So-net無料ブログ作成

メラトニンと日内リズムと糖尿病 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で外来は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
メラトニンと糖尿病.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌の解説記事で、
メラトニンと日内リズムと2型糖尿病との関連について、
基礎実験と臨床との関係を解説したものです。

ここで主に取り上げられている文献は、
以前にも一度ご紹介したことがあります。
こちらです。
メラトニンによる血糖上昇効果.jpg
今年のCell Metabolism誌に掲載された論文ですが、
睡眠リズムを形成するホルモンであるメラトニンが、
血糖を上昇させる原因になるという、
ちょっとビックリするような報告です。

2型糖尿病は生活習慣病の1つで、
多くの遺伝要因と環境要因が、
複雑に絡み合って発症すると考えられています。

150を超える遺伝子変異が、
糖尿病の発症を上げるリスクとして同定されています。

そうした遺伝子の変異の中には、
糖尿病との関連がメカニズム的にも明確で想定可能なものと、
そうではないものがあります。

メカニズムが不明な遺伝子変異の中で、
興味深いものの1つが、
MTNR1Bという遺伝子の変異で、
この遺伝子はMT2という細胞表面の受容体をコードしています。

そして、このMT2は、
睡眠を誘導するホルモンである、
メラトニンの受容体として知られています。

メラトニンが結合する受容体には、
MT1、MT2、MT3の3種類があることが知られていて、
そのうちMT1とMT2はいずれも睡眠の誘導に関連があります。

実はこのうちのMT2受容体は、
インスリン分泌細胞である、
膵臓のβ細胞の表面にも発現していることが判明し、
その受容体が増えるような変異が、
糖尿病の発症リスクを増加させることが、
2009年に報告されています。

この時点では両者の関係は不明であったのですが、
2016年のCell Metabolism誌の論文により、
そのメカニズムが解明に向かいます。

こちらをご覧下さい。
メラトニン受容体の変異と糖尿病の図.jpg
これはNew England…誌の解説記事に添付されたものですが、
上の図は遺伝子変異のない状態で、
下の図がMTNR1Bの変異のある状態のインスリン分泌細胞です。

もともと細胞表面のMT2受容体にメラトニンが結合すると、
それは細胞内のリン酸化シグナルを介して、
インスリン顆粒の分泌を抑制する方向に働きます。

睡眠中はインスリンの必要量は減りますから、
これは理に適った仕組みと言えなくもありません。

一方でこの受容体に関わる遺伝子の変異があると、
下の図のようにMT2受容体の数が増加し、
その反応が高まるので、
メラトニンによるインスリン分泌の抑制が、
より強くなるものと考えられます。

ただ、実際にこの経路が、
どの程度の影響を与えるのでしょうか?
膵臓のホルモン分泌細胞の表面には、
300を超える受容体が存在していることが確認されていますから、
こうしたメカニズムがあるとしても、
それが臨床的に問題のあるものとは、
簡単に言い切ることは出来ないのです。

そこで上記の論文では、
メラトニンを1日4ミリグラムで3ヶ月間使用し、
その前後で糖負荷試験を行なって結果を比較しています。
その結果、第1相のインスリン分泌が、
メラトニンの使用により減弱し、
その反応は遺伝子変異のある人で強かったと記載されています。

しかし、ネズミの基礎実験がメインの論文なので、
臨床データの詳細は明らかではなく、
現状は不充分なものです。

一方でシフトワークで夜勤が多かったり、
海外渡航が多かったりすると、
それも2型糖尿病のリスクになることが報告されています。

従って、メラトニンのサプリメントとしての使用は、
適正であればむしろ糖尿病のリスクを、
低下させる方向に働くとも考えられるのです。

もう1つ糖尿病の治療薬のターゲットとして、
このMT2を活用したらどうか、
という想定も可能です。

メラトニンの受容体にはMT1もあるので、
MT2のみを阻害するような薬を開発すれば、
睡眠には影響を与えずに、
インスリンの分泌を刺激する薬が、
開発可能となるかも知れません。

いずれにしても、
メラトニンと糖尿病との関連は興味深く、
まだ臨床的には不明の点が多いのですが、
今後の知見の積み重ねに注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
メッセージを送る