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葉酸の慢性腎臓病進行予防効果(2016年中国のデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。
今日は自分が人間ドックに行く予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
葉酸のサプリメントの腎機能予防効果.jpg
先月のJAMA Intern Med誌にウェブ掲載された、
葉酸の腎機能低下に対する予防効果を検証した論文です。

葉酸はビタミンB群の仲間で、
その名の通り、野菜の葉に多く含まれている栄養素です。

この葉酸は補酵素と呼ばれ、
遺伝子の構成成分である、
核酸を作る酵素の働きを助ける役目があります。

つまり、単純化して言えば、
葉酸が不足すると、
細胞分裂がスムースに行なわれなくなるのです。

特に女性の妊娠中は、
胎児の細胞分裂のために、
多くの葉酸が必要となるので、
妊娠中には通常より多くの葉酸が必要となります。

妊娠の初期に葉酸が不足すると、
神経管の閉鎖という現象が妨げられ、
先天奇形の増加することが知られています。
このために、アメリカでは1998年、
FDAの指示により、
全ての強化穀物に、
葉酸の添加が義務付けられました。

日本ではこうした措置が取られてはいないので、
葉酸の欠乏が生じ易いのではないか、
というのが1つの問題点として、
指摘されるところです。

さて、ここまでは問題はありません。

葉酸は必須アミノ酸であるメチオニンと、
ビタミンB12の代謝にそれぞれ関連があります。

メチオニンは代謝の過程で、
不安定な中間産物である、
ホモシステインを発生させます。
このホモシステインは身体を酸化させ、
血管の細胞や神経の細胞に対する毒性を持つなど、
試験管の実験のレベルでは、
かなりの悪玉であり、
人間の病気や老化の大きな原因である、
動脈硬化や認知症の原因である神経細胞死にも、
深い関わりを持つとされています。

通常の身体の状態では、
ホモシステインはビタミンB12と葉酸との働きによって、
無害な物質に変化します。

ところが、葉酸やビタミンB12が足りないと、
ホモシステインの蓄積が起こるのです。

ホモシステインの血液濃度は、
年齢と共に増加します。

この増加が葉酸やビタミンB12の欠乏によるものならば、
その補充によりホモシステインは低下します。

ただ、ホモシステインが血管や神経を老化させる、
というのはあくまで試験管レベルの話です。

老化や動脈硬化や認知症は、
勿論ホモシステインだけが原因で、
起こるような単純な現象とは違います。

従って、問題は実際に人間に葉酸やビタミンB12を補充して、
動脈硬化や認知症の予防効果があるのか、
ということになります。

一時期確かにホモシステインを低下させると、
心臓病が減少する、という報告が複数見られました。

ただ、最近はその流れはちょっと違います。

2006年のNew England Journal of Medicine 誌に、
「Homocysteine lowering with folic acid and B vitamins in vascular disease 」
と題する論文が掲載されました。

これは5522人の中高年の心疾患や糖尿病の患者さんを対象にして、
ビタミンBと葉酸との心疾患や脳梗塞の予防効果を、
5年間検討したものです。

結果は予防効果は全くない、というものでした。

同様の論文が複数発表され、
現状は葉酸を補充したからと言って、
はっきり心疾患が減ったりする訳ではない、
というのが一般的な考え方です。

今回の論文はその流れとはやや逆行する感じですが、
中国においてより大規模に慢性腎臓病のリスクのある高血圧の患者さんに、
ACE阻害剤に上乗せする格好で葉酸の処方を行い、
その効果を偽薬と比較検証しています。

ホモシステインの増加は慢性腎臓病の進行と関連がある、
というデータは存在しているので、
葉酸の補充でその進行が予防されるかどうかを検証しているのです。

前述のように、
葉酸とビタミンB12を併用した試験では、
これまでにあまり良い結果が出ていないのですが、
今回の研究では慢性腎臓病にターゲットを絞って、
腎機能の低下の程度を比較しているという点と、
アメリカのように葉酸の摂取を強化している地域ではなく、
不足している人も多く含まれているであろうという点、
そしてビタミンB12の併用はせず、
葉酸のみを補充している、
と言う点などが、
これまでの多くの研究とは異なっています。

これは脳卒中一次予防の疫学研究のサブ研究として行われたもので、
推計糸球体濾過量が30mL/min/1.73㎡以上の高血圧患者、
トータル15104名をくじ引きで2群に分け、
一方は腎機能低下の予防に効果のあることが確認されている、
ACE阻害剤のエナラプリルを1日10ミリグラム使用し、
もう一方はそれに加えて葉酸を1日0.8ミリグラムが付加された、
見かけは全く違わない錠剤を使用して、
中間値で4.4年の経過観察を行なっています。

そして、観察期間中に、
登録時の糸球体濾過量が60以上であった場合には、
30%以上減少して60未満になるか、
登録時の糸球体濾過量が60未満であれば、
50%以上減少するか、
もしくは末期腎不全となったケースの合算を、
明確な腎機能低下の進行と定義しています。

その結果…

葉酸の上乗せにより、
エナラプリルの単独と比較して、
明確な腎機能低下は、
21%有意に抑制され、
推算糸球体濾過量の低下率も、
10%有意に抑制されていました。

つまり、これまでの多くのデータとは異なり、
サプリメントレベルの葉酸の使用が、
慢性腎臓病の進行を抑制した、
という結果です。

一体どちらが正しいのでしょうか?

1つの推測としては、
今回の研究では葉酸が不足気味の対象者が多く、
それが影響していた、という可能性があります。

ただ、この研究では、
別個に脳卒中の葉酸による予防効果も報告されていて、
葉酸はビックリするほどの効果を示しているのですが、
これ以外にはあまりこうした結果は報告されていないのです。

いずれにしても、
本当に葉酸のサプリメントが、
腎機能低下の予防に有用であるとすれば、
副作用もこの量であれば殆ど問題にはならず、
医療コスト的にも意義のあることなので、
今後同様の研究が、
日本を含む別個の対象群において、
施行されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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