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青年団リンク ホエイ「麦とクシャミ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは夏季の休診となります。
8月15日(月)までは、
メールのご返事も出来ませんのでご了承下さい。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ホエイ.jpg
青年団の劇団員を中心として結成されたユニットである、
「青年団リンク ホエイ」の新作公演を観て来ました。

この劇団は前回の「珈琲法要」が大変面白そうだったのですが、
体調を丁度崩していて行けなかったので、
今回はとても楽しみに出掛けました。

作品のアウトラインは予め明かされていて、
当日のパンフレットにも詳細が書かれています。

1943年に北海道のただの畑であったところが、
急に盛り上がってそれから噴火を起こし、
火山が出現して昭和新山が出現します。

戦争中であったためにこの事実は終戦まで伏せられ、
「辺境の地での戦争」が、
災害と戦争と庶民という枠組みで描かれます。

目の付け所が非常に良いと思いますし、
戦争の時代を昭和新山から描くというのは、
これまでに類例のない発想だと思います。

そんな訳で嫌が上にも期待は高まりました。

ただ、観終わった感想はかなり微妙で、
予想とは異なり、かなりフリースタイルの劇作で、
取材はしっかりとされていても、
それが上手く活かされている、
というようには思えません。

災害を表現したちょっとチープな仕掛けも、
素人細工のようであまり面白いとは思えませんし、
せっかく面白い情報が満載なのに、
役者さんが変に茶化すような芝居を、
割とダラダラとしていて収束感がなく、
あまり緻密な要素がない、という点も、
少し失望しました。

また再演して練り上げられ、
その様相は変化するのかも知れませんが、
今回に関しては中途半端な感じが最後まで拭えず、
あまり納得がゆきませんでした。

以下ネタバレを含む感想です。

ちょっと悪口が混じる感じになりますので、
今回のお芝居が良いと思われた方は、
無理にお読みにならないようにお願いします。
個人の感想は様々ということで、
ご容赦頂ければ幸いです。

書割はなく暗幕のみの舞台面で、
上手に郵便局をイメージした、
2脚の机と郵便の整理棚があり、
机の上に日めくりがあって、
昭和18年から21年というその場の日時を示しています。

ノモンハンの戦闘で難聴となり、
帰国した山本という陸軍の軍人と、
郵便局の局員の柏という男との対話から物語は始まります。

メインとなるのは郵便局長で、
実在の人物である三松正夫さんがモデルですが、
作中では小松という名前になっています。

この郵便局長は昭和新山誕生の詳細な記録を付け、
終戦後にはその土地を全て買取ります。

物語は地震とその時点では謎の地面の盛り上がりにより、
戦争に必要な鉱物を運ぶ列車の線路が分断されたことを、
戦意が低下するという理由で、
軍部が郵便局に口止めする、
というところから始まり、
火山が噴火してそれどころではなくなった状況から、
戦後観光地として復活する様子を、
時代を追って描き、
ラストは部落の皆が局長に提供されたサイダーを飲む場面で終わります。

郵便局が戦時国債を皆に勧めて、
それが戦後紙切れになってしまったり、
夫が北方の勤務で安心していたら、
シベリア抑留になってしまったり、
広島の原爆の話が遠く聞こえて来たり、
郵便局の職員が逃げて来た朝鮮の炭鉱労働者であったり、
というような時代性のある挿話が語られ、
かなり盛りだくさんの内容です。

ただ、スタンスはそうシリアスな感じではなく、
部落の主婦3人組がとぼけた会話を繰り返したり、
七輪で兎を焼くという場面から、
モウモウと煙が上がり、それが噴火の表現になったりと、
東京乾電池が上演する別役の芝居のような、
まったりとした感じで物語は展開されます。

蜷川演出みたいに天井からしきりに物が落ちて来て、
お手玉のような物体なのですが、
溶岩を表現しているようです。

ラストのサイダーにしても、
朝鮮出身の局員の上に、
ビニール製の山が作られるという趣向にしても、
某かの暗喩的な意図があるようにも思いますが、
それが成功しているとは思えません。

個人的には盛り込み過ぎで全体が中途半端に終わったように感じました。

郵便局長の特異な行動とその結果だけで、
とても面白いドラマであるという気がするのに、
その部分は結局上っ面しか描かれませんし、
軍人のノモンハンの独白も迫力はあるのですが、
全体からは浮いていたように思います。
色々な挿話が、
あまり相互に関連を持つことなく、
その場限りで終わってしまい、
台詞自体も繰り返しが多く、
ダラダラと続くのが良いとは思えません。

災害と戦争と庶民ということで、
現代にふさわしいテーマであるという認識は分かります。
ただ、強引に日本の今の状況と、
作品世界を結びつけようというような感じがあって、
それが作品を少し不純にしていたように感じました。

ある種同時代の昭和新山誕生の物語として、
もっとリアルに造形した方が、
より興味深く面白い作品に仕上がったのではないでしょうか?

役者さんは皆上手かったのですが、
やや自己表現に時間を使い過ぎて、
物語の密度を薄くしていたのを残念に感じました。
もう少し演技の質感を統一させた、
アンサンブル重視の演出があるべきではなかったでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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