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頭痛と高血圧との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
頭痛と高血圧の関連.jpg
2016年9月のAmerican Journal of Hypertension誌に掲載された、
頭痛と高血圧との関連を検証した論文です。

高血圧と頭痛との関係を、
皆さんはどうお考えになりますか?

クリニックで診察をしていると、
血圧が高いことは以前から言われていたが、
最近頭痛がするので心配になった、
というような訴えでお見えになる方が時々います。

血圧が比較的急激に上昇すると、
確かに頭が重い感じの頭痛と、
肩こりやめまい、吐き気などの症状が出現することがあります。

時には高血圧性の脳症や、
くも膜下出血の時に、
強い頭痛を伴う全身症状が出現することがあります。

ただ、一般的に言えば、
高血圧の患者さんで頭痛が特に多いという印象はなく、
血圧が高い方がむしろ調子が良く、
降圧剤で血圧を下げると、
むしろその時に頭痛が生じることの方が、
多いという印象があります。

それでは、これまでのデータはどうなっているのでしょうか?

本態性高血圧症の多くが無症状で、
その中では最も典型的な症状が頭痛であることは、
古くから報告があります。

それでは、頭痛のある高血圧の方が、
より重症であったり、より血圧の数値が高値であるのか、
という点については、
必ずしも報告は一定していません。

頭痛の関連で言うと、
片頭痛が脳梗塞のリスクになることは、
ブログでも記事にしたことがありますが、
最近のメタ解析の結果として報告されています。
ただ、これは高血圧の患者さんのデータではなく、
心筋梗塞などの他の心血管疾患については、
そうした関連は認められていません。

高血圧の治療薬のうち、
β遮断剤、サイアザイド系利尿薬、ARB、ACE阻害剤は、
治療による頭痛の改善が認められていて、
その一方降圧作用の強いカルシウム拮抗剤は、
頭痛の改善効果が認められていません。
これはカルシウム拮抗薬の血管拡張作用が、
頭痛の発症にも繋がっているからで、
僕は患者さんにカルシウム拮抗薬を処方する時は、
飲み始めに頭痛が出ることがあるが心配は要らない、
というようなお話をしています。

要するに、
これまでに高血圧の患者さんを対象にして、
血圧値と予後と頭痛との関連を、
大規模に調査したようなデータは、
実際にはこれまでにあまり存在していなかったのです。

そこで今回の研究では、
外来での血圧の収縮期が160を超えるか、
もしくは拡張期が95を超えている高血圧の患者さん、
トータル1914名を、
フランス、リヨンの単独施設で登録し、
登録の時点で頭痛の有無とその性質を問診して、
30年という長期の経過観察を行なっています。

頭痛と高血圧との関係を見るだけのために、
こうした研究が行われた訳ではなく、
別個の血圧に関する臨床研究のデータを、
それについて別個の解析したものです。

頭痛の有無は登録の時点の問診で分類しています。
頭痛のあった頭痛群が850名で、
頭痛のない非頭痛群が1064名です。
頭痛群は更に、
片頭痛と毎日症状のある習慣性頭痛、
そしてそれ以外の頭痛に分類されています。
この分類は現行使用されている頭痛の分類とは同一ではなく、
問診の項目より分類可能な独自のものとなっています。

降圧治療は頭痛群、非頭痛群のいずれにおいても、
46%程度の患者さんに施行されています。
要するに半数近くの患者さんは、
登録の時点で降圧剤による治療を受けています。

登録時点の解析では、
頭痛は女性に有意に多く、
特に片頭痛ではその傾向は顕著です。
収縮期血圧と頭痛との関連は見られませんでしたが、
拡張期血圧は高いほど頭痛は伴いやすい、
という傾向が見られました。
重度の高血圧性網膜症は頭痛群で1.32倍と、
有意ではないけれど高い傾向を示し、
習慣性頭痛でも1.76倍と有意に高くなっていましたが、
それ以外の頭痛と、頭痛群のトータルでは、
一定の傾向を示しませんでした。
トータルの頭痛群とそれ以外の頭痛群では、
糖尿病のリスクが低下していましたが、
片頭痛や習慣性頭痛ではそうした傾向はなく、
その意味は不明です。

そして、
30年の経過観察においては、
頭痛群は非頭痛群と比較して、
総死亡のリスクが18%(0.73から0.93)、
心血管疾患による死亡リスクが20%(0.68から0.95)、
それぞれ有意に低下していましたが、
脳卒中による死亡リスクの低下は認められませんでした。

頭痛の種別においては、
片頭痛、習慣性頭痛、その他の頭痛で、
いずれも同じ傾向は示しましたが、
有意差は認められませんでした。

端的に言えば、
頭痛と高血圧との間には、
それほど強い関連はなさそうですが、
頭痛のある患者さんは下の血圧が高く、
臓器障害もより進んでいる可能性は示唆されます。
ただ、その一方で長期間の予後を見てみると、
登録時に頭痛のあった患者さんの方が、
その生命予後は良い傾向が認められました。

これは矛盾しているような奇異なものとも感じられますが、
上記文献の著者らの見解としては、
医療機関で取られたデータであり、
頭痛のある患者さんの方が、
症状のある分自分の体調にも敏感で、
降圧治療にも積極的に取り組み、
また主治医の方も病状をより気にするので、
それが結果として、
長期予後の改善に繋がったのではないか、
という説が述べられています。
ただ、それを補強するような、
具体的な患者さんの診療態度などが、
データとして示されている訳ではないので、
敢くまで仮説に留まるものだと思います。

高血圧の患者さんにおける、
重症高血圧や脳症が疑われるような、
急性の状態以外の頭痛症状は、
必ずしも患者さんの高血圧の状態と、
関連の深いものとは言えないのですが、
主治医がそうした症状にも気を配って診療することは、
長期的に患者さんの予後に、
良い影響を及ぼす可能性があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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