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CPAPの心血管疾患への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
CPAPの心血管疾患への効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
睡眠時無呼吸症候群の治療が、
心血管疾患の予後に与える影響についての論文です。

睡眠時無呼吸症候群というのは、
睡眠中に10秒以上の呼吸の停止(無呼吸)や、
低呼吸と呼ばれる、
酸素が充分肺に入らないような呼吸の低下が、
1時間に5回以上認められる状態のことです。

肥満などの要因により気道が狭くなることが、
その主な要因と考えられていますが、
顎の形や口呼吸などが原因となることもあり、
必ずしも肥満による病気、と言う訳ではありません。

睡眠時無呼吸症候群があると、
眠りの質が悪化するので、
眠っていても熟睡感がなく、
昼に強い眠気が生じます。

そのため、居眠りの原因となり、
仕事に差し支えたり、
運転中の居眠りが事故に繋がったりすることが、
社会問題になっているのは、
皆さんもご存じの通りです。

そして、患者さんの睡眠の状態の改善のため、
主に行なわれている治療が、
CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)と呼ばれるものです。

これは特殊なマスクを鼻に付け、
そこから少し圧力を掛けて空気を鼻に送り込むことにより、
夜間の呼吸状態の悪化を改善するというものです。

このCPAPによって、
多くの睡眠時無呼吸の患者さんでは、
夜間の呼吸状態が改善し、
昼間の眠気や居眠りが予防されます。

そこまでは問題がありません。

睡眠時無呼吸症候群は、
他の多くの病気と関連があると考えられていて、
それを示唆する疫学データも多く発表されています。
その中には心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化の病気や、
糖尿病、脂肪肝炎などが含まれています。
血圧特に拡張期血圧の上昇もしばしば見られる所見です。

テレビに登場するような「名医」の先生は、
脳卒中や心筋梗塞などが無呼吸によって起こり、
無呼吸をCPAPで治療することにより、
そうした病気の予防になるような話をしています。
無呼吸によって突然死が起こり、
それが治療により予防されるような言い方もされることがあります。

しかし、実際にはそれは明確に証明された事実ではありません。

事例を観察してCPAPにより病状が改善した、
というような文献は多数存在しています。

しかし、症例を登録して治療と未治療とをくじ引きで決め、
本当に治療により病気が予防された、
というような報告は殆どなく、
治療により患者さんの生命予後が改善した、
というような報告もないのです。

証明されているのは、
せいぜい血圧が若干低下する、
ということくらいです。

こちらをご覧下さい。
CPAPの高血圧への影響JAMA.jpg
これは2012年のJAMA誌の論文で、
無呼吸症候群の合併症や生命予後についての、
数少ない介入試験です。

723名の無呼吸の患者さんを、
CPAPを施行する群と、
施行しない群との2つに分け、
平均で4年間の経過観察を行なっています。

しかし、急性心筋梗塞や脳卒中の発症や、
新規の高血圧の発症に、
CPAP治療と未治療とで違いはありませんでした。

ただ、4年を越えて治療を継続した場合には、
発症率に差が付いた可能性が示唆されていて、
今後の観察の継続により、
もう少し明確な結果が将来的には出る可能性があります。

そこで今回の研究では、
45歳から75歳で中等度から高度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群があり、
冠動脈疾患や脳卒中の既往のある2717名の患者さんを、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は通常の治療のみを行い、
もう一方はそれに加えてCPAPを施行して、
平均で3.7年の観察期間中の、
心血管疾患の発症と予後を比較検証しています。

その結果、
観察期間中の心血管疾患による死亡と、
心筋梗塞、脳卒中の発症、
不安定狭心症による入院、心不全、
一過性脳虚血発作を合わせた頻度は、
CPAP群の17.0%、CPAP未施行群の15.4%に発症し、
そのリスクにCPAP施行の有無による有意な差はありませんでした。

これはCPAPによる心血管疾患の、
二次予防の効果を見たものですが、
通常の治療に上乗せしても、
明確な上乗せ効果はなかった、
という意味合いです。

ただ、この研究において平均の1晩のCPAPの使用時間は、
3.3時間にとどまっていて、
その使用はそれほどしっかりと行われていません。

掲載雑誌の解説記事では、
もっとしっかりとCPAPが多くの患者さんで長時間使用されていれば、
結果は変わったのではないか、
という意味のことが書かれています。

つまり、
まだCPAPの心血管疾患の予防効果は、
完全に否定された、
ということではなさそうです。

しかし、現時点でその根拠が乏しいこともまた事実で、
現行眠気などの症状が強かったり、
酸素の低下が高度の患者さんでは、
CPAPの適応は揺るがないところですが、
症状のない患者さんに対する、
心血管疾患の予後改善を目的とした使用については、
現時点では推奨されないと、
考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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