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妊娠初期の吐き気と流産との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
はきけと胎児死亡.jpg
先月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
妊娠初期の吐き気や嘔吐などの、
いわゆる「つわり」の症状と、
流産との関連についての論文です。

妊娠初期に吐き気や嘔吐などの症状が出ることは、
つわりとして広く知られています。
この症状は実際の妊娠が確定する7から8週以前にも、
しばしば見られるものなので、
こうした症状があると、
妊娠した可能性を疑うというのは、
古くからの常識とされてきました。

強いつわりは妊娠悪阻と呼ばれ、
脱水や電解質異常を来たして点滴などの治療の対象となります。

その一方で、
つわりがあるのは健康な妊娠の兆候であって、
流産などの妊娠の中断では、
つわりの症状が少ないとする臨床データが、
複数報告されています。

ただ、こうした臨床データの多くは、
それほど精度の高いものではなく、
妊娠の診断も、
エコーなどで胎児が確認出来る時点で、
行われているものが殆どです。

このことの何が問題であるかと言うと、
実際には胎児が確認出来ない時点で妊娠が中断する、
というようなケースは結構あることが知られていて、
そうした事例が含まれていないデータであるからです。

そこで今回の研究では、
妊娠に対するアスピリンの効果を検証する臨床試験のデータを活用して、
妊娠反応として活用される、
胎盤由来のホルモンであるHCG(βHCG)値が上昇した時点からの、
妊娠の経過とつわりとの関連を検証しています。

対象はアメリカにおいて、
1度以上流産や死産などでお子さんを亡くしている女性で、
HCGの上昇で妊娠を確認した797名の、
妊娠の経過とつわり症状との関連を検証しています。

そのうち36週までに188名のお子さんが、
流産や死産で亡くなっています。

亡くなったお子さんのうちほぼ3分の1に当たる55例は、
まだエコーでは胎児が確認されない、
着床早期の時点での死亡でした。

以下の文章の胎児死亡というのは、
子宮外妊娠や流産、死産などを包括したもので、
より正確な用語は妊娠損失(pregnancy loss)です。

妊娠2週の時点で既に、
吐き気などの症状の記録が確認出来る409名において、
その17.8%に当たる73名では嘔吐を伴わない吐き気が認められ、
2.7%に当たる11例では嘔吐を伴う吐き気が認められました。

妊娠8週の時点においては、
症状の記録が確認出来る443例中、
その57.3%に当たる254名に嘔吐を伴わない吐き気が認められ、
26.6%に当たる118名では嘔吐を伴う吐き気が認められました。

一方で、
嘔吐を伴わない吐き気がある女性は、
そうでない場合と比較して、
胎児死亡のリスクが50%(0.32から0.80)、
嘔吐を伴う吐き気のある女性は、
胎児死亡のリスクが75%(0.12から0.51)、
それぞれ有意に低下していました。

こうした傾向は着床早期でも認められましたが、
統計的に有意ではなく、
胎児が確認される臨床的な妊娠に限ると、
嘔吐を伴わない吐き気のある女性は56%(0.26から0.74)、
嘔吐を伴う吐き気では何と80%(0.09から0.44)、
それぞれ有意に胎児死亡のリスクが低下していました。

要するに、
妊娠初期のつわり症状は、
胎児死亡のリスクの低下と関連している、
ということになります。

それでは、何故このようなことが起こるのでしょうか?

その原因は明らかではありませんが、
1つの因子としてはHCGの上昇と、
吐き気などの症状はリンクしている可能性があるので、
胎児死亡によるHCGの低下が、
その症状の軽減に繋がっている、
という可能性は理解の出来るところです。

いずれにしても妊娠中の症状と胎児の予後に関連がある、
という指摘は興味深く、
そのメカニズムが解明されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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