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小児と思春期のうつ病の薬物療法の効果と安全生(2016年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
小児期の抗うつ剤.jpg
今年6月のLancet誌に掲載された、
18歳以下の年齢層における、
うつ病の治療薬の効果と安全生を検証した論文です。

2006年の海外文献によると、
6から12歳の年齢層の大うつ病の有病率は2.8%で、
13から18歳の思春期では5.6%に及ぶとされています。

小児期から思春期のうつ病は、
不登校やキレやすいような衝動的な言動、
落ち着きのなさなどの大人とは異なる症状を示すことが多く、
そのため適切に診断されないことも多いと考えられています。

更には深刻な社会不適合や自傷行為、
自殺企図などの深刻な転帰に結びつきやすいとも言われています。

このように、適切な診断と治療が重要な小児のうつ病ですが、
精神療法が第一選択の治療とされながら、
その普及と有効性は高いレベルで実現されているとは言い難く、
世界的にも薬物治療に頼る部分が大きいのが実状です。

しかし、18歳以下の年齢層に抗うつ剤を使用すると、
自殺や自殺企図のリスクが増加するという、
2004年のアメリカFDAの警告に端的に示されるように、
この年齢層におけるうつ病治療薬の安全性は、
確立されているとは到底言い難く、
またどの薬剤がより有効で、
より安全生が高いのか、
という点についても結論は出ていません。

今回の研究は中国資本による、
イギリスと中国の共同研究ですが、
ネットワークメタ解析という手法を用いて、
多くの抗うつ剤の小児期から思春期の使用によるデータを、
複合的に解析し比較しています。

二重盲検のランダム化試験という、
最もデータの信頼性の高い試験のみ、
34試験をまとめて解析することにより、
14種類のうつ病治療薬の比較を行なっています。

その結果…

偽薬と比較して明確にうつ病に対する有効性が確認されたのは、
古いタイプのSSRIで日本未発売のフルオキセチンのみで、
それ以外の薬剤は、
SSRIの代表格のパロキセチン(パキシル)や、
セルトラリン(ジェイゾロフト)、
エスシタロプラム(レクサプロ)などを含めて、
いずれも偽薬より有効とは確認されませんでした。

自殺企図や自殺のリスクが他剤と比較して高かったのは、
日本では最近発売されたSNRIであるベンラファキシン(イフェクサー)で、
他の薬剤はベンラファキシンと比較すると、
そのリスクは低いという結果でした。

ただ、薬剤間の直接比較は少なく、
偽薬と比較した精度の高いデータも少ないので、
この解析の信頼性は、
トータルにそれほど高いものとは言えません。

高齢者のうつ病治療と同様、
小児から18歳以下の年齢層のうつ病治療においても、
抗うつ剤による薬物治療の効果は高いものではなく、
その一方で自殺のリスクは高くなることは間違いないので、
その積極的な使用は、
かなり限定されると考えた方が良さそうです。

そして、今回のデータを見る限り、
第一選択はフルオキセチンで、
ベンファラキシンは原則として使用しないのが妥当と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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