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腎機能低下時のスタチンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンと腎機能.jpg
今年7月のLancet diabetes-endocrinology誌にウェブ掲載された、
腎機能低下時のスタチンの有効性についての論文です。

非常に広範に使用されている薬の、
一般臨床においても知りたい情報を教えてくれる、
興味深い知見です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
強力なコレステロール降下作用を持ち、
広く心血管疾患の予防薬として使用されている薬剤です。

この薬は慢性腎臓病の進行の予防にも、
その効果が確認されていて、
腎機能低下の患者さんにも広く使用されています。

ただ、透析患者さんを含む、
高度に腎機能が低下した状態においては、
その使用には議論があり、
一定の結論には達していません。

高度に腎機能の低下した状態では、
脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクは増加しますが、
スタチンの副作用や有害事象も増えると想定され、
その効果も限定的であると想定されるからです。

今回の研究はこれまでのスタチン治療の効果を見た、
精度の高い28の臨床データを、
個別の患者さんのデータとしてまとめて解析したもので、
腎機能のレベル毎のスタチンの効果の違いを検証しています。

トータルで183419例のデータをまとめて解析した結果として、
まず腎機能に関わらず全ての患者さんで見ると、
スタチンの使用によりLDLコレステロールを、
1mmol/L(38.7mg/dL)低下させる毎に、
主要な心血管疾患のリスクは、
21%(0.77から0.81)有意に低下していました。
これを推算糸球体濾過量という腎機能の数値毎にみてみると、
正常である60mL/min per 1.73㎡以上では、
22%(0.75から0.82)の低下であるのに対して、
45から60未満では24%(0.70から0.81)、
30から45未満では15%(0.75から0.96)、
30未満で透析未施行では15%(0.71から1.02)と有意ではなくなり、
透析施行でも有効性は認められませんでした。

また心血管疾患による死亡のリスクや総死亡のリスクの低下は、
推算糸球体濾過量が60mL以上でのみ有意に認められました。

要するに、
心血管疾患の予防という観点からは、
推算糸球体濾過量が45mL未満ではその効果はかなり減弱し、
30mL未満ではその有用性は殆ど確認出来なくなります。
生命予後の改善という意味ではもっと厳しく、
60mL未満では明確な効果は確認されません。

ただ、このデータのみをもって、
腎機能低下時のスタチンの使用は一切無駄、
というようにも言い切れず、
このデータはデータとして、
他の要因も勘案しつつ、
スタチンの使用を検討する必要があるのではないかと思います。

個人的な意見としては、
心血管疾患の一次予防におけるスタチンの使用は、
推算の糸球体濾過量が30mLを切る状態では、
よほどの必要性がない限りは、
中止するのが妥当であるように思います。
二次予防については、
より微妙で慎重な判断が必要です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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