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新規GLP1アナログ セマグルチドの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
セマグルチドの効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
糖尿病の新薬の臨床試験の結果をまとめた論文です。

2型糖尿病の治療の目標は、
心血管疾患のリスクを低減して、
患者さんの予後を糖尿病のない人に近づけることですが、
実際には治療により血糖自体は低下しても、
心血管疾患のリスクや総死亡のリスクを、
治療により低下させるというデータのある治療薬はごくわずかです。

最近精度の高い臨床試験により、
GLP1アナログという種類の糖尿病治療薬である、
リラグルチド(商品名ビクトーザ)が、
その使用による心血管疾患のリスク低下と、
総死亡のリスク低下を報告して大きな話題となりました。

しかし、その結果が他のGLP1アナログ製剤においても、
同じように成り立つかどうかは、
今の時点では明らかでありません。

セマグルチドはノボ・ノルディスク社の開発による、
週1回皮下注のタイプのGLP1アナログ製剤でですが、
現時点では2型糖尿病治療薬としての適応は、
アメリカでも通っておらず、
日本でも発売はされていません。
ただ、この薬は内服薬としても治験をされていて、
内服で週1回の薬剤として発売されれば、
その市場は確実に拡大すると思われます。

今回のデータはアメリカでの適応を目指して施行された、
臨床試験の結果です。

世界20か国の230の医療機関において、
通常の治療を行なっていても、
HbA1cが7.0%以上である2型糖尿病の患者さん、
トータル3297名をくじ引きで2つの群に分け、
一方はセマグルチドを1日0.5mgもしくは1.0mgで週1回皮下注し、
もう一方は薬効のない偽薬を同じように注射して、
104週間(概ね2年間)の経過観察を行っています。

患者さんの登録時のHbA1cの平均は8.7%で、
治療薬としてはメトホルミンが70%程度、
インスリンが58%程度、
SU剤が40%程度使用されています。

その結果…

HbA1cは前値の8.7から、
セマグルチド0.5mgで7.6%、
セマグルチド1mgで7.3%まで低下しています。

そして、
心血管疾患による死亡と非致死性の心筋梗塞と脳卒中を併せたリスクは、
偽薬と比較してセマグルチド群で26%(0.58から0.95)
有意に低下していました。
このうち非致死性の心筋梗塞は、
偽薬群で3.9%、セマグルチド群で2.9%発症していて、
セマグルチドにより26%(0.58から1.08)と、
低下はしているものの有意差はありませんでした。
非致死性の脳卒中については、
偽薬群で2.7%、セマグルチド群で1.6%発症していて、
セマグルチドにより39%(0.38から0.99)と、
こちらは有意に低下していました。
心血管疾患による死亡については、
両群で有意差はありませんでした。

小血管の合併症については、
腎症の発症や悪化は、
セマグルチド群で36%(0.46から0.88)と有意に低下していましたが、
網膜症に伴う出血などのリスクについては、
セマグルチド使用群において、
1.76倍(1.11から2.78)と有意に増加が認められました。

今回の結果は正直リラグルチドの同様の結果と比べると見劣りがします。

総死亡のリスクにも、心血管疾患の死亡リスクにも、
差は付いていませんし、
心筋梗塞のリスクも有意ではありません。
症例数は実際には少ないものの、
網膜症の悪化がセマグルチド群で多かったという点も気になります。

個人的には今回の対象者には、
インスリンやSU剤の使用者が多く、
そこにGLP1アナログを上乗せしているので、
予期せぬ血糖の急降下や、
心血管疾患の増加に、
繋がりやすかったのではないか、
というようにも感じます。

一応今回の結果は、
アメリカFDAの新薬の審査基準は満たしているようですが、
リラグルチドの有効性のデータが、
再現性のあるものであるかを含めて、
GLP1アナログの有効性と安全性については、
今後の更なる検証が必要だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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