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心房細動の長期予後を考える(2016年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
心房細動の心血管疾患リスク.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
心房細動の患者さんの予後を多角的に検証した論文です。

心房細動は高齢者の1割に発症する、
というデータのあるほど多い不整脈で、
心臓の一種の加齢変化ですが、
患者さんの生命予後に大きな影響を与えることが知られています。

心房細動が特に慢性に存在すると、
心臓の内部に血の塊である血栓が出来やすくなり、
それが脳の血管に詰まって、
脳塞栓という脳卒中の原因になります。
心房細動があると、
どのくらい脳塞栓が増えるのかという点については、
ない場合の5倍という数値が、
よく引用されています。

この脳塞栓の予防のためには、
抗凝固剤による治療が有効です。
適切なコントロールによる抗凝固剤の使用により、
脳塞栓の発症は6割程度予防されると考えられています。

そのため、
洞調律に戻すことが困難な慢性心房細動の治療は、
抗凝固療法による脳塞栓の予防がその主体として考えられて来ました。

しかし…

心房細動の患者さんに抗凝固剤を使用した臨床試験においては、
多くの患者さんが脳塞栓ではなく、
心不全や心筋梗塞など、
別の心血管疾患のために亡くなっています。
勿論長期の心房細動の持続は、
心不全のリスクの増加に繋がることは、
以前から知られている事実ですが、
これまでの慢性心房細動の治療は、
心不全の予防という点にはあまり重点が置かれていませんでした。

そこで、脳卒中以外の心房細動における、
長期予後を検証する目的で、
今回の研究では、
これまでのデータをまとめて解析する手法で、
その比較検証を行っています。

104のコホート研究における、
トータルで587867名の心房細動の患者さんを、
まとめて解析した結果として、
心房細動の患者さんはコントロールと比較して、
総死亡のリスクが1.46倍(1.39から1.54)有意に増加していました。

そして、心血管疾患関連のリスクでは、
心血管疾患による死亡リスクが2.03倍(1.79から2.30)、
主要な心血管疾患リスクが1.96倍(1.53から2.51)、
虚血性心疾患のリスクが1.61倍(1.38から1.87)、
心臓関連の突然死のリスクが1.88倍(1.36から2.60)、
慢性腎臓病のリスクが1.64倍(1.41から1.91)、
抹消動脈疾患のリスクが1.31倍(1.19から1.45)、
それぞれ有意に増加していました。

脳卒中に関しては、
脳卒中全体の発症リスクが2.42倍(2.17から2.71)、
虚血性梗塞のリスクが2.33倍(1.84から2.94)、
とそれぞれ有意に増加していましたが、
出血性梗塞のリスクには有意な増加はなく、
脳卒中自体のリスクも、
従来言われているより低い数値になっていました。

その一方で、
心不全のリスクは4.99倍(3.04から8.22)と最も高く算出され、
総死亡のリスクに与える影響についても、
脳卒中より高く、
実際の頻度も心房細動によって上乗せされる脳卒中の頻度が、
年間患者1000人当たり3.6件(3.0から4.3)であったのに対して、
同様に算定される心不全の頻度は、
年間患者1000人当たり11.1件(5.7から20)に達していました。

つまり、
心房細動の患者さんの予後を、
本当の意味で改善するには、
脳卒中の予防と共に、
心不全の予防が非常に重要で、
そのための有効な治療や予防法の確立が、
急務であるという結果です。

心不全の進行のメカニズムを含めて、
今後の知見の蓄積が必要であると思いますし、
より心不全の予防と管理に重点を置いた、
心房細動の治療の進歩を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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