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新刊本「くすりの始め方・やめ方」内容ご紹介 [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームなどの診療には廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日は若干宣伝ですが、
新しい本が出来上がりましたので、
その内容を少しだけご紹介します。

まずこちらから。
目次.jpg
目次の一部ですが、
大体こんな感じで6章の構成になっています。

内訳は、
第1章 安定剤と睡眠剤の始め方・やめ方
第2章 降圧剤の始め方・やめ方
第3章 コレステロール降下剤の始め方・やめ方
第4章 ワルファリンの始め方・やめ方
第5章 糖尿病治療薬の始め方・やめ方
第6章 抗甲状腺剤の始め方・やめ方
です。

基本的にクリニックの臨床医の視点からの検証と解説になっています。

正解を示したものではなく、
ガイドラインなどではあまり触れられない事項、
これまでは臨床医の個々の職人芸的な部分を、
そうしたものは最近は流行らないのですが、
いやいやそう馬鹿にしたものでもないのではないか、
などと思いつつ、
この20年くらいの僕なりの毎日の苦闘を、
形にしたものです。

ただ、これが絶対であるということではないので、
医療関係者以外の方でお読みになる場合には、
その点のみ注意してお読み下さい。

「俺の主治医の言っていることと違うぞ。どっちが正しいんだ!」
というようにはお考えにならないで下さい。
医療というのは、
少なくとも実地の部分では、
良かれ悪しかれかなり幅のあるものなのです。
「こうした意見もありますよ」
というくらいにご理解を頂ければと思います。

項目によっては、
専門でもない癖に何故書くんだ、
と思われる部分もあるかと思うのですが、
こういう言い方は誤解を招くかも知れませんが、
「専門馬鹿」というものもあるかと思いますし、
視野を広げて初めて見えるものもあると思うのです。
ただ、ご批判は甘んじて受けます。

内容をチラとお見せします。
こちらです。
スキャン降圧剤のやめ方.jpg
ブログでも以前書いたことがある、
本態性高血圧症における、
降圧剤の中止の可能性についての論考です。

「降圧剤なんかいらない!」
というような野蛮な言説は、
週刊誌などの得意技ですが、
そうしたものではなく、
一定期間しっかりと降圧をした上での、
降圧剤中止の可能性とその可否の判断、
そして具体的なその手順を、
極力論理的に考察したものです。
根拠となる論文も、
極力沢山ご紹介しています。
ただ、この分野はあまり新しい知見がないのが問題です。

それでは次を御覧ください。
糖尿病文献.jpg
糖尿病の章の引用文献の一部です。

一応日米のガイドラインと一部ヨーロッパのガイドライン、
治療指針のようなものは一通り入れています。
特に高齢者の治療については、
最近色々と動きがあり、
かなり極端な言説もまことしやかに流布されているので、
なるべく整理して、
日本とアメリカとヨーロッパとのガイドラインの比較なども、
盛り込んでいます。
最近の知見としては、
治療のメタ解析が今年幾つか出ていて、
それからエンパグリフロジンとリラグルチドの臨床試験結果が、
注目されましたので、それも入れています。
リラグルチド以外のGLP1アナログのデータも、
ポツポツと出始めましたが、
そこまでは間に合いませんでした。

今予約受付中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本





それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

デクスメデトミジンの術後高齢者せん妄への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
デクスメデトミジン.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
人工呼吸器装着時の鎮静に用いる鎮静剤を、
より少量で使用することにより、
術後のせん妄を予防しようという、
研究についての論文です。

せん妄というのは、意識障害の一種で、
意識が混乱し、幻覚な妄想、興奮状態などが生じるもので、
大きな手術の後などで、
集中治療室で起こることが多く、
薬剤などが原因となることもあります。

よくそれまでしっかりとしていた人が、
病気で入院したり手術を受けたような時に、
急に意味不明のことを口走ったり、
暴れたりして、
病状が落ち着けばまたケロリとしている、
というのがせん妄です。

海外統計では、
手術の後の患者さんの11から51%に発生する、
というほど頻度の多い現象で、
年齢と共にその頻度は更に増加します。

若い方であればその症状は一過性で、
後遺症なく改善しますが、
高齢者の場合には、
せん妄をきっかけとして、
急速に認知症が進行することが、
しばしばあることも知られています。

このように医療現場において大きな問題となるせん妄ですが、
現時点で手術後のせん妄を、
確実に予防するような方法は存在していません。

通常は鎮静剤として使用されるベンゾジアゼピンは、
こうしたせん妄の興奮は、
むしろ増強してしまうことがあります。

この分野において、最近注目されているのが、
今回の研究に使用されているデクスメデトミジン(商品名プレセデックス)です。

この薬は中枢性α2受容体作動薬で、
他の多くの鎮静剤とはその作用メカニズムを異にしています。

この薬が注目されるようになったのは、
他のベンゾジアゼピンなどの鎮静剤と比較して、
人工呼吸器装着中の鎮静に使用したところ、
患者さんのせん妄が予防された、
というデータが報告されたからです。

ただ、多くのこれまでのデータは、
ベンゾジアゼピンなどの他の鎮静剤との比較なので、
ベンゾジアゼピンがせん妄を誘発するということであって、
デクスメデトミジンにせん妄の予防効果があるとは言えない、
という欠点があります。
また、この薬を人工呼吸器装着時以外の、
手術後などに使用しても、
術後のせん妄を予防出来るのかどうかについても、
これまで精度の高いデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究においては、
通常人工呼吸器装着時の鎮静より、
ずっと低用量でデクスメデトミジンを術後に使用して、
偽薬との比較でせん妄の予防効果があるかどうかを検証しています。

中国北京の2箇所の専門病院において、
心臓以外の手術を施行した65歳以上の患者さん700名を、
患者さんにも主治医にも分からないように2つの群に分け、
一方は術後の集中治療室入室時から、
デクスメデトミジンの持続静脈投与を、
翌日の朝8時まで継続し、
もう一方はただの生理食塩水を注入して、
術後7日間のせん妄の頻度を比較検証します。

デクスメデトミジンの投与量は、
1時間体重1キロ辺り0.1μgに設定されています。
これは通常の人工呼吸器使用時の使用量の、
2分の1から7分の1くらいの低用量です。

その結果…

せん妄の発症はデクスメデトミジン群で、
全体の9%に当たる32名であったのに対して、
偽薬群では全体の23%に当たる79名で、
デクスメデトミジンの使用により、
術後のせん妄は65%(0.22から0.54)有意に抑制されていました。

低血圧や徐脈などの予想される有害事象には、
両群で有意な差はありませんでした。

このように、術後1晩低用量のデクスメデトミジンを注入することは、
術後せん妄の予防に有効な可能性が高く、
従来の治療と比較すると、
有害事象や副作用も少ないと考えられるので、
今後の知見の蓄積に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍予約受付中です。
よろしくお願いします。

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免疫増強剤を含むインフルエンザワクチンの胎児への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザワクチンの胎児奇形リスク.jpg
2016年9月のAnnals of Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
免疫増強剤を含む2009年の「新型」インフルエンザワクチンの、
胎児への安全性を検証した論文です。

季節性インフルエンザワクチンの妊娠中の接種は、
今ではガイドラインで推奨される流れになっていて、
妊娠初期については念のため接種を避けることが多いですが、
それ以外の時期では積極的に接種が勧められています。
母体や胎児を含めて、
悪影響はほぼないと考えられています。

ただ、グレイゾーンとして残っているのは、
免疫増強剤(アジュバント)を含むワクチンです。

通常の季節性インフルエンザのスプリットワクチンは、
ウイルス抗原をバラバラにしただけのもので、
免疫増強剤は含まれていませんが、
2009年に当時の「新型インフルエンザ」の流行があり、
その時には従来のワクチンでは効果が不十分と考えられたため、
免疫増強剤を含むワクチンが開発され使用されました。
AS03というアジュバントを含むグラクソ社のワクチンと、
MF59というアジュバントを含むノバルティス社のワクチンは、
その代表です。

アメリカはアジュバントを含むワクチンを認可しなかったのですが、
日本では認可はされたものの殆ど使用されず、
ヨーロッパではアジュバントを含むワクチンの方が、
より広く使用されました。

その後の検証においては、
意外なことに免疫増強剤を含むワクチンと、
含まない従来のワクチンとの間で、
大きな有効性の差はありませんでした。

要するに両者とも良く効いたのです。

それまでスプリットワクチンの効果は弱く、
個人予防にはあまり有効性はない、
と考えられていたのですが、
実際には流行株と完全にマッチングした抗原を含むワクチンであれば、
アジュバントを含まないワクチンでも、
充分な効果があったのです。

さて、
妊娠中のインフルエンザワクチンの接種は安全と考えられますが、
アジュバントを含むワクチンでも、
同じことが言えるかどうかは、
確実とは言えません。

これまでに複数の報告があり、
その一部では特に妊娠初期のワクチン接種により、
先天性の心疾患などの発症が増加した、
という結果になっています。

ただ、例数もそれほど多くはなく、
統計処理にも疑問のあるような報告が殆どです。

そこで今回の研究では、
グラクソ社のAS03アジュバントを含有する、
H1N1インフルエンザワクチンのみを採用して接種した、
国民総背番号制を取るスウェーデンにおいて、
2009年から2011年に、
妊娠中に接種を行ったトータル40983例の女性を、
接種しなかった197588例と比較し、
また接種しないで同じ母親から生まれた、
兄弟との比較も行って、
アジュバントを含むグラクソ社のワクチンの、
妊娠中の胎児への安全性を検証しています。

その結果、
出生児の先天性の異常は、
ワクチン接種群の4.97%に当たる2037名に発症したのに対して、
ワクチン未接種群でも4.78%に当たる9443名に発症していて、
ワクチン接種に関連のあるリスクの増加は認められませんでした。
兄弟を比較した検討においても、
矢張り両群には差はありませんでした。

妊娠初期の14週に限って検証すると、
最大で1000件の妊娠当たり6件の先天性の異常が、
ワクチンの影響で発症する可能性が否定出来ない、
という結果にはなるので
(これは有意差が出ている、ということではなく、
95%の信頼区間での議論になるので、
残りの5%を勘案するとそうなる、
という意味合いです)、
基本的にその時期のワクチン接種は、
避けることが望ましいのですが、
それ以外の時期におけるワクチン接種は、
今回の検証では先天性の異常との関連をほぼ完全に否定されています。

このように、
妊娠中の安全性に関しては、
グラクソ社のアジュバントを含むワクチンでも、
通常のスプリットワクチンと、
胎児への影響には大きな差はなさそうです。

ただ、アジュバントを含まないワクチンを含めて、
妊娠初期概ね14週までの接種については、
可能であれば避けるのが適切だと思います。
(してはいけないという意味ではなく、
感染のリスクと天秤に掛けて、
考える必要がある、という意味合いです)

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍現在予約受付中です。
よろしくお願いします。

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日本人にはアスピリンは効果がないのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アスピリン一次予防日本.jpg
ちょっと古いのですが、
2014年のJAMA誌の論文で、
日本の一般臨床において、
低用量アスピリンの心血管疾患の一次予防の効果を見たものです。

これはつい最近この研究のサブ解析の結果が医療ニュースになっていて、
それを読んで、
そう言えばこの論文は取り上げていなかったのではないかしら、
と思ったので再読してみたものです。

アスピリンは非ステロイド系の消炎鎮痛剤の一種ですが、
80から100mgくらいの少量で継続的に用いた時に、
抗血小板作用を持ち、
心血管疾患の予防や一部の癌(腺癌)の予防に、
その有用性が確立されています。

脳卒中や心筋梗塞の予防として、
一度そうした病気を起こした人の、
再発予防としての有効性は確立されています。
これを二次予防と言います。
これは国内外で特に違いはありません。

一方でまだ病気を起こしてはいないけれど、
そのリスクが高い人に使用する、
いわゆる一次予防の有効性は、
二次予防よりその差が出にくいということもあって、
必ずしも明確ではありません。

以前ご紹介した今年のアメリカの最新の指針としては、
一定のリスクのある人にアスピリンを10年以上継続して使用した場合、
心筋梗塞のリスクを17%、
脳卒中のリスクを14%、
大腸癌のリスクを40%、
それぞれ低下させる効果があり、
その一方で重症の消化管出血のリスクは58%、
出血性梗塞のリスクは27%増加するので、
リスクのある40から50代の成人の使用には一定のメリットが、
生命予後を含めてあるけれど、
70歳以上ではその効果はあまり期待出来ない、
という結論になっています。

ここで問題となるのは、
アスピリンの有効性には人種差があるのかどうか、
ということです。

心血管疾患の予防という観点から考えると、
日本人は脳卒中が多いのに対して、
欧米では心筋梗塞が多いという病気のリスクの差があり、
また脳梗塞における出血の合併も、
日本人では多いという差もあります。

上記の論文はそのアスピリンの一次予防を、
一般臨床において多数例で検証した、
ほぼ唯一の臨床データです。

医師会系の学術団体である日本臨床内科医会が中心となり、
年齢が60から85歳で、
高血圧、脂質異常症、糖尿病で治療を受けている、
トータル14464名をくじ引きで2つの群に分け、
一方は1日100mgのアスピリンを使用し、
もう一方は使用をしないで、
6.5年の経過観察を行い、
その間のアスピリンの使用の有無による、
心血管疾患のリスクを比較検証します。
内訳はアスピリン群が7220例で、
アスピリン未使用群が7244例です。

本来は偽薬を使用するのが適切ですが、
この研究では使用はしていないので、
患者さんにはアスピリンの使用の有無は明らかにされています。
一般臨床の片手間でも可能であることを優先させているので、
止むを得ないことではあるのですが、
とても残念には思います。

その結果はアスピリン群の有効性が、
当初の目標に達しないことが中間解析で明確であったので、
観察期間の中間値が5.02年の時点で終了となりました。

その結果では、
メインの指標とされた、
心血管疾患による死亡と、
非致死性の脳卒中と心筋梗塞とを併せたリスクには、
アスピリン使用群と未使用群とで、
有意な差は認められませんでした。

観察期間中の死亡事例は、
両群とも56例と同一でした。
非致死性の虚血性梗塞は、
アスピリン群で83例、未使用群で94例、
脳内出血はアスピリン群で23例に対して未使用群で10例、
クモ膜下出血はアスピリン群で8例に対して未使用群で4例、
心筋梗塞はアスピリン群で20例に対して未使用群では38例でした。

入院を要するような消化管など脳以外の出血は、
アスピリン群で0.86%に当たる62例発症したのに対して、
未使用群では0.51%に当たる34例に発症していて、
アスピリンの使用によりこうした重篤な出血のリスクは、
85%増加していました。

この結果は基本的には、
アメリカのガイドラインの元になったデータと、
傾向としては一致しています。
トータルには有意な差が出ていないのですが、
心筋梗塞などに限って見れば、
アスピリンによる一次予防効果は認められています。

ただ、日本人では心筋梗塞が少なく、脳梗塞が多いので、
トータルにはその差が出にくくなるのと、
重症の出血は欧米のデータでは0.1%程度であるものが、
単純比較は出来ませんが0.86%という高率で発症しています。

海外データの解析でも、
アスピリンの一次予防効果は、
40から50代で開始した場合に最も高く、
高齢になるほど低くなりますから、
60歳以上での一次予防効果を見たこの試験のデザインは、
今から見るとやや疑問に感じます。

つい最近上記研究の研究グループは、
70歳以上の年齢層でHDLコレステロールが低値の群でサブ解析すると、
心血管疾患のリスクが有意に低下していた、
という結果を学会報告していますが、
統計のマジックのような感じがして、
トータルにはそうした方向性も疑問に感じます。
むしろもう少し若い年齢層で、
検証することが必要ではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました

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よろしくお願いします。

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猫の腎障害悪化のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
AIMと猫の腎障害.jpg
今年のScientific Reports誌に掲載された、
猫に腎不全の多いことのメカニズムを解析した、
興味深い日本の研究者による論文です。

ペットの医療というのは、
今は人間の医療と殆ど差がないくらいの進歩を遂げていて、
およそ人間に行われる治療で、
猫や犬に試みられないものはなく、
手術も放射線治療も抗癌剤も使われますし、
採血やレントゲンは言うに及ばず、
CTやMRI、血管造影など何でもござれです。

人間の医療機器がそのままペットに使用され、
人間に使用される薬がそのままペットに使用されます。
人間のような健康保険などの縛りもないので、
医療費を抑制しようとか、
過剰診療を避けようなどの視点も、
あまりないように外野からは思われます。

クリニックでも、
ご自分のことではなく、
飼っている猫の血液検査の結果などを見せられて、
意見を求められることもあります。

そんな中でちょっと不思議に思ったのは、
腎臓を患う猫の多さです。

実はこれは以前より知られていたことで、
人間を含む他の動物と比較して、
猫には慢性腎障害が多く、
その死因も腎不全が多いのです。

それでは、何故猫には腎不全が多いのでしょうか?

その原因はこれまで不明でした。

今回の論文は東大の宮崎徹先生のグループによるもので、
自ら発見したAIM(Apotosis Inhibitor of Macrophage)という物質が、
その問題に関与しているのではないか、
という仮説を検証しているものです。

AIMとは何でしょうか?

その名称でも分かるように、
最初は白血球の一種で病原体を飲み込んで処理してしまう、
マクロファージという免疫細胞から分泌され、
アポトーシスと呼ばれる細胞死を、
抑制する蛋白質として同定されました。

ただ、研究が進むうちに、
それ以外にも多くの作用を持つことが明らかになりました。

そのうちで大きな役割の1つと考えられているのが、
薬剤や重症感染、出血などの際に、
急激に腎臓の働きが低下する、
急性腎不全の時に、
腎臓を保護してその回復を助けるという作用です。

AIMは通常は血液中でIgM(5量体)という大きな免疫グロブリンと、
結合した状態で存在しています。

IgMは非常に大きな蛋白質ですから、
それに結合したままでは、
腎臓から排泄されることはありません。

しかし、身体が急性腎不全になり、
尿の通り道である尿細管が、
炎症により死滅した細胞で、
目詰まりを起こすような状態になると、
IgMから遊離したAIM蛋白が、
尿細管に移行して目詰まりを起こしている細胞に接着、
それが一種の目印の役割を果たして、
速やかに死滅した細胞は尿へと排泄される、
という仕組みが存在しているのです。

こうした仕組みはネズミと人間で共に見られることが分かっています。

さて、今回猫のAIMとその働きを検証したところ、
猫のAIMは実にネズミの1000倍も強くIgMと結合していて、
遊離のAIMは殆ど存在しない、
ということが明らかになりました。

これは部分的なAIMの構造の違いによるものです。

仮にこれが事実であるとすると、
猫は人間はネズミのように、
AIMで急性腎不全の回復を助けるような仕組みが存在しないので、
それだけ容易に腎機能が悪化しやすい、
ということになります。

これを証明する目的で、
AIMの遺伝子を猫のものに置き換えたネズミを作成したところ、
そのネズミは急性腎不全による死亡率が増加し、
そのネズミに遊離しやすいAIMを注射すると、
急性腎不全からの回復が促進されました。

これがおそらく、
猫に腎不全が多い1つの理由であると考えられます。

現状このAIMの研究は、
その多くが同じ研究グループのものなので、
そうしたメカニズムが存在することは事実としても、
その生体における重要性や意味付けについては、
まだ確定的なものとは言えないと思いますが、
今後より多くの研究が、
多くの研究グループにより成され、
それが腎不全の治癒に繋がれば、
患者さんにとってそれ以上の福音はないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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西川美和「永い言い訳」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

床屋さんに行くのと、
午後はマリインスキー・オペラの「エフゲニー・オネーギン」を聴きに行く予定です。

日曜日は趣味の話題です。

今日はこちら。
永い言い訳2.jpg
熱烈なファンの多い映画監督西川美和さんが、
自作の小説を映画化した待望の新作が、
今週から封切り公開されています。

原作を読んでから映画を観ました。

基本的には原作通りの映画になっているのですが、
小説版の不自然な部分が上手く修正されている上に、
密度も濃くより感性に訴える作品になっていて、
間違いなく映画の方が出来が良いと思います。
西川さんは矢張り本質的に小説家ではなく、
映画作家なのだな、と感じました。

ただ、内容はあまり僕好みではなくて、
今回は師匠格の是枝裕和監督作品に、
非常に似ているという感じもあり、
良い日本映画になっているのは間違いがないのですが、
何となく釈然としなかったことも事実です。

以下少しネタバレを含む感想です。

主人公は本木雅弘演じるそこそこ売れっ子の小説家で、
彼には深津絵里演じる美容院経営のやり手の妻がいるのですが、
夫は妻を人生のパートナーとは認めていても、
愛情のある関係ではなく、
子供も不要と考えてそうしたコミュニケーションも取っていません。

妻は出版社を退職して売れない時代の夫を、
小説家として身を立てるように支えて来たのですが、
夫はそれをある意味鬱陶しいものと考えて、
手近な編集者の女性と不倫しています。

それが、友人と2人のバス旅行の最中、
妻はバス事故で不慮の死を遂げます。

夫は不倫の最中にその報を受けるので、
非常な疚しさと不快感を覚えるのですが、
その一方で妻が死んだこと自体には、
これといった感情を持つことが出来ません。

しかし、実際には妻の死後、夫の生活は荒れ、
小説も書けなくなってしまいます。

そんな中で、妻と一緒に行って同じように死去した、
看護師の女性の家族と、
ふとしたことから主人公は交流するようになります。

看護師の夫は荒くれのトラック運転手で、
5歳と11歳の2人の子供がいます。
名門中学受験を目指していた兄が、
母親の死で塾通いをあきらめているのを知った主人公は、
全く無関係のその家の、
家政婦役を買って出ることになります。

変わり者の小説家と、
直情型のトラック運転手の一家との、
奇妙で微笑ましい交流が続くのですが、
トラック運転手に興味を示す女性が出現することにより、
感情の対立が起こって、
その「楽園」はもろくも崩れてしまいます。

しかし、その後に救いがあって、
主人公は書く事で亡き妻との関係を、
再認識することに成功し、
妻とと生活を私小説的に綴った、
小説を完成させることになります。

妻を失ったことの意味を本当に意味で理解していない主人公が、
他者との関わりによって、自分の中の空洞を埋め、
精神的に再生することに成功する、
という古典的なドラマで、
如何にも日本映画という素材です。

西川さん自身の原作小説の映画化で、
ストーリーはほぼ原作通りなのですが、
後半のかなり突飛な感じのする「事件」を、
穏当なものに変えているのと、
主人公が自分の不倫を告白する相手を、
これもより身近な人物に変えているのが、
主な違いです。
後原作ではラストに主人公は泣くのですが、
映画では泣きません。

内容的には、
書けなくなった小説家が、
また書けるようになればそれが素晴らしいことで、
全ては解決なのか、
という辺りが、
個人的な屈折した感情もあるので、
素直に飲み込める感じではありませんでした。

ただ、映像も美しく、繊細な心理描写も丁寧に描かれています。
キャストは皆好演で、
主役の本木さんのストーリーと共に変化する様子も良いですし、
トラック運転手の竹原ピストルさんが意表を突くキャストですが、
ピッタリとしたイメージ通りの芝居で、
2人の子役と共に作品の骨格の部分を支えていました。

僕は西川監督は「ゆれる」が大好きで、
出来ればああした感じの作品が、
また観られると嬉しいな、というようには思うのですが、
今回の監督らしい繊細で優れた日本映画で、
静かに没入出来る感じの作品に仕上がっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日ををお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

下記書籍予約受付中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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アントニーノ・シラグーザ テノール・リサイタル(2016年10月) [コロラトゥーラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
シラグーザ.jpg
人気者シラグーザの、
多分2013年以来となるリサイタルが、
紀尾井ホールで行われました。

アントニーノ・シラグーザは、
イタリアの軽い声の高音域を得意とするテノールで、
イタリアはオペラの母国の1つですが、
現在ではテノールの名歌手と言える現役歌手は、
それほど多くはないので、
その中では抜群の美声と技術とを兼ね備え、
誰でも一度その生の歌い姿に接すれば、
何よりもその暖かい人柄の魅力に虜になる、
本当に貴重な存在です。

ご覧のようなスキンヘッドで背も高くはありませんが、
その澄み切った歌声は、
1音でも聞けば特別だということが分かります。

彼は1998年以降何度も来日し、
日本でもその歌声を聴かせてくれています。
僕が聴いた中で最高に良かったのは、
2009年の新国立劇場での、
ロッシーニの「チェネレントラ」の舞台で、
アドリブを交えて自在にコロラトゥーラの技巧を駆使し、
難アリアをアンコールも含めて歌い上げた姿は、
今も目と耳に焼き付いています。

あんな公演は、
もう新国立劇場で実現することはないのだろうな、
と思うと、
切ない気分になりますが、
仕方がありません。

彼はサービス満点でちょっと無理をするタイプなので、
その声の調子には結構ムラがあります。
アジリタの技巧自体は安定しているのですが、
超高音は本当に軽々と出る時もあり、
オヤオヤと思うほど出ない時もあります。
彼の超高音は、
車のギアチェンジのような感じで、
それまでの音階から、
出し方を変える感じなのですが、
そのギアチェンジが鮮やかに決まると、
ちょっとカタルシスのような興奮があります。
ギアチェンジの出来ない時は、
通常のテノールのように、
そのままの出し方で、
完全にファラセットではないのですが、
声帯を絞って音階を上げるような感じになります。
これは正直あまりグッと来ないのです。

2011年以降の日本での舞台は、
体調が明らかに悪いという時もありましたし、
高音に伸びがなく、声も荒れていて、
「ああ、これはもう限界なのかしら」
と思うようなこともありました。
正直2009年以前の舞台のイメージでいると、
裏切られることが多かったのです。

軽い声のテノールに多いことですが、
次第に中音域で声を張り上げるように強く出すことが多くなり、
声が荒れて、
声の軽さもなくなって高音も消えてしまうことがあります。

シラグーザももうそうした時期に達してしまったのかな、
とガッカリする思いもあったのです。

それが今回のリサイタルはかなりの絶好調で、
高音もハイDくらいまでバッチリ前に飛んでいて、
ギアチェンジもしっかり掛かっていました。
アジリタの精度や速さは、
矢張り以前と比べると落ちている感はあるのですが、
披露した「チェネレントラ」のアリアでも、
かつてのワクワクするような高揚感が漲っていました。

後半はちょっと荒れた感じはあったのですが、
何より澄み切った声が戻って来ていて、
ピアニシモからアクートまで、
幅の広い美声を聞かせてくれました。

本人も楽しそうに歌っていたと思いますし、
得意のサービス精神もバッチリで、
ラストは客席も大いに盛り上がりました。

シラグーザ復活を印象付けた一夜で、
非常に堪能しましたし、
ひと時コロラトゥーラの至福に酔う思いがしたのです。

最高でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍予約受付中です。
よろしくお願いします。

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


リバーロキサバンとダビガトランの直接比較試験 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ダビガトランとリバロキサバンの直接比較.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
2種類の新規抗凝固剤の効果と安全性を、
直接比較した論文です。

内容はかなりショッキングなものですが、
直接比較の大規模な試験は、
これが初めてであることと、
患者さんを登録してくじ引きで薬を選択する、
というような厳密な介入試験ではなく、
後から患者さんを抽出して比較したものなので、
その結果の評価にはより慎重な判断が必要だと思います。

ワルファリンに変わりうる抗凝固剤が、
最近次々と発売され、
その評価もほぼ定まった感じがあります。

ただ、それでは新規抗凝固剤のうち、
どの薬がより効果があり、より安全性が高いのか、
というような点については、
まだ定まった見解はありません。

直接トロンビン阻害剤であるダビガトラン(プラザキサ)が先陣を切り、
その後リバーロキサバン(イグザレルト)、
アピキサバン(エリキュース)、
エドキサバン(リクシアナ)と、
凝固因子のⅩa因子阻害剤と呼ばれる薬が、
次々と発売され実際に臨床で使用されています。

この新規抗凝固剤の、
患者さんの側からのメリットは、
ワルファリンのように定期的に血液の検査を行ない、
その効果を確認する必要がなく、
また納豆などの食事制限がないという点にあります。

その効果は各薬剤の承認時の臨床試験では、
良くコントロールされたワルファリンと同等の、
血栓症や塞栓症の予防効果を持ち、
有害事象である重篤な出血の発症については、
ワルファリンより概ね軽微である、
と報告されています。

ただ、それでは新規抗凝固剤のうち、
どの薬がより効果があり、より安全性が高いのか、
というような点については、
まだ定まった見解はありません。

最初に発売されたダビガトランにおいて、
重篤な出血の事例が問題となり、
そのためアメリカでは2から3倍ダビガトランより、
リバーロキサバンの処方が多いようです。

その一方で2016年2月のBritish Medical Journal誌の解説記事では、
ROCKET-AFと題された、
リバーロキサバン(イグザレルト)の臨床試験において、
ワルファリンのコントロールが、
正確に行われていなかったのではないか、
という問題点が指摘されています。

個々の薬剤の臨床試験のデータのメタ解析の論文では、
薬剤間に少なくとも明瞭な効果や安全性の差はない、
という結果になっています。

しかし、それが実地臨床においても成り立つかどうかは、
実際の臨床に近いデータが必要です。

そこで今回の研究では、
アメリカの健康保険のデータを活用して、
65歳異常の非弁膜症性心房細動患者で、
ダビガドランもしくはリバーロキサバンを新規で開始した、
トータル118891名(ダビガトランの処方52240例、リバーロキサバンの処方66651例)
のデータを解析して、
両者の血栓症予防効果と有害事象の差を検証しています。

その結果…

平均で4ヶ月の観察期間において、
血栓塞栓症の発症リスクには両群で有意な差はなく、
脳内出血のリスクはリバーロキサバンの使用において、
ダビガトランの使用と比較して、
1.65倍(1.20から2.26)有意に増加し、
重篤な脳内出血以外の出血系合併症も、
1.48倍(1.32から1.67)有意に増加していました。
消化管出血に限っても、
矢張りリバーキサバン使用群において、
1.40倍(1.23から1.59)有意に増加していました。

死亡リスクには両群で有意な差はありませんでしたが、
年齢が75歳以上に限定した場合と、
血栓塞栓症のリスクが高いと想定される、
CHADS2スコアが2を超える患者さんに限定すると、
リバーロキサバン使用群での死亡リスクの増加が認められました。

このように、
今回の直接比較においては、
明確にリバーロキサバンの出血系合併症のリスクは、
ダビガトランを上回っていました。

この原因について上記文献では、
リバーロキサバンが1日1回の薬剤であり、
その有効性を24時間維持するために、
結果的には抗凝固作用が、
必要以上に強くなっている時間帯があるのではないか、
という仮説を提示しています。

今回のデータではリバーロキサバンは1日20ミリグラムで使用されていて、
これは日本での使用量の1日15ミリグラムより、
もともと高用量に設定されています。

従って、この結果がそのまま日本の臨床で、
適応可能なものではないのですが、
日本においても新規抗凝固剤の、
一般臨床のデータの比較が、
是非必要なのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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  • メディア: 単行本





アスピリンによる胆管癌予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アスピリンの胆道癌予防効果.jpg
今年のHepatology誌に掲載された、
胆管癌に対するアスピリンの予防効果を検証した論文です。

胆管癌というのは、
胆汁の通り道である胆管の上皮から発生する癌で、
その発生した部位によって、
肝内胆管癌、肝門部領域胆管癌、遠位胆管癌の、
3種類に分かれます。

胆管に沿って広がる性質があるため、
早期発見が困難で、
黄疸などが発症してから進行して見付かることが多く、
そのため予後の悪い癌として知られています。

胆管癌のリスクとしては、
胆石症や胆嚢炎、
原発性硬化性胆管炎という原因不明の胆管の炎症、
胆管の先天的な異常、
職業に関連のある化学物質などが知られています。

また、ウイルス性肝炎や炎症性腸疾患、
肝硬変や肥満、糖尿病や喫煙も、
胆管癌のリスクを高めるという報告が存在していますが、
相反する報告もあり、
この辺りはまだ確定的ではありません。

胆管癌の発生する部位により、
そのリスク因子にも差があるという見解がありますが、
精度の高いデータは不足しています。

一部の癌、特に腺癌では、
消炎鎮痛剤で抗血小板剤でもあるアスピリンに、
その進行や転移の予防効果がある、
という報告が複数認められます。

アスピリンにはCOX2という酵素の阻害作用があり、
このCOX2に癌の進行を促進するような作用が、
あることが知られています。
それが癌の予防効果(主に転移などの予防)のメカニズムだと考えられています。

このCCOX2の過剰発現が、
胆管癌細胞の進行を促進する、という報告があり、
このことからはアスピリンの使用により、
胆管癌の発症も予防されるのではないか、
ということが示唆されるのです。

そこで今回の研究においては、
胆管癌の事例に条件をマッチングさせた対照を対比させる、
症例対照研究という手法により、
胆管癌の部位毎のリスクと、
アスピリンによるその予防効果を検証しています。

アメリカのメイヨークリニックで治療をされた、
トータル2395例の胆管癌(肝内胆管癌1169例、肝門部胆管癌995例、遠位胆管癌231例)
の患者さんを、それぞれ2倍の年齢などをマッチさせた対照と比較しました、

その結果、
胆管癌の3つのタイプ全てにおいて、
アスピリンは胆管癌のリスクを低下させていました。
肝内胆管癌のリスクを65%(0.29から0.42)、
肝門部領域胆管癌のリスクを66%(0.27から0.42)、
遠位胆管癌のリスクを71%(0.19から0.44)、
それぞれ有意に抑制していました。

一方で癌のリスク因子との関係には、
タイプによる差が存在していました。

原発性硬化性胆管炎は遠位型や肝内胆管癌より、
肝門部領域胆管癌とより関連が深く、
糖尿病は遠位型胆管癌と最も関連が深い、
という結果が得られました。
原発性硬化性単肝炎を合併していない炎症性腸疾患は、
どのタイプの胆管癌とも関連が認められませんでした。

このように、
胆管癌は出来る部位によっても異なる性質があり、
その一方でアスピリンには、
どのタイプの胆管癌に対しても、
一定の発症予防効果が存在している可能性があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

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急性期脳梗塞に対する血管内治療(血栓回収療法)の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
脳梗塞急性期の血栓回収療法.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
脳梗塞の急性期の血管内治療が、
患者さんの予後に与える影響を検証した、
メタ解析の論文です。

脳梗塞は最終的に脳内の結果に血栓が詰まって、
脳の一部に血液が流れなくなるために、
脳の細胞が死んでしまうという病気で、
脳卒中の1つです。

原因としては、
脳の血管の動脈硬化が進行して起こるものもありますし、
心房細動などの原因により、
別の場所から飛んできた血の塊(血栓)が、
血管を詰まらせて起こることもあります。

急性期の脳梗塞の治療の進歩において、
現時点で最大のトピックは、
静脈からrt-PA(アルテプラーゼ)という血栓溶解剤を、
注射して詰まった血栓を溶かしてしまう。
という血栓溶解療法の開始です。

アメリカでは1996年に適応されましたが、
日本で保険適応として施行が可能となったのは、
2005年の10月のことです。
色々と理由はあったのですが、
如何にも遅すぎる決定で、
「失われた10年」という言い方がされることもあります。

この血栓溶解療法は非常に有用性の高い治療で、
それまで回復が困難とされたような患者さんが、
劇的に回復されるというケースが多く報告されました。

ただ、この治療は全身的に出血の合併症を伴うので、
その適応は有効性のあるケースに限定されます。

脳出血を起こすリスクが高いような患者さんや、
血糖や血圧が非常に不安定であるようなケース、
前回の脳梗塞から3ヶ月以内などのケースでは適応となりません。

そして、発症から時間が経った血栓は溶解が難しく、
出血の合併症も多くなることから、
この治療は脳梗塞の症状の発症から、
4.5時間以内(発売当初は3時間以内)に治療を開始することが、
適応の要件となっています。

rt-PAによる血栓溶解療法により、
多くの患者さんの予後が改善したのですが、
その一方で問題点も浮上するようになりました。

その第一はrt-PAによる血栓溶解療法は、
脳梗塞の部位によってその効果が異なり、
内頚動脈や中大脳動脈の起始部では、
血流が再開される確率が低いという事実です。

こうした場所においては、
より直接的に血栓を除去するような方法が、
必要ではないかと考えられるのです。

また、rt-PAによる治療は症状発症後4.5時間以内、
と規定されているのですが、
その時間を過ぎていても、
有効で安全な治療はないのだろうか、
という点がもう1つの問題点です。

そこで注目されたのが、
病巣近くまで血管内にカテーテルを挿入し、
詰まっている血栓を除去するという、
直接的で機械的な方法です。

カテーテルで詰まった血管を広げるというのは、
心筋梗塞などの際には一般的な方法です。
しかし、同様のことを脳の血管でしようとすると、
心臓とは比べ物にならないような、
後遺症のリスクがあります。

心臓ではステントという管を入れて、
詰まっている血管を強制的に拡張させるような治療が主体です。
こうしたことをすると、
当然剥がれた血の塊の欠片のようなものは、
より末梢に血管を運ばれてしまいます。
心臓の場合、
太い血管の血流が保たれていれば、
末梢の細い血管は詰まっても、
心臓の働きとしては大きな問題は生じないのですが、
同じことを脳の血管でやろうとすると、
細い結果が詰まっても、
深刻な後遺症が残る可能性があるのです。

そのため、
カテーテルで詰まった血管を広げるには、
脳においてはより慎重な配慮が必要で、
絶対に末梢に血栓を飛ばさないようにしないといけません。

最近開発され主に使用されているのは、
ステント型血栓回収器(ステントリトリーバー)と呼ばれる器具で、
金属の網目の管を脳血管の閉塞部位に挿入し、
そこに血栓を絡め取って、
引き抜いて回収するという方法です。

2013年になって、
rt-PAによる血栓溶解療法と血管内治療による血栓回収療法との、
直接比較の試験結果が複数報告されましたが、
その時点では明確にrt-PAより血管内治療が優れている、
という結果には至りませんでした。

それが事例をより限定するなどして行われた、
5つの介入試験という厳密な臨床試験の結果が、
2015年に相次いで報告され、
今回は血管内治療の一定の優位性が確認されたのです。

急性脳梗塞の治療は、
確実に新しいステージに入ったのです。

今回の研究はその5種類の臨床試験のデータを、
まとめて解析することにより、
血栓回収療法を症状発症後、
どのくらいの時間内に行なうのが適切と言えるのかを検証したものです。

rt-PA治療の成功率が低い、
内頚動脈と中大脳動脈起始部の病変に限定して、
急性期の脳梗塞の患者さんをくじ引きで2つのグループに分け、
一方は適応のある事例ではrt-PAを含む保存的治療を行い、
もう一方はそれに加えて、
主にステントタイプの器具を用いた血栓回収療法を行います。

結果の評価は登録後3ヶ月において、
ランキン・スケール(mRS)という指標で評価されます。
これは0から6の数字で予後の程度を表現していて、
0は全く後遺症のない治癒で、6が死亡。
0から2であれば日常生活には支障のない状態を示しています。

トータルで1287名の脳梗塞急性期の患者さんのデータを解析したところ、
登録後3ヶ月の時点でのランキン・スケールは、
血管内治療群で平均2.9点に対して、
薬物治療のみの群では3.6点で、
血管内治療が有意に患者さんの予後を改善していました。

症状の出現から病巣の血流が再開されるまでに時間が、
長くなればなるほど血管内治療によるメリットは低下し、
発症後7.3時間を超えると、
通常の治療と比較した場合の有効性はなくなりました。

これまでの研究で血管内治療の6時間以内の有用性は、
ほぼ確立していましたが、
今回の検討によりその方針は概ね妥当なもので、
特に7.3時間を超えての治療は、
患者さんにメリットを及ぼさない可能性が高い、
という結論になったのです。

今後こうした血管内治療はより普及するものと思われますが、
どのような患者さんに対して、
メリットが大きいのかの検証は引き続き必要であると思いますし、
より実用的で確実性のある、
臨床的な指針が確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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付記)
誤字あり。コメント欄でご指摘を受け修正しました。
2016年10月15日15時修正
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