られます。

ウイルス感染については、
インフルエンザなど少数を除けば、
治療薬と言えるような薬剤はありませんが、
細菌感染に対しては、
抗生物質が有効です。

ここにおいて、
喘息の急性増悪の治療として、
抗生物質を早期から使用することが、
有効ではないか、という考えが成立します。

細菌感染かどうかの判断は、
検査を行なうにしても、
急性増悪の治療開始時には困難であるので、
抗生物質の有効性が期待される場合には、
その是非は議論となるところですが、
検査結果などが出る前に、
治療が開始されることもしばしばあります。

それでは喘息の急性増悪時に標準治療として抗生物質を使用することで、
患者さんの予後は改善するのでしょうか?

2006年のNew England…誌に、
それについての注目すべき論文が掲載されました。

その研究ではテリスロマイシン(商品名ケテック)という、
マクロライド系に類縁の抗生物質を、
喘息の急性増悪時に使用したところ、
未使用と比較して呼吸器症状はより速やかに改善した、
という結果になっています。
この試験は偽薬を使った厳密な方法で行われたため、
その後の治療に大きなインパクトを与えました。

しかし、使用されたテリスロマイシンは、
重度の肝障害などが生じやすいとして、
その後問題となり、
現在も発売はされていますが、
他の薬剤が使用出来ないか無効な時などに、
限定した扱いとなっています。

細菌感染の関与が不明な時点での抗生物質の使用には、
批判的な見解も根強くあります。

今回の研究では、
マクロライド系の抗生物質の1つで、
その安全性の面でも、
テリスロマイシンより問題が少ないと考えられる、
アジスロマイシン(ジスロマック)を、
2006年のテリスロマイシンとほぼ同じプロトコールで使用して、
成人喘息急性増悪時の、
有用性と安全性を検証しています。

イギリスにおいて、
複数の専門医療機関に、
喘息の急性増悪で運び込まれた患者さんを、
くじ引きで2つの群に分け、
一方はアジスロマイシンを1日500ミリグラムで3日間使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
10日間での経過の比較を行なっています。

31の医療機関において、
4582名の患者さんを候補としましたが、
結果的には199名の患者さんが登録されています。

その結果、
アジスロマイシンの使用と未使用に関わらず、
肺機能を含む患者さんの経過や予後には、
有意な差は認められませんでした。

細菌の培養や抗体検査を施行されたのは、
全体の5割強ですが、
そのうちマイコプラズマやクラミジアを含む、
病原性のある細菌が検出されたのは、
検査対象の1割程度で、群間の差はなく、
また抗生物質の有効性にも影響を与えていませんでした。

つまり、2006年論文とは異なり、
抗生物質の喘息急性増悪への有効性は、
確認されなかったのです。

ただ、今回の研究は登録時に抗生物質が使用されていないことが、
登録の条件であったのですが、
実際には救急医療機関に担ぎ込まれた段階で、
多くの患者さんが既に抗生物質の処方を受けていて、
受けていない患者さんは1割に満たないという状態でした。

イギリスのガイドラインにおいても、
喘息急性増悪時の初期からの抗生物質の使用は、
推奨はされていないのですが、
それでも一般の臨床医は、
目の前に具合の悪い患者さんがいる時には、
良くなる可能性が少しでもあれば、
抗生物質の処方を行おう、
という考えになるようです。

従って、かなりバイアスの掛かった登録になった可能性はあり、
今回のデータのみで、
2006年の結果を否定することは難しいと考えられます。

抗生物質をどのような時に使用するべきか、
という問題は、
洋の東西を問わず、
簡単に解決出来るようなものではなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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