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DPP4阻害剤の効果と人種差 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
DPP4阻害剤の人種差と効果.jpg
今年のJ Endocrinol Invest誌に掲載された、
DPP4阻害剤という2型糖尿病の治療薬の、
人種差を検証をした論文です。

DPP4阻害剤は、
インクレチン関連薬と呼ばれるタイプの飲み薬で、
食事に伴うインスリン分泌を刺激することにより、
主に食後血糖を低下させる作用を持つ薬です。

インクレチンそのものであるGLP1の誘導体が、
注射薬として使用されていて、
DPP4はインクレチンの代謝酵素なので、
DPP4阻害剤はその酵素を阻害することにより、
間接的にインクレチンを増加させるという作用を持っています。

インスリン分泌が低下した場合の2型糖尿病の治療薬は、
SU剤という飲み薬やインスリンの注射薬がありますが、
そのいずれも重篤な低血糖を来しやすいという点が、
大きな欠点です、
そのため、特殊な場合を除き、
高齢者ではその使用は控えるべきとされています。

インクレチン関連薬は食後のみのインスリン分泌を誘導するので、
少なくとも単剤では低血糖の副作用を起こしにくい、
というのが大きな利点です。

ただ、GLP1アナログは血糖降下作用が強いのですが、
飲み薬のDPP4阻害剤は、
血糖降下作用の弱いことが、
海外ではそれほど高評価ではない主な要因です。

一方で日本では、
注射に対する抵抗もあるため、
飲み薬のDPP4阻害剤がもっぱら使用されています。

糖尿病の専門家の間では、
その発売当初より、
DPP4阻害剤は日本人に向いた薬であり、
欧米人よりその血糖降下作用も強いのではないか、
という見解がありました。

実際2013年のDiabetologia誌に掲載された、
メタ解析の論文では、
DPP4阻害剤の血糖降下作用は、
他の人種よりアジア人種においてより高い、
という結果になっていました。

つまり、DPP4阻害剤人種差説は、
必ずしも根拠のないものではないのです。

今回の論文は中国の研究者によるメタ解析ですが、
メトホルミンに上乗せした場合のDPP4阻害剤の効果を、
アジア人種と白人種(コーカシアン)との違いを含めて検証しています。

メトホルミンはインスリン抵抗性の改善剤で、
DPP4阻害剤はインスリン分泌の刺激剤ですから、
両者の併用はより2型糖尿病の病態を、
多角的に改善する可能性のある組み合わせなのです。

その結果…

メトホルミンへの上乗せにより、
DPP4阻害剤は平均で0.61%HbA1cを低下させましたが、
その作用にはアジア人種と白人種との間で、
有意な差は認められませんでした。

興味深いことに、
インスリン分泌の指標であるHOMA-βという数値は、
アジア人種より白人種で、
有意にDPP4阻害剤による改善が認められていました。

これはちょっと不思議な感じがしますが、
上記論文の考察では、
アジア人種ではインスリン分泌は弱いので、
むしろインスリン抵抗性を改善する効果の方が、
血糖の低下に寄与しているのではないか、
という推論をしています。

いずれにしても、
インクレチン関連薬の効果を、
人種差で議論することは、
現状はあまり確定的なこととは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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