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妊娠中のインフルエンザワクチン接種の新生児予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医活動に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザワクチンの妊娠中の使用.jpg
今月のLancet Infectious Diseases誌に掲載された、
妊娠後期の女性に季節性インフルエンザワクチンを接種して、
母体と新生児の感染を予防しようという、
臨床研究の結果を報告した論文です。

インフルエンザは軽い風邪程度の症状で、
改善する感染者も多いのですが、
その流行期に問題になるのは、
重症化しやすい妊娠中の女性や赤ちゃんの予防です。

しかし、現行のインフルエンザワクチンは、
生後6か月未満のお子さんには、
その有効性は確認されておらず、
推奨もされていません。

妊娠中の女性への安定期以降におけるワクチン接種は、
以前では胎児への影響など副反応の危惧もあって、
あまり推奨はされていませんでしたが、
特に2009年の「新型インフルエンザ」騒動の時の知見などが蓄積され、
妊娠中のインフルエンザ感染による重症化のリスクと比較すれば、
有害事象の生じるリスクは極めて少ないことと、
その効果も低くはないことが確認されると、
その接種はむしろ積極的に推奨されるようになりました。

そうした妊娠中の母体への接種の効果として注目されたのは、
母体自身のみならず、
間接的に胎児へも抗体が移行し、
新生児の感染予防にも有効性のあることが、
報告されたことです。

妊娠中にインフルエンザワクチンを接種することが、
その後生まれる赤ちゃんの感染の予防にもなるという知見です。

これは特に新生児死亡の多い途上国において、
そのリスクの軽減のために、
より有用な方策ではないかと考えられました。

母体と新生児の両方を守るという、
一石二鳥の結果が期待されるからです。

今回の研究は西アフリカのマリ共和国において、
妊娠28週以降の女性を2つの群に振り分け、
一方はサノフィ社の3価季節性インフルエンザワクチンを接種し、
もう一方は髄膜炎菌のワクチンを接種して、
妊娠中から出産後半年までの、
お母さんとお子さんのインフルエンザ感染の有無を、
比較検証したものです。

試験は2011年から2014年に掛けて行われ、
3シーズンの季節性インフルエンザワクチンが、
その都度に接種されています。
個々のシーズンの総計で、
4193名の妊娠された女性が対象となっています。
インフルエンザの診断は遺伝子検査を用いて確定されています。

その結果、
インフルエンザワクチンの接種を、
妊娠中に受けた母体から生まれた赤ちゃんの、
初回のインフルエンザ感染の予防効果は、
接種時期に限らない場合には、
33.1%(13.7から53.9)(intention-to-treat解析)で、
少なくとも出産の2週間以上前に限定すると、
37.3%(7.6から57.8)(per-protocol解析)でした。

お母さんのインフルエンザ予防効果は、
観察期間全体では70.3%(42.2から85.8)で、
妊娠中に限ると76.6%(28.4から94.3)、
出産後の時期に限ると70.1%(28.0から89.1)でした。

ワクチンの胎児の体重などに対する影響は、
特に認められませんでした。

こうしたデータはこれまでにもあるのですが、
ここまで厳密に施行されたものは少なく、
とても興味深いものです。

この集団においては、
7割を超える有効率はインフルエンザワクチンとしては、
かなり高いものなのですが、
その場合母体への有効率の半分程度の有効率が、
胎児にも認められるという結果になっています。

従って、
母体に接種することで、
お子さんにも一定の予防効果はあるのですが、
それほど有効率が高いものではないので、
これを常に成り立つ効果として、
妊娠中のワクチン接種を推奨して良いのか、
と言う点については、
まだ確定的なものではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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