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LDLコレステロール低下の効果は治療により違うのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コレステロール低下療法と効果.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
LDLコレステロール低下療法の方法と、
その効果についての比較を行ったメタ解析の論文です。

悪玉コレステロールと通称されるLDLコレステロールを、
低下させることにより、
特にそのリスクの高い人においては、
心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが、
低下することは実証された事実です。

ただ、それが治療法によらず同じであるか、
と言う点については、
まだ議論のあるところです。

コレステロールを治療により低下させる効果を見た多くの臨床試験は、
スタチンと呼ばれるコレステロールの合成酵素阻害剤を使用したものです。

従って、スタチンの治療によるコレステロール低下療法の有効性は、
確認されているのですが、
それが他の治療薬でも同じであるか、
ということは直接的には証明されていないのです。

スタチンにはコレステロール降下作用以外に、
抗炎症作用などがあることが報告されていて、
そうした作用が動脈硬化の進展抑制に、
効果があるという見解があります。

仮にこれが事実であるとすると、
スタチンを使用した場合と、
他の薬を使用した場合とでは、
その効果には差があるということになります。

アメリカの2013年のガイドライン(ACC/AHAガイドライン)では、
原則としてスタチン以外のコレステロール降下療法は推奨していません。
ただ、2016年のより新しい提言では、
胆汁酸の排泄促進剤やコレステロール吸収阻害剤のエゼチミブ、
新薬で注射薬のPCSK9阻害剤などにも、
一定の評価をしています。

しかし、実際にはスタチン以外の薬のデータは少なく、
コレステロール値を同じだけ低下させた時の、
他の治療法の効果が、
スタチンと差があるかどうかについては、
明確な結論が出ていないのです。

今回の研究においては、
これまで報告された臨床データをまとめて解析するという手法で、
この問題の検証を行っています。

介入試験というスタイルのものと予後の分かる臨床事例で、
心筋梗塞の予後が確認されているものを幅広く収集し、
ターゲットとなった病気の発症が50例未満のものや、
観察期間が半年に満たないものは除外されています。
スタチン以外に、
薬剤としては胆汁排泄促進剤、エゼチミブ、
フィブラート系薬剤、ナイアシン、CETP阻害剤、
PCSK9阻害剤が含まれ、
また食事療法のみの効果と、
肥満治療として海外で行われている、
空腸のバイパス手術による知見も含まれています。

トータルで312175例の事例をまとめて解析した結果として、
スタチンでLDLコレステロールを38.7mg/dL低下させることにより、
主要な心血管疾患の相対リスクは23%(0.71から0.84)有意に低下していました。
これは心血管疾患による死亡と心筋梗塞、脳卒中などの発症を合算したものです。
一方でスタチン以外の治療のうち、
スタチンと同じようにLDL受容体を増やすことが確認されている4種類の治療
(食事療法、胆汁酸排泄促進剤、エゼチミブ、空腸バイパス)を併せて解析すると、
矢張りLDLコレステロールを38.7mg/dL低下させることにより、
心血管疾患のリスクは25%(0.66から0.86)、
これも有意に低下していました。
以上の5種類の治療を併せて解析すると、
同じLDLの低下により、
心血管疾患のリスクは23%80.75から0.79)有意に低下していました。

要するに、スタチンとそれ以外の4種類の治療は、
質的に異なるものではなく、
同じだけLDLコレステロールが低下すれば、
その予防効果は同じである可能性が高い、
ということになります。

一方でそれ以外に治療においては、
ナイアシンやフィブレートは、
そもそも単独でコレステロール降下作用は弱いのですが、
その範囲ではナイアシンはコレステロールの降下度に一致した効果で、
フィブレートはコレステロールの降下度より、
やや強い予防効果を示しました。

そして、CETP阻害剤はHDLコレステロールを増加させる薬剤で、
現在は有用性がほぼないと考えられているものですが、
LDLコレステロールの降下度の予測より、
予防効果が低く、
一方で強力にLDLコレステロールを低下させるPCSK9阻害剤は、
予測よりも強い予防効果を示しました。

以上は一次予防と二次予防のデータをまとめて解析したもので、
これを別々にして解析し、
コレステロールの数値そのものと虚血性心疾患の発症率との対比で見ると、
一次予防ではLDLコレステロールが38.7mg/dL低下する毎に、
発症率は1.5%低下し、
二次予防では同様に発症率は4.6%低下していました。
これは5年間の虚血性心疾患による死亡と心筋梗塞の発症のみで、
算出されたものです。

要するにスタチンはコレステロールの降下度に合わせた、
心血管疾患の予防効果を示し、
その程度はエゼチミブと同等と想定され、
新薬のPCSK9阻害剤は、
より強い心血管疾患の予防効果を持つ可能性がある、
ということになります。

ただし、データは圧倒的にスタチンを使用したものが多く、
新薬のPCSK9阻害剤のものは限られていますから、
現時点でスタチンよりPCSK9阻害剤の方が優れている、
というように言い切ることは出来ず、
今後のデータの蓄積を待つ必要があると思います。

いずれにしても、
スタチンには付加的な抗動脈硬化作用があり、
コレステロールを低下させるだけの効果ではない、
というスタチン至上論は、
最近はやや旗色が悪く、
スタチンでもエゼチミブでも、
同じだけコレステロールを下げれば、
同等の有効性が期待出来ると、
現状はそう考えておいて、
大きな間違いはないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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